権威との葛藤(2)~権威との葛藤が生まれるルーツ~

権威との葛藤は思春期に親から自立していく段階にそのルーツを見ることができます。大人として成長していくために、親に反抗して、反面教師のような生き方をする時期が出てくるのですが、そこで私たちはアイデンティティを確立し、大人として社会に出る準備をしていきます。

ところが、その時期の葛藤が強かったり、逆に権威に押しつぶされる経験をすると、大人としての自分に全然自信が持てなくなり、社会生活に大きな問題を感じるようになってしまいます。

権威との葛藤が生まれるルーツ

権威との葛藤は、あなたの家族の中の権威者とあなたとの関係が生まれます。
権威者とは自立的で、物事を決める権利を持ち、家族をリードする立場の存在です。一番威張ってる人と言ってもいいかもしれませんね。

ちなみにあなたの家族の中で権威を持っていた人というと誰でしたか?
その方との関係はいかがでしたか?
今日はその人との関係に意識を置きながら読み進められるといいかと思います。

権威者というと、多くの場合はお父さんがそれに相当するケースが多いですが、お母さんや祖父母がその位置に付くこともあります。

もし、あなたが男の子で、お父さんが権威者の場合、特にエディプス・コンプレックスという問題で権威との葛藤が語られる場合もあります。
エディプスコンプレックスとは男の子がお母さんを巡ってお父さんと競争する心理のことを例えたものです。
男の子が持つ競争心や戦闘意欲などのルーツで、成功するために、自分の父を超えていくことを目標とする姿勢に現れます。その際、父親を否定し、父親を超えていく際に問題となるのが、今回の「権威との葛藤」の問題なのです。

権威との葛藤はこのお父さんと息子との関係で生まれることが一番多いため、女性よりも男性にその傾向が顕著なのですが、現代は女性も自立していく時代。そのため、あなたが女性であったとしても、自立していくプロセスの中で、その権威者と心理的な衝突を感じたとすると、十分に権威との葛藤の問題を抱えている可能性も否定できません。

すなわち、権威との葛藤は「自立」に関する問題で、男女の性別は必ずしも関係ないのです。
たとえば、あなたが女性で、お父さんやお母さんの「女は○○だ」などの性差別的な発言に怒りを覚えたり、お母さんを否定するお父さんに反発したりしていたとしたら、そこに権威との葛藤が生まれていますし、また、お母さんが権威者の家庭(現代は多いと思います)で、お母さんとの間に心理的葛藤があったとすれば、十分に今回のテーマはあてはまるでしょう。

もう少し具体的に見ていくことにしましょう。

私たちは思春期に親から精神的な自立を試みます。いわゆる反抗期を迎えます。

多くの場合、経済的には依存せざるを得ない状況は続くものの、精神的には自立をし始めます。そのとき感情を「依存」や「甘え」の象徴として嫌い、抑圧していくと同時に、自分のやり方や考え方、価値観を身に着けていきます。
この自分のやり方や考え方というのは「自分が正しいと思うもの」であり、「自分がこうした方がいいと思うもの」です。

こうした考え方は自分の中で生まれるというよりは周りの友達や先輩、テレビ、アニメ、本などの影響を受けることが多いのですが、親から自立しようとしているため、その多くのやり方は「親を反面教師にしたもの」であることも多いようです。
いわば「親が公務員だから、自分は商売人になる」とか「母親が専業主婦だから辛いんだ。私は結婚しても仕事は辞めない」といった、親と反対の考え方、意識を持つわけです。

そうした態度は生まれてからこのかたずっと生活の中心であった“家族”から離れ、社会性(友人や恋人、学校、クラブ活動等)のほうに意識を向けていくことになります。
単純に言えば、家にいるよりも、友達といる方が楽しいと感じる時期なんですね。

そうして私たちは家族から離れ、自立していきます。それが思春期であり、心に強く葛藤を抱きながらも、アイデンティティ(自分自身)を確立していくのです。

その際、権威者とのそうした葛藤が、権威との葛藤のルーツとなります。
そこで「親の考え方は古い」とか「もう子供じゃないんだから認めてくれ」などの思いが出てきますし、親に隠れて行動することも増えていきます。

ただ、親と喧嘩したり、表面的に否定したりできる場合(つまり、反抗期がきちんとあった場合)はいいのですが、権威者に屈してしまってきちんと自立ができない場合、その権威者と従属的な関係を築いてしまうこともあります。
(すなわち、親の言いなり、自分の意志が持てない、等ですね。)

これも潜在的な権威との葛藤と言えるのですが、自立心が抑え込まれているために、仕事が長続きしなかったり、無気力になったり、引きこもりの原因となっていることも少なくありません。

また、同じような意味で反抗期がなかった方もこのところ増えていますが、アイデンティティを確立する時期を逃してしまうため、将来のヴィジョンが描きにくかったり、大人になれなかったり、逆になりたくない気持ちに支配されたり(ピーターパンシンドローム)することもあるようです。
実際カウンセリングでもこうした原因による「アイデンティティの喪失問題」については、よく扱います。

さて、そうした経緯で生まれる権威との葛藤は、大人になり、成熟していくと、親の気持ちが理解できるようになり、「葛藤」が影を沈め、理解・受容・協調・許しなどのプロセスに移行します

いわば、あの時否定した父親と関係性を取り戻し、協力関係を築いていくことができるんですね。

皆さんも社会人になったとき、後輩や部下を持ったとき、子供が生まれたとき、「親の気持ちが分かる」という体験をされたことはありませんか?
「あの時は強く反発してたけど、オヤジ、こんな気持ちだったんだな。悪いことしたな」と感じられたとしたら、権威との葛藤はその分だけ癒されていて、お父さんとの関係も改善しやすくなるでしょう。

しかし、時にその権威との葛藤が大人になっても残ってしまうと、様々な問題が生まれ、社会生活が円滑に進められなくなっていくのです。

それを次回、ご紹介したいと思います。

<自分を振り返る実習>

・思春期の頃、あなたはどんな子供でしたか?反抗期はありましたか?
・大人になり、親との関係はどれくらい距離を縮められましたか?
・親に抵抗なくしてあげられることっていくつくらいありますか?

この記事を書いたカウンセラー

About Author

退会しました。