後悔する気持ちは人生の道標へともなる

「後悔」それは人間であれば誰しもが経験する感情ではないでしょうか。

特に、大切な人との関係で感じる後悔は、心に深くいつまでも残り、自分を責め続けてしまうこともあります。

思い返すたび、過去の自分の未熟さを責めてしまう、そんな経験、貴方にもありませんか?

あの時あの言葉を言わなければ。。。
あの時あんな態度をとらなければ。。。
もし違う言い方や素直な態度をしていたら今頃は。。。
と浅はかな自分を責めて責めて責めまくってしまう。

後悔する気持ちから学びを得る事が出来たなら、その学びが人との関わり合いを円滑にしていくエッセンスとなり人生の道標となっていきます。

もちろん、それを「学び」に変えるのは簡単なことではありません。
だからこそ、人は苦しみ、葛藤しながらも成長していくのかもしれません。

*母への後悔

母が他界したのは今から8年前の事です。
母が亡くなってから沢山の後悔が私の心に、波のように押し寄せては引いていきました。

もっと一緒に過ごせばよかった。
もっと話を聞いてあげたら良かった。
もっと優しくしてあげたら良かった。
もっともっとと考えだしたらきりがありません。

私の子供が「ばあちゃんの好きなタレントさんだ!」とTVを見て言っていた時、私はそのタレントさんを母が好きだった事を初めて知ったのです。

心がハンマーで殴られたかのような衝撃がありました。
知らなかった、私は母の事を良く見ていなかった。。。
母の嫌なところばかりをクローズアップしていて、母の事知ろうとしていなかった罪悪感が疼きました。

*母の死後の父、そして気づき

母が亡くなった後、父は周囲が思っていたほどは落ち込まず、淡々と日々を過ごしているように見えました。

週3回の人工透析に自分で車を運転して通い、自分の事は何とかこなしていましたが、地域の公民館の札を自宅の鍵に付けるなど、どこか“ちぐはぐ”な言動が目立ちはじめました。

「父は大雑把な性格だから、また適当なことをしているんだろう」と思いつつも、私は母への後悔が強く心に残っていたので、「父の事をよく見よう」と自分に言い聞かせて過ごしていました。

その後父は、交通事故を起こしたり、鍋を焦がしたり、日付や通院予定を間違えたりと、明らかに認知機能が低下していく様子が見られるようになりました。

認知機能が低下していく父を認めていく事は私にとっては辛い時間でした。

*認知が進んだ父とのやり取り

やがて父はコロナに感染し、体力は一気に低下しました。
動脈硬化が進み、カテーテル手術や冠動脈の手術で入退院を繰り返すようになっていきました。

入院中のある晩、父から「迎えに来てくれ」と何度も電話がかかってきました。
「今は夜だよ。病院にいるんだから、朝になったら会いに行くからね」
そう何度も説明しながら、私は胸の奥で自問していました。

父が、もう以前の父ではないと。

その現実を受け止めるのは、とても辛い事でした。
けれども、母のときのような後悔だけは、絶対に繰り返したくないと、その一心で私は父と向き合い続けました。

*感謝を耳元で伝えた瞬間

母に対する最も大きな後悔は、「ありがとう」を言えなかった事です。
もし母が生きていれば、今も喧嘩ばかりしていたかもしれません。
母に「ありがとう」のひと言を伝えられなかった事は、今も私の胸に残り大きな後悔としてありました。

だからこそ、父には言葉で感謝を伝えたい。
でも、いざとなると恥ずかしさが募り、なかなか言えないまま、月日は流れていきました。

そんなある日、病院から連絡が入りました。
「血圧が下がり、脈も弱まっています。すぐに来られますか?」

私は妹家族とともに急いで病院へ駆けつけ、父の最期を看取る準備をしました。
家族が見守るなか、父に感謝の言葉をなかなか言い出せないまま、刻一刻と最期のその時は近づいていきました。

ですが、ほんの一瞬だけ私ひとりだけが、父の傍にいられる時間が出来たのです。
「今しかない。もう後悔したくない。」

私は勇気を振り絞り、昏睡状態の父の耳元でそっと伝えました。
「お父ちゃん、ありがとう。お父ちゃんの娘で幸せだったよ。愛しています。」

人は最期まで耳が聞こえているといいます。
返事はなくても、私の言葉は父の心に届いたと信じています。

*後悔を学びに変えて生きる

後悔してしまう事は、誰でも経験する感情だと思います。
その後悔を“学び”へと変えることが出来れば、これから過ごす人生の確かな「道標」になってくれます。

「もうどうしようもない……」と絶望を感じる出来事でも、それはあなたを不幸にする為に起きたのではなく、人生をより良く生きる為に起きた事かもしれません。
出来事をどう受け止めるかは、あなた次第です。
あなたは、後悔する気持ちをどんな学びに変えて、どんな人生の道標にしていきたいですか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、人間関係全般のカウンセリングを得意とし、安心感と受容をクライアントに常に提供し、何でも話せると好評。より楽に心が軽くなるカウンセリング。感受性が高くクライアント本来の輝きを導き出すことも得意。カウンセリング信条は「諦めなければ願いは必ず叶う」である。