すぐに転職したくなる心理~自分の中の「見捨てられ不安」と向き合う~

職場に慣れてくる頃になると、仕事や職場に対して不満が噴出して転職したくなってしまうのは何故でしょう。

不満は、「ちゃんと見ていてくれないのではないか」という不安感に対する怒りで、心の深いところで、「ダメな私は見捨てられるのではないか」という怖れを隠していることがあります。無自覚ですが、見捨てられるのはとても辛いので、自分の方から先に見捨てたくなるのが、「転職したい」という気持ちなのかもしれません。でも、本当は好きになりかかっているからこそ、「見捨てられるのは辛い」という気持ちが出てくるのではないでしょうか。とするならば、職場の一人一人と絆やつながりを作っていくことこそが、「ここが居場所」「ここにいていい」という安心感を生み、「見捨てられない」という信頼感を育みます。職場の仲間一人一人のいいところを見て、伝えるというシンプルなコミュニケーションが大きな安心感を作り出すことがあります。

◎リクエストを頂きました◎
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やむを得ない事情や他にやりたいことがあるわけではないのに、職場に不満を持ち、転職したくなってしまうのは何故でしょう。私の場合、最初の3カ月を過ぎると、「この会社(上司)は私を正当に評価してくれない(能力に見合った仕事を回してくれない)」という不満や、「この会社は私を解雇する(契約を打ち切る)に違いない」といった不安が芽生え、転職を考えるようになります。また、実際に転職しなくても、いつも心の中で転職を考えている人は評価されないのではないかと心配になります。職場や仕事に不満を感じては転職を考えてしまう心理と対策について、とりあげてください。

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リクエストをありがとうございました。職場や仕事に不満を感じやすい。不満を感じては、もっといいところがあるのではないかとすぐに転職を考えてしまう方は、案外多いかもしれません。私は、大学を卒業後、最初の職場を1年強で辞めて同業他社へと転職しました。その時、お世話になった上役に、「100%不満のない会社は、自分が作った会社だけだと思った方がいい。どこに行っても、他人が作った会社ならば必ず不満に思うところが出てきますよ」と言われました。まだ若い私に、純粋に理想主義に走りすぎると見えなくなることもあるから、不満と上手につきあいなさい、とアドバイスをしてくださったのだと思います。

●どうして「不満」ばかりが出てくるのだろう?

誰しも、長い間、一つの職場で働くうちには、「自分は、正当に評価されていないのではないか?(誰も見てくれていないのではないか?)」と不満を抱くことだってあるでしょう。働き手として、自分のモチベーションの高いとき、やる気のない時もあるでしょうし、仲間とソリが合う時も合わない時もあります。人間ですから、上司との相性だっていろいろです。

でも、もし、いつも数カ月という短い期間で、転職したくなるくらい不満で気持ちがいっぱいになるとしたら、その不満の下にある強い「不安」感が犯人かもしれません。

「自分はまわりにどう見られているのだろう?」
「自分は上司にちゃんと評価されているだろうか?」

仕事をしていて評価が気にならない人はいないでしょう。「自分はちゃんと見てもらっている」という安心感があると、仕事に集中して打ち込めますが、そこに信頼感がもてないとつい仕事そのもの以上に、まわりの態度や評価に気が散りやすいものです。

もともと自己評価があまり高くない人の場合は、自分がきちんと評価されている、という手ごたえが感じられないと、不安感がとても強くなり、その不安感を打ち消すように「いや、職場のここが悪いから(この上司がダメだから)思ったように運んでいないのではないか」と、イライラが職場や仕事、上司に向かうことがあります。

職場や仕事への不満は、自分が評価されないのではないかという不安の裏返しで、その下には、「ダメな私は見捨てられる」という思い込みを隠していることがあります。

●見捨てられる前に見捨てたい

心の深いところで、「ダメな私は見捨てられる」という思い込みがあると、「ひょっとしたらちゃんと見てもらえていないかもしれない」という不安が、「解雇されてしまう(契約を打ち切られてしまう)」というひっ迫した不安や怖れに直結して、いてもたってもいられないような気持ちになります。このような強い不安感を、心理学では「見捨てられ不安」と言います。

「見捨てられるかも」という怖れを感じ続けたくないばかりに、つい先手を打って、自分の方から見限りたくなってしまうことだってあるでしょう。仕事だけではなく、恋愛でも、相手との距離が近くなると、つい、相手の欠点ばかりが気になり始め、少しでも相手が気のない素振りでもしようものなら、「もうこの人とはうまくいかないのではないかしら」と不安になり、新しい相手を探したくなる、なんてこと、ありませんか?

好きになってから見捨てられたのでは辛すぎるので、好きになる前に、この人が絶対に捨てない、永遠の相手かどうかの確信を得ようとするのですが、そんな保証などどこにもないので、好きになる前に自分から捨ててしまいたくなるのです。

でも、ここで、実は、好きになりそうな予感があるからこそ、見捨てられるときのことが怖くなるのだ、ということに気づいていただきたいのです。好きになりそうで、距離も近づいているからこそ、傷つくリスクが高まって、怖くなるのです。

仕事や職場に対しても、同じことが起きていませんか?職場に慣れてきて、ひょっとして好きになってしまうかもしれないからこそ、どれだけ評価されているのかすごく気になるし、万が一にも切られるようなことがあっては辛すぎるから、好きにならないように、不満のタネを一生懸命探しているのではありませんか。

●「信頼」のタネをまこう

こんなにも「好き」になるのが怖いのは、人がただあなたのことを好きになり、職場でいっしょに仕事をしたいと思う、ということが信じられないからかもしれません。人を信じられないから、人が自分を信じてくれる、ともなかなか思えません。でも、だからこそ、職場の人たちひとりひとりと「信頼」関係を作ることが、仕事を続けるための一番のセーフティネットになります。まわりの人、一人一人の「いいところ」を見て、それを伝える。そんなシンプルなコミュニケーションの積み上げが、不満のモトだった「不安」を解消し、人とのあたたかいつながりが、あなたの自己評価を大きく底上げしてくれるでしょう。

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