傷ついてしまった痛みがあると、心は、それ以上痛みを感じないようにするために、感情を抑圧したり感情を感じないようにしたりします。
これは心の持つ防衛作用と呼ばれるもので、痛みの感情を感じないようにするのには役に立ちますが、痛み以外の感情も感じなくなってしまいます。
感情を感じることを取り戻すことで、願望や欲求といったものを取り戻していくというアプローチをご紹介します。
前々回、前回と、願望や欲求が減ってくる心の動きをご紹介しましたが、今回は、願望や欲求をもう一度取り戻していくためのヒントをご紹介します。
感情を感じることを取り戻す
願望や欲求が減っていく心理的な背景には、痛みの感情が関係しています。
欲しいものが手に入らなかった時のハートブレイク、絶望、自己嫌悪、無価値感、罪悪感… こうした痛みの感情を感じて傷つかないようにするために、そうしたものを作り出す原因になっている願望や欲求というのを持たないようにしていきます。
また、痛みの感情を感じて傷つかないようにするために、感情そのものを切り離して感じないようにすることで、願望や欲求といった感情も感じられなくなってしまうという側面もあります。
そうすると、確かに願望や欲求を持たないことで傷つくことはないのですが、それと引き換えに、願望や欲求そのものを失ってしまいます。
願望や欲求というのは、人をイキイキとさせ、それを手に入れるために自分を前に進める原動力となるもので、人ならば誰でも持っている感情です。
願望や欲求を失うと痛みは感じないのですが、喜びや楽しみ、やる気や活き活きさといった部分も感じられなくなってしまいます。
そうすると、毎日が単調で退屈だったり、「どうせ…」といった厭世的な態度や振る舞いになってしまったりします。
そうした状態から抜け出すのに必要なのは、自分から分離したり、抑圧して感じることができなくなってしまっている感情を取り戻すということです。
では、どうすれば再び感情を感じられるようになるのでしょうか?
●感情を取り戻すために
分離したり抑圧して感じられなくなってしまった感情を取り戻して、再び感じられるようになるためには、まずは、感情に興味を持ってみるというのが第一歩になるかと思います。
「感情って何?」というように、感情そのものに興味を持ってみるというのでもよいですし、「今、どんな気分?」というように、今自分が感じている感情に興味を持ってみるのもよいでしょう。
「今、どんな気分?」と自分に聞いてみても、わからないこともあるかと思いますが、必ずしも「今、こんな気分だ」とわかる必要はありません。
感情を抑圧したり分離したりしているので、わからなくて当たり前なんですよね(笑)
「どんな気分か?」というのがわかるよりも大切にしてみていただきたいことは、「今、どんな気分?」と自分に聞いてみるということです。
興味を持って自分の意識を感情に向けることで、感情をキャッチするアンテナの感度が自動的に上がってきます。
それが大事なのです。
●どんな感情を感じてみたい?
そもそも、感情を分離したり抑圧したりしたのは、ネガティブな感情を感じて傷つくことを避けるためでした。
この状態から再び感情を取り戻していくと、ネガティブな感情を取り戻してしまうように感じる場合があります。
確かに、感情を取り戻すと、ネガティブな感情を感じることも増えてきます。
しかし、感情というのは、ネガティブな感情だけではありませんよね。
喜び、楽しみ、やる気、イキイキさ、満足感、達成感、感謝の気持ち、自由で楽な感じ… そういったポジティブな感情もあります。
先程、感情に意識を向けると、それだけで感情をキャッチするアンテナの感度が上がるといいましたが、「どの感情をキャッチするアンテナの感度を上げるか?」というのは、自分で選ぶことができます。
実際にできるかどうか?、どうやったらいいのか?、というのは少し横に置いておいて、どんな感情を感じてみたいのかを探してみましょう。
●感じてみた感情を感じている人に近づく
自分がどんな感情を感じてみたいのか?というのは、それぞれの好みや欲求によって変わってきます。
それがどんなものでもかまいませんが、その感情を感じている人に近づいてみましょう。
その人に近づいて、特に何かをする必要はありません。
ただ、その人の側にいることで、その人がいる場の雰囲気や、その人が発する空気感に触れてみましょう。
感情には共鳴作用というのがあるので、側にいるだけで、その人が感じている感情と同じ感情を感じやすくなるのです。
ウキウキした気分を感じてみたい場合は、ウキウキしていそうな人の側で、やりがいを感じてみたい場合は、やりがいを感じていそうな人の側で過ごしてみましょう。
その相手の人と関わると、なおGoodです。
その人と関わってその人を知ることで、その人の考え方やものの見方、ふるまいなどから、どうしたらそんな気分になれるのか?というヒントがみつかるかもしれませんよ。
>>>次回『願望や欲求が減ってくるのはどうして?(4)~願望や欲求を持つことを自分に許そう~』に続く