復讐という罠に引っかからないために~復讐の心理学~

復讐というと怖いイメージがありますが、ほんのちょっとしたところにこの罠は潜んでいます。復讐心が芽生えるメカニズムと、その抜け出し方をレクチャーします。

●復讐心とは?

「復讐心」というと何かオドロオドロしくて大変なことをイメージされることもあるかもしれませんが、私達の日常や心の中には、大なり小なりこの「復讐心」というのが潜んでいます。

例えば、

夜、何だか突然寂しくなってしまって、お付き合いをしている彼の声が聞きたくなって彼の携帯に電話をした女の子がいたとします。
ところが彼は残業が長引いて電話に出ることができず、電話がつながりません。
しばらく間をおいて2回、3回と電話するのですが、一向に電話がつながりません。
それを何回か繰り返した彼女は「もういいっ!」と怒って携帯電話を放り投げて布団の中に潜り込んでいました。

しばらくして、ようやく仕事を終わらせた彼からの電話があったのですが、布団の中に潜り込んでいる彼女は電話に出ません。
彼は何度も電話をかけ直すのですが、それでも彼女は着信が気になりながらも布団から出て携帯電話に手を伸ばそうとしません…

こんな状況があったとします。

何回電話しても電話がつながらなくて「もういいっ!」と怒って携帯電話を放り投げた時、彼女の心の中で芽生えたのが「復讐心」です。
その後、彼からの電話に出ないというのが彼女の彼に対する復讐の行動です。

●復讐心が生まれるプロセス

彼女の心の動きを追ってみましょう。

まず、彼女は突然寂しくなってしまって、その寂しさを一番解消してほしい彼に電話をしました。そして、彼の声を聞いて、つながりを感じることで寂しさを埋めようとしました。
ところが、彼が電話に出てくれないことで、つながりではなく分離感を感じてしまい、余計に寂しさが大きくなってしまいました。

その寂しさや悲しみで傷ついてしまった彼女は、「もういいっ!」と携帯電話を放り投げて、彼とのつながりを求めようとすることをやめることでこれ以上傷つかないようにしています。
そして、電話に出てくれない彼に対して怒りを持つことで、その寂しさや悲しみを感じないようにしています。

彼からの電話があった時、彼女は怒りと復讐心から彼の電話に出ませんでした。

「私をこんなに寂しくて悲しい思いをさせたのだから、あなたも同じ思いをすればいいのよ!」

これが復讐心です。

●復讐心によって得られるもの/得られないもの

彼女が電話に出ないことで、おそらく彼も、彼女が感じたのと同じように電話に出てもらえないことで寂しさや悲しみを感じたでしょう。
そして、自分が電話に出てあげられなかった罪悪感なども感じたでしょうし、「何で電話に出ないんだ!」という怒りも感じたでしょう。

彼女が彼からの電話に出ないことで、彼に対する復讐は成功しています。
ここで注目していただきたいのは、当初の彼女の目的は達成されていないということです。

彼女の当初の目的は
「彼と電話で話をすることでつながりを感じて、寂しさを埋めたい」
でした。

ところが、復讐心からの行動で手に入ったのは「私を寂しくさせた彼を、同じ思いをさせることで懲らしめることができた」です。
その結果、彼女はつながりではなくて、寂しさや悲しみや怒りといった、嫌な気分になるものばかりが手に入っています。
これは当初の目的とは全然違いますよね。

このように、「復讐心」というのは、本来の目的の達成を邪魔したり、本当に欲しいものを遠ざけてしまうような、自分で自分に仕掛けた罠のようなものです。

先程の例の彼女は、復讐心という罠に引っかからずに彼からの電話に出ることができると、彼とのつながりを感じて寂しさを埋めることが出来ました。

そこで「寂しくなっちゃって、あなたの声が聞きたかったの」と怒りではなく、その下にある気持ちを彼に伝えることで、彼からやさしくてあたたかい言葉がもらえたかもしれません。

彼の
「仕事で電話に出ることができなかったけど、ずっと君のことが気になってたんだ。寂しい思いをさせてごめんね」
という彼の気持ちを知ることができたかもしれません。

●“復讐”という心の罠

この罠は、先程の例のような日常のヒトコマにある小さなものから、人生全てを捧げた壮大なものまで、様々な形で仕掛けられます。

罠に引っかかってしまうと、復讐心を持った相手だけではなく、自分自身も傷ついてしまいます。
自分自身も傷ついてしまうというのは、自分自身を傷つけることで復讐を成功させようとするからです。
それは、心のどこかで自分が傷ついて不幸であることが、復讐心を持った相手に取って一番ダメージが大きいことを知っているからです。

そうした形で相手にダメージを与えることで復讐を成功させようとするのですが、復讐が成功した結果得られるものは、そこに関わる人達全員が傷ついて苦しんでいるという状況だけです。

例えば、「私が誰からも愛されないような人間になってしまったのは、両親の育て方が悪かったからだ!」という恨みがある時、誰からも愛されないような不幸な状況を作ってそこに留まり続けることでそれを証明しようとしたりします。

ご両親はその姿を見て「自分たちの育て方が悪かったのか…」と自分を責めたり、今、不幸な状況にいる子供を見て胸を痛めたりします。

これも復讐の一種です。

●罠から抜け出すために必要なこと

この復讐の罠に引っかからないためのポイントは、本来の目的、本当に欲しいものは何か?というのをチェックしてみることです。

これがはっきりとわかっている時には「これは罠だ」と気づくことができます。

それと、本当に欲しいものが手に入っていない時、復讐心のもとになっている、誰かや何かへの怒りや恨みや憎しみといったネガティブで攻撃的な感情が隠れていないか?それは誰に(何に)向いているのか?をチェックしてみることです。

これは巧妙に隠れていることが多いので、カウンセリングなどを利用して探してみることをお勧めします。

そして、最終的にネガティブで攻撃的な感情を向けている誰かや何かを許すことで復讐という罠は無くなり、本来の目的が達成できたり、本当に欲しいものが手に入ったりします。
この罠は、自分で自分に仕掛けた罠ですので、自分が罠を仕掛ける必要が無くなれば、罠自体が無くなるのです。

本来の目的が達成できていない時、本当に欲しいものが手に入っていない時には、この「復讐心」が隠れていないかを探してみてください。

そして、本来の目的を達成させたり、本当に欲しいものを手に入れましょう。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

退会しました。