私が勤めている職場ではあいさつが慣行されていて、すれ違うたび顔を合わせるたびに、
「おはようございます」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」
と、あいさつが交わされています。
あいさつをすると気持ちがいいもので、あいさつを返してもらうと嬉しいものです。
けれども心理学を学ぶ前の私は、自分から積極的にあいさつをするのは苦手な人でした。
できるだけ目が合わないように下を向いて歩き、目が合ってしまったらあいさつをする代わりに会釈をして、そのまま視線を下にそらしていました。
私は勝手に「私からあいさつされても誰も嬉しくなんかないだろう…」と感じていたのです。
自分は喜ばれない存在
私は幼い頃から人見知りが強く、知らない人に対して “自分は受け入れてもらえないだろう” と漠然と感じていました。
ですから「おはようございます」などと声を出して自分から相手に働きかける発想もなければ、声を出してあいさつすることなどはかなりの気合いを必要とするものでした。
そんな私でしたが、心理学を学ぶようになって「私からあいさつされても嬉しくなんかないだろう」と感じているのはもしかして自分だけなのかもしれないと思えるようになってきました。
私たちのこころというものは、自分の感じている感情や思いを外の世界に映し出すということをするらしく、自分が「私なんかからあいさつされても嬉しくなんかないだろう」と思っていると、自分以外の人も私からあいさつされても嬉しいと思わないだろうと感じてしまうということなのです。
自分以外の人が持っている感情ではなく、自分自身の中にある感情であるのなら、私があいさつしても嬉しくなんかないと決まっているわけもなく、中には嬉しい人もいるということで、自分からあいさつしない理由がなくなってしまいました。
投影を取り戻す
このように、自分のこころの中にあるものを外に映し出していたのだと気づき、この思いは自分の中にあったものなのだと認識し直すことを“投影を取り戻す”と云いますが、自分自身の中にあるものであれば、自分の内なる感情を知り自分と向き合うことで自分が映し出す外の世界の景色を変えていくことは可能となってきます。
私は自分のことを良いものだと感じていなかったので、その自分の感覚を相手に映し出すばかりで、相手の気持ちや立場になって、自分の立っている景色を想像したしたことがありませんでした。
「おはようございます!」とあいさつしても、目をそらすように下を向いてしまうその様子は、「この人からあいさつされなくて良かった!」と感じさせる要素は一切なく、決して気持ちのよいものではありませんでした。
自分ではまったく相手を嫌っているつもりもなく、良くない自分と関わりを持たなくて済むように遠慮しているくらいのつもりでしたが、相手からすると「嫌われているのかな?」と快くない感じを感じさせてしまっていたのです。
「私からあいさつされても誰も嬉しくなんかないだろう…」と感じていた自分が、自分以外の人に同じような感情を植え付けて歩いていた、だなんて!
本当は喜びとなりたい私
「私からあいさつをされても誰も嬉しくなんかないだろう…」と感じていたことが自分自身の感情の投影だったとしたら、私はどれだけ “自分は喜ばれない存在なのだ” と感じていたことなのでしょう…。
きっと喜んでもらいたかったのに喜んでもらえなかった体験があって、自分は喜んでもらえない存在なのだと、思い込んでしまったのだと思います。
そしてそれからずっと何年も何十年も、そう思い込んで生きてきてしまって、すっかり自分は“喜ばれない存在”と感じるようになってしまったのでしょう。
喜んでもらいたいって思うような子が喜ばれない存在のはずがありません。
そして喜んでもらいたいと思っているのなら、喜んでもらえることを自分にさせてあげることが一番です。
「おはようございます!」と自分からあいさつをしていこうと思いました。
「お疲れ様です^_^」って笑顔も添えてあいさつしてみようと思いました。
たかがあいさつですが、笑顔を添えてあいさつをすると、まるで花束を渡して歩いているかのような気持ちにもなってきます。
そして「おはようございます」とあいさつするときは、「あなたの顔を見ることができて嬉しいです」というような気持ちも乗せていくようになりました。
すると、かつて自分が「私なんかからあいさつされても嬉しくないだろう」と感じていたことが投影されていたように、今度は「私の顔を見ることが嬉しいのかもしれない」と感じられるようになってくるのでした。
そしてこの様な体験が積み重なっていって、「自分は喜ばれない」と感じていた感情が、「自分は喜びである」と感じられるように変わってきました。
感情が変わると行動が代わり人生が変わってくると云いますが、逆もしかりで行動を変えてみると感情も変わってくるようです。
花束を配って歩く自分って、豊かさに溢れていて悪くないと思いませんか?
もし、人が怖いと感じたり、自分は喜ばれない存在だと感じたりする人がいたら、自分から笑顔を添えてあいさつを投げかけてみませんか?
笑顔はこころの花束です。
あなたの映し出す世界も花束で溢れてくることでしょう。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。