心の中の“鬼教官”に気づき、叱責で伸ばすやり方から卒業しませんか。
褒める→課題化→具体策の3ステップで、傷つけずに前へ進む方法を提案します。
■自己否定・自己嫌悪が強いあなたへ:それは成長したい気持ちの裏返し
「もっとちゃんとしなきゃ」
「こんな自分じゃダメだ」
「また同じミス……ほんと嫌になる」
自己否定や自己嫌悪が強い人ほど、実は“良くなろう”としていることが多いものです。
つまり、あなたはダメなのではなく、むしろ成長への意欲が強いのかもしれません。
ただし、その成長の仕方が「自分を叩く」方向に偏りすぎていると、かえってマイナス効果が大きくなることがあります。
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■「できない自分」を叩いてきた理由:私たちが覚えた成長の形
私たちは、できなかったことができるようになることを「成長」と呼んできました。
たとえば幼い頃、
・「一人でお留守番するのは怖いけど、できるようにならなくっちゃ」
・「人前で泣かないようにならなくっちゃ」
・「算数が苦手だけど、今度のテストで良い点を取れるようにならなくっちゃ」
こうやって、怖さや不安を抱えながらも“できる側”に近づいていく。
その過程で、こんなふうに自分を叩いて成長しようとすることが起きます。
「一人でお留守番が怖い……そんな弱虫のままじゃダメだ」
「すぐ泣いちゃダメだ、しっかりしなきゃ」
「できないままじゃいけない。ちゃんとできるようにならなくっちゃ」
……あなたにも、似た経験はありませんか?
そしてこれを、何百回、何千回と繰り返してきたのかもしれません。
その結果、「自分を叩くのが上手い人」になってしまうことがあります。
そうやって自分を叩いてきたのは、前に進もうとしてきた証拠でもありますよね。
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■心の中の“鬼教官”が言うこと:自分を責めるインナーボイス
1980年代のドラマに「スチュワーデス物語」という作品がありました。
スチュワーデス(今でいうキャビンアテンダント)を目指す訓練生が、厳しい教官に鍛えられて成長していく物語です。
教官が訓練生に言うのです。
「ドジでのろまな亀」
そう言って訓練生を言葉で叩いて、しごいて、鍛えていくのです。
現実で同じことを言ったら、今の時代ならパワハラで一発アウトでしょう。
『まぁ、ドラマの世界だからね。現実にそういう人は今の世の中にそうそういないでしょう』
そう思うかもしれません。
しかし、もっと身近なところに、そういう存在がいるかもしれません。
それが、あなたの心の中の“鬼教官”です。
たとえば、ミスをした瞬間に、あなたの中の鬼教官の声が飛んでくるのです。
・「何回同じミスをするの?」
・「なんでそれくらいできないの?」
・「ほんと私は、ドジでのろまなダメ人間」
心の中で、鬼教官の叱責が止まらない。
そしてあなたは、言われた通りに反省し、直そうとして、また頑張る。
ここが難しいところで、内なる鬼教官は“あなたを壊すため”に出てくるわけではありません。
むしろ逆で、「ちゃんとさせたい」「成長させたい」「失敗させたくない」という思いが強いほど、声は厳しくなりがちです。
だからこそ、鬼教官の存在に気づけたときが転機です。
これ以上叱って伸ばすよりも、別の育て方に切り替えたほうが、あなたが楽に伸びていけることもあるのです。
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■自分を叩くやり方が、昔は役に立っていたこともある
ここ、誤解されやすいポイントです。
自分を叩くやり方は、まったくの無意味ではありません。
昔はそれなりに役に立っていた可能性があります。
たとえば、
・失敗しても泣いている暇がない環境だった
・周りに頼れず「自分でやるしかなかった」
・競争が強い場所にいて、気を抜くと置いていかれた
そういう場面では、「叩いてでも動く」ことが生存戦略になることもあります。
だからこそ、あなたの中の鬼教官は一生懸命だったのかもしれません。
「あなたを守るため」
「ちゃんとさせるため」
「未来を良くするため」
そんな思いから、叩くという方法を選んできたのかもしれません。
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■でも叩きすぎると逆効果:自己否定が強くなる副作用
問題はここからです。
成長のために自分を叩いているつもりが、叩きすぎて、自己否定・自己嫌悪を作る“副作用”が大きくなっていくことがあります。
たとえば、こんな心の動きです。
・ミスがあると一気に自分の価値がゼロになった気がする
・「できない自分が嫌い」から始まり、気づけば「自分という存在が嫌い」にまで広がっていく
・反省が「改善点の整理」ではなく、自分への罵倒の時間になる
この状態が長く続くと、成長するというよりも、心が摩耗していきます。
自信を失い、自分という存在を否定し、自分を嫌いになっていくほうが勝ってしまうのです。
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■もう追い込まなくていい:傷つけない成長に切り替える
叩くやり方は、あなたを成長させたこともあったのだと思います。
でも今は、あなたの中の鬼教官が、あなたを叩くのが上手くなりすぎて、成長を促すよりも、自己否定と自己嫌悪を育てる効果のほうが大きくなってしまっている。
そんな逆転が起きているのかもしれません。
もし心当たりがあるなら、いま必要なのは「もっと自分を追い込むこと」ではなく、自分を褒めて育てるやり方に切り替えることかもしれません。
あなたは、もう十分頑張ってきたからこそ、次は“傷つけない成長”を選んでいいのだと思います。
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■自分を責めない反省のやり方:3ステップの心のトレーニング
できたところを褒めながら、次の課題を設定する心のトレーニングをしてみませんか?
1.できていないところを叩くのではなく、できたところを確認して褒める
2.できていないところを叩くのではなく、“課題”として設定する
3.次はどうするか、具体策を1つ決める
これは、反省をやめることではありません。
反省の“言い方”を変えることです。
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例:叩いて成長するパターン(旧式)
「またできなかった。ほんとダメ」
「なんでこんな簡単なこともできないの」
「次は絶対失敗するな。ちゃんとしろ」
これだと、改善点よりも「自己否定」が強くなって、心が削れていきます。
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例:褒めながら成長するパターン(新式)
同じ出来事でも、こんな言い方に変えます。
1.できた所を褒める
「不安になったけど、感情のまま爆発せずに一度落ち着けた私は偉い」
2.できていない所を“課題”として設定する
「課題は“返信が遅い=嫌われた”と決めつけて、確かめ方が詰問口調になりやすいこと」
3.次の具体策を1つ決める
「次は『事実確認+お願い』の形で送ろう」
例:『今日忙しい?落ち着いたら少しだけ連絡もらえると嬉しい』
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■まとめ:うまくできない日があっても、戻ってきてやり直せる
失敗したとき、スムーズにいかないとき、あなたの心の中ではどんな言葉が一番よく飛んできますか?
自己否定・自己嫌悪が強いとき、「私は弱い」「私は未熟だ」と思ってしまいがちです。
でも実際には、あなたの中に“良くなりたい”“ちゃんとしたい”という強い願いがあるからこそ、厳しい声が出ていることも少なくありません。
大切なのは、成長をあきらめることではなく、成長のさせ方を変えることです。
叩いて伸ばす方法は、昔はあなたを助けてくれたかもしれません。
けれど今は、その方法の副作用(自己否定・自己嫌悪が強くなること)のほうが大きくなっているのかもしれません。
できなかったところを叩く代わりに、できたところを確認して褒める。
そして「次はここを工夫しよう」と課題を淡々と設定する。
最後に、次の具体策を1つ決めておく。
その小さな切り替えを積み重ねることで、あなたは自分を傷つけずに、ちゃんと成長できます。
自分を叩いて、叱責しなくても、あなたの成長は叶いますから。
うまくできない日があっても構いません。
戻ってきて、またやり直せばいいのです。
少しずつで大丈夫です。ご自身を褒めてあげながら成長していきましょうね。
(続)