心がショックから立ち直っていくプロセス(4)     ~第四段階:再誕生と感謝~

もうダメだと思った段階から人の心は再生を果たしていきます。それは新しい自分に生まれ変わるようなプロセスで、まるで以前の自分とは別人のような感覚をもたらしてくれます。

もう笑えないと思ってたのに自然と笑顔が溢れ、ユーモアを口にしていたりします。辛いできごとから学び、成長した自分がいて、そして、その辛いできごとにすら感謝の気持ちを持てるようになったりもするのです。

第四段階:再誕生と感謝

もうダメだと思ったこともあるでしょうし、将来の希望なんてまるで見えず、ただ、呆然と毎日を過ごしていた頃もあったでしょう。
でも、そうした心のプロセスを経て、そのできごとそのものや、その後の気持ちの変化を受け入れていくと、心はすくっと立ち上がりの段階を迎えます。

いわば、死と再生のプロセスで、第三段階までで死に絶えた古い自分が再生し、新しい自分として生まれ変わる段階に入るのです。
ここは今までとは考え方が一変し、別人のような感覚になることもあるんです。

「そうだよな、このままじゃダメだよな。そろそろ俺も変わろうと思う」
「いつまでもくよくよしてたって何も起こらないよね。自信はないけどやってみようと思うの」

そんな風に前向きで力強い気持ちが確実に心の中に湧き上がってきます。

「何か景色にちゃんと色が着いているんです」と感じる方もいますし、すーっと霧が晴れたように視界が明るくなることもありますし、また、「そういえば最近、前みたいな悪夢に悩まされることはなくなったな」と気付くこともありますし、周りの人から「なんか最近よう笑ってるな」と言われて気付くこともあるでしょう。

もう笑うことなんて無いと思っていたのに、気がつけば笑っているんです。
不思議ですよね。

心ってほんと強いんですね。
どんな状況に陥ったとしても、しっかりそれを受け止め、受け入れる容量を持っているのです。

心が現実を受け入れると、例えば、シャレやユーモアが生まれます。
もう悲しくて思い出したくも無かった出来事も、笑って話せるようになるんです。

「人生最大の悲劇は、人生最大の喜劇に変えられる」という格言もあります。

例えば、皆さんも、学生時代に経験した恥ずかしいことや悲しいことを、大人になって「あの頃はさー、笑っちゃうんだけど」とネタにできたこと、ありませんか?

さすがに人の死に関するものは笑うのは不謹慎に感じられるかもしれませんが、でも、その人が生きていた当時のできごとを、ユーモアを交えて話すことも出来ると思うのです。

心がそのできごとをきちんと受け止められると、重たさはなくなり、そのものが軽くなります。(問題を軽く扱う、という意味ではなく、軽く感じられる、という意味です)

すなわち、余裕を持ってそのできごとを見つめられるわけです。

「震災の後、火事が起きてほんと大変だったよな。あのときお前が来てくれなかったら、俺、まじでやばかったと思うで」
「あの時はさ、もう人なんて信じないって思って落ち込んだけどね。でも、今から思えば私もまだまだ若かったなって思うのよね」
「トラブルが起きた直後はほんと血の気が引いたよね。で、もう、どうしようもないってかなり凹んだ時期もあったけど、今から思えば、いい経験だったよな」

という風に、ふつうのできごととして受け入れることができるのです。

また、ここでは将来の希望も確実に芽生えてきます。

「人の役に立つような仕事に就きたいと思うようになった」
「家族のために、もう一回頑張ろうと思うんだ」
「もう一回、素敵な恋をして、いい結婚をしたいと思えるようになった」

いわば、ハッピーエンドなドラマや舞台のラストシーンのようなイメージですね。

しっかりと未来へのヴィジョンが描かれている状態なのです。

○新しい自分との出会い(再誕生)

また、この段階を経ていくと、辛い経験の中からも何かを学び、確実に成長している自分がいます。

それはまるで生まれ変わったような感覚があり、そして、以前の自分とは別人のような感覚をもたらしてくれるものです。

例えば、失恋したことによって「人の痛みが分かるようになる」「異性の気持ちを考えるようになった」「自分本位では相手を傷つけることを知った」「ちゃんと自分の思いを伝えることが大切だと分かった」等々、様々なことを学びますよね。

そうすると、失恋以前の私と、今の私では、全然ん別の人間のような気がしたりするんです。

そのショックな経験から何を学ぶかはそれぞれに委ねられるものなのですが、それでも、共通項もないわけではありません。

「人の温かみが分かった」
「人のやさしさが有難かった」
「人と人とのつながりに救われた」
「諦めなければ何とかなると思えた」
「夢は持ち続けることに意味があると知った」
「仲間で力を合わせればできることがたくさんあることを学んだ」

等々、いわば、自己啓発本や人生読本に列挙されているような言葉を、実体験として学ぶのです。
でも、本を読んだだけよりもより実感を持ち、また、説得力を感じるものでしょう。

もちろん、すぐにそのことに気付くことばかりではなく、何年も何年もかかることだってあるでしょう。
大きな災害や、人生に大きな影をもたらす事件などに遭遇した際は、学びなんて何もありえないように感じるかもしれません。

しかし、ここまでのプロセスを一つ一つ乗り越えてくると、そんな辛いできごとからも何かを学び、成長していることに気付けたりするのです。

そして、さらに信じられないかもしれませんが、その辛いできごとに「感謝」することすらできるのです。
人の心は不思議なものです。

「あのできごとは人生最悪のもので、ほんと、もう何度も死のうと思ったし、再起なんて無理だと諦めてた。俺、なんでこんななんだろうと情けなくなったし、どうせ誰も俺の気持ちなんて分かってくれないと思ってた。でも、周りの人は俺を見捨てなかったし、また、頑張ろうって言ってくれたし、そのときは、無理無理って言ってたけど、でも、だんだん、こいつらのためにもう一分張りしなきゃって思うようになってたんだ。そしたら、不思議な力が湧いてきてさ。俺、今まで一人で生きられると思ってたし、一人でやってきたし、誰かを頼る奴なんてクソみたいな奴だと思ってたけど、そうじゃなかったって気付いたんだよな。今までだって誰かに支えられてたし、その思いで俺、やってこれたんだよな。だから、今までの俺はほんと孤独だったし、強がりだったって分かったんだ。だから、今は仲間もいてほんと有難いと思えるし、そもそも、あのできごとが無かったら、俺、あのまんまだったわけじゃん?だから、あれはものすごく辛くて、しんどいできごとだったんだけど、むしろ、それが起きたことに感謝してもいいって思えるんだ。変な話だけどさ」

心は決して死なず、あなたが生きている限り、何度でも立ち上がるパワーを持っています。
そこまでのプロセスは本当に長い時間を要するかもしれません。
でも、何年かかっても必ず心は復活していきます。

そして、そのとき、あなたは奇跡(ミラクル)を体感するのです。
「こんな自分に出会えるなんて、まさにミラクルとしか、言いようが無い」と感じるような。

悲しみや辛さ、ショックに打ちひしがれている人たち皆に、このミラクルが舞い降りる日を願ってやみません。

(完)

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