カウンセリングで耳にするよくわからない言葉の解説(3)~抑圧とは?~

記憶や感情、欲求などを心の奥底へ押し込めること

感情は感じれば消えてなくなりますが、抑え込むといつまでも心の中にあり続けると言われています。
ポジティブな感情であれば、良いのですが、ネガティブな感情はできれば感じていたくはないので、心の中に抑え込んでしまって感じないようにしようとします。これが抑圧で、心の防衛方法の一つなのです。

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心の防衛方法のひとつです。
記憶や感情、欲求などを心の奥底へ押し込めることです。

例えば、小さい子供が、ものすごく欲しいおもちゃがあったとしましょう。
欲しくて欲しくて仕方ありません。
お母さんにねだってみたところ、ちょうどお父さんとケンカして機嫌の悪かったお母さんに、ものすごく怒られました。

「わがまま言うんじゃありません!!」

そうすると、子供は「欲しい物を欲しいと言うと、お母さんを怒らせるんだ」と思ってしまいます。

このような事が、もしも何度も何度もあったとしたら、「欲しい」という欲求を心の奥底に押し込めて、感じないようになってしまいます。

そうしないと、お母さんに嫌われてしまうと思い、悲しくてつらいからです。
欲しいおもちゃでなくても、甘えたいという欲求や、認めてもらいたいという欲求なども同じことです。

例えば、ものすごくショックなことがあったとしましょう。
まともに感情を感じてしまうと、心が壊れてしまうんではないかというぐらいにショックなことがあったとしたら、そのショックな出来事の記憶を心の奥底に押し込めて、抑圧してしまい、ショックを受けないようにすることもあります。

抑圧して、つらい、悲しい、寂しいなどの感情を感じにくくしてしまうことで、心が大きく傷つくことを防衛しているわけです。

抑圧するとネガティブな感情を感じないので、とても楽しくなるように思われる方もいらっしゃいますが、実は違います。
私たち人間の感情は、ネガティブな感情だけ抑圧するなどという器用なまねはできません。
ですから、つらい、悲しい、寂しいなどの感情を抑圧すれば、楽しい、嬉しいなどの感情も感じにくくなってしまうのです。

「自分は何がしたいのかわからない」「自分は何が好きなのかわからない」「楽しいと感じる事がほとんどない」などは、感情を抑圧している人から、よくお伺いするお話しです。

また、突然キレる人というのも、抑圧が原因である可能性が高いです。

風船をイメージしていただくと、わかりやすいかもしれませんね。
風船に空気を入れていきます。これを感情や欲求を風船の中に抑圧するとイメージして下さい。
どんどん抑圧していきます。どんどん風船は膨らみます。
まだまだ抑圧します。そのうち耐え切れなくなった風船は、バチーーーーンと割れます。
これがキレるという状態です。

風船が割れないようにするには、空気を入れすぎないことが大切です。
時々ガス抜きしてあげることができたら、風船は割れませんよね。
ここでいうガス抜きが、抑圧した感情を感じてあげたり、欲求を満たしてあげたりすることになります。

感情は抑圧すると、ずっと心の奥底にあり、消えることがありません。
ですが、感じてあげることができれば、消えてなくなります。

ものすごく楽しいことがあったとしたら、楽しい!!と感じますが、しばらくするとその楽しい気持ちもなくなるでしょ?それは、楽しいという感情を感じたからです。

感情は感じれば、消えてなくなります。
そしてまた、次から次に感じていくのです。

欲求も同じですよね。
お腹がすいて「ご飯を食べたい!」という欲求も、満たしてあげて数時間たったら、またお腹がすいたと欲求が出てきます。これはとてもあたりまえのことですよね。
でも、ご飯を何日も食べられない状況(抑圧)があったとしたら、地球上のものを全部食べつくしたいと思うぐらいに自分の欲求が大きくなったと感じます。
ですが、そんなに食べられるものでもありませんし、少し食べれば欲求は治まってきます。

抑圧は、心の奥底に押し込めることですから、自分ではなかなか気付かないことも多いですし、気付いたとしても、抑圧するぐらいに感じたくない感情であったり、記憶であったり、認めたくない欲求だったりしますから、感じろとか欲求を満たせと言われても、なかなかうまくいかないかもしれません。
そんなときは、誰かに手助けしてもらえるといいですね。

>>>『カウンセリングで耳にするよくわからない言葉の解説(4)~執着とは?~』へ続く

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や結婚、浮気や離婚など男女関係、対人関係やビジネス関係、家族関係や子育て、子供の反抗期、子離れ、親離れ問題など幅広いジャンルを得意とし、お客様からの支持が厚い。 女性ならではの視点と優しさ、母としての厳しさと懐の深さのあるカウンセリングが好評である。PHP研究所より3冊出版。