「自立の自立」と「自立の依存」~自立を手放して相互依存の世界へ~

自立のやり方ではやがては行き詰まり、死の誘惑が来たり、破壊的になったりしてしまいます。

そこで、その自立を手放し、次の相互依存のステージに進むことがマネージャー達には求められているのです。でも、そのアプローチというのはある意味楽なものではありません。勇気を持って負けを認めたり、頭を下げたり、素直になることが必要なんですね。そうしたリスクを取った先に相互依存の世界があるのです。

●相互依存について。

さて、ここまで見てきたようにA氏、B氏共々、部下達の士気は下がってしまいます。
プロジェクトとしては、A氏の方が達成率は高いかもしれませんが、その代償にA氏は自らの心身を相当傷つけてしまうかもしれません。

また、どちらも自立の特長である孤立感に悩まされます。
自立の自立、自立の依存、どちらも「自立」に違いないですから。

さて、両氏それぞれの項目でも少し触れましたが、自立心を強く持って行動することは、やがては孤立感、そして、燃え尽き症候群、諦め、デッドゾーンと言った無気力な領域を作り出してしまいます。

プロジェクトマネージャーが“やっつけ仕事”になってしまっては、大問題ですよね?

だから、この問題を解決すべく、自立を手放して相互依存にプロセスを進める必要が出てくるのです。

さて、自立から相互依存へ進むには、例えば、こんな格言が用意されています。

「それは死んでもいやだ、ということをやる」
「天国(相互依存)は1人では入れない」

死んでも嫌だ、というのは大げさなようですが、でも、それまで自分のやり方で頑張ってきて、それで燃え尽きようとしている自立の者にとっては、「今まで自分がやってこなかったやり方を選択する」ことは、死に等しいと感じることもあるでしょう。

でも、それはある人が見れば「え?そんなことで?」と感じることも少なくないのです。

例えば、A氏が部下を集めてこんな訓示を出したらどうでしょう?

「俺は今まで自分の能力を過信してきたのかもしれない。良かれと思ってやってきたことが、君達の士気を奪い、成長の芽を摘むことになるとは想像もしていなかった。だから、君達には息苦しい思いをさせたかもしれない。申し訳なかった。許してくれ。」

あのA氏が、謝罪をしたと言う事実。部下達はどう受け止めるでしょう?

さらに、このような話をしたら?

「ご存知のようにこのプロジェクトは社運を左右する重要なもので、絶対に成功させなければいけないと思っていた。当初はみんなに任せて私は一歩引いて管理者に徹するつもりだったが、進捗の遅れを見るにつけ、どうしてもじっとしていられなかった。そこでリーダー達から仕事を奪い、彼らのプライドを傷つけたばかりか、私1人で何とかしようと背負いすぎて、ご覧の通り、君達の力を十分に結集したプロジェクトにはならず、納期の達成はかなり厳しい状況となっている。このような状況で、このような話をするのも君達にはやりきれないかもしれないが、どうか、私を、この会社を助けて欲しい。君達の協力なくしてはどうしても無理なんだ。どうか、協力して欲しい」

あのA氏が頭を下げた・・・。もし、A氏が怖れられながらもその能力を認められたマネージャーであるのならば、部下達、とりわけ一時は冷や飯を食わされたリーダー達は、一気にモチベーションを取り戻すかもしれません。

もちろん、状況により、かえって人心が離れていくこともあります。
けれど、そのリスクを背負ってA氏が謝罪し、助けを求めたとすれば、必ず部下達の心を動かすと思うのです。

「死んでも嫌なことをする」というのは、こうした“リスクを取る”ということなんですね。
自分のやり方の範疇では冒険をしなくて楽なのですが、時にそれでは解決しない問題がやってきます。
しかし、それは自分のやり方を手放し、すなわち、負けを認め、そして、新たな方法を採用する勇気が必要になります。
これが難しいんですよね。

でも、A氏がこのプロジェクトを本気で達成させたいと思っているのであれば、自分のやり方よりも、プロジェクトの成功を選ぶために、こうしたリスクを取ることができるでしょう。

一方、B氏が部下にこんな話をするとしたらどうでしょう?

「君に押し付けてきたあの仕事。俺が責任を持つから、君が好きなようにやって構わない。君のセンスに実は一目置いているんだ。だから、君に任せるから何とか頑張ってくれないか?」

B氏はこの部下を認め、任せ、そして、責任を取ることを名言したのです。
もちろん、B氏の態度が急に変わったのであれば、多少の疑いは残るかもしれませんが、でも、部下の士気は大いに上がるでしょう。

また、別の部下の元を訪れ、こんな話をしたらどうだろう?

「今まで散々君達にしんどい仕事を押し付けてきた。もし、手に余る作業があるのであれば、私が引き取ろう。何、こう見えてもちょっと前までは現場を這いずり回っていたのだから、少しぐらいは役に立つだろう。」

依存的に押し付けるだけの仕事を、B氏が引き受けようとしたら、部下はB氏の態度に、今までは感じられなかった情熱ややる気を感じるのではないでしょうか?
だとしたら、その部下もまた動き始めます。

リスクを取ることはすごく勇気の要ることです。
しかし、それは自分自身を越えることであり、新たなステージにプロジェクトを進める原動力となるのです。

その結果、マネージャー両氏と、プロジェクトメンバーはそれぞれが相互依存の関係性を築くことができ、納期の達成まで頑張ることができると思うのです。

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さて今回は、ビジネスのあるシーンを切り取る形で「自立の自立」「自立の依存」のお話をさせていただきました。

これは心理学の基礎的なお話でもあるので、男女関係でも人間関係でもあらゆる面で応用が可能な話です。

皆さんなりに活用していただけましたら幸いです。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

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