本記事では、心のアレルギー反応の仕組みと克服のプロセスを、押し付けアレルギーを例に心理学的にわかりやすく解説します。
■日常会話で生まれる「押し付けられる不快感」
彼女「このスイーツ美味しいよ。一口食べてみない」
彼 「え〜、甘いの苦手だからやめとく」
彼女「そんなに甘くないから大丈夫だよ、ちょっとだけ食べてみて」
よくあるカップルの会話ですね。
「この後の彼のセリフはどんなことを言うのでしょうか?ちょっとだけなら試してみようかな・・・あっ!いける味だね」
これもよくあるような会話の流れです。
しかし、
「やめとくって言ってるでしょ」(イラッとしている口調で)
というように、イラッとしたり、怒りという反応ではないけれどストレスを感じたりする方もいらっしゃいます。
もし、あなたがイラッとしたり、ストレスを感じたりするならば、もしかすると“押し付けアレルギー”があるのかもしれません!
■比喩で理解する:手のひらと“心のクッション”
押し付けアレルギーの説明をするために、この話を一旦横に置いて、ちょっと違う話をしてみたいと思います。
あなたの左の手のひらを、ボールペンの尖っていない方で、ツンツンと突くとします。
どんな感じがしますか?
多分、たいして痛くはないですよね?
それは、手のひらの皮膚が「柔らかいクッション」のような役割をしているからなんです。
だから、突かれた力がそのまま神経に届くのではなく、皮膚が“ワンクッション”になって受け止めてくれるんです。
ちょうど、床に直接座ると硬くて痛いけれど、座布団を敷くと柔らかく感じるのと同じ。
手のひらの皮膚が、あなたの神経を守ってくれる座布団のように働いているんですね。
しかし、あなたが10分前に道路でこけて、アスファルトの上でずりずりと手のひらを擦ってしまったとしましょう。
そして手のひらの皮がベロ〜ンとめくれているとします。
この皮がずる剥けの手のひらに、ボールペンの尖っていない方でツンツンと突くとどんな感じがしますか?
こちらのほうはめちゃくちゃ痛く感じますよね。
それは、加わる力から守ってくれる皮膚がないからです。
■癒えきれてない心のダメージ→心のアレルギー反応
心も似たような面があり、心に外からストレスという力が加わっても、ストレス耐性によりある程度の力だったら耐えられたり、小ダメージで済んだりします。
しかし、心が傷ついているところに外的ストレスが加わると、先ほどの手のひらがケガをしているところをツンツンするように「痛い」と感じます。
冒頭の押し付けアレルギーの話に戻りますが、「過去に押し付けられることがあり嫌な思いをした」「押し付けられることがありしんどかった」などで心がダメージを受けていて、その心のダメージが癒えきれていないと、押し付けられていると感じる会話や行為に過度のストレスを感じてしまうんです。
例えば、冒頭のお話。
彼女「このスイーツ美味しいよ。一口食べてみない」
彼 「え〜、甘いの苦手だからやめとく」
彼女「そんなに甘くないから大丈夫だよ、ちょっとだけ食べてみて」
これって厳密にいうと、彼女は彼の「やめとく」という言葉に対して、「ちょっとだけ食べてみて」と食べてほしいという自分の気持ちをプッシュしていますね。押しているわけです。
ダメージを受けていない心だと、「そんなに言うなら、まいっか」とそのストレスを受け流せたりします。
しかし、「過去に押し付けられることがあり嫌な思いをした」「押し付けられることがありしんどかった」などで心がダメージを受けて回復しきれていないと、ちょっとでも押し付け感を感じるとストレス反応が出てしまうのです。
仮に相手は押し付けているつもりはなくとも、です!
相手がそんなつもりはなくても、ちょっとでも押し付け臭がただよう会話や、押し付け感を感じる行為があると、心はアレルギー反応を起こして不快感を感じたり、イラッとして攻撃的になったりしてしまうことがあります。
■相手を変えるより“心のアレルギー反応”を軽くする
社会では(恋愛で、友人関係で、仕事づきあいで、ご近所づきあいで、習い事で)、押し付けをしてくる人はある一定数います。
相手側が不快な思いをさせないように気をつけたほうがいいというのは山々なのですが、そのような思いをさせる人を注意して全員正していくというのも骨が折れる話ですし、そのような人をすべて避けていくというのも現実的にはなかなか難しい話ですね。
困りました・・・。
ならば、押し付けアレルギーを減らしていく方向性を目指すほうが、ストレスから解放されて生きやすくなるためには現実的だったりします。
では、どうしたらいいのでしょう?
■心のダメージを癒やすと反応は和らぐ
先ほどさせていただいた説明では、
「過去に押し付けられることがあり嫌な思いをした」「押し付けられることがありしんどかった」などで心がダメージを受けていて、その心のダメージが癒えきれていないと、コントロールや押し付けられていると感じる会話や行為に過度のストレスを感じちゃう。
という話でしたので、その心のダメージを癒やすと過度のストレス反応がなくなり、その会話や行為を気にしなくなったり、流せたりしやすくなるわけですね。
「じゃあ、どうやったら癒やせるの?」ということが知りたいですよね?
■感情の解放をする
傷ついた感情は解放されることで癒やされていきます。
もしくは、感情を感じきることでも癒やしに進んでいきます。
その傷ついた感情を誰かに話して受け止めてもらうという行為を通して、外に解放していくといいでしょう。
たとえば、
カウンセリングでは「その時、どんな気持ちでしたか?」という質問をさせていただくことが多々あるんですが、それは「その時の嫌なことを思い出して、もう一回嫌な気持ちになりましょうね」という趣旨ではありません。
それは質問のやりとりを通して、その時の傷ついた感情にアクセスしていき、言葉に出して外に解放していきましょう、もしくはその時の気持ちにアクセスして感じていくことで消化していきましょうという趣旨で、そんな質問をさせていただくのですね。
カウンセリングのみならず、あなたの話を受け止めてくれそうな信頼できる人がいれば、感情を解放して癒やしていく意味で話されてみてはいかがでしょう。
心のダメージを負った時の話をするのは勇気がいるかもしれませんが、心のアレルギー反応をなくしていくために話してみられると良いかもしれません。
一度聞いてもらっただけでは心のダメージが癒えないことはあるでしょう。
それだけ、あなたはダメージを負ったのです。
そのような時に、人への気遣いや配慮が多い人は「一度説明した話をもう一度聞いてもらうのは悪いなぁ・・・」と思われる人もいるようです。
ですが、話す目的は「状況が伝わるように説明する」ことではなく、話すことを通して「あなたの感情を解放する」ことが目的ですので、そうは思わずに、同じシチュエーションの話でも悪いなと思わず話してみられるといいのではと思います。
話を聞いてもらう相手(カウンセラーではない場合)にも、「こういう目的で話す」ので協力してほしいと説明しておくと、何度同じ話が出たとしても話に付き合いやすいかと思います。
■他の“心のアレルギー”にも同じ原理が働く
心のアレルギー反応の説明をするために、押し付けアレルギーを使って説明しましたが、他のアレルギーも原理は一緒です。
自由がなく辛い思いをされて、その辛い思いが癒えきれていない場合は、自由が減ることへのアレルギー反応が出やすくなるでしょう。
干渉されて嫌だったご経験があり、その嫌な思いが癒えきれていない場合は、干渉されることへのアレルギー反応が出やすくなるでしょう。
・押し付けアレルギー
・決めつけられることへのアレルギー
・不自由アレルギー
・コントロールアレルギー
・干渉アレルギー
・話を聞くことへのアレルギー
・我慢アレルギー
・犠牲アレルギー
・感情的な人アレルギー
・いい子アレルギー
・依存アレルギー
・束縛アレルギー
・わかってくれないことへのアレルギー
・しなければならないことへのアレルギー
・人に合わせるアレルギー
・特定の人アレルギー(例えば、何かされなくとも、お母さんと話すだけで心が疲れる)
・心配されることへのアレルギー
・etc・・・
あなたには、どんな心のアレルギー反応がありますか?
もし、特定のジャンルに関して心のアレルギーがあれば、そのジャンルであなたはご苦労があったり、つらい思いをされたのかと思います。
その思いを癒すべく、誰かに話して受け止めてもらってくださいね。
心のダメージが癒えて、あなたがより生きやすくなるよう祈っています。
(続)