母の入院と息子との時間

ここ2,3年、母の介護がゆっくりと始まりました。
息子をとても可愛がってくれた母です。
その母が数日前に入院しました。その時に私と妹で何度も話す機会があったのですが、その時に、私は1人の母親としていろんなことを考えてしまったんですね。
今日は、そんな私個人のことからお伝えしたいお話です。

 

母と妹

母の入院

今、実家では、母と妹と二人で暮らしています。
私と姉は結婚し、姉は実家の近くに住んでいて、私は少し遠くにいるのですが、普段母のことは、妹が全てしてくれています。
姉も私も、妹がどれだけ大変な思いをしているのかは、よく分かっているつもりですが、やはり毎日そばにいて、仕事をしながらの介護は私たちの想像をはるか超えるくらいのしんどさだということは、私なりに想像はつきます。
そんな母が熱を出し、でもその熱がずっと下がらない状況が続き、救急で入院することになりました。
妹はパニックになり、近くにいた姉がすぐに駆け付けて、私は後から合流しました。
検査の結果、白血球の以上数値。病名は肝膿瘍と聞きました。肝臓に膿が溜まる症状のようです。1か月か2か月か。いつまでの入院か分からない。しかも高齢なので、入院中も何が起こるかは分からない。そうお医者様に聞きました。
妹の落ち込み度合いが尋常じゃなかったので、その日私は実家に泊まりました。
でもそれは当然なんですよね。
外からたまにしか親の様子が分からない私とは違って、妹はずっと母の良し悪しを見てきているのだから。
その妹は家に帰ってずっと泣いていて、私にいろんな話をしてくれました。

 

妹のこころ

妹は誰よりも母が大好きで、ずっとそばに居た分もう心配で心配で仕方ないんですよね。家に帰ってもとにかく落ち込んで、「このままお母さんが帰って来なくなったら…。」そんなことしか考えられない状態でした。
その時に妹が何度も言ったこと。
それは、
・もっともっと話を聞いてあげたらよかった。
・テレビ見てて、知らん顔することも多かった。あんなのいつでもやってんのに、私はなんてひどい娘だったんだろう。
・イライラして強く当たることもあった。こんな娘なんてお母さんもしんどかったに違いない。
・私だって一緒に住んで随分甘えてる。なのに文句ばっかり言うことあった。
と。

母は入院する前日に、高熱でうなされながらふらふらと台所に出てきたことがありました。冷蔵庫をあさっている母に気づいて、妹がびっくり起きて来たんです。「お母さん何してんの!?」と聞くと、「今日の夜あんたのご飯作ってあげてないから、お腹空いてるやろ?」と言ったそうです。
妹は、それを何度も思い出すようです。

いつも、どんな時も、40度近い熱が出てても、私のことばっかり心配して…。いつもいつも昔からどんな時も私らのことばっかりで…なにやってんのよって。

そんな優しい母なのに、自分も仕事などで余裕がなくて、ついつい冷たく当たっていたこと。その後悔が妹の中から消えません。でもそれは私も同じです。母はいつもそう。どんな時も自分じゃなくて人のことばかりの人生でした。
幼い頃からアルコール中毒の父の心配、私たち子どもの心配。私たちが大きくなると父の実家で祖父母の介護。祖父の心配、祖母の心配。人の世話や心配ばかりで、友達と遊びに行く…ということを一度でもしたことがあるのかと思うほど、自由に生きれなかった人でした。
そしてこんな高齢になっても私たちをいつも気にかけてくれました。

それでも母は86歳。少しずついろんなことを忘れて来て、いろんなことが分からなくなっている。そんな母をずっと見て来た妹にとっては、ここまま帰って来なかったら…。もう二度と家で一緒にご飯を食べられないことになったら…。など、どうしても最悪なことばかり考えてしまうようです。

私たちがいくら実家に電話や連絡はマメにしても、実態を知らない私とは温度差があって当然です。
妹の話を黙って聴いて、そんな今の彼女と繋がるだけが私の出来ることでした。

 

息子と私

私のように…妹のように…

旦那様と息子には、ことが起こった時にすぐに状況を伝え、少し実家に行っていた私も、妹が少し落ち着いて、ようやく自分の家に帰って来ました。
帰ってすぐに夜の食事の支度をし始めて、出来上がった頃いつものように息子に声をかけました。すると、
「俺さっき我慢出来ずにクッキー食べてもたから、もう少し後でいいわ。」
と彼は言いました。
その時にね。私はつい怒ってしまったんです。
「夕食くらい、三人で食べれる時は来なさい。とーちゃんも帰ってて三人そろうことなんか日頃からあまりないんだから!」
と。
急に私が声を荒げたので、息子はびっくりして振り向きました。
「なんでいきなりキレとん?」と。
「せっかく三人揃ってるのに、あなただけが来ないからでしょう!」
と私が言った時、息子は言ったんですね。
「急になんなん?? かーちゃんがナイーブになりすぎてるだけなんちゃうん!?」

私はその言葉ですごく涙が出てしまったんですよ。
それにまた息子がすごくびっくりして、慌てさせてしまい、夫も来て二人に慰められました。
さっきまで母のことで妹と一緒に泣いていて、つらくてさびしくて、母の元気をただただ願うことばかり考えていました。
なのにその瞬間に思ったんですよね。
私が母親の立場として、急にたくさん考えてしまったんです。
私もいずれ息子の前からいなくなる時が来る。遅くに産んだ子だから、この子のそばにどれだけ居られるか分からない。
でもそんな時、妹が泣きじゃくったように、あの時こうしていれば…っていう気持ちを、息子には味合わせたくないって。
私と夫に何かがあった時、この子だけの肩にのしかかってしまうかもしれない。私たちのように協力し合うきょうだいがいない一人息子だから。何かあったらこの子が一人で抱えてしまわないだろうかと。
それなら、
“俺はかーちゃんととーちゃんといっぱい笑って楽しんで、いい思い出がたくさんあった。本当に楽しかった。”
っとそういうことを思わせたいって、私が勝手にそんなことを思ってしまったんです。
だから、一緒にいる時に別行動するなんて、そのうちきっと一人暮らしをするようになる。その後私たちに何かあったら、あなたが後々すごく後悔することになるんじゃないかって。

息子を見ていたら分かります。この子は私のことも夫のこともすごく大好きで大切に思ってくれていると。
だからこそ、一緒にいれる時に一緒にいれなかったことを後悔しないで欲しいって。

私のように後悔しないで欲しい。妹のようにその時の自分を責めないで欲しい。
でもそれは私や妹のことなんですよね。息子には関係ありません。

 

子育てと親の傷

子どもと一緒にいれば、親である私たちは、自分の子どもに自分のことと重ねて考えてしまうことなんてよくあります。
私の時はこうじゃなかった。あなたが羨ましい。
私がこうだったからこうならないで欲しい。
ちょっとした羨ましさが出ることもあるかもしれないし、でもそれ以上に自分よりも幸せであって欲しいと願う部分もある。
だけど、自分の昔の痛みである、私はこうしてしまった、私はこうじゃなかった、私だってこんなにつらかったなどの傷があると、どうしてもその瞬間って、

ああ、これは私の経験であって、我が子の人生とは全く違うものだし関係がないことで、介入することでもないんだ。

ってなかなか気づかないものなんですよね。例え気づけたとしてもどうにもならないことだってあります。だけど今回私は気づけたのだから、息子の人生とごっちゃにしないように気を付けたいと思いました。本当に私はよく自分の傷と重ねてしまうんだなぁと、改めて自覚しました。

今日のこのお話が、子育てで迷う親御さんにとって、少しでも何かのヒントになれば嬉しく思います。

 

次週は、高塚早苗カウンセラーです。
どうぞお楽しみに。

 

[子育て応援]赤ちゃんの頃から、思春期の子、そしてそんな子どもたちに関わる親とのお話を6名の個性豊かな女性カウンセラーが、毎週金曜日にお届けしています。
この記事を書いたカウンセラー

About Author

アルコール依存症の父からの虐待経験、学生時代のいじめから、恋愛依存、不倫や風俗を経て、自分を抑え付けるような結婚生活後、8年で離婚。その後自分に向き合い、今は穏やかに生きる。 過去のあらゆる経験をもとにして、恋愛関係、家族関係を得意とし、お客様と共に成長するスタイルを取る。