深刻さの罠 ~問題ではないと思うと問題がなくなる!?~

先日、徳島県の祖谷渓(いやだに)に行きました。
切り立つ緑の山に挟まれたその谷底には、川底が透けて見えるほど綺麗な水
の祖谷川が流れ、まさに深山幽谷と呼ぶにふさわしい自然溢れる場所です。
そこに、入った瞬間に体がとろけてしまうような素晴らしい秘湯があり、そ
の温泉に心ゆくまでゆったりと浸り、そしてこの地方独特のかなり太めで短
い祖谷そばを美味しくいただきました。
「あ~、癒された」と感じながら、せっかくここまで来たのだからと、そこ
からほどなく行ったところにある有名な祖谷のかずら橋を訪れ、渡ってみる
事にしました。


かずら橋は「かずら」と呼ばれるつるを使って架けられた昔ながらの吊り橋
です。
祖谷川の両岸を結ぶ形で川面から14mほどの高さに架けられており、幅2
mほど、長さは45mぐらいあります。
この橋の床の部分はかずらで板が止めてあるだけで、板の間隔も結構広く、
大人の足首ぐらいなら簡単に入りそうな広さがあります。
さて、順番を待って橋を渡り始めると、橋を渡っている人の動きで結構大き
く橋が揺れます。「これ、怖いな~」と思わず足裏とかずらで作られた欄干
を握る手に力を込めながら1歩、また1歩。
丁度私の後ろには小学4~5年生ぐらいの女の子とお母さんの親子連れが橋
を渡っていました。
女の子は、最初「怖い、怖い」とか細い声で言いながら、しかしお母さんに
励まされて少しずつ前に進んでいます。しかし、よっぽど怖かったのでしょ
う、そのか細い声がやがて泣き声に変わり、やがて「帰る!」「帰る!」と
泣き出してしまいました。
お母さんは「もう少しだから」と欄干に必死にしがみついている女の子をな
だめて何とか前に進ませようとしていますが、女の子はなかなか動こうとし
ません。そう、その場所は丁度橋の真ん中ぐらいで一番揺れる場所なんです。
女の子は一番怖いその場所に居続けているのです。しかも先に行くのも戻る
のも同じ距離なのに「帰る!」と泣き叫んでいるのです。
客観的に見ると「前に進んだらいいのに」と思いますね。
そうすれば橋の揺れは少なくなって怖くなくなってくるし、橋を渡りきった
満足感が味わえますね。
でも、怖れのさなかにいるときには、冷静にそんな事は考えられなくて、た
だ怖いばかりなのですね。
そして、今通って来て知っている方より、これから通る未だ知らない方がよ
り怖い事が起こるのではないかと思ってしまうようです。
さて、その女の子はおかあさんになだめすかされて、泣きじゃくりながらで
すが前に進み始めました。そしてやがて渡りきると、恥ずかしそうに、しか
しとても嬉しそうに「やったぁ~」とガッツポーズを決めていました。
私は、その女の子は明日お友達に「真ん中ぐらいの時がすごく揺れて一番怖
かったけど、吊り橋渡ってきた」とチョット自慢げに、でも笑顔で話をする
のかなぁなどと勝手に想像して思わず嬉しくなってしまいました。
私達は何らかの問題を抱えると、ついつい深刻になってしまいます。
確かにその渦中にいるときには、辛いかもしれません。
でも気がついてください。深刻になればなるほど、その辛さを何倍にも増幅
しているのです。
思い出してみてください。
夏休みの最終日。宿題がまだ山のように残っていて全部を今日中に片付ける
のに絶望した時の事を。学校なんて火事になってしまえと思いませんでした
か?台風が来て学校が休みにならないかと神様に祈りませんでしたか?
でも翌日学校に行ってみるとそんな仲間が沢山いて、先生には怒られたけど
意外にあっさりと済んでしまった時の事を。
最近僕は思うのです。
確かに僕の周りには問題と思えば問題になる事が一杯あるなぁと。
でも、問題では無いと。
問題って、深刻さを手放せた時に問題では無くなってしまうのですね。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。

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