人はなぜ怒るのか(3)〜わかってほしい〜

わかってほしい、から怒る

怒りを感じるとき二つ目は「わかってほしい」ときです。小さな子供は、「お腹がすいた」「寂しい」「もっと遊びたい」そんな気持ちも開けっぴろげに表現します。そして、その気持ちを理解してもらえると、ご機嫌になりますが、わかってもらえなかったり、わかってもらったけれど、願いが叶わないと怒ります。では大人である私たちはどうでしょうか?気持ちをわかってもらうこと自体を諦めてしまっていることが結構たくさんあるのかもしれません。

私たちが感じる感情の中で、最も取り扱い困難なのではないかと思われるのが、怒りという感情。
怒りの正体は、「愛してほしい」「わかってほしい」「助けてほしい」という思いを言えなかったり、そもそもそのようなものがあると自分自身でもわかっていないということであり、忙しすぎたり、我慢しすぎたりして余裕がないというのも、怒りの原因です。

今回は、「愛してほしい」「わかってほしい」「助けてほしい」の中から「わかってほしい」についてです。

子ども時代の自分を考えると、親にお腹が空いていることをわかってほしかったり、遊んでほしいことをわかってほしかったり、わかってほしい気持ちがあることは、理解しやすいし受け入れやすいかもしれません。

小さな子どもが、親に「わかってほしい」と思うとき、怒っているのは想像しやすいですよね。
ですが、大人になった自分が、わかって欲しくて怒っているというのは、少々受け入れづらいかもしれませんよね。

成長して大人になるまでに、私たちは様々な体験をします。
ああしてほしい、こうしてほしいともたくさん願います。
でも、残念ながらその願いが、聞き届けられない経験も多々します。

それはとても辛いし、悲しい。
そのような辛い経験、悲しい経験をすると、「もう、ああしてほしい、こうしてほしいなんて願わないようにしよう」「どうせ願いは叶わないのだから諦めよう」「誰かにお願いするから、辛く悲しくなるのだ。自分でやればそんな思いはしなくて済む」と、我慢したり、諦めたり、自分のことは自分でやるのだと自立していきます。

そうすると、すっかり自分の中に「わかってほしい」という気持ちがあることを忘れてしまったりするのですが、人間である以上、大人であってもやはり、「わかってほしい」気持ちはあるのです。

誰だって理解されたいのです。
大人だって、わかってもらいたいのです。

◆企画書を提出したのに、あっけなく却下された。

◆一緒にやった仕事なのに、同僚だけが評価された。

◆頑張って作った料理を、食べてもらえなかった。

◆体調が悪いのに、用事を頼まれた。

◆失恋したばかりなのに、友人にノロケ話をされた。

◆不安なのに、恋人が連絡してきてくれない。

もちろん、その他にも怒りを感じる状況は、たくさんあります。

このようなとき、「私の○○という気持ちをわかってもらえていない」と思って、私たちは怒りを感じるのではないでしょうか。
やはり誰だって、「わかってもらいたい」と思います。
「理解してほしい」と思います。

ところが、例に出した状況のとき、大人である私たちは、「苦労したことを認めてもらえると嬉しいので、認めてください」とか「褒められると、ものすごく嬉しいタイプなので、良い評価をしてくださいね」なんて、なかなか言えない。

失恋して悲しいけれど、そんなこと言っても仕方ないと我慢するので、失恋したことを黙っていたり、「平気だから気にしないでね」なんて誤魔化してしまったりする。
我慢して、誤魔化しているにも関わらず、やっぱりどこかでわかってほしいと思ってしまうのが、人間なのかもしれませんよね。

「わかってくれない」と怒るということは、やはり「わかってほしい」と思っているということ。

先に、「私こんな気持ちなんだよね」とか、「今大変な状況だから、理解しておいてね」なんて言えればいいのですが、「言わないけれど、わかってほしい」と願っていたりもする。

大変な状況を理解してもらいたかったり、寂しい気持ちをわかってもらいたかったり、相手のことを想っている気持ちをわかってもらいたかったり、頑張っていることをわかってもらいたかったりと、私たちはわかってもらいたいことがあるにも関わらず、自分自身でそのことに気づいていなかったり、諦めてしまっていたり、恥ずかしすぎて言えていなかったりするようです。

特に、わかってもらいたい気持ちが、寂しい、辛い、悲しい、孤独など、ネガティブなものであればあるほど、私たちは隠してしまいたくなります。

そして自立していればしているほど、誰かにわかってもらうよりも、自分で頑張ろう、自分でなんとかしようします。

でも、自分でどうにかできるのであれば、とっくにどうにかしているのです。
だって大人ですからね。
でも、どうにもならないので、「わかってほしい」と怒っているのです。

誰にだって、わかってもらいたい気持ちがあるし、理解されたいと思います。
だから、大人であっても「わかってほしい」気持ちがあっていいのです。
自分で否定しないで、上手に表現できると、「わかってもらいたいのにわかってもらえない」経験を、減らすことができるのではないでしょうか。

次回は、「助けてほしい」についてのお話です。

(続)

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 人はなぜ怒るのか(1)〜怒りの正体〜
  2. 人はなぜ怒るのか(2)〜愛してほしい〜
  3. 人はなぜ怒るのか(3)〜わかってほしい〜
  4. 人はなぜ怒るのか(4)〜助けてほしい〜
この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や結婚、浮気や離婚など男女関係、対人関係やビジネス関係、家族関係や子育て、子供の反抗期、子離れ、親離れ問題など幅広いジャンルを得意とし、お客様からの支持が厚い。 女性ならではの視点と優しさ、母としての厳しさと懐の深さのあるカウンセリングが好評である。PHP研究所より3冊出版。