人の失敗を願う心理~人の成功を応援しにくい時は~

人の失敗を願う心理には、「人の不幸を願う」というよりも、「人の成功を応援しにくい」という背景が隠れているケースがあります。ひとつには、人が成功すると自分がネガティブな感情(劣等感など)を感じる状況になるので、そうなるのを避けたいという心理があります。

また、過去に自分があきらめたこと・がまんしたことは「誤りではなかった」と、人の失敗で自分の過去を正当化したい心理があります。自分がネガティブな感情を感じないように、自分の過去を否定しなくて済むように、自分の心を守ろうとして人の成功を望みにくくなっていると考えられます。

そもそも、「人の失敗を願う」ことが問題となる前提には、「人の成功を願いたい」気持ちがあります。そんな想いのある自分を評価して自己肯定感を増やしていけたら、自分を否定する心理パターンが変わり、人と比べてネガティブな感情を感じることが減り、自分の過去を肯定することができるようになっていくでしょう。

◎リクエストを頂きました◎
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自分から見て、無謀と思える挑戦をしている人を見ていると、「失敗すればいい」というようなネガティブな感情が浮かんできてしまう事があります。
素直に応援できればいいのにと思うのですが、なにかうまく行かない事が見受けられるたび「それみろ」みたいに思ってしまう自分がいます。
どうしてこのように考えてしまうのでしょうか?
また、ネガティブな気持ちが浮かばなくなるうまい考え方はないでしょうか?
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人の失敗を願う心理として、次のようなものがあると考えられます。

○自分が感じるだろう感情を避けたい心理

人に対して「失敗すればいい」「別れてしまえばいい」「嫌われればいい」などといったネガティブな結果を望む場合、とても避けたいと思っているものがあります。それは、その人が成功したとき・ラブラブになったとき・人気者になったときなど、人にポジティブな結果が出た時に「自分が感じる(と予想している)感情」です。

例えば、「大成功した人」と「そうでない自分」を比較したら何を感じるでしょうか。劣等感かもしれませんし、相手への嫉妬、猛烈な悔しさ、自分の無力さ・ふがいなさ・情けなさなどかもしれません。いずれにしてもいい気分の感情ではないでしょう。

この嫌な気分になる感情を感じる状況になることを避けたいので、人がポジティブな結果を出さないように願ってしまうことがあるようです。

○自分を正当化したい心理

かつて、「自分にはできない」とあきらめたこと、「仕方がないから」とがまんしたことはなかったでしょうか。

あきらめなければならなかった心の傷、がまんするしかなかった心の痛みなどを抱えていると、そんな傷や痛みとは無縁そうな生き方をしている人たちに感情移入するのが難しくなることがあります。

また、自分よりも困難な状況で挑戦している人たちを肯定すると、挑戦しなかった自分を否定されるような気がすることがあるでしょう。自分を否定しながら人を肯定するのは心に無理があるので、人のことも否定しがちになるようです。

人がうまくいかなかった姿に「それみろ」「ほらやっぱり」と思うのは、うまくいかないことが証明されて、自分があきらめた時の気持ち・がまんした時の気持ちが納得しているのかもしれません。人の失敗にどこかホッと安心したような気持ちになるのは、「自分ができなかったことも仕方がなかった」「あきらめたことは間違っていなかった」と、自分の過去が正当化できるからではないでしょうか。

課題は、自分が何を感じるのか

人の失敗を願う心理には、「自分が感じるだろう感情を避けたい」や「自分を正当化したい」といった欲求が背景にあると考えられます。こういった背景があると、人を応援しにくくなるような心の動きが起こることは不自然ではありません。

挑戦する相手を憎んで失敗を願っているというよりは、自分の心を守るために、人の成功を応援しにくくなっているケースが多いのではないかと思われます。もしそうだとしたら、「人の失敗を願う」ことを問題にするよりも、挑戦する人を前にして「自分が何を感じるのか」を課題にするといいのではないでしょうか。

まずは、「素直に人を応援できない自分は、性格が悪いのではないか?」「考え方が歪んでいるのではないか?」といったように、自分を追い詰めるのをやめましょう。

そして、「成功する人を見て、自分は何を感じると思っているのだろう?」と、自分の心に聴いてみましょう。その感情を頻繁に感じやすい心の癖(=心理パターン)はないでしょうか。

また、「自分を正当化したい」と望む気持ちの奥には、過去にあきらめたことやがまんしたことで自分を責めている気持ちが隠れていないでしょうか。

自分を否定する心理パターンを変えていく

例えば、人の成功を見ると劣等感を感じるのだとしたら。これまで自分に多くのダメ出しをしてこなかったでしょうか。遠慮のないダメ出しで自分を否定し続けるのは辛いことでしょう。つい自分のダメな部分にばかり注目して、自分を肯定するのを忘れていないでしょうか。

自分を否定する心理パターンがあるのなら、自分を肯定することに興味を持ってみましょう。

自己否定の癖があると、自分ができていること・自分のいいところなどの肯定要素でさえも、気がつかないうちに否定材料にしていることがあります。例えば、「優しいですね」とほめられても、間髪入れずに「そんなことないですよ」「でも…」「だって…」と否定の言葉が出てくるようならば要注意です。自分を否定することに忙しくなって、人の気持ちをうけとる余裕を失っているようです。たとえ自分が自分をどう思っていたとしても、「ほめたいと思ってくれる人の気持ちは認めてみよう」と意欲を持ってみてはいかがでしょうか。

問題の前提条件は

そもそも、「人の失敗を願ってしまう」ことに問題を感じているならば、そのことが問題となる前提条件には「人の失敗を願いたくない→人の成功を願いたい」という気持ちがあるはずです。

人の成功を願いたいから悩むって、意外とカッコイイのではないでしょうか。人の成功を願う想いを持った自分を評価しましょう。

自己肯定感が増すと、人と比べてネガティブな感情を感じることが減り、人の失敗に裏付けられるのとは別の形で自分の過去を肯定することができるようになっていくでしょう。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。