夢が叶わなかったとき、人は何を失ったと感じるのか

「夢が叶わなかった」とき、人は、ただ「結果」だけを失うのではありません。
「期待していた未来」とともに、自分自身への“信頼”や“誇り”まで失ってしまったような気持ちになることもあるのです。

あなたは諦めた夢がありますか?

「叶えたかった夢を、諦めざるを得なかった」

そんな経験を、どこかのタイミングでされたことがある方も、少なくないのではないでしょうか。

やむを得ない事情があったり、現実との折り合いをつけたり。
あるいは、心が折れてしまって、「もうこれ以上は無理だ」と感じてしまったり。

実は、私たちが夢を手放すとき、失うのは“目標”や“結果”だけではありません。

ときに、「夢の先にあるはずだった人生」とともに、自分自身への“信頼”や“誇り”まで失ってしまったような気持ちになることもあるのです。

絵が好きだったAさんのエピソードより

30代のAさん(仮名)は、昔から「絵を描くこと」が好きな方でした。

小さい頃から、ノートの隅にイラストを描いたり、誰かにカードを手作りしてプレゼントしたり──
絵は、Aさんにとって“自分らしさ”を表現できる、かけがえのない時間だったそうです。

将来は、絵に携わるお仕事がしたい。
そんな夢を持ち、本格的に絵を学んでいた頃もありました。

でも、同じ道を目指すライバルの絵を見ては凹む日々が続き

「こんな中途半端な気持ちで描くくらいなら、いっそ筆を置いたほうがいいのかもしれない」
「本気で絵を続けている人たちの中に、自分の居場所はもうない気がする」

Aさんは、あるときを境に、絵から離れる決意をされました。

夢から離れたあとの日々は、静かで平穏だけれど、どこか味気ないものでした。

「何のために働いているんだろう」
「誰にも必要とされていないような気がする」
「夢を手放した私は、もう価値がないのかもしれない」

Aさんが失ったのは、「絵を仕事にする」という目標だけではなかったのです。

絵を通して感じられていた「自分らしさ」や「未来への希望」だけでなく
「自分の価値」までも、失ってしまったように感じていたのです。

「本気じゃなかったから」と、自分を小さく扱ってしまうとき

そのとき、Aさんが夢に対して感じていたのは、“諦め”というよりも、“なかったこと”にするような感覚でした。

「絵のことなんて、たいした夢じゃなかった」

「食べていけないのだから、仕方ない」
「どうせ私なんて、最初から本気じゃなかったんだから」

そうやって自分に言い聞かせる日々を送っていたのです。

でも、本当に「たいした夢でなかった」のであれば、もっとサクッとスッキリと忘れられて、前に進んでいると思うのですよね。

つまり、それだけ自分に言い聞かせないとやっていけないぐらい
「描くことで自分とつながっていた時間」や、「夢に託した希望や願い」を失ってしまった喪失感が大きかったということだと思うのです。

カウンセリングで少しずつ見えてきたこと

Aさんにそのことをお話しすると、
Aさんは「そうかもしれない」と涙を流しながら、こんなふうにお話してくださいました。

「たしかに、絵を描くことからは離れてしまったけれど、私は本当に好きだったのかもしれない。」
「あの頃の私は、絵を描くことでしか、自分らしさを表現できなかったのかもしれない。」

私は、夢を諦める時に、夢に託した“たくさんの大切なもの”までも「なかったことにしよう」としてしまったのかもしれません、と。

そこからAさんは、自分が夢に託したものを見つめ直し、ひとつづつ、叶えていくことにしました。

描きたいものを、思う存分、描いてみる。
もっと自分に自由に生きることを許してあげる。
やってみたいことにチャレンジしてみる。

その結果、あのとき思い描いた夢を叶えたわけじゃないけれど・・
心から楽しさを感じられる日々を送れるようになったそうです。

「夢に託していたもの」は、今からでも大切にできる

夢が叶わなかったことが、こんなにも苦しいのは、
その夢の中に「理想の未来」や「自分への信頼」、そして
「こうなれたら救われる気がする」という思いが込められていたからかもしれません。

もしもいま、苦しさが残っているなら、問いかけてみてくださいね。

「その夢に、私は何を託していた?」
「夢が叶ったとき、どんな私になれると思っていた?」

その答えにある“願い”は、夢そのものが叶わなくても
形を変えて、今からでも育てていけるものかもしれませんよ。

夢が叶わなかったことは、「失敗」ではありません

最後に・・
「夢」って、必ずしも大きな目標や、誰かに誇れるようなものばかりじゃないと思うのです。

たとえ、周りから見たら取るに足りないものでも。誰にも言ったことがなくても。
そこに“自分なりの大切な想い”が込められていたのなら、それはきっとあなたの「大切な一部」。

夢が叶わなかったからといって、あなたの人生が「間違っていた」わけではありません。

あなたが夢に向かって過ごした日々、
悩みながらも想いを込めた時間、好きだったあなたの気持ちは、
すべてが「あなたらしさ」であり、これまで生きてきた証です。

どうか、過去の自分を否定するのではなく、そっと認めてあげてくださいね。

過去の思いや自分を丸ごと「そうだったんだね」と受け入れられたとき、
あなたが叶えられなかった夢を、本当の意味で叶えてあげられる日が必ずやってきますよ。

心から、応援しています。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係の改善、自分が本当に望んでいる人生へのシフトチェンジへのサポートを得意とする。 特に「さびしさを笑顔に変えるカウンセリング」をテーマに掲げ、30代女性の生き方、恋愛・婚活サポートを精力的に行っている。 高い共感力を活かした「共に考え、併走する」カウンセリングスタイルが好評。