日々重ねていくもの 〜たった一言の質問から〜

「仕事って楽しい?」
20代のおともだちからぽんっと投げかけられた質問。
彼女の求める答えはyesかnoであったと思うのですけれど、急に聞かれる
と案外と躊躇するものですね。
仕事というものは、経験(キャリア)も含めて自分の持っているものの一つで
すが、関わり方によっても扱い方によっても得られるものや、感想は随分と違
ってくるものですものね。


そういえば、以前勤務していた企業で教育研修の職に携わっていたことがあり
ましたが、究極的な悩みというのはいつも個人の持っている価値観や、取り組
み方の違いによる齟齬を浮き立たせ、浮き立たせることで解決していくのか、
という事でした。
私以外のスタッフたちは、どちらかというと各人の技量の標準化に力を注いで
いたこととは相反していたように思います。
知らず知らずに持っている価値観、基準やものさしが案外と人の行動に影響を
与えるということを痛感したのは、どちらかというと企業の中で少数派であっ
た女性だったからかもしれません。他にも価値基準をみるものはたくさんある
かと思いますが、性別というのは人の価値基準を量るという観点から見るとデ
フォルメして見る事が出来る要素ではないかと感じています。
一人ひとり「女性とはこうあるべき」「男性とはこうあるべき」と感じている
前提条件についても違い、それによって異性に対して求めるものの、同性に対
して感じる好き嫌い、評価するポイントも違いますものね。
本来であれば、特に仕事の場面においては性別も特性の一部として良い側面を
生かそうという発想があればいいなと単純に考えたくなるのですが、実際に生
きていく社会においては通用させるのはなかなか難しい状況もありますね。
仕事を通じて「逞しさ」を貰ったな、と感じることの一つは私の考え方の中に
「常識は存在しない」という考え方が加わったことでしょうか。
文化とも呼ぶかもしれないですが、集団に属する上で知らず知らずに刷り込ま
れる考え方ってたくさんあると思います。私の勤めていた企業は歴史が浅く、
急速に発展した経緯がありました。
そのため、1−2年のうちに上司が交替するのが当たり前の状況の中で、ほぼ
100%転職経験を持っていらっしゃったんですね。それぞれに仕事の質も、
取り組み方も、また職場で「女性」をどう扱うかも、言葉を通じて、また言外
に求められるものも極端に違っていました。
このことが私にいちいち「考える」という機会を与えてくれたのかも知れませ
ん。
こういうものだから、、、
今までこうだったから、、、
ということが、ことごとく通用しない、そういう環境にある種‘慣れ’る必要
があったので、どうやら「常識は存在しない」と考える必要があったようです。
上司と意見が食い違ったり、方針に従ううえで納得がいかない・・・と感じた
ときの私の決まり文句は「誰が決めたんですか?」でした。
多少は年月を重ね自分よりも若い子を扱ったり、教育という名のもとに仕事を
するようになってからは「反抗的、扱いにくい、怖い」と言われても仕方がな
かったなぁと少しは反省しています。
こういった経験の賜物なんでしょうね、大切なことなんだけれどもあまり個人
に対して「標準化」するということに興味が持てなかったのは。
私にとって楽しいと感じられることは、個人個人の違いも含めて分からないか
ら人を理解していくことにあり、だからこそ、今のカウンセラーという仕事を
選択しているのかもしれません。
20代の頃、
「仕事、楽しい?」と聞かれたらやっぱり躊躇なく
「楽しいよ!」とはさすがに答えられなかったと思うんです。
ただただ、必死でしたから。
その頃の目線で言えば、今の私は全く想像できなかったですし。
今の私の年齢前後の人ですら「大人」で「評価される」対象であって、こわい
以外のなにものでもなかったですし。
小さい頃、引っ込み思案で始めての人に会う時はいつも母の後ろに隠れ、半分
だけ顔を出し様子を伺っていた頃、今の身長の半分くらいの目線で眺めていた
「大人」たちは何でも出来て、魔法を使ってもあんな風にはなれないっていつ
も感じていました。
30代半ばを過ぎた、今でもこのこどもの目線のままの私って実はずっといる
んだなって思います。
だってやっぱり、人生を私よりも長く生きておられる方、すごいって思うこと
たくさんありますし、こうあって欲しいっていうニーズもたっぷりありますも
の。
以前、ふと乗ったタクシーの運転手さん。
珍しく、50代と思われる品のよい女性の方でした。
「わたくしね、子供が成人しましてから運転免許を取ったんですよ。近所のお
友達からはなんでわざわざって言われるんですけど、だって一度やってみたか
ったんですもの、おかしいかしらね・・・?」ってくすくす楽しそうに笑いな
がらお話ししてくださるんです。
目的地に着くまでの間、とても丁寧に運転してくださいました。
10年後の私、
20年後の私に、
「仕事楽しい?」
「生きていくのって楽しい?」
今の私が問いかけたなら、一体どう答えるのでしょう?
いつもいつもそうはいれないけれど、なにか言い訳をつけて「やらない事」よ
りも「やる事」を選択することが「楽しいわよ!」と躊躇なく答えることが出
来る一つの要素なのかしら、とタクシー運転手の奥様のことを思い出しつつ思
います。
少しばかり、いえいえ多分に臆病で、ほったらかしにしておくとすぐにひきこ
もってしまいたくなる私ですが、一日一日が新鮮であるといいな、と思い出さ
せてくれたこの問いかけに感謝しつつ、丁寧な織物のように日々をすごしてい
けたらいいなと思います。
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