愛や祈りがめぐる心理効果と、幸せを感じやすくなる心のしくみを解説します。
■「この人がよくなりますように」と誰かを思う姿勢
あなたは、誰かの幸せを心から願ったことはありますか?
パートナーだったり、親だったり、子どもだったり、友人だったり──。
誰かの幸せを願うその心の持ちようは、実はその人のためだけでなく、あなた自身の幸せ度の向上に役立つかもしれません。
「この人がよくなりますように」と、誰かを思いやる姿勢で日々を過ごすことは、結果的にあなた自身の心をも満たし、喜びや温かな幸せ感をもたらしてくれるのです。
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■誰かの幸せを願うことは、自分の心にも喜びを運んでくる
ここで、そんな気持ちがどう巡っていくのか、ひとつ身近な例をお話ししてみますね。
年老いたおじいちゃんやおばあちゃんが、仏壇の前に静かに座って、子どものために、孫のために祈っている姿──見たことはありませんか?
あれは、体が思うように動かなくなってきた中でも、誰かの力になりたいと願う姿です。
足腰が弱くなり、できることが限られてきたからこそ、心を込めて祈るという形で愛を届けようとしているのです。
たとえば、孫が高校受験を控えているとします。
年老いたおじいちゃんおばあちゃんは、もう車の運転もできません。免許も返納してしまった。
深夜2時、3時まで勉強してる孫に合わせて、自分も夜遅く起きて、夜食を作ってあげるなんて体力的にできない。
だからこそ、自分ができることとして「孫が受験に受かりますように」と、毎日仏壇の前に座り、ご先祖様に静かに祈りを捧げるのです。
その祈りが通じたのか、孫の努力が実ったのか──理由はさておき、孫が念願の学校に合格したとします。
もちろん、いちばん嬉しいのは努力して合格した孫本人でしょう。
けれどそれと同じくらい、もしかするとそれ以上に、「毎日、毎日、祈っていた」おじいちゃんやおばあちゃんも、心の底から喜びを感じているのではないでしょうか。
きっと、とても、とても嬉しいに違いありません。
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■祈りが届いたとき、いちばん嬉しいのはあなたかもしれない
カウンセリングの現場でも、「誰かの幸せを心から祈っている」というお話を、私は何度も伺ってきました。
そのやさしさやあたたかさにふれるたびに、胸がじんと熱くなるのを感じます。
たとえば──
•「自分は誰からも愛されていない」と言っていた彼。そんな彼が、いつかこれまで出会ってきた人たちに愛されていたことに気づけますように。
•傷ついて、人が怖くなってしまった子ども。その傷が少しずつ癒えて、また誰かとつながる喜びを感じられるようになりますように。
•一生懸命がんばっている友人。その努力が、いつか報われますように。
そんなふうに、誰かの幸せを静かに祈ってきた人たちが、その願いが叶ったときに流す涙──
私はその涙に、何度も立ち会ってきました。
•「『俺、家族から愛されてたんやなぁ…』って彼が言ったんです」と、喜びの涙を流しながら、声を震わせて話してくださった方。
•人間関係に傷ついて引きこもっていた子どもが、ネットで知り合った友だちに会いに出かけるようになったと報告してくれたお母さん。
•離婚を回避したいと相談していた友人が、「やり直すことになったんだ」と連絡をくれたことを「よかったー」と泣きながら喜んでいたクライアントさん。
そのようなお話をたくさんお聞きし、号泣するシーンもいっぱい見てきました。
その人のことを思う気持ちを持って関わったとき、その人が良くなったとき、いちばん嬉しいのは──思いを込めて願い続けてきた、あなた自身なのかもしれません。
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■自分のためにこそ、意識的に人の幸せを願ってみませんか?
人の幸せを願うという発想は、時に「自分には関係ないこと」のように感じられるかもしれません。
特に、利己的な観点が強くなっていたり、自分自身がつらい状態にあるときには、
「人の幸せなんて祈っていられない」
そんな気持ちになることも、決して不思議なことではありません。
けれど実は、人の幸せを願うという視点を持つことが、自分自身の喜びを増やすこともあるのです。
だからこそ──
「自分のために、人の幸せを願ってみる」
そんな視点を、ほんの少しだけでも日々に取り入れてみませんか?
あなたの人生に、喜びや、あたたかな気持ちがより多く訪れますように。
(続)