●今、ここに居る不思議

年末年始はショコラを連れて実家に帰りました。
昼間はけっこう時間を持て余していたので普段なかなかできないお散歩をしながら、懐かしい故郷の町を歩いていました。
僕が田舎を離れて10数年が経つんですけど、当たり前のように近所の景色が変わっていまして、少し離れると僕の頭の中の記憶と現実が一致せずに混乱してきました。
「あれ?こんなところにこんな建物あったっけなあ?」
「昔はここ畑だったんじゃなかったっけ?家が建ってるんやなあ」
「この道を行くと確か郵便局のところに出るんだけど、こんなに家があったかなあ?」
そんな中、変わらぬ光景もやっぱりあったりしてほっとしますね。
それに加えて行き交う車(うちの田舎は車社会なもので人はあんまり歩いてませんでした。
お正月ってこともあるでしょうけど)を見やって、同級生が乗ってるんじゃないか?なんて思ってみたり。
そんな風に大阪ではめったにしない長距離お散歩を楽しんでいると、ふと不思議な感覚に見舞われました。
この町で育った人間が、今は大阪でカウンセリングなんかをやって、本まで出してるんだよなあ・・・。
そんな確率ってどれくらいなんやろう?と。
もともと僕は理系で、大学では統計や確率論なんかもやっていた(けど、もう忘れた^^;)のでそんな発想になるんでしょうけど、天文学的な数字になることは間違いないですよね。
そう考えると、僕が、今、ここに、居ることが奇跡的なことのように思えるんです。
この感覚はカウンセリングでお会いする人に対してもよく感じていたものでした。
東京や名古屋に出張したりすると、その町に住んでいる人、働いている人に出会います。
滞在先のホテルで荷物を運んでくれたり、僕のわがままを聞いてくれるベルキャプテンの方。
フロントでお勧めしてもらったお店を切り盛りしている老夫婦。
たまたま入ったコンビニで、丁寧に応対してくれるアルバイトのお兄さんや留学生っぽいお姉さん。
手を挙げてたら止まってくれたタクシーの運転手さん。
講座の打ち上げで隣に座ってくれたお客さま。
そして、カウンセリングルームまで足を運んでくださるお客さま。
どうしてあなたはこの町に住んでいるの?
どうしてここに勤めてるの?
どうして今日僕と出会ったの?
・・・女の子を口説いてるみたいですけど・・・(苦笑)
とっても不思議な縁と、僕がそこにいる不思議さをまざまざと感じるんです。
これを考え出すともう止まりません。
震えてくるくらい怖くなるんです。
昔々、僕がまだ小学生だった頃、親に連れて行ってもらったフィールドアスレチックで、たまたま同じ学年の男の子と知り合いました。
アスレチックはだいたい40分ほどあれば回れるものなんですけど、彼と一緒にわいわい騒ぎながら楽しく一つ一つクリアしていきました。
でも、その途中から僕の中に「この子とはもしかしたら、もう一生会うことはないかもしれないんだよな・・・。だったら、何で今日ここで一緒になったんだろう?」なんてことを考え始めたらとても怖く、悲しくなったことがありました。
もちろん、連絡先を聞いて手紙をやり取りしたり、友達としてやっていくこともやろうと思えばやれたんだと思うんですけど。
ちょうど“死”って何だろう?って考え始めた思春期の初めの頃だったと思います。
だから、ひとつの出会いと別れに繊細になってたのかもしれません。
でも、それ以来、その経験を思い出すたびに顔も名前も覚えていないその男の子は今頃どうしてるんだろうなあ?なんて考え、そして、今目の前にいる人がどうして目の前にいるのか?なんて考えたりするようになってしまいました。
目の前から犬を連れて歩いてくるおじさん、どうして今日ここで出会ったんだろう?
もちろん、知らない人。
「こんにちわ」と挨拶してすれ違うだけで一生もう会うこともないかもしれない相手。
もしさっき僕が迷った挙句別の道を選んでいたら、きっと出会わなかっただろう相手。
どんな意味があるんだろう?
いや、本当は意味なんてなんも無いのかも知れません。
でも、それを考え始めたら・・・怖いけど、面白くてはまってしまいます。
謎解きしたくなって、そのおじさんに声をかけて、インタビューしたい誘惑に駆られるんです。
あなたはどうして今日ここを歩いているんですか?
この町に住むきっかけは?
何をして生活してるの?
奥さんはどんな人?
どこで知り合って、どんなプロポーズをしたの?
お子さんは何人?
みんな、今はどうしてるの?
ご両親はどんな人?
どこで知り合ったの?
でも、そんなことをしたら怪しい人だと思われるに決まってるので、僕は無表情を装って「こんにちわ」と言ってすれ違うんです。
そう思えば、お付き合いする異性、友人、家族なんてどれくらい深い縁があるものなんでしょう。
カルマがある、とか、前世も縁があった、とか言われても「あやしー」とか言いながら十分納得できてしまいそうです。
ソファで映画を見てる妻とはどんな深い深い縁があったんだろう?
そのお腹の中にいる赤ちゃんとは?
その横で甘えて寝そべってるショコラとは?
考え始めると怖くて笑えて来そうです。
カウンセリングルームにいらっしゃるお客さま。
今、このホームページを見てくださっている方。
この業界では大手ですけど、インターネット全体から見ればまだまだマイナーなうちのホームページを見つけて下さったんですよね。
どんな縁があるんでしょう。
その不思議な縁がたまらなく心に訴えかけてきます。
だから、僕が今ここに居られることを深く感謝せざるを得ません。
何に、かは分からないけれど。
一期一会。
僕がカウンセリングで出会うお客さまにいつも思う言葉です。
出会えるだけでものすごいこと、ですから。
根本裕幸

この記事を書いたカウンセラー

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