セックスレスの心理5(4)~男と女でなくなるとき~

前回までの感情の抑圧や男性性、女性性の問題をより具体的にご紹介します。

たとえば、女性が男性を完全に支配し、男性の精を抜いてしまうようなケースがあります。また、出産や子育ての段階で、夫婦が家族になってしまい、セックスがタブーになっていケースについて、不妊治療、立会出産、子育てなどの個別のケースをお届けします。そして、その解決にはどこに意識を向けたらいいのかも簡単にご紹介します。

●男と女でなくなるとき

こうした思考的・理性的に偏って感情が抑圧されたり、男性性や女性性に抵抗を抱えると「男」や「女」ではなくなり、「家族」になったり「同居人」になったりしてセックスレスになっていきます。

一方で、これらが原因ではないにしても(遠因にはなりえますが)、やはり「男と女」ではなくなってしまうケースもカウンセリングではよく扱うのです。

昨今、男性が弱くなったというか、やさしくなった、草食系になったという一方、女性が強くなったとも言われます。もちろん、相対的な部分もあろうかと思いますが、20代の男性、女性をカウンセリングしていると、絶対的にもそれが言えるなあ、と感じることが少なくありません。

ただ、そうした時代背景においては、強い女性が強い男性を完全に支配してしまうようなカップルも存在します。
「彼が自分の意見を言わないから、私が決めざるを得ない」
「彼が頼りないから、私がしっかりしなきゃいけない」
「彼が私を押し倒すくらい強い男だったらいいのに(そういう男はいないかな)」
そんな思いを抱いたこと、ありませんか?

彼の行動に深く干渉したり、自分が完全に主導権を握ってしまい、彼の発言権を奪ってしまっている(あるいは、奪っているんだけどそれに気付いてない)ケースも少なくないようです。

それは男性側にも原因があって、自信がなかったり、男性性の成長が遅れていたり、感情を抑圧しすぎて自分を持てなかったりするのですが、一方の女性側も相手に干渉するあまり、まるで「カマキリ」のように、相手の精を吸い取ってしまうこともあるのです。
そうすると、彼を性の道具として扱うことはできても、愛情の対象として見ることができなくなります。
また、彼側もますます自信を失い、彼女のことを「女」という意識で見れなくなります。むしろ、お母さんかお姉さんのようにしか感じられなくなるんですよね。

また、夫婦の問題としては近年増加している不妊治療がセックスレスの原因になっていることも少なくないようです。。
不妊治療がきっかけでセックスレスになったり、浮気や離婚の問題に発展するケースも実は少なくありません。

不妊治療では、理性的な「医療」というテーブルに、感情的な存在である「夫婦」が乗せられることになります。

以前、ある方が「まるで自分が人間ではない、ロボットか何かになったような気がする」とおっしゃっていましたが、子供を作るという目的のもとで、感情的な動きはほとんど抑圧されてしまうのです。

定期的に病院に行かなければならない。
薬を飲んだり、打ったりしなければならない。
性的な高まりを感じているわけではないのに射精をしなければいけない。
結果が出るまで不安になりながらも待たなければならない。
経済的な負担が大きく、うまく行かなければどうしようという不安が大きい。

また、妊娠するためにセックスを禁じられるケースもありますし、「せっかく子供を作ろうとしているのに、排卵日以外でセックスをするのは“もったいない”ような気がして」セックスを遠ざける場合もあります。

そうすると、夫婦というのが心を通わせ、愛し合う関係よりも、子供を作るためだけの道具に成り下がってしまったような気がするのです。

もちろん、それはお互いの幸せのため、喜びのためであることに他なりません。
だから、頑張ろうとしますし、そうした苦しい不妊治療を経て子供を授かったとすれば、お互いに喜びもまたひとしおでしょう。また、その子にかける愛情も深くなると思います。

しかし、すぐに結果が出ずに、1年、2年と続いていくとすれば、その治療の苦しさや、あまりに理性的な関係に夫婦が男と女ではなくなってしまうんです。

不妊治療中に夫から「女として見れなくなった」と言われることも多いですし、また逆に「夫に男としての魅力を感じなくなった」という女性も多いのです。

また、出産を機にセックスレスになってしまう夫婦もとても多いようです。
まずは、立会出産のショックからセックスができなくなってしまう夫、妻もいるようです。
出産時の激しい痛みや叫び声に無力感を感じ、自信を失ってしまう男性、その迫力に気圧されてすっかり萎えてしまう男性、その姿を夫に見られることで自分を隠してしまう女性、また、萎えた男性に失望する女性。

生命の神秘に立ち会うとても素晴らしい機会であり、出産をともに経験する貴重な体験とも言える一方で、そんな心理的リスクもはらんでいるのです。

さて、子どもが生まれると、それまでの夫と妻、男と女から、パパとママに変わってしまい、「家族」という意識が強まります。
そうするとセックスが「近親相姦」のようなタブーになってしまったり、とても恥ずかしいものになったり、汚いもののように感じられるようになったりするのです。

また、子供が生まれることにより、妻を子供に取られたような気がしたり、家の中が“子育て仕様”に変わっていく姿に居場所のなさを感じる男性も多いようです。
そして、その寂しさや居場所のなさから意識が外に向いて、「家族」と「女性」は別物に捉えるようになったりするのです。

一方、最近はイクメン(子育てに積極的なパパ)も増えているわけですが、そもそも幼児期の子育ては女性性(母性)が発揮される領域のため、イクメンたちの女性性も非常に成長していきます。
ふつうの男性ならば気付かないことにも意識が向いたり、より感覚的、感情的な世界が開拓されるんですね。
それは素晴らしいことでもあるのですが、一方で、相対的に男性性を感じられなくなり、奥さんがそんな夫に男を感じなくなったり、女同士でいるような心地よさを感じて性の対象とは見られなくなったりすることも増えているようです。

こうした子供ができてからの家族、特に核家族、都市生活者の場合は、注意深く見守っていかないとセックスレスのリスクを大いにはらんでいると言えるのです。

これらのケースでも、前回紹介したような、自分が女性であること、男性であることを取り戻すプロセスが必要となってきます。

相手ではなく、自分自身が男・女であることを取り戻すって変な感じがするかもしれませんが、実はとても大事なことなんですね。
パートナーシップは鏡と言われます。
だから、パートナーに異性を感じないということは、それは鏡に映った自分の姿に「性」を感じないと言っているのと同義なのです。

もちろん、おのプロセスは「夫に女を感じないって言われたんです。私は夫のことを男として愛しているのに」というケースにも当てはまると思ってください。
そんな自覚は全然ないし、性欲だって感じるのに、、、と思ったとしても。

というのも、セックスレスの問題はコミュニケーションや関係性全体の問題であり、意識レベルではなくもっと深いところに起因していることが少なくないからなんです。

だから、意識レベルで感じていること(夫は男であり性の対象)と無意識レベルで感じていることとは別物のことも少なくないんですね。
実際、ある奥さんの心の中を掘り下げて行くと「夫に対する怒り、嫌悪感」「セックスに対する強い抵抗感」が出てきた方がいらっしゃいました。

さらには、そうした無意識レベルでは、男であること、女であることへの抵抗が、両親との関係、ことに幼少期の家族の関係性が原因となっていることも少なくないんですね。
「セックスレスの相談なのに、しかも、夫が原因なのに、なぜ、私の両親の話を聞かれるんだろう?」とカウンセリングで疑問に思われた方もいらっしゃるかと思いますが、実はこうした背景があったわけです。

女性のお母さんが何らかの理由で「父役」をやっていた場合、彼女は男性に頼らず、男性に不信感や嫌悪感を感じる傾向があります。
男性のお父さんが浮気を繰り返していた場合、彼はセックスに対して、隠れた嫌悪感や罪悪感(女性を傷つけるもの)を持ちます。
夫婦がずっと不仲だった場合、その家の子供は家族に対しての強い憧れと不安を抱えます。ゆえに、家族への意識は強くなるものの、男や女としての意識は抑圧されることになります。

もちろん、一概には言えないのですが、「男」と「女」がするセックスの背景には、親との関係性が少なからず影響しているのです。

今回も様々なケースをご紹介しましたが、セックスレスはお互いの絆をさらに深めるために神様が与えてくれたギフトと私たちは解釈しています。
より良い関係のために、前向きに取り組むことで、二人の関係性はもちろん、自分自身の成熟さ、成長に結びつくのです。

人によっては嫌なジャンルを突き付けられたと感じることもありますが、でも、それも感情です。
向き合い続ければ、やがて嫌な感情もよい感情へと昇華していきます。

自分のために、二人のために、目をそむけず、向き合っていきましょう。
私たちはいつでもそのお手伝いをさせて頂ければと思っています。

(完)

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