リーダーの陥る罠 ~温度をそろえる~

今日もご覧いただきまして、ありがとうございます。

皆様の中には、ビジネス書を読んだりセミナーに参加しておられる方も多くいらっしゃると思います。
目からウロコが落ちたり、感動したりして、
「このやり方ならば、うまくいくに違いない」
「よし、ぜひわがチームでもこの方法を採用して、効率アップを図るぞ~」
と思って、意気揚々と会社に行ったのに、
部下は全く乗ってこず、それどころか、やる気になっている自分にちょっと引いている様子だったことはないですか?

あるいは、「この本すばらしいから、読んでみない?」なんていってみても、
「すばらしいですね。でも、私はそこまで必死でやろうとは思わないですから」
「確かに感動しましたけど、ここまでしなくても」
などといわれてしまう・・・。

そう、「温度差」です。

私は思うのですが、こうしてビジネスのHPをご覧になられている方は、おそらく仕事に対する意識が高いと思うんですよね。
ビジネス書などを読まれたり、セミナーに参加したりして、自分を高めるための努力を惜しまない方たちだと思うんですよね。
でも、部下たち(同僚、上司)は違う。
やる気がなかったり、楽してお給料をたくさんもらうことしか考えていなかったりするかもしれません。
だとしたら、結局うまくいかないのでしょうか。
絵空事なのでしょうか。

一方で、うまくいく人もいますし、同じひとでもうまくいくときもあると思うんですよね。
どう違うのでしょうか。

温度差を感じているときというのは、
「自分がこんなにすばらしい本を読んで感動したから、こうやってすばらしい体験をしたい」
「自分がこんなにすばらしいセミナーを受けて、こうすればうまくいくと体験したから、みんなと分かち合いたい」
「自分が・・・」
「自分が・・・」
そうです、実は、自分に意識が向いているのです。

もちろん、自分の理想や自分の意見はとても大切ですし、むしろ持ち続けていただきたいと思うんです。
ところがこちらだけがヒートアップしてしまうと、いわゆる温度差というものができてしまう、ここが問題なんですよね。

私は化学系出身なのですが、化学実験で二つの物質を反応させて、あるひとつの物質にするときというのは、両方の温度をそろえるのがセオリーなんですよね。
両方の温度が違うと、ムラができたり、分離してしまったり、どちらか一方に飲まれてしまったりするのです。
ですから、まずは両方の温度をあわせるところから始めてみると、スムーズに進みやすくなるようです。

そのためのやり方はいろいろとありますが、やはり相手の温度にあわせてあげるのが一番やりやすいといえるでしょう。
コツは、いったん、自分がやりたいことや理想を脇におくことなんです。
セミナーで学んだあのすばらしい体験は「あなたの体験」なんですよね。
ビジネス書のすばらしい内容も、「あなたがすばらしいと感じた」ことなんです。
そのことを、いったん脇において、「相手」の言うことに耳を傾けてあげて欲しいんです。

ところが、ここで陥りがちなのが、相手には意見どころか、そもそも、
「やる気ないも~ん」
「楽しければそれでいいし」
という場合です。
こんなことをいわれてしまうと、ついつい、
「いや、それは違うと思う」
「仕事なんだからさ」
といいたくなってしまいます。
だって、それが正しいと思うから。

ところが、化学反応は起こらず、ムラになったり分離したりしてしまいます。
結果として正しくないものを導き出してしまうんですよね。
そして、私たちは葛藤します。
正しいことしているのに、なぜ正しくないことが起きるんだ~と。

「正しさ」や「答え」というのは、絶対的なものではなくその時々で変化するものです。
例えば、緊張しているときにはリラックスすることが正解かもしれませんし、気が緩みすぎているときにはピリっとした緊張感を持つことが正解かもしれません。
融合するときに必要なもの、つまりここでは何よりも先に「温度をあわせる」ことを優先することが大切になってくるんですね。

具体的には、相手の目線に合わせてみるのです。
相手の目線になるというのは、相手の意見と自分を同じにする必要もなければ、わざわざ違うという必要もないんです。
ただ、「相手は」こういう気持ちなんだ、「相手は」こういう意見なんだということを受け入れてあげることなんです。
「そうか、やる気がないんだね」
といった具合です。

すると相手にとってはウソのない状態ですから、「あら?」「分かってもらってる?」と、ここから変化しだすんですよね。
ハートがあなたや周囲に対してオープンになってくるんです。
ウソのない状態は、ひとを素直にさせます。
私たちは基本的に正直者で素直なんですよね。

やる気がないことを認めたあなたは、今度は、
「何がやる気をなくさせているんだろう」
「何かあってやる気がなくなっているのだろうか」
「やる気がないときの気持ちはどんなだろう」
という発想が出てくるかもしれません。

少しずつ、温度が一緒になってくるのが分かりますでしょうか。
こうなってくると、自然と化学反応は起こり出し、融合しだすんですよね。

ここで相手だけに意識を向けていると、相手に飲まれてしまうことがあります。
化学反応を起こすのは、「相手」と「自分」なので、ここでようやく「自分」に目を向けることも必要になってきます。
「この状況で、自分は何がしてあげられるだろう」
「このチームで私は何をしたいんだろう」
「何があればこの人はやる気になるんだろう」
「どうしたら目の前のこのひとが笑顔になるだろう」
自分の体験や本で読んだ知識をそこにちりばめてあげることもできるかもしれません。

何よりも、私たちの心が化学と違うのは、「意思」「気持ち」「感情」があるということなんですよね。
私たちの「やる気」「融合するチカラ」は、相手のことを好きだと思う気持ちや信頼する気持ちから生まれるんですよね。
「好きな誰かのために」「信頼できるから」私たちはやろうと思えるんです。

「やる気がない」という社会人として適切ではない気持ちすら、理解しようとしてくれる誰かがいたとしたら、
「このひとのためならやってみよう」
「このひとのためにがんばろう」
と思うかもしれないのです。
それくらい、私たちは誰かに分かってもらった、理解してもらった、という経験が少ないようです。
だからこそ、そのことがポテンシャル(ここではやる気)になるのです。

そして、これが温度をそろえるということでもあるのです。
「ともに同じ方向に向かって変化しよう」

どんなにすばらしいビジネス書を読んでも、セミナーを体験しても、そのことによって浮いてしまったり、チームで生かすことができなければ、単なるひとりよがりで終わってしまいますよね。
自分という人間をビジネスのチームに融合させて、初めてビジネス書の内容も、セミナーでの体験も生きてくると、あなたも思っていると私は思うのです。

とかく、自分の気持ちが盛り上がっているとき、そのことで膨らんでしまい、相手との「温度差」というものを忘れてしまいがちです。
せっかくのあなたのやる気や情熱、向上心をカタチあるものにするためにも、ぜひ、自然界のセオリー「温度をそろえる」ということを覚えていてくださいね。

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