理想を追い求めて苦しくなるときの心理~動機は自己否定それとも自己肯定?~

今の自分を肯定し、理想に近づくプロセスを楽しもう

自己実現しようとする場合、「こうでありたい」という理想像を持つ人は多いと思います。でも理想とは裏腹に、思うようにいかずに苦しくなったり、また結果を出せたとしても虚しさや不足感を感じてしまうケースがあります。
理想を追い求めること自体は、とてもよいことですが、今の自分を受け入れ肯定できているか、それとも否定的に見ているかによって、心の状態は全く違ったものになるようです。どうすれば楽しく理想を求めていけるのか考えてみました。

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こんにちは。
今日の心理学講座はカウンセリングサービス『高見綾』が担当します。

仕事などを通じて自己実現しようとする場合、「こうでありたい」という理想像を持つ人は多いです。ところが、理想と現実にギャップがあると、「私はこんなものじゃない」という反骨精神のような感覚と同時に、頑張っても報われない虚しさなどを感じてしまうようです。

向上心や理想を持つこと自体は、とてもいいことだと思います。しかし、理想を追い求めて苦しくなるときは、一定の心理的な理由が存在するようです。

◆動機は自己否定それとも自己肯定?

理想を追い求めるときの動機は、大きくわけて2つのパターンがあります。
1つ目は、自己否定や現状否定からくるものです。今が嫌だからもっと良くなりたい、というものです。2つ目は、自分自身や現状については肯定できているけれど、もっと良くなりたい、その方が純粋に楽しいから、という動機です。

より良くなりたい、という方向は一緒であっても、現状の自分を否定しているのか、それとも肯定しているのか(認めているのか)によって、心の状態は全く違うものになります。

一般的には、現状に満足がいっていないから、もっとよくなりたくて理想を追い求めることが多いと思います。たとえば、お金がなくて苦労した経験があれば、もうお金に困るような生活は嫌だ!と考えます。それで「お金に困ることのない豊かな自分」を理想として、頑張って働いたりします。

自己否定をモチベーションにすると、最初のうちはエネルギッシュに活動できますが、長期的にモチベーションを維持するのにはじつは不向きです。次第に、最初の頃のパワフルさがなくなってきてしまいますので、ずっと自己否定の動機のままでいくのではなく、途中から、自分を肯定し、楽しみなどのポジティブな動機にゆるやかに変化していくのが理想です。楽しいからやる、面白いから追求したい、というポジティブな動機は、持続力があるのが特徴だからです。

◆自己否定から高い理想を掲げて頑張ると、燃え尽きてしまうことも

ものすごく頑張り屋さんで、常に努力を惜しまないタイプの人が、理想を追い求めて燃え尽きてしまうことがあります。頑張っても頑張っても、思うようにならないケースもありますし、結果がある程度出ても満たされず、「もっともっと」と不足感を感じるケースもあるようです。

たとえば、職場でリーダーになりたいと思っていたとします。その動機が「リーダーになれない自分はダメだ」という意識であれば、頑張っていても常に不安と隣り合わせです。なかなかリーダーになれないようなことがあると、「ほら、やっぱり私はダメなんだ」と思い始めて苦しくなってしまいます。

また、自分の存在自体に不安を抱えていると、頑張って人から認めてもらうことで精神的なバランスを保とうとします。駆け出しのころは、褒めて認めてもらえていても、ある程度結果が出てくると、わかりやすく承認してくれる人がいなくなる場合もあり、「もっともっと」といつまで経っても不足感から抜け出せなくなることも。

不安や恐れから自分1人で限界まで頑張り続けると、あるとき、体が思うように動かなくなったり、やる気が出なくなって燃え尽きてしまいます。そういう方にお話を聞くと、悪い自己イメージを持っていることがほとんどなのです。

◆今の自分を肯定していくことで、理想に近づくプロセスを楽しもう

不安や恐れを持ちながら頑張ることは、気持ち的にしんどいものですし、頑張り続けるのにも限界があります。自己否定しながら頑張ると、悲しいことに、頑張った度合だけ、自己否定が強化されてしまうこともあるのです。

今に満足がいかないから良くなりたい、と思う分には問題ありません。でも途中から、ちょっとずつでもいいので、「私よく頑張ってるじゃん」「今の私も悪くないよね」と自分を肯定していってあげてほしいのです。

そして、不安や恐れからではなく、楽しみを見つけていきましょう。「今も悪くないけれど、もっと楽しく過ごしたい。もっと夢を実現させていきたい。」と思えると、穏やかな気持ちで頑張っていけるでしょう。

理想を追い求めるとき、現実と理想のギャップにガッカリすることがあるかもしれません。思うように進まないこともあるでしょう。そんなときは、「私は理想に近づきつつあるプロセスにいるんだ」と考えることで前向きになれます。今歩いている道を味わいながら進んでいきたいですね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

高見 綾

大学卒業後、民間企業の経理・財務業務に従事。自身の悩みを解決するために心理学を学び始める。 人生がうまくいくためには特定の法則があることに気づき、多くの人のサポートを行う。 自己改革及び恋愛・結婚を含む人間関係全般のカウンセリングを得意とする。著書に『ゆずらない力』(すばる舎)がある。