感情をわかってもらえると、人は相手とのつながりを強く感じることができるようです。
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
男性の多くは、ものごとを理論的に捉えることが大事だと考えているようです。
一方、女性のみなさんは、理論的なことよりも、気持ちがよい、かんじがよいなど、感覚的なものに惹かれる傾向が強いようです。
今回、ご紹介するご夫婦もその例にもれず、ご主人は有名大学の理系出身の研究職で、きわめて理論的なタイプです。
奥さまは、お嬢様育ちの苦労知らず。子どものころからみんなに愛され、スクスクと素直に育ってきました。
人の言うことを信じやすく、影響を受けやすいタイプで、お友だちが風水にハマっとでも聞いたならば、すぐに黄色い財布を身につけたり、キッチンの色をガラッと変えたりするわけです。
その彼女にとっての“理論”は、「今年はこの色が運気を強くするのよ」というものです。
理論派のご主人としては「なに、馬鹿なことを言ってるんだ」としか思えず、結婚当初は「で、そこにはどんな根拠があるわけ?」などと奥さまを理詰めで攻め、ペチャンコにしたりしていたわけです。
が、結婚10年もすると、そんなことをしてもなんのトクにもならないということを学び、よほどのことでないかぎり、放置するようになりました。
「多少のことなら大目に見ておこう、それで彼女がご機嫌よく過ごせるなら、それがいちばんだ」というわけです。
さて、このご主人が、結婚15年目を過ぎたあたりから、仕事のスランプに陥りました。研究職として、なかなか実績をつくれずにいたのです。
研究には多額の予算を使いますが、成果が出ないということは、そのお金をドブに捨てているようなものだという見方がされることもあるわけです。
ですから、実績のない状況が続くと、ご主人がリーダーを務める部署がまるごとなくなってしまう恐れもないともいえません。
それで、イライラやプレッシャーを抱えていたわけですが、そんな彼を見ていた奥さまがいろいろなことを言うようになったわけです。
「赤いパンツをはきなさい。活力が戻るらしいわよ」
「あなたは黒っぽい洋服が多いけど、私服ぐらいは緑色にしてね。運気が変わるらしいの」
奥さまは奥さまで、なんとかご主人の力になりたいとがんばっているわけです。
ご主人は「そんなもので変われるぐらいなら、苦労はしないよ‥‥」と思いながらも、奥さまの言うことを渋々聞いていました。
それからまもなく、ご主人は研究からなんとか利益を出すために、本来であれば、まったくしたくもないようなことをすることとなりました。
リーダーとしての責任もあるので、それは致し方ないことだとは思うわけですが、心はなかなか納得できず、お酒をたくさん飲んで気をまぎらわせるような日が続いたのです。
ご主人の暮らしぶりや健康のことをだれよりも知る奥さまは、そんな様子を見て、心配で仕方ありません。で、ある日、見かねて説教をすると、さすがのご主人も大爆発したわけです。
「うるせぇ! ほうっておいてくれ!」
そして、大喧嘩が始まったわけです。
「ほうっておけるわけがないじゃないの! なんでもかんでも一人で抱えていないで、私にもなにか役に立つことをさせなさいよ!」
「おまえが役に立つことなんて、なにもない。数式一つ、知らないだろう!」
「そういうことじゃない! あなたはがまんしすぎて、心が悲鳴を上げているじゃないの。なんで一人でぜんぶ飲み込んで、がまんばかりするの!!」
そして、奥さまのほうがわんわんと泣きはじめたのです。
叱られている場面なのですが、ご主人はまったくイヤな気分にはなりませんでした。なぜなら、「唯一、自分の感情を理解してくれるのが、目の前のこの人だ」ということが明白に感じられたからです。
感情をわかってもらえると、人は相手とのつながりを強く感じることができるようです。
その人が、どんな気分で、そのことをしているのか‥‥、相手の感情を理解しようということは、人間関係にとって大事なことであるようですよ。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!
(完)