喪失体験をどう乗り越えるか〜悲しむ勇気を持とう〜

悲しむ勇気を持とう

喪失は、身近な人やペットの死、離別や失恋、離職や夢の破綻など形は様々ですが、心をかけ、愛したものを失う、一つの心の死の体験です。どんなに辛い体験であったとしても、痛みを受け容れ、悲しむ勇気を持てるならば、喪失を乗り越えて、もう一度人生を力強く歩み出すことはできます。

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喪失は受け容れ難いもの

大好きだった人やペット、仕事や土地、夢との別れは、それが失恋のような、生き別れであれ、天災や病のような大きな力によって引き裂かれた場合であれ、簡単に受け容れられるものではありません。

いつか帰ってきてくれるのではないかと、去っていった愛しい人の部屋を、何年もそのままにして待っている人も少なくありません。頭で「無い」と理解していても、すぐに心がついてきてくれるわけでもありません。

私たちは、受け容れたくない事柄については、スルーしやすいのです。心理学では、これを否認と言います。喪失は否認したい出来事のトップにくるものではないでしょうか。

しかも、その喪失が突然であればあるほど、心の準備がないのでショックも大きく、その事実を受け入れ難いと感じるものです。

 

喪失の怒りは自己嫌悪や自己攻撃と結びつきやすい

大切にしていたものを失うと、私たちは、行き場のない怒りを感じます。この怒りの矛先は、まずは、直接的に引き金を引いた「誰か」や「何か」に向かいます。失恋ならば、裏切った自分のパートナーですし、そのパートナーが他に好きな人ができてあなたから離れていくのであれば、そのお相手に対する嫉妬に苛まれるかもしれません。ご家族の事情で大切な人と引き裂かれるようであれば、恋路を邪魔する家族の誰か、例えばパートナーのお母さんかもしれません。関わった人すべてを「酷い人」と悪者にせずにはいられない気持ちになるのではないでしょうか。

あるいは、自分の運命を呪いたくなるかもしれません。

「いっそ初めから出会わなければよかったのに」。

「どうしてこんなに運が悪いの?」。

「神も、仏も、ないわー!」という怒りです。この怒りの矛先は、運命や神さま、仏さまという目に見えない絶対的な力(権威)なので、「どうにも勝ち目がない」という無力感も滲みます。

そして、しまいには怒ってもどうにもならないという無力感と絶望感を抱えながら、

「私が、魅力がないのがいけないのよね」、

と攻撃の切っ先は「自分」に向けられます。

私たちは、自分が相手に心を差し出した分だけ、その人と自分の心が「一つ」になりますから、愛するものを失うと、自分の心の大きな一部も、一緒に失われてしまったように感じます。

だからこそ痛いですし、痛い思いをすれば、怒りが噴き上がりますし、その責任を誰か(何か)に問いたくなります。その持って行き場のない感情と、日頃から私たちが抱いている「私なんかどうせ取るに足らないものだから」という、劣等感、コンプレックス、無価値感、罪悪感が手を結び、「自分はダメだー!」の大合唱になりやすいのです。

ところが、大切なものを失った原因は、本人が思う自己嫌悪とは全く関係がなくて、自己攻撃をする理由がないことが多いのです。

 

怒りの蓋が外れると悲しみが迸り出る

こんなにしんどい感情ですが、怒りは、「感情の蓋」と呼ばれていて、本チャンの感情ではありません。本当に感じている感情を感じたくないから怒っている、と言ってもいいのかもしれません。

怒っている間は、まだ自分が傷ついたことの犯人探しをしている段階で、傷そのものと向き合えているわけではないのです。

自分が差し出した心が受け取ってもらえず、地面にぺちゃんこになっていて、自分のハートに大きな穴がぽっかりと空いているのを感じるのは、耐えられそうになくてとてつもなく恐いと感じるかもしれません。

でも、勇気を持って向き合ってみると、悲しみが迸り出ます。悲しみは、痛みを引き受ける時の感情です。喪失に向き合うと、とめどなく悲しみが溢れ出るようですが、いずれコツンと底を打つように終わりは来ます。私たちが「感じ尽くす」と呼ぶ心の状態です。こここまでくると、状況が変わらなくても、心はスッキリと軽く感じられて、平静な気持ちで、次の一歩を踏み出すことができます。

この悲しんでいる段階では、極力、自分に優しく接してくださいね。リラックスして、心の作業が進むのを見守る気持ちで過ごせるとベストです。

 

あなたの価値は1ミリも変わらない

悲しみを感じられると心の癒しは進むのですが、私たちは、それに抵抗して長い間怒り続けることが多いです。喪失の犯人探しや、自己嫌悪、自己攻撃に執着し続けると、傷の痛みそのものと向き合えないのです。

悲しむことは、ある意味、喪失を、頭だけではなく心から認めることになるので、それをしたくないから、なのかもしれません。

でも、どうか喪失の痛みを、必要以上に自己攻撃の材料に使わないでください。仮に、何らかのあなたの過失があり、少なからず反省点があったとしても、それは修正すればいいことです。あなたの本質的な価値は、喪失体験の前と後で、1ミリも変わってはいないのです。あなたの素晴らしさは何も失われてはいないということを覚えておいてください。

大きなハートブレイクは、それだけあなたが「愛した」ことの証拠でしかありませんから。あなたの大きな愛が、喪失体験をも包み込み、再生するしなやかな強さを持っていることを信頼してくださいね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

みずがき ひろみ

感情や感覚といった女性性をフルに使い、心のブロックを外すカウンセリングが得意。「目からウロコが何枚も落ちる」と見方が変わることに定評がある。 深層心理に眠る「願い」を掘り起こす「癒し」を通して、人生の豊かさを受け取りたい人の、恋愛、ビジネスでの自己実現をパワフルにサポートしている。