あなたの中にある“男性性”と“女性性”

男性性と女性性のバランスをチェックしてみよう

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

私たち人間の中には、男性であれ女性であれ、心の中に必ず“男性性”と“女性性”があります。

たとえば、ケンカっ早くて乱暴な男性でも、花を見て「きれいだ」と思ったり、子どもを見て「かわいい」と思ったりすることがありますよね。

これは、男性の中にある“女性性”の部分であったりするわけです。

また、女性の中にも、たとえば、ものすごく親分肌であったり、ものすごく行動的であったりなどという“男性性”の部分があります。

それは、ときとして、バーゲン会場などで、戦場の兵士以上にたくましく発揮されたりしますよね。

そして、私たちは、自分の中にある“男性性”と“女性性”を上手に使いこなしながら生きているのですが、あまりそのことには気づいていません。

たとえば、会社や友だちといるとき、あなたはしなやかで華麗な女性かもしれません。それは、あなたがもつ“女性性”の美しさといえるでしょう。ところが、そのあなたが、家に帰るとジャージに着替え、ビール片手にテレビを観ているとしたら、あなたの“男性性”はひょっとしてオヤジかもしれないわけです。

ひとみさん(仮名)は営業職で、同僚の男性たちともうまくコミュニケーションがとれ、とても人望がある人です。

その彼女が、いま、2つ年下の後輩に恋をしています。

彼女のことですから、その彼とも、先輩・後輩として、また、友人としての関係はうまくいっているのですが、「男女関係となると、どう関わっていけばいいか、まったくわからなくて‥‥」ということで、カウンセリングを受けにおみえになりました。

ひとみさんは、中学・高校・大学とテニス部に所属し、それなりの成績を上げるスポーツウーマンでした。私はそんな彼女とお話しながら、「彼女は、自分の中にある“男性性”のエネルギーを使いながら、いままで生きてこられたのだなぁ」と感じました。

そこで、聞いてみたのです。「女友だちから、“男前やなぁ”とか、“ひとみが男やったら、私、惚れる”みたいなこと、言われることないですか?」、「ええ、よくあります」、「男友だちや会社の男性陣とは、まるで男どうしのようなつきあい方をしていませんか?」、「たしかに、そのとおりかもしれません」。

男性から見ると、男性的なつきあい方をしてくれるひとみさんは、とても扱いやすく、男どうしのようなシンパシーも感じさせる人で、とても気やすい存在です。

これまでの彼女は、そんなふうに過ごしてきたわけです。

ところが、今回、彼女は後輩を好きになったことで、自分の中にある“女性性”の部分が刺激されてしまったんですね。

そして、ひょっとして、人生ではじめて、自分の“女性性”を表現しなくてはいけない場面に直面し、ものすごくとまどっているともいえるのです。

ひとみさんはとても魅力的な女性なのですが、ショートカットで、面談カウンセリングに来ていただいたときはパンツスタイルでした。

そこで、「スカートをはくこともありますか?」、「明るい色、フェミニンなデザインの洋服は持っていますか?」と質問すると、「あまり女っぽいファッションは好きじゃないですね。いってみれば、宝塚の男役みたいなイメージがしっくりくるんです」と彼女はお答えになりました。

そんな彼女にとって、恋をするということは、ひとことでいえば、“女性になること”だったのです。そして、主に“男性性”を使ってきた彼女には、女性としての自分をどう取り扱っていけばいいかも、どう表現していけばいいかわからないし、また、そうすることがとても恐いことでもあったわけです。

私はまず彼女に、ファッションから変えていきましょうと提案しました。「きっと、ものすごく恥ずかしいことだと思いますよ」と前置きしたうえで、それは、彼女が“女性性”を表現することの恥ずかしさそのものだけれども、それがあなたの女性としての魅力を引き出してくれるのですと説明しました。

そして、彼女のお友だちの中で、いちばん女らしいといえる人に、女性らしいファッションをコーディネートしてもらうようお願いし、また、お化粧やネイルなど、洋服以外の部分でも女性らしく装うことにできるだけ挑戦し、女性としての自分を楽しんでみてほしいという宿題を出したのです。

彼女は、スカートをはいたり、女らしいオシャレをすることに、「私の柄ではない」と抵抗を感じたようでした。しかし、お友だちは「かわいい、かわいい!」と、とてもほめてくれました。

そして、ためしに、その彼女に合コンに連れていってもらい、女性らしく、しおらしくふるまってみたところ、男性陣からの評判がすこぶるよかったというのです。

その後、ひとみさんは、例の後輩も交えた同僚たちとの休日の飲み会でついに女性らしい装いを披露したのでした。

男性たちはいつもと違う彼女をからかったりもしましたが、ふだんの装いがクールなだけに、この日、彼女が見せたフェミニンさはひときわまぶしく映っていたようでした。

いつもとの違いが大きかったために、“コントラスト効果”という心理効果を呼び、彼女の“女性性”がいっそう際立ったわけです。

そして、多くの男性から“女性性”の部分を見てもらうことにより、ひとみさんは、それは恥ずかしい気持ちを味わったわけですが、そのおかげで、ごく短期間で自分の“女性性”を表現することに成功したのです。

そして、仕事などで“男性性”を発揮しているときの彼女はとても行動的な女性であるわけですが、“女性性”が前面に出てきたとき、彼女はいつもと違い、好きな人を見つめているだけの、とても行動力のない女性となっていました。

しかし、彼女のそんな部分が2つ年下の彼のハートに触れたのか、いま、二人はおつきあいをしているのです。

このように、自分の中にある“女性性”を表現するということは、とても恥ずかしいことかもしれません。

でも、女性のみなさん、これをぬきにして、恋が始まることはないんですよ。ぜひ一度、自分の中の“男性性”と“女性性”のバランスをチェックしてみてくださいね。

では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。