「どうしてできないの!」というイライラから解放されよう

子どもの成長はうれしいものですが、成長するに従って、「なんでこんなこともできないの!」といらだつことも増えまるような気がしませんか?今日は、そんなイライラを感じているお母さんの「イライラを少なくするためのヒント」をわたしの過去の体験談も添えて書かせていただきたいと思います。

 

■「どうしてこんなこともできないの?」と息子にイライラしていた私の話

息子が小学校の3年生くらいの頃、わたしは息子に対して「どうしてこんなこともできないの?」とよくイライラしていました。

体も大きくなり、言葉での会話も成り立つようになり、できることも増えた分、「できていない部分」をみつけると、「これくらいのこと、あなたの年ならできるでしょ!」と思うようになったからです。また、周りの子が苦もなくやっているのに・・という焦りもありました。

例えば、いすに座って勉強をし始めても、すぐに姿勢が崩れてだらんと机にうつぶせてしまう様子をみると「もうちょっとちゃんとイスに座れるでしょ!」と腹が立つ、というように・・です。

この頃の私は、「イスに座るくらい難しくもなんともない。」「ちゃんと座れないのは、やる気がないからだ。」「だらだらして、みっともない。」「もう、小3でしょ。」と思っていました。

だから、息子がだらっと座っているのを目にすると「何やってるのよ~!」と腹が立っていたのです。

 

■「これくらいできてあたりまえ」の罠

「これくらいできてあたりまえ」と思っていると「できないのは努力が足りないからだ」「怠けている」と感じます。まさか、それが「わが子にとって難しい課題なのだ」、とは思いません。だから、できない息子を責めたり、イラだったり、叱ったりしてしまったのです。

「あたりまえ」とは、「できて当然」ということです。数字で言うなら、+(プラス)ではなく0(ゼロ)。それができないとなると、ー(マイナス)点がつきます。

「発達障害」を持つ子どもの発達は凸凹(でこぼこ)だと言われます。そのため、できる部分を基準にして、他の部分も見てしまいがちになります。

当時の私を例にとると、「こんなに上手にブロックを組み合わせることができるのに・・。とか、iPadを使いこなすのに・・。」という部分をみて、「それができるんだから、座ることくらいどうってことないはずだよね。」と思っていました。

「これくらいできてあたりまえ」と思い込んでいると「できなくて困っている」と想像することができません。そのため「なんでできないの!」と追い詰めるような言葉を発しやすくなるのです。

「できなくて困っている」息子は「なんでできないの!」と言われるたびに「できない自分」「ダメな自分」を意識せざるを得なくなったのでしょう。「できるように努力する」のではなく、「うるさい!」「ほっといて!」「わかってるって!」と言うものの、姿勢をよくしようとはしませんでした。「ちゃんと姿勢よくできない自分はダメだ」と自分を責める度合いが強いほど、できていないことを指摘する相手への反発心を感じていたからです。

 

■「あたりまえ」は「観念」から生まれる

「これくらいできてあたりまえ」と感じるとき、わたしたちは過去の出来事や一般的な常識、周りの状況などのデータを判断の基準にします。この判断の元となっているものを心理学では「観念」といいます。

小3の息子がイスに座ってもすぐに姿勢が崩れてしまう、という出来事を例にとると、
「小3なら姿勢を崩さずにイスに座れるはず。姿勢を崩さずに座ることは難しいことではない。簡単なことができないのはやる気がないからだ。」といった観念があり、その観念を土台にして「小3なら簡単にできる姿勢を保って座るということができないのは息子がだらけているからだ。」と判断をくだした、ということになります。
このように「自分の持っている観念」は心にかけたサングラスのように、目の前の出来事に意味をつけます。

「○○するのが当然だ」「○○できてあたりまえだ」という観念があると、「あたりまえ」であるはずのことをしない人に対してイライラや怒りを感じやすくなるのです。

 

■観念を緩めると心にゆとりができる

もし、最近子どもに対して「なんでこれくらいのこと、できないの!」とキレてばかりだなあと感じるなら、昔の私のように「これくらいできてあたりまえでしょ!」と思っているのかもしれません。

カウンセリングでは「あなたが怒らなくていいように、あなたの中にある観念を少し緩めていきましょう。」とご提案させていただくことがあります。

例えば、「姿勢を保ってイスに座るなんて簡単なことだ。」「小3だったら、誰だってできるはずだ。」という私の思い込み(観念)を少し緩めて「姿勢を保ってイスに座ることが簡単にできる子もいる。」「小3くらいになった姿勢を保って座っている子も増えてくる。」というように、ちょっとだけ視点を変えてみるのです。すると、「姿勢を保ってイスに座ることが簡単じゃない子もいるかもしれない。」「息子は小3だけど、姿勢を保っているのが難しいのかもしれない。」という可能性が見えてきやすくなります。

常識や社会通念なども合わせると、私たちの心には何万もの観念があるともいわれています。ですから、観念を持つこと自体が悪いわけではありませんし、「当然○○だ」「○○できてあたりまえだ」という観念があることが悪いわけではありません。ただ、その観念の影響が大きすぎて、自分が苦しむのなら、一度「観念」を緩めてみるのも一つの方法ではないでしょうか。

お母さんがイライラしていると、子どももその影響を受けてイライラしてしまいます。逆に、お母さんがご機嫌でいると、子どもはわがままも言うけれど、自分を責めすぎたり追い詰めたりはしなくなり、安心感を感じます。お母さんのイライラを少なくするために、「できて当然」→「できる子もいる」という見方も取り入れてみませんか?

次週は池尾千里カウンセラーが担当します。お楽しみに~。

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この記事を書いたカウンセラー

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夫婦関係や子育て、対人関係、仕事、障害児の家族の問題など幅広いジャンルを扱う。特に「ずっと一人で頑張ってきた人が『より楽によりよい人生を選択できるようになるサポート』が好評である。 お客様から「無理のない提案で確実に変化できた」「会うと元気になる」等の感想が多く寄せられている。2024/1/1より休会中