セックスレスの心理2~仲はいいのになぜ?~

「夫が抱いてくれなくて・・・」その影にある「私の中の性的嫌悪感」。

意外なところにヒントが隠れています。

セックスレスに悩まれるカップルの中には周りが羨むほど仲のよい夫婦もかなり多いんですよね。
そういう方とお会いするとこんな風に切り出されるんです。

「友達や親からも『あんた達は幸せそうでいいわね』って言われるんです。
実際にすごく仲良しで、一緒にいて楽しいし、結婚してよかった、とも
思うんです。
主人もきちんとした仕事をしているし、浮気するような人じゃなくて、
優しくて尊敬もできる申し分ない人なんですけど、、、ずっと夫婦生活が
ないんです・・・。私はしたいんですけど、主人がその気じゃなくて」と。

お話されていくうちにどんどんテンションが下がって行くのが感じられるくらい深刻になってしまうことも多いんですよね。
セックスレスの話題は昨今あちこちで取り上げられることも増えてきたように感じますが、そうは言ってもなかなか人に相談できる内容でもなく、一人で抱え込んでしまわれる方も少なくないのかもしれません。

前回は「近すぎる距離感」と「相手への見えない不満」に焦点を当ててみましたので、今回はまた違う角度からお話させていただこうと思います。
※参考)心理学講座No.21『セックスレスの心理』

●性的なものへの嫌悪感

そんなときは僕はもう少し詳しくお話を伺うようにしているのですが、その後でこんな風に質問したりするんです。

「もし、あなたもセックスを嫌悪してるとしたらどうしてでしょう?」と。

「え?いや、そんなことはないと思いますけど・・・」と多くの方は答えられます。
「私、どちらかというと好きな方だと思いますし・・・」とか
「付き合ってるときは普通にあったんですけど・・・」とか。

分かっていて質問する僕も意地悪なのかもしれませんけど(^^;
でも、ここがひとつの鍵になることが少なくありません。

セックスレスのご相談でご主人が拒否しているようなケースの場合(その逆に、ご主人はしたいのに奥様がしたくない場合も同じですが)、自分の心の中で「もしセックスを嫌ってる部分があるとしたら、どうしてだろう?」と思ってみることが解決への道筋になることが少なくないんですね。

ある女性をカウンセリングしていた時のことです。
旦那さんの性格などをお聞きして対処方法をお伝えしたり、心に溜め込んでいる感情を解放して楽になったり、スキンシップをお勧めしたり、旦那さんとの性的な関係も少しずつ良くなってきた頃でした。
前回お会いしたときには「もうすぐ何とかなりそうですよねっ!」と明るく話されていたのに
「最近、旦那が積極的にお風呂に一緒に入ろうって誘うんですけど、
なんだか、私の方が嫌になってしまって・・・」
ととても暗い表情になっていらっしゃいました。

彼女としては「旦那とセックスしたい」という気持ちが強く前面に出てきていました。
抱いてくれないご主人に不満も持っています。
でも、その感情を少しずつ解きほぐし、また、ご主人の性格や今の状態、男性心理について理解が進んでいくと、その気持ちの影に隠れていた「本当はセックスが怖い」とか「セックスなんて嫌い」とか「セックスはしちゃいけないもの」という感覚が出てきたんです。
こんな感情が出てくることについて、彼女自身も自分のことながらも不思議そうな様子でした。

これは思春期の頃、性的な成長を始めた僕達が無意識的に感じていたものがパートナーとの間で再び表面化したようなものかもしれません。
ここからご両親との関係や、過去の性的なトラウマ(といっても性的ないたずらだけでなく、バージンブレイクしたときの感覚や一人エッチをしたときの感覚なども実はトラウマになっていることも少なくありません)が鍵を握っていることが多いので、その方向でお話を伺うことも少なくありません。

●性がタブーになってしまう

あまり両親が性的な話をオープンにする家庭は少ないですよね。
それよりも、テレビドラマなんかでエッチなシーンが出てくると、さっとチャンネルを変えられてしまう家族の方が多いのではないでしょうか?

もちろん、性的な話題もできずに無邪気に質問をした子どもに「そんなこと、子どもが聞くんじゃありません!」と拒絶してしまう両親も多いでしょう。

そうすると「性的なもの=悪いこと、いけないもの」という認識が芽生えます。

それで思春期に入り、性的な欲求が高まってセックスに興味を持ったり、一人エッチをしたりすると、そのこと自体に「いけないことをしている」ような感覚になったりするんですね。
感情的に見れば「罪悪感」です。

そうした性的な成長も大人への一歩なのですが、そうした認識があまり無いために罪悪感や自己嫌悪となって心に圧し掛かってしまうようになるんですね。
ですから、この時期は男の子の方が性的にオープンだったりするので、相対的に女の子の方が性的なタブーを持ちやすいのかもしれません。

もちろん、これはセックスを経験したときにも感じるものです。
実際には大好きな人だったり、「みんながしてることだから」と頭で納得していたとしても、その裏側ではそんな心理が動いていたりするものです。
特に好きな人と結ばれたときなどは、幸せな気持ちになったり、喜びを感じることも多いものですが、その影(潜在意識)にそんなネガティブな感情が隠れていたりします。

それに今では社会的にも「セックスするのは当たり前。むしろ経験が無いことがおかしい」なんて意識が若い世代にもあったりしますから、なおさらネガティブな思いは抑圧されてしまうのかもしれません。

もちろん、いたずらされたり、痴漢にあったり、そうした性的な心の痛みがある場合は言うに及びません。
そんな場合はより一層、性的なものに対して「嫌悪感」を強く抱いてしまうことになります。

まずは、自分にもそんなところがあったとしたら???なんて風に“仮の”話として受け止めてみたほうがいいかもしれません。
その方が心が柔らかく今の状況を受け止められるようになっていきます。

●どうすればいいの?(セラピー的アプローチ)

性的なタブーを感情として受け入れ始めると、とても強い拒絶感や嫌悪感を持つようになります。
僕も男ですので、「カウンセラーだから・・・」と頭では分かっていても、その嫌悪感の対象になってしまうこともありますね。

僕もそれが分かっていますから、予め初めの頃にそんな話をしておきます。
「きっとね、プロセスが進んでいくと僕に対しても嫌悪感を感じたり、もしかすると『この人、変態なんじゃないか?』なんて思ってしまうことだってあるかもしれません。でも、それはその感情を乗り越えるチャンスでもありますから、そういう気持ちになったら、隠さずに教えて下さいね」

もちろん、「え?そんなことないと思いますけど・・・」とおっしゃる方がほとんどですけど(ありがとうございます)。
また、実際には「根本さんには感じませんけど、夫とか、職場の男性とか電車で乗り合わせた男性には感じます」なんて場合の方が多いかもしれません。

どちらにせよ、性的な問題は一様にとても繊細なところを含みますし、扱い方を間違えるとカウンセリング(セラピー)が潜在的なトラウマを作り出してしまう場合もありえますから、慎重に慎重に進めるようにしています。

さて、僕がよく使うセラピーのアプローチのひとつは“再体験法”と呼ばれるものです。
実際に、その性的な嫌悪感をカウンセリングルームという安全な場でもう一度作り出していきます。
具体的にはケースバイケースで、色んなイメージを作っていきますが、その嫌悪感、拒絶感を少しずつ感じながら、その感情を解放していくんです。
嫌な感情を相手にするわけですし、性的な問題ともなれば羞恥心や罪悪感などもついてきますから、自分でも向き合うのが怖くなって逃げ出したくなるものです。
そんな気持ちも自分自身で受容しながら、その感情と向き合い続けると、多くの場合、何かつき物が落ちたような、ふわっとした感覚に包まれることが多いようです。
安心感が全身を包んで眠たくなったり、実際にすやすやと寝てしまわれる方もいらっしゃいます。

そして、少しずつではありますが、その性的なタブーを受け入れ、乗り越えることができるようになっていきます。

でも、セックスレスに限りませんが、こういう性的なタブーを乗り越えていくときに、いつも僕が感じるのはパートナーへの強い愛情ですね。
嫌悪感が出てきてるときには、なおさらパートナーにはいい感情を感じられないものです。
でも、こうして一つ一つ向き合っていくと、やがてはパートナーへの深い愛情がにじみ出てくることが多いんです。
そのときには僕も人の心の不思議さと愛情の持つ強さに感銘を受けることも少なくありません。

●どうすればいいの?(日常的なアプローチ)

セックスレスの影にある、こうした性的嫌悪感を持つ場合は、普段の生活の中でもネガティブな感情を抑圧しがちなのかもしれません。
「いい人をしてしまう」
「嫌われることが怖い」
「我慢してしまう」
そんなパターンがあるとしたら、自分自身の気持ちに素直になってみるところからもアプローチしていけます。

ネガティブな感情から目を背けるのではなく、ありのままに受け入れていくことがとても大切なんですね。
これはセックスレスに限らず、他の問題についても共通テーマになります。

そういう方の場合は「ちょっとわがままかな」とか「ちょっと大胆かな」と思えるような態度を心がける方が案外うまくいくことが多いようです。
でも、いきなりは自信がもてないと思いますから、まずは、自分の素直な気持ちを見ていきましょう。

まずは、ゆっくり深呼吸して椅子やベッドに腰掛けてみましょう。
で、自分自身にこう聞いてみて下さい。
「ほんまのところ、旦那どうよ?」
「ぶっちゃけ、セックスって何?」
「あたし、ほんまに、セックスしたいん?」

ちょっと強い聞き方の方がいいんです。

で、自分の心から返ってくる反応に注目してみましょう。
反発したくなったとき、、、あなたは怒りを感じているのかもしれません。
悲しくなったとき、、、あなたは犠牲をしてるのかもしれません。
寂しさがやってきたら、、、すごく我慢しているのかもしれません。

何も感じなかったとしたら、、、何度も何度も問いかけてみましょう。
すぐに答えや反応が返ってくることってまれかもしれません。
だから、繰り返し、継続して見ていくことがすごく大切なんですね。

●解決への道筋

そうして、ありのままの気持ちに向き合えるようになると、あなた自身のパートナーへの気持ち、セックスへの感情も和らいだものに変わっていくことでしょう。

一方では、そうした性的な嫌悪感を受け入れ、許し始めると、今度はパートナーへの怒りも同時に生まれてきます。
性的な嫌悪感を受け入れると、同時に強い大人のエネルギーが強く放出されるようになります。
とても色っぽい雰囲気になってきたり、あるいは「私に触れたら火傷するわよ」って感じの強いセクシャリティのエネルギーが出てきたりするんです。

分かりやすく言えば、“動物的な”感じ。
男というよりは“オス”、女というよりは“メス”、というべく感覚です。

その強いエネルギーが最後に残っていたお互いの性的な壁を突き破るきっかけになることが多いのです。
自分でもびっくりするくらいの感覚を味わってみたいとは思いませんか。

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