ありのままの自分を受け入れたら、世界は色づきはじめる

「私はなんのために生きているんだろう…」
そんな思いが、心の片隅にチクンと引っかかっていたころがありました。

少しずつ風が冷たくなって木の葉が色づいてきても、私の心は季節を感じることもなく、まるで霧のかかったぼやけた世界にいるようでした。見える景色のすべてが、色をなくしていたときがあったんです。

あなたもそんなふうに「感情の色」をなくしてしまっていませんか?

喜びも悲しみも、感情が自分から切り離されてしまったかのようで。ただ流されて漂って生きていると感じる虚しさ。
私はずっとそんな世界にいたんです。

◆心のスイッチがオフになったとき

朝目が覚めても、そこにはなんの色もないぼんやりとした部屋があるだけ。
出勤途中に漂ってくるキンモクセイの甘い香りも、私にはただの空気。
友人との会話に、私は心から笑っていた?

その場をやり過ごすために人の顔色を伺い、自分の思いよりも、相手が望んでいるであろう言葉を口にして、いい人を演じる。
それが当たり前だったんです。
そうすることが一番いいんだと信じていました。

でもそれは、自分の心をすり減らしていく行為でした。
本当は傷ついているのに「大丈夫」と答え、本当は嫌なのに「いいよ」とほほ笑んでみせる。

そうやって、辛さや悲しさ、寂しさを感じないようにしているうちに、いつしか感情そのもののスイッチがオフになってしまったんです。

テレビを見ても本を読んでも心は動かず、「おいしい!」という感動もない。
喜びも楽しさも、心から「好きだ」と感じることもできなくなって、私の心は麻痺していました。

「なにが好き?」
「どうしたい?」
「どうなりたい?」
そう自分に聞いてもよくわからない。
自分という存在がぼやけていくような感覚。
自分の行動を外から見ているような、自分が自分でないような感覚。
それが、私のいたモノクロの世界でした。

◆小さな自己開示から始まった変化

そんな自分を変えたくて、どうにかしたくて、私は心のことを学ぶことを決めました。

初めは、知識を学ぶことで変われると思っていたんです。
でも私の世界を変えてくれたのは、知識ではありませんでした。

学んでいく中で、私が少しずつですがチャレンジしてきたのは「自己開示」することでした。

本当に怖かったんです。
こんな私を知られたら、みんな離れていってしまうかも、と。
でも勇気を出して、泣きそうになりながらも自分の思いを話してみると…。
意外な反応が返ってきたのです。

「わかるよ、その気持ち」
「私もそういうことある」

その言葉に私は救われたのです。
今まで一人で抱え込んできたものが、ふっと軽くなった気がしたんです。

私は少しずつ、自分のダメなところや、誰にも見せたくなかった心の奥の本当の思いを話せるようになっていきました。

そして、ありのままの私を受け入れようとしてくれる仲間との「つながり」を感じられるようになっていくと、止まっていた心の歯車がゆっくりと動き出したんです。

それはまるで色のない世界に、やわらかい光が差し込んできたような感覚でした。
心の奥に閉じ込めていた感情のスイッチが、カチッと音を立てて再び動き出したのです。

◆心に色を取り戻すプロセス

心の奥で眠っていた「好き」や「楽しい」という感情が、少しずつ芽を出し始めると…。

道端に咲く小さな花の可憐なピンクの色に気づいたり。
夕暮れの空の美しいグラデーションや、秋の風の心地よさ。鳥の声、雨の音、入れたてのコーヒーの香り。

今まで見えなかった、感じられなかった世界の美しさが、私の心に次々に流れ込んできたんです。

それは、漂っているだけだった私が、自分の意思で一歩踏み出した瞬間でした。

自分の感情と向き合うようになり、ありのままの自分を受け入れ表現し始めたことで、私の心は回復していったのです。

そして、このかけがえのない「つながる」経験が、私を心理カウンセラーの道へと導いてくれました。

かつて嫌で嫌で仕方がなかった顔色を伺うクセも、今では悩んでいる人の心の繊細な変化や、言葉にならない思いに気づくことができる私の才能だと受け取っています。

誰にどう思われるかではなく、自分がどう生きたいか。
「こうあるべき」という観念を手放して、「私はどう感じる?」と自分の心に聞いてみる。

そうやって、自分の本当の思いを大切にするようになったとき、私の世界は鮮やかな色を取り戻したのです。

◆あなたの世界にも色は戻る

あのころモノクロだった私の世界、今はこんなにも色づいています。
空の色、葉っぱの色、風の音、すべてが私に話しかけてくれるようです。

もしあなたが今、私と同じようにモノクロの世界にいると感じているなら。
自分のことを受け入れたいと思っているのなら。

まずは小さな一歩からでいいんです。
あなたの心の中にある「好き」や「楽しい」に、そっと耳を澄ませてみませんか?
そしてほんの少しでいい、その心の声を聞いて行動してみませんか?

私は心から願っています。
あなたの世界が、鮮やかな色であふれますようにと。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

「私にはなんの魅力も価値もない」と自己嫌悪し、自分を隠してきた生きづらさを乗り越えたことから、お客さまの中に隠れている魅力や才能を引き出し、本来の自分らしさを取り戻すことを大切にしている。 やわらかな雰囲気を持ち、どんなことでもやさしく受けとめてもらえた、前向きになれる、と好評である。