カウンセリングの実際

面談カウンセリングのレポートをご覧ください。

名前こそ仮名としていますが、実在の方が現実に体験したストーリーです。
それを私たちカウンセラーの目から描かせていただきました。
もちろん、掲載にあたってはすべてご本人に了解をいただいております。

私たちのカウンセリングには決まったプログラムや形がありません。
すべてオーダーメイド、あなた仕様の心理療法です。
「面談カウンセリングってどんなもの?」
「セラピーってどんなことをするの?」
「カウンセラーってどんな風に話を進めるんだろう?」
そんな疑問にお答えできれば幸いです。

ここでご紹介させていただくレポートは、カウンセリングを初めて受けていただく方に、
より安心していただけるよう、1回目など初期段階のカウンセリング風景を中心にお伝えさせて頂いています。

もしかしたらここに登場してくれた誰かが、今のあなたにヒントをくれるかもしれません。
それではお楽しみください。

カウンセリングレポート

『心を癒して幸せな恋愛を手に入れる』

カウンセリングで出会いが少ないというご相談をいただきました。

今岡さん(仮名)という女性の方からのご相談でした。

今つきあっている人はおらず、男性から興味を持たれることもないとのことでした。

つきあってもどうも恋愛が上手くいかないとお話をしてくれました。

彼女のお話を聞かせていただいていていると、ある思いが湧いてきたんです。

彼女は内面的にも、外見的にも魅力的な方でした。

ですんで、『彼氏がいないというほうが不思議だな。魅力的なのになぁ』と率直に思ったんです。

彼女の話によると友人達からや、職場の同僚などからは、私が思ったような「彼氏がいないというのが不思議」ということを言われることは多いとのことでした。

ということは、彼女のことを魅力的に思われている方は私だけでなく、そう思われる方は多いということなのでしょうね。

お話を掘り下げて聞かせていただくと、彼女は周囲の人たちがそう言ってくれるのは嬉しく思う反面、自分のなかではしっくりこないという思いがありました。

『リップサービスで言ってくれているのかな?』くらいに感じていたそうです。

周囲の人たちが言ってくれていることが、しっくりこないどころか、彼女は自信が全然ありませんでした。

彼女は無価値感が強かったんです。

話をもっと掘り下げて聞かせていただくとあることがわかりました。

彼女は気づかなったのですが彼女に興味を抱いていた男性や、彼女に好意を寄せていた男性がいたということでした。

「今岡さんって可愛いですよね」とか「今岡さんと一緒にいると癒されるんですよね」

など言ってくれる男性が今までにたくさんいたそうです。

その中に「今度一緒に食事なんてどうです?」などのお誘いも多々あったようです。

彼女は男性から褒められてもリップサービスで言ってくれているぐらいに思っていたし、お誘いも社交辞令で言っているんだくらいに受け取っていたそうです。

ですんで褒められても「また、またそんなこと言って」と流していたし、誘われても「そうですね。また行きたいですね」と社交辞令として返していたそうです。

男性側の立場としてこのことを見ていくと、勇気をだして「今岡さんと一緒にいると癒されるんですよね」と好意を匂わすことも伝えても流されるので近づく隙がないし、お誘いをかけても流されるという形になってしまうんですね。

彼女は無価値感が強かったので自分に興味を持っているとか、好意を持ってくれているという認識をもてなかったんです。それで近づいてくれる人の興味や、好意に気づかなかったんです。

ですんで彼女に近づこうと頑張ってみたものの相手にされないと感じたり、あしらわれたと感じて、男性はそれ以上のアタックをあきらめていくということが起こっていたようです。

相手にされていなかったのは彼女ではなく、実は男性の方だったんですね。

もちろん彼女としては、そんな意識はありません。

それは彼女が知らず知らずのうちにしていたことでした。

彼女が持っている無価値感から行動で、無意識的に行っていたことでした。

彼女の自信のなさが男性から興味を持たれないという現実を作っていたんですね。

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今岡さん(仮名)の恋愛パターンに多大な影響を及ぼしている、無価値感に向かい合っていくことになりました。

今岡さんに自信が無いのというのは昔からですか?と質問させてもらいました。

「う~ん、いつくらいからなんでしょう?学生時代はそれほど自信がないほうでもなかった気がするんですが、社会人からのような気がします」と話してくださいました。

このような質問を他にもいろいろさせていただいている中で、昔の恋愛についての話題がでてきました。

今岡さんが社会人一年生の時のお話しでした。

それまでの彼女は恋愛も順調で、男性からの人気も高くもてるほうでした。

当時、社会人一年生になった今岡さんに目をかけてくれていて、やさしく接してくれていた上司がいたそうです。

その上司に今岡さんは、最初は『いい人だな』と思っていたそうです。

その思いは時と共に徐々に恋頃に変わっていったそうです。

しかし、その上司は既婚者でした。

既婚者なんだから恋愛をするのは無理だなと思っていたので、恋心にブレーキをかけながら上司と接する日々を過ごしていたそうです。

好きという思いにブレーキをかけながら接しながらも、その上司と話す時間は楽しくあり、二人の関係は近しい上司と部下の関係になっていったそうです。

そしてある出来事が起きました。

近しい関係だったので仕事帰りに食事をすることはしばしばあったのですが、ある日お酒の力もはいり上司に好きと思っていることを冗談半分の雰囲気で言ったそうです。

すると上司も同じことを思っていたという言葉が返ってきたそうです。

その上司も妻子がいるから恋心を持ってはいけないとブレーキをかけていたそうでした。

その会話をきっかけにお互いのブレーキが外れてしまい、男女の仲になっていったそうです。

お互い好き同士なのに今まで好きという気持ちにブレーキをかけてきた分、恋人として二人で過ごす時間は幸せだったそうです。しかし、それは最初のほうだけでした。

クリスマス、お正月、ゴールデンウィークと世間の恋人達が楽しく過ごす時期は、彼は家族とすごしていました。

それは二人の関係が公然の関係ではないから、しかたがないないことと今岡さんも思っていましたが、さみしい思いをしていました。

そのうち『やっぱり一番は家族なんだ。私は二番目・・・・私はそれだけの価値の女なんだ』という思いが募ってきたそうです。

そして苦しさがピークにになり、彼との恋愛に終りをつげたそうです。

この昔の恋愛のことを話されて涙を流されました。

「まだ、心のどこかでひきづっていたんですね」と涙を流されことに、今岡さんは、びっくりされた様子で言われていました。

この恋の傷は大半は乗り越えてたものの、心の奥深くにまだ残っており、それが今岡さんの恋愛に影響を与えていました。

この恋愛で今岡さんは、心が傷つき、自分は選ばれる価値が無いそれだけの価値の女性なんだと思ってしまい、自分に自信を持てなくなっていたのです。

この恋愛が今岡さんの無価値感を作り、今の恋愛に影響を及ぼしていたのです。

+++++++++++

昔の恋愛の傷が無価値感を作り、それが今の恋愛に影響を与えていったということがわかった今岡さん(仮名)は、面談カウンセリングで何度かセラピー(心理療法)を行ない、昔の恋愛の傷を癒していきました。

心が傷ついてできた『自分は選ばれない』『自分は価値のない女性なんだ』という感覚を持たなくてもよくなるように心を癒すことに取り組んでいったんです。

今岡さんは何度も涙を流され、涙と共に昔の恋愛の傷を浄化していきました。

ご自身もびっくりするほど涙をながされ、また心の傷の根深さに驚かれていました。

私たちは自分でも気付かないような(意識で認識していないような)感情を心の奥に残していることがあります。

その当時に完了しきれなかった感情が残っていることがあるのです。

今岡さんも、そうでした。

当時感じていた寂しさが、完了せずに心のひだに残っていました。

セラピーを通して、その感情を見つけていき感じきることをしていきました。

涙とともにその感情は浄化されていくと、心があったかくなっていきました。

完了できていない感情を癒やしたあとは、自分の価値を取り戻すことについてのセラピーをしていきました。

そうやって何度かセラピーを行ない、心を癒していく内に今岡さんは自信を取り戻し『私には価値がある』『私は幸せになれる』『私を選ぶ人はきっといる』と思えるようになりました。

昔の恋愛の心の傷が作った無価値感を癒やし、ご自身の真実の価値を感じられるようになった今岡さんは、今では彼氏ができて恋愛を楽しまれています。

そのお付き合いの中で、行き違いがあった時や、また結婚などの将来に関する不安などがでてきた時など問題が浮上してきた時は、その都度お越しくださりご相談をしてくれています。

「なにかあった時に、カウンセリングで相談すればいいんだと思うだけでも心が楽なんです。カウンセリングは私のお守りになってるんですよ。彼とも色々あるけど、どんなことが起こっても全部乗り越えられる気がしてるんです」と今岡さんは話をしてくれます。

そう言ってくださる顔は自信が溢れている魅力的な顔に見えます。

おっしゃられるように、どんな問題がでてきても乗り越えていかれるように思います。

これからも今岡さんの幸せを祈っています。

ありがとうございました。

※このお話はクライアントさんの許可を得て掲載させていただいています。

『自立的な女性の依存的な恋愛からの脱出』

田中陽子さん(仮名)は、面談カウンセリングにお越し下さいました。

「はじめまして。原といいます。今日はよろしくお願いします。」

「はじめまして、田中です。よろしくお願いします。」

「今日は、どんな話しからスタートしていきましょうか?」

「彼氏とのことで聞いてもらいたいことがあってきたんです・・・」

田中さんのお話は、彼氏との関係で依存的になってしまうことについてのご相談でした。

彼氏が自分のことを、どう思っているのか不安になってしまうそうです。

このころから、甘えること、頼ることを封印し始めていったのです。

子どもが甘えたい、頼りたいを封印したというのは、つらいことです。

子どもとしてお母さんに甘えたいとい気持ちはもちろん、学校で嫌なことがあっても、進路のことで悩みをもっても、それは出してきませんでした。

お父さんに会えなくて寂しいという気持ちもありました。

しかし、そんな気持ちをだすとお母さんを悲しませると思ったので、この気持ちも出せませんでした。

お父さんに会いたいという気持ちを出すことは最大のタブーになったのです。

田中さんは、これらの気持ちを心の中に全部封印しました。

この依存心を禁止し、封印するということが、子どもの頃の田中さんが、大好きなお母さんを助ける為にした方法だったんです。

依存心を封印したままの田中さんは、超自立的な女性に育ちました。

この超自立的な面は、キャリアの面では大きく役立ち、キャリア面では成功を収めていきました。

しかし、この封印した依存心が、彼との関係ででてきたんです。

なぜならば、お母さんと、お父さんとの関係くらい、愛と親密感を感じるのは、パートナーシップくらいだからです。

お母さんに甘えたかったという思い、頼りたかったという思い、お父さんと一緒に居たかったという思い、そして両親との関係で本当は解消したかった、寂しさや、不安が彼との関係で、出てきていたのです。

いわば、大人の田中さんの心の中に、寂しさも、不安も、唇を噛みしめてぐっとこらえて頑張っている、12歳の女の子が住んでいたのです。

これは、両親との関係で満たされなかった思いであり、痛みであり、過去の内に完了できなかった感情でした。

この痛みをセラピー(心理療法)を使って癒していきました。

セラピーでは、イメージワークという手法を使っていきました。

セラピーで心の中にずっと封印してきた思いを解放していきました。

そして「ずっと我慢して頑張ってきたね」とイメージの中で、12歳の女の子を抱きしめて田中さんは泣きました。

深い痛みだったので、面談カウンセリングの他に、1DAYワークショップ にも来ていただき、そこでもセラピーも行ない、痛みを癒していきました。

すると、彼に過度の依存心や、過度の不安が出なくなっていきました。

彼に安心した気持ちでいられるようになり、彼の愛を信頼できるようになりました。

過度な依存心がでなくなった田中さんは、彼に愛を与えてあげたい、何かしてあげたいという気持ちが強くでるようになってきました。

恋愛は上手く回り出し、楽で、楽しい恋愛に変わりました。

そして愛されている感じや、愛している感じる恋愛になりました。

それから半年後、田中さんから、ウェディングドレスの写真が届きました。

田中さんは、今までの恋愛パターンから脱出したのです。恋愛パターンが変わったのです。

今も、心のメンテナンスや、夫婦間のご相談でカウンセリングや、1DAYワークショップで田中さんとお会いすることがあります。

田中さんは、笑いながらこんな話しをしてくれました。

「昔は依存的な恋愛になって苦しいということを相談しにきたのに、今は彼をどう助けてあげたらいいかという、全く逆の相談になっているって人生って不思議ですね」

「本当、不思議ですね」そう話しながら、次のテーマを解決すべく話をしていったのでした。

田中さん、お幸せに。応援しています。

カウンセラー:原 裕輝

※この内容は本人の了承を得て掲載させていただいています。

「恋愛のことで話したいと思って来たんですけど、カウンセリングは初めてなんで、どこから話していったらいいんでしょう?」

面談カウンセリングにお越しくださった、川上美歩さん(仮名)は、少々緊張した面持ちで、話し始めました。

「どこからでもいいですよ。まとめなくても結構ですし、整理して話さなくても結構ですんで、川上さんの話しやすい話し方で、お話しをしていただければと思いますんで」そう私は答えさせてもらいました。
「えーっとですね・・・」川上さんは、今までの経緯を振り返りながら、
相談したかった内容を話してくれました。

川上さんには、今つきあっている彼氏がいて、
彼氏は、川上さんのことを大切にしてくれていると感じるとのことでした。

ただ彼には奥さんがいるとのことでした。

川上さんは、彼から大事にされているということは感じているとのことでしたが、
あいたいときに会えず、電話もこちらからはかけることができず、
彼氏から電話をかかってくるのを待つという、つきあい方がつらいとのことでした。

彼に愛されて幸せなときもあるのですが、これからのつきあいを考えると不安にもなると話してくれました。

その為、彼との関係を手放そうと考え初めているそうです。
手放そうと思い初めてるのですが、一歩がふみきれず、その手伝いをして欲しいと話してくれました。

また、川上さんの不倫経験は初めてではなく、今までつきあってきた人は、妻子持ちの方が多く、

次の恋愛では、このパターンから抜け出したいと話してくれました。

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カウンセリングを進めていき、わかったことが幾つがありました。

川上さんの深層心理には、“結婚が恐い”という思いがありました。

それは、川上さんのご両親が離婚をされていて、両親の離婚に子供のころ傷ついた事が起因していました。

子供にとっては、父親と母親は両方とも血をわけた存在で大切な人たちです。
その二人がいがみ合っていることで、子供のころ大変傷ついたそうでした。
しかも、離婚という結果になったことで、さらに深く傷つきました。

そのことが原因で川上さんの深層心理に、愛する人が離れていく恐怖ができたのでした。

本当に好きな人と結婚をして、“もし、その結婚が壊れてしまったら”ということを心の奥底で恐れるようになったのです。

その為、結婚しなくていい恋愛を深層心理では望んでいました。

頭では、シングルの人との恋愛が良いと思っていたのですが、
彼との付き合い始めに妻子がいるとわかっても別れなかったのは、深層心理にある結婚への恐れが影響していました。

すでに結婚している人との恋愛は、心の奥で結婚しなくていいという安心感を得られる恋愛だったからです。

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彼を手放して、次のステップへの(次の恋愛)に進むために、
次のステップへの恐れをなるべくなくしていきましょうという話をしました。

その為、結婚しなくて良い相手を選んでしまう心理を作っている、
心の傷を癒していくことから初めていくことにしました。

不倫を手放して、新しい恋愛を手に入れるファーストステップとして、
川上さんと両親との関係について、カウンセリングをしていったのです。

川上さんは、両親の離婚はショックだったのですが、
その思いは引きずっておらず、今はなんともないと思っていました。

しかし、カウンセリングを進めていくと、
当時の悲しかった思いや、つらかった思いがたくさんでてきました。

それは心の奥に抑圧されていた、
当時の悲しい思いや、つらい思いが心の奥底に溜まっていたのでした。

川上さんは、たくさん泣きました。

カウンセリングや、セラピーを通して、当時の悲しさや、つらさといった思いを、涙に流して浄化していきました。感情は十分感じていくと、解放されていき癒されるのです。

涙を拭いたティッシュの山ができるほど、泣いた川上さんは、すっきりした気持ちになったそうです。

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カウンセリングのセカンドステップのテーマは、彼を手放しについてでした。

川上さんには、不倫という恋愛を手放したい思いと、
手放したくないという矛盾した二つの思いが同時にありました。

手放したくないという思いにフォーカスを当てていくと、
手放して何もなくなってしまうかもしれない感覚が恐く、手放せなくなっていたようでした。

手放していくお手伝いをするために、川上さんに質問をしました。
「もし100%幸せな恋愛があったとしたら、今の恋愛はそのうちの何%くらいを満たしてると思いますか?直感で思い浮かんだ数字を答えてみてもらえませんか?」

すると川上さんは「80%かな」と答えてくれました。

「では、残りの20%は何だと思いますか?」と質問させてもらいました。

少し考えたあと、「最終的に私を選んでくれていないことだと思います」と話してくれました。

川上さんは、彼は私のことを大切にしてくれているが、私がさみしい思いやつらい思いをしていても、最終的には奥さんが待つ家に帰ってしまう。それは最終的には家族を選んでいるからだと思うと語ってくれました。

そして、そのことには気づいていたけど、今まで見ないように蓋をしていた気がすると話してくれました。

私は川上さんに100%の幸せを手に入れることを目標にすることを提案しました。

今が80%の幸せを手に入れているとしたら、それを手放すには恐れがでます。
100%幸せでなくても、そこそこ幸せだからです。それを手放すには勇気がいります。
ですが、100%の幸せにこだわってみませんか?と提案したのです。

この目標設定は、今の彼を手放すことの意味をつくることでもありました。
手放すことに意味を持てると、手放す勇気がでてくるものです。

川上さんは、100%幸せなパートナーシップを手に入れることにコミットをしました。

そして“お昼間に手をつないでデートができるパートナーシップを手に入れたい”と話してくれました。そして泣きました。

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彼を手放して100%幸せなパートナーシップを手に入れていくお手伝いとして、
セラピーをしていきました。セラピーではイメージワークをしていきました。

イメージワークを進めていくと、“前に進みたい”という思いと、“彼への執着”との葛藤がでてきましたが、
川上さんは葛藤を乗り越えて、100%幸せなパートナーシップを選んでいきました。

イメージの中では、彼を手放すさいに「出会ってくれてありがとう」ということを、イメージの中の彼に伝えました。

それは、川上さんの心からの言葉でした。

セラピーが終わり、感想を聞くと、
「彼への感情を無理矢理切って手放すのではなく、彼から卒業していくという感じで手放していけそう」と話してくれました。

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川上さんは、その後何度か面談カウンセリングに足を運んでくれました。

彼を手放すことができた後は、
彼を手放した後のさみしい気持ちについてご相談にきてくれたり、
新しくできた彼とのことについてご相談にきてくれたりしました。

そして初めてお会いしてから3年ほどたったころのことです。

面談カウンセリングに来てくださった川上さんは、
「結婚することになりました」と話してくださったのです。

今は幸せな気持ちがいっぱいで、困っていることは無いとのことですが、
結婚することになったことを報告したくて来てくれたそうでした。

結婚することを聞いた私は、「そう、良かったねぇ」と川上さんに言いました。
そう伝えると私の目から涙がでてきました。

川上さんが悩んでいたこと、苦しんだ時期を知っているだけにとても嬉しかったのです。

そして初めて出会ったころを振り返り二人で話しました。
「最初は彼を手放す相談でしたよね。結婚するなんて考えられませんでした」
川上さんのその言葉に二人で笑いながら泣きました。その涙は幸せの涙でした。

川上さんお幸せに。

カウンセラー原裕輝

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

前回のご夫妻でのカウンセリングから、約1ヶ月後のことです。
今度は、ご夫婦一緒ではなく、奥様の裕美さんが、お一人で
カウンセリングにお越しくださいました。

「こんにちは、お久しぶりです(^^)」(裕美さん)

「お久しぶりです(^^)、前回のカウンセリングは、
ちょうど、1ヶ月くらいまえでしたね」(原)

「そうですね。今日は、いっぱい話したいことがあるんですが、
何から話しましょう(笑)」

「山本さん(仮名)の、話しやすい順番でいいですよ。
聞いていてわかりにくかったことは、質問させて貰いますから、
まとまってなくてもいいですから、話しやすい言い方で話してください」

裕美さんは、まず、前回のカウンセリング後のお話をしてくれました。

「え~っとですね・・・。
カウンセリングの後、しばらく温かい気持ちになっていて、
主人をいっぱい愛してあげたいという気持ちだったんですね。
主人も、私の気持ちをわかろうと頑張ってくれていて二人で話す
時間が増えた気がします。」

相づちをうちながら、まずは、じっくり裕美さんのお話を聞かせて
いただきました。

「でも、主人は食事をしながらテレビを見てる時なんかは、
私が話しかけても、時々、適当な返事をしてる時があって、
後で聞き返しても私の話をあんまり覚えてないようなんです。
そうすると、腹がたって、つい怒ってしまうんです。
責めちゃいけないと思ってるんですけど、つい・・・」

少々小声になり気味ながら、そう話してくださいました。

「適当な返事をされると、それは腹が立ちますよねぇ。
つい言ってしまうくらい、とても嫌な気分だったんじゃないですか?」

「そうんなんです!すごく嫌な気分になったんです
主人は・・・・(中略)」

フラストレーションを吐き出すように、
いっぱい話をしてくれました。
吐き出したら少し、すっきりしたとのことでした。

そして、少しすっきりした後、こう言ってくれました。

「私にも、問題があって“もっと愛して欲しい”と求める気持ちが
強いんで腹が立っちゃうんでしょうね。
前回のカウンセリングで思ったんですが、“もっと愛したい”と思える
自分に変わりたいと思うんです。そうなったら、もっと毎日が、
楽だと思うんです」

気分がいっぱい、いっぱいになって、心が疲れている時は、
前向きな気持ちには、なりにくいものですが、自分の気持ちを外に
吐きだして、心が楽になれば、前向きな気持ちを持ちやすいのです。

裕美さんも、いっぱい自分の気持ちをだしてくれたので、
少し楽になって、気持ちの持ちように変化が訪れたようでした。

そして、“もっと愛したい”と思える自分になる為に、
取り組むことにしました。

***********************************************************

裕美さんは、両親が共働きの家庭で育ちました。
両親とも忙しく、家族でゆっくり話す時間が少なかったようです。

その為、小さい頃の裕美さんは、寂しかったそうです。
そして、自分のことを見て貰っていない感覚でいたそうです。

しかし、子供ながらに、忙しい両親に負担をかけてはいけないと
思い、その寂しかった気持ちは、ご自身の中に封印して、両親には
伝えたことがなかったそうです。

それは、優しい少女の心からした我慢でした。

その為、寂しい、見て貰えていない感覚が裕美さんの
満たされない思いとして心の中に作られていきました。

この満たされていない気持ちが、ご主人との関係で、
“満たしたい”という欲求になって出てきていました。

つまり、裕美さんは、心理的に、
“ご主人に満たして貰いたいという気持ち”と、
“両親に満たして貰いたいという気持ち”の両方をご主人に求めて
いたのでした。

“もっと愛したい”と思える自分になる為に、
まずは、“満たして貰いたい”という強い気持ちを癒していくことに
取り組んでいくことにしました。

“満たして貰いたい”という強い気持ちが怒りを作り、
“愛したい”という気持ちを阻んでしまうからです。

***********************************************************

イメージの力を使いながら、深層心理に潜っていく、
イメージワーク(セラピー)を裕美さんとしていきました。

イメージの中で、小さい頃の裕美さんに会いに行って、
その女の子が抱いている気持ちを十分に感じていただきました。

そして、その女の子が抱いている気持ちごと、女の子を
大人の裕美さんが抱いてあげました。

感情は、十分感じて受け止めていくと癒されていきます。
裕美さんは、女の子を抱きながら、いっぱい泣きました。

小さい頃に、封印した“寂しかった”という感情が、
ようやく出てくることができたのです。

そして、僕から、裕美さんに一つ提案をしました。
「この女の子を連れて、イメージの中で、ご両親に会いに行って
もらえませんか?そして、この女の子が今まで言えなかった、
“寂しい”という気持ちをご両親に伝えてもらえませんか?」

裕美さんは、イメージの中で、
両親に会いに行きました。そして小さい頃の裕美さんに
「寂しかった」と言わせてあげました。

「ご両親は、どんな顔をしていますか?」
と僕は質問させて貰いました。

「驚いた顔をしています」

「なぜ、ですか?」

「初めて、知ったからだと思います。
ごめんねって言って、頭を撫でてくれてます」

私のことを見てくれて無かったのではなくて、
私が言わなかったから気づけなかったんだと、その時思ったそうです。

それは、裕美さんの新たな気づきだったそうです。

そして、寂しさに気づいた、両親に小さい女の子をいっぱい
愛して貰いました。
いっぱい愛して貰って、いっぱい泣きました。

そうして、寂しい、見て貰えていないという感覚を癒していきました。

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セラピーが終わった後、裕美さんは笑っていました。

封印をしていた、小さい頃の自分が寂しがっていた気持ちに
気づけたことが嬉しかったそうです。

その寂しさを抱いてあげた後は、気持ちが軽くなったそうです。

その後、僕から、今日のセラピーの意味を説明させていただき、
そして、いくつかアドバイスと、お家で心掛ける宿題を伝えさせて
いただきました。

「この宿題は、やってもやらなくてもいいですが、
宿題と言われると、取り組むきっかけになるでしょ(笑)」

冗談交じりに、そう伝えると

「そうですね(笑)、
じゃあ、また、頑張ってきますね(^^)」

そう言われて、裕美さんは帰られました。


お二人によりよい幸せが訪れますように。
愛をこめて 


カウンセラー原裕輝

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

直樹さんと裕美さんは、山本(仮名)ご夫婦でカウンセリングに来てくださいました。

最近、ケンカが多くお互いの間に隔たりを感じていたそうです。

お二人ともこのままでは良くないと感じていたので、
お互いに、もっとコミュニケーションを取るようにしようと話し合われたそうです。

話し合われたことを実践するようにと心掛けているそうですが、
いざ実践しようとするとお互いの言い分が出てきてケンカになってしまうそうです。

二人でなんとかしようと頑張っているのですが、ケンカになることが多いため、
第3者に入ってもらいながら、向かい合われていこうと考えてカウンセリングを
使ってみることにされたそうです。

********************
お二人とも良い関係を作りたいという目的は同じということは、すばらしいことです。
目的地が同じなのので、そこにたどり着くのに協力し合い易いと考えられます。

しかし、実際にその目的地に向かって歩こうとするとケンカになってしまう、
とのことでした。

目的地に向かうことを阻む心理が、なにかあるのかもしれません。

まずは目的地にたどり着くのに、立ちはだかる心の壁を(心理・気持ち)を
探してみることにしました。

その為にお二人に、お互いの思っていることを話していただく時間を設けました。

自分の言い分を言い合ってケンカにならないようにと、
安心して自分の意見を言っていただけるように配慮して、
僕が司会進行役となり間に入らせていただく形で話をしていただくことにしました。

お一人づつ順番に自分が思っていること、感じていることを言っていただきました。

そして、そのご意見に対して、
「ご主人(奥様)のご意見をどう思われますか?」
と質問させていただき、もう片方のご意見をお聞きする形で話を進めていきました。


********************
◆裕美さんが話してくださったこと

・二人の間に溝があるように感じる
・夫が仕事で疲れているのは分かるが、コミュニケーションを取るなどの二人
の時間が少ない。
・自分のことを見てくれていないような気持ちになってしまう。寂しい。
・夫が強い口調になる時がある。そういうところを直して欲しい。
・私もきつい口調になる時がある。そんな自分が嫌い。本当は優しくしたい。


◆直樹さんが話してくださったこと

・仕事が忙しくて時間を十分とれてないことは申し訳なく感じている。
・職場が変わって、ストレスでいっぱいいっぱいになっている。
・疲れてる時にきつい口調で、自分ができてないところを突かれるイラッっときてしまう。
・妻がつらそうにしているのを見ると、別れた方がいいのでは?と思う。
・向かい合うことを辞めたくなる。
・何をして欲しいのかが分からない時がある。
・寂しいと言われても仕事が忙しく時間を作ることが物理的に難しい。
・時間がとれないことを申し訳なく思う。

********************
お一人、お一人に思っていることを自由に話していただき、僕が司会役になって、
その意見を聞いてどう感じたか?などのコミュニケーションを取っていきました。

また僕からもお二人に複数の質問をさせていたきました。

2時間のカウンセリンのうち1時間15分ほどを話しあいの時間にとりました。

普段は一対一でお話をしているのでじっくり時間がとれるのですが、
カップルカウンセリングでは一人あたりの時間が、その半分になるので
それでも時間は短いくらいでした。

短い時間の中で、できるだけたくさんのお話をしていただきました。

それでもお二人は、言い合いになることをさけられた分、自分が思ったよりも、
言いたいことが言えた気がするとおっしゃってくださいました。

********************
そして伺ったお話からの心理分析や、僕なりの意見・提案を伝えさせていただきました。

お二人とも良い関係になるように前に進もうと頑張られていることは、
すばらしいことと思いましたので、まずはそのことを伝えさせていただきました。

そして、お一人お一人の良いところを伝えさせていただきました。

その上で改善に向けて取り組まれてみられると良いと思うポイントを、
直樹さん、裕美さんお一人、お一人に伝えさせていただきました。

ご夫婦の問題は、どちらかが100%悪いということはなく、
お互いに修正していくテーマがあることがほとんどなんです。


◆裕美さんに伝えさせていただいたこと

・きつい口調になってしまう自分を嫌ってしまうことについて、
それくらい寂しさがつらいのではないしょうか?
きつい口調を修正することはいるかもしれませんが自分を責めないでください。
ということを伝えさせていただきました。

 自分を責めると余計に心理的に追いつめられるので、
直樹さんにきつい口調になりやすくなることも伝えさせていただきました。
だから自分を責めないことが大切になります。

・依存的な気持ちが強くなり“~して欲しい”が多くなると、
不満が溜りやすくなり、感情的に苦しくなるので依存的な自分を脱出することを
テーマにされると良いと思うことを伝えさせていただきました。

 そして、依存的な気持ちが強くなる訳の心理分析をさせていただきました。
幼少期の満たされていない気持ちが関係してることを伝えさせていただきました。 

 幼少期に寂しい思いをしたことが多いそうです。
その為、その頃に満たされていない思いが直樹さんとの関係で噴き出し、
依存的になってしまうようでした。

また、この頃から自分は見てもらえていないと感じているようで、
この頃からの不安が直樹さんとの関係に影響を及ぼしているようでした。

 今後のカウンセリングで、幼少期の満たされていない気持ちを癒していかれる
ことを進めさせていただきました。

・依存的なモードになりすぎないように、“与える”ことを日常のテーマにされる
ことを伝えさせていただきました。

 与える(愛する)喜びを学んでいくと、与えて貰えないことの不満の気持ちが
でにくくなり楽な気持ちで過ごせるからです。


◆直樹さんに伝えさせていただいたこと

・奥様に罪悪感を感じているようでしたので、罪悪感で自分を責めないように
してくださいと伝えさせていただきました。

 罪悪感があると、強い口調になってしまったり、別れた方がいいのかも?
と思ってしまう心理メカニズムについて説明をさせていただきました。

また、罪悪感を手放していくことをテーマにされることをお勧めしました。

 罪悪感を手放したほうが、優しい口調になれたり、向かい合うことへの抵抗
を作らずに済むからです。 

 (直樹さんが罪悪感を感じていたことを初めて知った裕美さんはびっくりさ
れていました。
また、直樹さんも罪悪感が強い口調を作ったり、別れた方がいいのかもと
思ってしまう原因だと知り驚いていました)

・直樹さんが向かい合うことから逃げたくなる程、罪悪感モードを
過剰に抱えてしまう要因に過去の経験が関わっていると思いますとのことを
伝えさせていただきました。

これは僕から幾つか質問させていただいた内容から分かったものでした。

 母子家庭で育った直樹さんは、苦労しているお母様を見て育ってこられました。
なにか助けてあげたれたら・・・と思いながら育ってきました。

 直樹さんは、助けてあげたいと思いながらも何もしてあげれなかったと感じて
いたようです。

 その為、愛する人が苦しんでいる姿を見ることが何よりも苦痛になり、
“してあげれていない罪悪感” を感じがちになるようでした。

 お母様にとって直樹さんの存在が、どれだけ助けになったことを受け取ること、
自分を許すことをテーマにすることを勧めさせていただきました。。

・直樹さんは寂しいという裕美さんに対し、物理的に一緒にいる時間を作って
いくことで、この問題を解消されると考えていました。

 その考えに裕美さんは違和感を感じていたようでした。

お二人とお話しをしていて、その違和感を感じていることが直樹さんに
伝わっていないように思いましたので、裕美さんが感じている違和感に気づいていただく
意味も含めて僕なりの提案をさせていただきました。

「まずは裕美さんの気持ちをただ受け止めてあげることをされて見てはいか
がでしょうか?寂しいと言われたら、そっかぁ、寂しかったんだなぁと意
識を向けてあげてみることから始めて見られてはいかがしょう?
これなら時間がとれなくても、今すぐにでも始められますから」

 このような提案をさせていただきました。

そう提案させていただくと、直樹さんは
「なにかしてあげなければと思いすぎて、妻の気持ちを受け止めてあげる
ことを見落としてかもしれません」と話してくださました。

 (奥様は笑いながら、そうそうと頷いていました。それを見て直樹さんは、
まいったなぁというようなしぐさで頭をかきながらも、顔では笑みを浮
かべました。)


*******************

残りの45分の時間はセラピーの手法を使いながら、
お二人の持たれている良い関係を作りたい気持ち、お互いへの愛の気持ちを、
より引き出していくエクササイズに取り組むことにしました。

このエクササイズをしておくと、目的地に向かうことを阻むような心理
(お二人の場合依存心や、罪悪感)がでてきた時に、気持ちを切り替えるのに役立つからです。


*******************
◆セラピーの時間:アイコンタクト

お二人に協力いただき、向かい合って座っていただき、お互いに目を見てもら
うようにお願いしました。

そして、お二人に僕が「いいですよ」というまで、話したいことがあっても、
お口にチャックをしてもらうようにお願いしました。

このセラピーのポイントはお口にチャックをして、自分の感情を感じてみよう
とすることなんですね!

リッラックスしやすいようなBGMをかけながら、お互いに見つめ合って
もらいました。

向かい合ってすぐに照れが出てきたのか、お互い相手を見て噴き出したり、
照れ隠しに相手の顔を指さして「変な顔」と言ってしまったりしました。

僕からも「照れくさいかもしれませんが相手を見て感じてみようと思って
みてくださいね」とサポートを入れさせていただきながら見つめあってい
ただきました。

この照れ(恥ずかしさ)というものは、パートナー間の壁になることがあます。

照れから大切なことを伝えなかったり、行動を起こせなかったりすることが
あるので、照れ(恥ずかしさ)になれるエクササイズも兼ねていました。

カウンセリングという場で、改まって向かいあおうと気持ちを準備していても
恥ずかしさで、「変な顔」と言ってしまうくらですから、普段の生活でもこの
恥ずかしさが愛をを伝えることへの二人の壁になっているのかもしれません。

このことはセラピー終了後に3人で話をしたことでもありました。

照れに慣れてきた頃に、僕の方から
「裕美さんは優しくしてあげたいなぁという目で直樹さんを見ていただけます
か?直樹さんは、裕美さんの寂しさを愛してあげたいなぁという目で見てい
ただけますか?」とお願いしました。

裕美さんは、本当は優しくしたいと話してくださっていましたし、
直樹さんは、裕美さんが抱えている寂しさを何とかしたいと思っていたからです。

裕美さんは依存モードではなく与えたい(愛したい)モードに心をチューニン
グする練習に、直樹さんは罪悪感モードではなく愛したいモードに心をチュー
ニングする練習にもなります。

そうして30分ほどすると裕美さんの目から、涙かポロリと出てきました。

感情があふれ出てこられたようです。

言葉を出さず、そっと見つめ合うアイコンタクトは、見ている相手(見られて
いる相手)への感情を感じやすいのです。

涙を拭くティッシュをそっと差し出して、そのまま二人で見つめ合っていただ
きました。

そうすると、しばらくして直樹さんの目にも涙が浮かんできました。
そして二人で涙を流しながら見つめあっていました。

********************

「こんな機会でもないと、お互いあらたまって見つめ合う機会は、
無かったかもしれません」

裕美さんは、そう言ってアイコンタクトの時に感じていた気持ちを語ってくれ
ました。

最初は、照れくさい気持ちだけで何も感じなかったのが、
相手を感じてみようと意識している内に、普段感じている寂しいなぁという
気持ちがでてきたそうです。

その気持ちがでている時、直樹さんが自分を真剣に見てくれていることが
嬉しく感じたそうです。

そして、やさしくしたいなぁという目で直樹さんを見続けてみると、
あったかい気持ちになり涙があふれてきたそうです。

裕美さんの心の中から湧きでる愛の涙だったようです。

直樹さんは、そんな裕美さんを見ていると愛おしい気持ちがでてきて、
幸せにしてあげたいという気持ちでいっぱいになり涙がでてきたそうです。

直樹さんもまた、愛の涙があふれたようでした。

二人とも暖かくて良い気持ちになっていました。


********************
お互いへの愛を再実感して、暖かくて良い気持ちになったお二人は、
もっと幸せな関係を作ることへモチベーションが湧いてきたそうです。

そして直樹さん・裕美さんから、もっと幸せな関係を作っていくのに、
今後もカウンセリングを利用していきたいとのご希望をいただきました。

まずは、今回のカウンセリングで気づいた自分自身のテーマに取り組んでみた
いとのことでした。

相手を変えようとせずに、まずは自分を変えたいと思われたそうです。

最初は自分が持つテーマをクリアーにする為に、
しばらくは直樹さんと、裕美さんは、別々にカウンセリングを受けられて
自分を見つめ直す時間にしたいそうです。

その後、時には二人で、時には一人づつと、その時々の様子を見ながら、
カウンセリングを受けていく形にしていきたいとご希望されました。

「また、お話をする時は、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」と挨拶をして今回はお二人とお別れしました。


お二人によりよい幸せが訪れますように。
愛をこめて

カウンセラー原裕輝

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

白石さんが、カウンセリングルームにお越しになられて、発せられた第一声が

『もぅ、離婚しようと思っているんです。』

でした。

その声は、本当に蚊の泣くような声で、静かに伝えてくれました。

そして、ポツリポツリと離婚したい気持ちを話し始められました。

ここで、少し白石さんについて触れておきますと・・・

現在の奥様とは、結婚3年目。
友人の紹介でお付き合いが始まり、白石さんを気に入った奥様が、1年間の友人関係で交友を深め、お互いの気持ちを高めていって、お付き合いにいたったというわけです。

(以下、カウンセラーの言葉は「  」内です)

「なぜ、離婚したいのですか?」

彼女の暴力が、激しいんです。
叩いたり、つねったり、信じられないような暴言も吐いたりします。

もぅ、それが本当にイヤになったんです。
私も辛いんです。
なんで、あんなことを言われないとダメなんだ!って思うんです。

そんなことまでされたり、言われたりして、結婚生活を送らないといけないかと思うと、一人の方がいいと思うんです。

「もちろん、そのように思ったりしちゃいますよね。」

今まで、女性を殴る男性は最悪だって思っていました。
だけど、もぅ、腹が立って腹が立って、どうしようもないんです。
自分の感情を抑えられないんです。

だから、今後、こんなことが続くようだったら、彼女を傷つけてしまうかもしれません。

「どんなときに、そのようなことが起こるのですか?」

ケンカをした時です。
自分の気に入らないことが起こったり、僕が疲れてて、口数が少なかったりすると、すぐに叩いたり、つねったりしてきます。

そうすると、私も疲れていたり、腹が立っていたりするものですから、「やめてくれ!」といいながら、叩く手を押さえたりするんです。

でも、やめようとしないから、すごく感情的になって、さらにヒートアップしてきます。

大声をあげてしまうこともあります。
もちろん、彼女も大声で罵りあいます。

そこまでくると、本当は、グーで思いっきり殴りたいです。
殴って相手を黙らせたいです。

彼女につねられると、その部分が黄色くなったり、時には、内出血したみたいに青黒くなるときもあります。

そんな箇所が何箇所もあるんです。

痛いんです。

『痛いからやめろ!』
って言っても、やめないんです。

もちろん、ぼくもつねります。同じ痛みをわからせないと気が済みません。
本当は、顔も殴りたいです。

彼女が強いって言ってしまえば、それだけかもしれませんが、結婚ってこんなものなんですか?

私の描いていた結婚というのは、お互いが尊重し合って、助け合って、愛を深めていくものだと思っていました。

彼女の束縛により、ぼくは友達を何人も失ったような気がします。

彼女は、緊張するからといって、他の誰とも交わろうとしません。
ぼくにとっては、疫病神と結婚した気持ちになってしまっています。

だから、離婚したいと本気で考えているんです。

彼は、そこまで一気に次から次へと言葉が出てきました。

「それは、お辛いですね。しんどいでしょう。」

そうなんです。辛いんです。以前、付き合っていた彼女にしても、そんなことは全くなかったです。
ぼくが全部正しいとは言いませんし、思いません。
ただ、手を出したり、暴言を吐くことは本当にやめて欲しいと思います。

前なんかは、家からどちらが出て行くかの話になって、彼女に包丁を突きつけられました。
本当に、怖かったです。
このまま、刺されるんじゃないかって思ってしまいました。

私も、なんどか彼女の頬を殴ったことがあります。
でも、もぅ、それをしないと気持ちが治まらなかったんです。
どうしようもなかったんです。

そういって、彼はポロポロと涙が頬を伝わりました。
ぼくは、ティッシュを取りながら、彼に

「もぅ、気持ちがいっぱいいっぱいだったんですよね。」

彼は、ウンウン頷いてくれました。
そこで、続けて彼にお伺いしました。

「でも、不思議な話ですね。今までなんどもケンカをされてきたのでしょう??じゃ、どうして、別れなかったんですか??」

はい、本当に何度も別れようと思いましたし、距離もおきました。
しかし、彼女は、何事もなかったかのように、ぼくに連絡してくるのです。
僕も、なぜか許してしまうんです。
自分でも分からないのですが、イヤごとを2、3言って許してしまうのです。
彼女は、ケンカの時は、今、言ったように激しいんです。
でも、普通のときは、すごくかわいらしいんです。
だから、仲直りした後とか、そんなこと、どうでもよくなってしまって、今まで暮らしてきました。
朝も早くから起きてくれるし、食事もちゃんと作ってくれるし、夜は僕の帰りをちゃんと起きて待っててくれます。
すごく健気でかわいいところがいっぱいあるんですよ。
でも、また、ケンカになると激しいケンカをやり、もう、うんざりです。

「今まで、いっぱいケンカをされてきて、でも、今回、このようにカウンセリングに来られて、本気に別れようと思われたのは、なにかあったのですか?」

そうなんです。
自分の中でケジメをつけたいと思いました。今まで、ケンカして許して、またケンカして許しての馴れ合いの状態なので、新しくなにかをしていくのが、怖いのです。
例えば、今後、マンションや家の購入などをしてしまうと、離婚したときに、さらにリスクを背負う事になりますよね。離婚調停でも、よくわかりませんが、ややこしい事になりそうだし。

「だから、お子さんもまだなんですか?」

そうです。
子供ができたら、もう、二人だけの問題じゃないですからね。

「そうですね。でも、それでしたら、離婚がゴールになってませんか?」

そうなんです。結婚してから・・・いや、付き合い始めてから、離婚や別れを考えていました。

「お付き合いされてからですか?お付き合いされてから、どうして別れようと思われてたのですか?」

なにか、束縛されている気がするんですよ。

『あれも、ダメ!これも、ダメ!全部、ダメ!!』
って、彼女にすべて合わせている気がするんです。

「すべて、束縛されるとどんな気がしますか?」

彼女の言いなりになっている気がします。ぼくの言うことなんか、今後もなにも聞いてもらえない気がします。しかも、彼女は強いので、小さくなって、これから生きていかないといけない気がします。

「あなたにとって、離婚したいくらい自由が大事なんですね。なぜ、そこまで自由にこだわるのですか?」

あれこれ、いわれるのはうんざりです。

あっ、そういえば、幼少のときに、野球チームにいれさせられていました。
私は、運動が苦手で、どちらかといえば、本を読んだりするほうが好きだったのですが、両親が、特に母親ですね。男の子は運動ができないと!ということから、野球を練習していました。

それが、イヤでイヤで・・・でも、なぜでしょう。。。行かないといけないという、義務感みたいなものがあって、我慢して行っていました。

イヤイヤやっていたので、いつも楽しくなかったです。試合も出れないし、おもしろくないし、でも、「やめたい!」といってみても、母親には、「ダメ!しんどい事なんて、たくさんあるのよ。」って、絶対、ダメみたいな感じを覚えています。

悲しかったですね。
我慢の為か、背中や胸のあたりから、吹き出物がたくさん出ていたのを覚えています。

あのときは、自由になりたい。もぅ、いやだぁー!!そんなことばかり考えていました。

「うん??、お母さんに対する気持ち、誰かに似ていませんか??」

??・・・嫁さんですか。。。。

「そうですよねぇ。それに、幼少時代に自由がなかった感覚も、今と同じような感覚ではないですか?」

あっ・・・そうかも・・・。

「あなたが、イヤだ、イヤだって思っていることを、お母さんは知らなかったと思いますか?」

わかっていたと思います。
だって、練習にはいつも付いてきたし、すごくアドバイスしてくれていたし、頑張りをすごく誉めてくれていました。
途中で止める事は、させたくないあまりに、無理にでもさせていたと思います。

「もう一つ、お伺いしますが、すごく逆説的なのですが、もしも、束縛されることを自分が望んでいるとすれば、なぜだと思いますか?」

う~ん、束縛をボクが望んでいる・・・ですか。。。
そうですね。束縛されていないと、なにか不安ですね。
イカダで、太平洋のど真ん中にいる感じです。
なんか、そんな感じです。怖いですね。

「なるほど、そうですか。」

* * *

ここまで、お話を聞いて、セラピーに進みました。

現在、起こっている問題は、過去にも同じような経験をしておられました。
過去に我慢したことや、辛い経験などから、もう二度と、あんな思いはごめんだと思うものです。

しかし、こうして同じような問題が起きると、過去と同じような行動を起こしてしまいます。
これをパターンと呼びますが、現在の問題ではなく過去の我慢した感情を解放することによって、現在の奥様にもつ、感情を楽にすることを提案しました。

セラピーの手法は、いたって簡単です。

「野球チームに我慢しながら練習しに行ってた、自分をイメージして、そのときの自分の気持ちや感情をイメージするといったものです。」

深呼吸を何度かしてもらって、リラックスしてもらいました。

そして、彼にイヤイヤながら、練習にいく自分をイメージしてもらいました。

そうすると、真夏の暑い日に、ションボリしながら、練習に向かう自分がイメージされました。

そして、そのションボリしながら練習に向かう小さい自分の、隣に現在の自分がいるとして、このように聞いてもらいました。

「どうしたの?」

すると、彼は、半べそをかきながらいいました。
『もぅ、イヤだ!怖いんだ。監督もコーチも・・・ママもパパも。このように投げろ!このように、バットを振るんだ!って、そのようにやってるつもりだけど、できないんだよ。。。』

実際の彼の表情もベソをかいたような、顔になっておっしゃられました。

そうです、イメージしてるだけですが、幼少時代の自分と感情が繋がって、いたたまれなくなったのでしょう。

目を瞑ってイメージしている彼に、僕はいいます。

「よく、頑張ってたよね。辛かったよね。頑張ってたよね。」

そうすると、彼は、少しはっきりした声で、
「僕、頑張ってたよね?僕、弱虫じゃないよね?ボク、ボク・・・」

後は、言葉になりません。
自分が弱虫に思われることも、弱音を吐くことも禁止されておられたのでしょう。
何度も何度も、自問自答して、そして、頑張ってきた自分を思い出して、声を上げて泣きはじめました。。

泣くのが落ち着く頃を見計らって、僕は、こう続けました。

「お母さんはなにしてるの??」

うちは、料理屋をしてるから、その仕込みとか配達とかがあって、すごく忙しいんだ。

「お母さん、大変だね。」

うん。いつも、忙しそう。

「そんな、お母さんにも自由があると思う?」

ううん(首を横に振る)

「お母さんも、同じように自由がないのを感じてた??」

うわぁ~ん(泣)

「なんで、それだけ忙しいのに、練習を見に来てたんだろうね」

ぼくのことが心配だったんだ。ずっと、下手で、試合にも出れないボクを見に来てくれてたんだ(泣)
お母さん、ごめんなさ~い。
イヤだ、イヤだなんて言わずに、頑張ってたら、もっと、お母さん、うれしかっただろうに・・・。


そこで、イメージの中でお母さんに、登場してもらいまいた。

そして、イメージの中で、自分が思っている気持ちをお母さんに聞いてもらいました。

お母さん、ぼく、お母さんに心配ばかりかけてたね。お母さんが、
せっかく、お弁当作ってくれたりしたのに、全く、試合にも出れなくて
お母さんに、辛い思いばかりさせてごめんなさい。

イメージの中で、お母さんに思いのたけを話してもらいました。

「お母さんは、あなたになにか答えるとしたら、なんていってくれていますか?」

『ばかね。そんなこと、どうでもいいのよ。ただ、丈夫に育って欲しかったのよ。
ただ、それだけよ。でも、ずっと我慢させてごめんね。
あなたが、少しだけ、試合に出てヒットを打ったとき、お母さん飛び上がるほど、うれしかったのよ。
毎日、毎日、神様に祈ってたからね。

でも、今だったら少しわかるつもり、自分の勝手な思いだったのね。
私の思いをあなたに押し付けただけなのよね。ごめんね。許してね。』

お母さんが、こんなふうに言っています。

彼は、言ってくれました。

お母さんの気持ちを、感じれば感じるほど、彼は胸に熱いものを感じて、何度も、何度も声を上げて泣いていました。

そして、徐々にイメージから現実に戻ってきてもらってから、

「白石さん、どうでしたか?」

はい、まさか母も同じように自由を感じていないとは思っていませんでした。
母も束縛されていると感じたのでしょうね。

「お母さん、誰かに似てるって言いませんでしたっけ?」

妻ですが・・・エッ、妻も同じように自由ではなく、束縛されている感じてるという事ですか?

いや、それはないですよ。彼女は働いてくれていますが、自由な時間はたくさんあります。

「一人の時間はね・・・。しかし、一人の時間=自由な時間とは限りませんよ。
自由だと感じれなければ、束縛されているのと同じです。
一人でいても、掃除をしなければ、食事を作らなければ、あなたに怒られると思えば、思うほど、近くに怖い顔をして睨んでいるあなたがいるのと同じです。

あなたが、自由になることを自分自身に許してあげて下さい。
あなたが、自由にすることに許可を出さないと、自分が我慢している自由をしている人に腹が立つものです。

特に、つねに近くにいる奥さんには、余計腹が立ちますよね。

感情を出すことを許可してあげてください。
言っても無理だって思ってた、いつも自分が我慢してあきらめていたことをあきらめずに声に出して、誰かに助けてもらってください。

もちろん、助けてもらうのは・・・??」

妻です。

そこで、カウンセリングは終了しました。

白石さんは、純真無垢な少年のようなスッキリされた顔をされて、カウンセリングルームを後にされました。

* 

男性は、おちんちんがついているということで、女性に対して、無意識的に罪悪感を持っています。
白石さんは、常にお母さんが野球の練習を見に来てくれているのに、自分が試合に出れなくて、お母さんの期待を常に裏切っているように感じて、良い子供ではないように思っていたのでしょう。
そのために、非常に強い罪悪感を感じられておられたのでしょう。

しかも、お母さんは、自分の仕事もあり、常に忙しい姿を見ていたら、なおさら、自分の罪悪感を強く刺激されたのでしょう。

罪悪感が強いと、常に自分が悪いことをしているような気になります。
「すみません。」「ごめんなさい。」モードになっていることが多い
のは、どこかで罪悪感を感じておられるのかもしれません。

この罪悪感と束縛が、白石さんの深い意識の中で繋がっているために、今回の奥さんとの関係の中で、束縛を感じると、罪悪感が繋がって出てきたのかもしれません。

罪悪感が強い分、それを罰っせられる気持ちになります。
どこかで、罰せられるべきと思っているので、奥さんの暴力も耐えてこれたのかもしれません。

しかし、彼が別れられなかったのは、どこかで、束縛して欲しいという欲求が働いていたのかもしれません。

束縛されることによって、母親を思い出せるからです。

男性は、2人の理想像があります。

(1)母親のシンボルの女性

(2)SEXのシンボルの女性

本当は、束縛が大嫌いだけれども、でも、裏腹に束縛されないと安心できない、怖いという感覚がここお母さんとの癒着に出ているのかもしれません。

白石さん(仮名)にとって、お母さんとの関係は、非常に密着であり、お母さんの感覚を取り戻せるのは、抱きしめられたり、誉められたりしたのではなくて、束縛されることによって、思い出されたのかもしれません。


※この記事はご本人に許可を頂いて掲載させていただいております。
※プライベートに関する部分(個人が特定できそうな情報)はできるだけ割愛させていただいております。

吉見太一 

佐藤あかねさんがカウンセリングにいらした時、
「何からお話すればいいのか、たくさんありすぎて・・・」
と焦っていらっしゃいました。

 

新幹線の車中で一生懸命話すことを考えて来てくださったんですけど、なかなか纏まらず、時間が足りなくなることを怖れていらっしゃいました。

 

確かに今までの人生や今の状況をきちんと伝えようと思えば、2時間では少なく感じるかもしれません。
また、最初にお会いして、たった2時間で自分のことを分かってもらえる、知ってもらえるとは思いにくいですよね。

 

でも、私たちカウンセラーは、何が起きたか?という事実を大事にする一方で、その事実の背景にある「パターン」を見つめていきます。
私たちが仕事、対人関係、男女関係、家族関係、趣味など様々な局面に接するわけですが、同じ人間がすることですから、共通するパターンは必ずあるものです。
もちろん、それぞれに違う面が出てるところはありますけれど、根っこは共通しますよね。
ですから、全部全部お話頂かなくても、いくつかのエピソードをお聞きするだけで、その方のパターンを見つけることもできるんですね。

 

また、佐藤さんは見た目には意外ですけど、対人関係を苦手に感じるところもあって、カウンセリングを受けることに少なからず抵抗があったんですね。
だから、30分前に着いたのにカウンセリングルームの近くをうろうろ散歩してたそうです。
このまま帰ろうかな・・・と思ったこともあったそうです。

 

初めてカウンセリングを受けるときって、少なからずこういう気持ちになるんじゃないでしょうか。

 

「ここに来れただけで、大きな意味がありますよね」
と感じる方もいらっしゃいます。
佐藤さんもそんな一人でした。

 

一生懸命生きていらっしゃる様子がひしひしと伝わってきましたし、一人で何とかしようと頑張って来られたことを強く感じたからです。
(ご本人はそうお伝えすると「いや、全然頑張ってないんですよ」と即座に否定されてましたけど(笑))

 

●佐藤さんが抱える問題

 

「たくさんある」とおっしゃった問題を整理すると、大きく次の3つでした。
・ご主人とうまく行かない。
・子どもが欲しいと思えない。
・自分のしたいことが見つからない。今の仕事も面白いと思えない。

 

ご主人とは結婚して5年が経ちますし、佐藤さんも33歳になっていますから、周りからの「子どもはまだ?」って圧力はとても強いんですね。
ご主人も2,3年前から子どもを欲しがる素振りも見せていて、佐藤さんとしては非常にプレッシャーになっていました。

 

そのため、以前は比較的楽しめていたセックスも最近では苦痛に感じることも多いそうで、
「私は子どもを生むための道具じゃない」
「夫を男として見られない」
「性欲もほとんど感じられない」
と気持ちが沈んでしまうようです。

 

また、ご主人は優しいタイプで、話も良く合う反面、お互い頑固で結婚当初から意見のぶつかることも多かったそうです。

 

彼女は結婚前から続けている仕事があって、部下を抱える立場にいたんですが、その仕事も最近忙しく、年々きつくなるプレッシャーに押しつぶされそうになるそうです。
でも、責任感が強い佐藤さんですから、途中で投げ出すこともできずに、苦しい中、上司の期待に応え、部下の面倒をよく見てたんですね。

 

だから、お会いしたときは重たい荷物を背中に括りつけられてるような様子だったんです。

 

●背負っていた荷物を手放す~心の余裕を作るために~

 

そんなお話を伺っているうちに佐藤さんに共通するパターンがいくつか見えてきます。
( )内はどうしてそれが言えるのか?を簡単に説明しています。

 

・とても頑張り屋さんであること(←仕事や家庭などでの接し方、話し方などから)

・自立的な女性であること(←仕事や人間関係のパターンから。見た目の雰囲気も)

・情熱的な女性であること(←ケンカが多いこと。一生懸命なこと。ご主人との関係、話し方、表情、雰囲気などから)

・頭が良いこと(←勉強ができるのではなく、賢いこと)(←話し方、仕事ぶりなどから)

・周りからの信頼が厚いこと(←彼女の態度から想像に難くない)

・本当はとても素直で、オープンなこと(←表情や態度、表現方法などから)

 

こうした本来の姿を取り戻していくことがカウンセリングやセラピーの本当の目的だと思うんですね。
本当の自分(これを『センター』といいます)から外れたときに問題が起こると言っていいのかもしれません。

 

一方で、これらの「問題」を作っている背景も透けて見えてきます。
「プレッシャー」というのが共通用語のようで、今は夫婦生活や仕事に対して出てきてるものですが、実はずっと以前からあったものじゃないかな?って感じたんですね。

 

それは彼女を覆っている重たい鎧のようなものを感じたからです。
その体にたくさんの重荷を背負ってしまっているような、そんな雰囲気がありました。

 

人生を生きる上では何らかのプレッシャーや緊張感は必要なものだと思います。
適切なプレッシャーは生活に張りを与えてくれたり、目標意識や自分の居場所を明らかにしてくれるものです。
でも、あまりにプレッシャー重たくなってしまえば、何十kgもの荷物を背負っているかのようになって歩くのも困難になってくるんですよね。

 

だから、まずはその背負ってきた荷物を手放すことを最初に提案していきました。
リラクゼーション系の瞑想をして疲れている自分を実感してもらったり、イメージワークで重たい荷物を手放すセラピーをしたり。

 

それは自分自身を解放し、自由にしてあげるアプローチでもあります。
セラピーを終えると、どっと体に疲れを感じてソファから立てなくなることもありました。
「それくらい疲れてるんですよー。思い知りましたー?」
と伝えると、「はあ・・・。本当に自分でもびっくりしました・・・」というくらい。
その表情はすっかり緊張が解け、まったりした雰囲気を伝えてくれていました。

 

最初のカウンセリングの後はすぐに東京に戻る予定だったそうですが、横になりたいし、眠りたいとのことで、近くのホテルに急遽宿泊したみたいです。

後からお話を伺うと、普段の生活に戻った後も気だるいような、眠たいような感じがしばらく続いていてたとのこと。
やる気が今までほど感じなくて困ったり、周りから心配されたりもしたそうですが、その一方ではボーっとした気分で気楽な自分、心が軽く考えすぎない自分もいたそうです。

 

でも、そんなにも疲れが溜まっていたことに、本人は全然気付かなかったんですね。
彼女はカウンセリングの感想を
「まるでエステと全身マッサージを受けて温泉にゆっくり浸かったような気分」
と評してくれました(笑)

 

でも、この疲れに意識が向き始めると彼女自身も今までほどにハードワークできなくなっていきます。
佐藤さんは100%でいいところを、120%、150%やろうとしてました。
要領が良い、賢い、責任感が強い分、頑張ってやれば150%もできてしまうんですよね。
その余分な50%がストレスとなり、重荷となっていくんです。

 

セラピーを通じてちょっと余裕が生まれたようでしたので、佐藤さんには彼女の価値、魅力を改めて伝え、そして、身近な友人にも相談することをお勧めしました。
一人の力ではなかなか抜け出せないことは人生にはたくさんあります。
周りの友人や家族のサポートは本当に大切なものなんです。

 

●自分を縛る観念の数々

 

その後、彼女には日常生活の中でも色んな発見や気付きがあったそうです。
心理学講座カウンセラーのコラムを読み返すうちに新しい学びがあったり、知らないうちに自分を縛っていた「観念」という鎖に気付いたり。

(彼女はそれまでにも何度も読んでくださってたそうですが、カウンセリングを受ける前と後では読み方がまた変わっていたそうで、新しいことにたくさん気付けたそうです。よかった!)

 

「観念」というのは大人になれば誰でもたくさん持っているものなんですが、
・~しなければならない
・~すべきだ
・~すべきではない
といった、強い制約的な考えのことです。
自分では「~した方が良い」「~したい」という風に思っていて、そこまで強制的に感じなくても、実際は自分が思っている以上に心を縛っていることもあります。

 

佐藤さんが持っていた、
「主婦ならばきちんと家事をしなければならない」
「結婚したら子どもを作らなければならない」
「仕事と家庭を両立させなければならない」
というのも、間違いでは無く、むしろ良いことだと思うんですね。
でも、強くそう意識しまうと非常に強いプレッシャーになって自分を苦しめます。

 

重圧に感じるということは、その背景には
「たまには家事もお休みしたい」
「どういうわけか子どもが欲しいと思えない」
「仕事と家庭の両立はしんどい」
と思っている自分もいるわけで、この感情と観念とが“葛藤”を引き起こすわけです。

 

私達はこうした相反する気持ちを感じたとき、どちらか一つに決めなければいけないと思ってしまいます。
でも、心は「好き」と「嫌い」が隣り合わせでいられるもので、両方真実なんです。
矛盾した気持ちを認めることは勇気と心の広さが求められますが、でも、感じていることをそのまま受け入れることがとても大切なんですね。
「家事をきちんとしたい自分」も「家事をお休みしたい自分」も両方OKなんです。
理性的になればなるほど、統一したくなるものですけど、一方に絞ってしまえば、他方は抑圧されてしまうものです。

 

私達の日常でも「頭で分かってるのにできないこと」の多くは、こうした観念と心のジレンマが生み出すものも少なくありません。

 

佐藤さんも自分がいかにたくさんの観念で縛られてきたかを気付くことができ、そして、とても疲れてしまっていたことにも気付かれました。
荷物を解いて肩の軽さを感じて初めて、その重さを実感するのかもしれませんね。

彼女のように重たい荷物を背負ってしまっていたり、あるいは傷つきすぎて一人では立ち上がれないような状態になってしまっているとしたら、そうした前向きな気持ちが出てくるまで気長に心をほぐしていくことにしています。
先ほど紹介した鎖を解いたり、自分を自由にしてあげるセラピーや瞑想を提案していくんですね。

 

そうすると期間は様々ですが、やがては少しずつ前向きな気持ちが出てきて、自分を変化させ、関係性を改善していく意欲がゆっくり湧き出してきます。

 

余裕がない状態で、現状を打開しようと頑張ってしまうと、水が溢れそうなコップに更に新しい水を注ごうとするようなものです。
それではせっかく頑張って努力したとしても、残るのは一層の虚しさばかりになってしまうのではないでしょうか。

 

だから、まずはコップの水を抜くべく、心の中に溜まった感情を流していくアプローチを私達はよく最初に提案するのです。

 

それから、これはカウンセリングを通じて分かってきたことでもあるのですが、自立的な方というのは変化もその分早いんですよね。
1ヶ月お会いしないだけで、がらっと雰囲気が変わっていたり、自分でどんどんプロセスを進めて元気になっていったりするんで、こちらがびっくりすることもよくあるんです。
佐藤さんもお会いするたびにガラッと変化してることが多くて、何度もびっくりしました。
そう伝えると「根が単純だから」と謙遜されてましたけど、「単純」というか「素直さ」なんですよね。

始めは気付かなくても、だんだん自分でもその変化が受け取れるようになっていって
「本当に不思議です。明らかに自分が変わってることが分かるなんて、すごく変な気分なんです。今まで色々頑張ってもできなかったのに・・・」
とおっしゃってくださったこともあります。
それまで頑張ってきたからこそ、カウンセリングという彼女にとっての新しいチャレンジが様々な変化を起こしてくれてるんだと思います。
そういう場に立ち会えるというのは、カウンセラーというよりも一人の人間として、とても嬉しいものです。

 

大人になれば誰でも少なからず自立してるところがありますし、自分で解決しようって意識がないとなかなか前に進めないものでもあります。

 

でも、そうは頭で分かっていても疲れきっていたり、どうしていいのか分からない状態ですと、心はしーんと黙ったまま。
つまり、解決したい、しなきゃと思うんだけど、その意欲が出てこない、どうしていいのか分からないって状態に追い詰められてしまいます。

そうした時にちょっと怖いけれど、今までと違ったアプローチをしてみると、自分でも想像する以上に効果が出てきたりします。
思い切って休む、とか、誰かに相談する、ということが「新しいアプローチ」になることも意外に多いんですよ。
これを読んでくださってる皆さんも、言いにくいことでも何でも話せる相手って何人くらいいらっしゃいますか?
また、休みを取ることや自分を癒すことに「時間がない」「お金がない」「仕事が忙しい」「余裕がない」などの言い訳を付けて遠ざけてしまっていませんか?

 

●背景にあるお母さんとの問題~女性性の痛み~

 

じゃあ、なぜ、彼女はそんな重たい荷物を背負い、また、多くの観念で縛られるようになってしまったんでしょうか?
心に少しずつ余裕が生まれてきた時に、さらにその下の要因に意識を向ける事にしました。

 

そのヒントはやはり彼女が育った家庭にありました。
お父さんは仕事が忙しく、自営業ということもあって、事実上24時間年中無休のハードワーカーさんだったんですね。
だから、家庭を省みることは少なく、まるで母子家庭のような環境だったようです。

 

お母さんは感情的なタイプで、時々ヒステリックになることもあったそうです。
ですから、訳も分からずに怒られたり、そのときの気分によって振り回されることも少なからずありました。

 

お母さん自身も、お父さんが振り向いてもらえず、一人で子育てをしなければならなかった苦労もあるでしょうし、また、お母さん自身が育ってきた環境も恵まれたものではなく、苦しい時代が長く続いたんですね。

 

こうした状態は心理的にお母さんと癒着している状態になりやすくなります。
感情の行き場のないお母さんは娘である佐藤さんにしがみ付き、また、子どもである佐藤さんもそんなお母さんにしがみ付いてしまうんです。
それは、嵐の夜にガタガタ揺れる窓が怖くて、震えながら二人がしっかり抱き合ってるような状況です。

 

心理的に癒着した状態になると、自分と相手の区別が付かなくなります。
つまり、今感じている感情がお母さんのものなのか、自分のものなのかが判別しにくくなり、相手の感情に引き込まれたり、逆に自分の感情を相手に押し付けたりしてしまうのです。

 

そうした要因から彼女自身は大きく二つの心理的な問題を持つようになったようです。

 

一つ目は、お母さんを助けたいけれど、助けられない私。
自分には何も役に立たないんじゃないか?という気持ちです(無力感や自信の無さとして感じられます)。
これは本当は誤解で、実のところたくさんお母さんを助けているのですが、現実的にお母さんが楽になってくれないとそれが認められないんですよね。

 

佐藤さんはお父さんに振り向いてもらえず寂しいお母さんを見るにつけ、気に病んでお母さんの愚痴をたくさん聞いてあげたり、お手伝いもたくさんしたそうです。
もちろん、能動的じゃない部分もあって、無理に聞かされた、お手伝いさせられたって感じもあったんですけど。

 

そこでは早く自立して、心が成熟するメリットも確かにある一方で、子どもらしい愛らしさや甘えたい気持ちは押さえ込まれてしまうものです。
また、お母さんの面倒を見るようになってしまい、お母さんのお母さん役のようになってしまっていました。

 

もう一つは、人に対する心理的な壁の存在です。

 

お母さんは何かと彼女に頼ってくるところもありましたから、お母さんに侵入されないように防波堤を高く積み上げるようになったんですね。
実際に彼女宛の手紙を勝手に開封されたり、部屋の掃除をする名目で彼女の机を調べられたりしたこともあったそうです。
いわば「過干渉」の状態です。

 

お母さんとしては、不安や寂しさ、そして佐藤さんへの心配からそうした態度に出てしまったわけですが、彼女としてはたまったもんじゃないですよね。
だから、お母さんに入られないように心理的な壁を作るようになったんです。

 

この壁は癒着している関係を切ろうとする一つの試みなのですが、お母さんもさるもの。
さすが生まれてからずっと付き合ってる間柄だけあって、うまいこと防波堤を乗り越えて入ってきてしまいます。
そうすると、さらに次は高い壁を作って身構えるようになるんですね。

 

そして、それはお母さんとの関係だけでなく、他人との関係にも影響を与えます。
まるで、その壁を持ったまま人と接するような感じです。
佐藤さんの人間関係は、友達はいるけれど深く付き合えない一方で、家族やご主人など近い人には過敏に反応して関係が悪くなることが多かったんです。

 

壁越しの人間関係になってしまっていたとしたら、相手の表情や状態が見えないので、いつも不安や猜疑心を持ってしまいがちなんですよね。(それで自立して一人で何でもやろうとするようになります)
むしろ、進入されないように警戒する方に意識が向きますから、近付いてくる人ほど攻撃的になってしまうんです。

 

これらの問題は別の側面から眺めてみれば、お母さんも自分自身も否定してしまうことになります。
潜在意識的には助けられない自分を責め、壁を作ってしまい、そこに自分を押し込めてしまって息苦しさを生んでいるようでした。

 

●幽閉された女の子のストーリー

 

それは物語に例えるならば、高い城壁に閉ざされたお城の塔に幽閉されているお姫様のマインドと言えるかもしれません。
自分の中の女性性を幽閉するわけですから、女性として生きることに少なからず問題を抱えます。

結婚したいけれどできない、あるいは恋愛ができないというご相談の背景には、こうした傷ついた女性性の問題が隠れている場合が少なくありません。

 

また、傷ついた自分にさらに追い討ちをかけるようにしんどい恋愛をしたり、セックス依存症のように女性であることを傷つけるようなパターンを持つ方もいらっしゃいます。

 

佐藤さんのように結婚できても、その後セックスレスや子どもを持つ怖れとなって現れてくることもあります。

 

私達は自分が子ども時代に傷ついた分だけ、子どもを持つことに怖れを抱きます。
十分愛されなかったと感じていたり、満足できない時代が長く続けば、自分がもう一度子どもに戻りたい(潜在的な)願望を持ったり、大人になりたくない、あるいは、大人であることを認められない気持ちになったりします(ピーターパン・シンドローム)。

 

そうすると子どもを作る行為でもあるセックスに対しては距離を置き始めますし、佐藤さんの場合は、お父さんが家庭を省みずに、お母さんが一人で育児を背負い込んできた分、自分が同じ目に合うのは怖くなるんですよね。

(もちろん、これも意識的なものばかりではありません。意識的には子どもを持つことへの嫌悪感や怖れとして出てくる場合もありますし、「ええ?子どもは欲しいと思ってるんですが」という逆の思いになっていることもあります)

 

特に夫婦間ではそうした潜在意識に眠っていた感情が起こされやすく、結婚するまでは問題無かったのに、結婚後に様々なすれ違いが起きてしまうことにつながります。

 

もちろん、相手に問題があるケースもありますが、ここでは50/50(フィフティ・フィフティ)と捉えて、自分自身に向き合うことが大切です。

 

また、女性でも男性でも、傷ついていない方はいらっしゃらないわけで、多かれ少なかれ、こうした問題に直面するものだと思います。
だから、深刻に受け止める必要はなく、それが自分の状態であり、誰もが陥る可能性がある状態だと理解して欲しいところです。

 

●癒着を切り離すプロセス

 

ですから、まずはその高く積み上げられた防波堤を崩していくことが必要じゃないかと考えたんですね。
その防波堤は時に高いプライドとして存在していることもありますし、何らかの特別意識(特別に愛されたい、愛されるべきという観念)へ繋がっていることもあります。

 

直接壁を崩すのもなかなか難しいですから、その壁ができた要因でもある、お母さんとの癒着を切り離していくことをまずは進めていきました。

 

これはイメージを使うセラピーを何度か用いました。
お母さんと向き合い、そして、手放していくセッションや、塔の中に幽閉されている少女を助け出すようなセッションなど、様々な形で自分自身やお母さんと向き合って行ったんですね。

 

癒着した関係は佐藤さんの年齢分だけあると言っても過言ではありませんから、すぐに切り離せるものではありませんでした。
だから、セラピーだけでなく、宿題という形で日常生活の中でも、自分自身を見つめ、癒すアプローチを提案していったんですね。

 

例えば、お母さんにお手紙を書くこと。
これは良く提案する宿題の一つで、実際にお母さんに出さなくてもいいので、言いたかった気持ちや伝えられなかった気持ちを伝えていくんです。

 

そうして少しずつ癒着を手放していきました。
お母さんに対する感情が解き放たれてくると、様々なネガティブな思いが心を巡るようになります。
恨み辛み憎しみを感じることもありますし、寂しくなったり、悲しくなることもあります。
また、お母さんを否定する気持ちが強くなって、実際にお母さんにぶつかったこともありました。

 

その状態が自分でも不思議で「まるで反抗期みたいです」と彼女もおっしゃってました。
実際に彼女は思春期の頃はほとんど反抗したことがなく、大人になって、セラピーを受けるようになって、ようやく反抗することができるようになったんです。
反抗期というのは、親からの精神的な自立を促します。
ですから、思春期に出なくても大人になってでも出てくれば、それはそれで悪い事ばかりではないんですね。

 

その後も、少しずつ心を解放していくと、お母さんに対する態度が変わり始めたんですね。
結婚して別々に暮らすようになっても、どこかしらにお母さんの目を気にしていた部分が少なくなり、実家と連絡を取っても今までのような怯えた姿は無くなっていきました。
堂々と、きちんと話ができるようになっていきました。

 

幸い結婚して別々に暮らしていますから、こうした癒着を切り離す作業も比較的順調に流れたのかもしれません。
独身で一緒に家族と暮らしている方の場合、この辺りになると「一人暮らしがしたい」と思い始めるようになります。
それも自立しはじめた象徴として捉えることができます。

 

そうして、佐藤さんも内面的な子どもの部分(インナーチャイルド)が少しずつ成長し始めて、大人としての自分を受け入れられるようになっていったんですね。

 

そうすると、大人の女性としてもう一度お母さんに向き合えるようになるんです。
癒着を手放すプロセスは、単に切ればいいだけじゃなくて、ちょうど良い距離で落ち着くのが理想です。

 

近すぎて見えなかったものが見えてくるようになり、また、束縛からも解放され、そうしてお互いがきちんと向き合えるようになるんですね。

 

そこで、かつて満たされなかった感情(問題)の一つである、お母さんを助けるプロセスに入ることができました。

 

なぜ佐藤さんが、かつて一生懸命お母さんの言うことを聞いたり、詮索してくるお母さんとケンカしながらも一緒にいたかというと、心のどこかにこの「助けたい」気持ちが根強くあったからだと思うんです。
子どもはみんなそうかもしれませんが、親を助けたい気持ちと助けられない無力感を同時に持ちます。

 

でも、子どもにはできないことでも、大人になればできることはたくさんあります。

 

子どものまま止めてしまった心の一部を成長させてあげることで、本来の目的である「お母さんを助ける」ことを、ここで漸く実現できるようになるんです。

 

もちろん、具体的に何をどう助けるかは自分次第。
イメージを使うセラピーの中でやってみることもできます。
佐藤さんはそのセラピーにチャレンジした後、不思議なくらいの大きな安堵感に満たされたそうです。
それはまるで困難だった仕事をやり遂げた後のような充足感、満足感もあったようです。

 

また、“誤解を解く”プロセスも進めていきます。
子ども時代の佐藤さんでも、本当はお母さんの役に立っていたこと、自分の存在がどれくらいお母さんを救っていたかということを受け取っていくんです。

 

お母さんは実際は言葉にしなかったかもしれないけれど、佐藤さんという娘がいてくれたお陰で寂しさや辛さなどを耐えることができたのかもしれません。

 

これも大人のマインドを持ってお母さんを見つめていくと理解し、受け入れ、そして、無力感で傷ついていた子ども心を癒すことができます。
「本当は私、お母さんを助けられていたんだ」
そんな実感が胸に広がったとき、自信がなく、価値や魅力などないと思っていた佐藤さんの観念も溶け始めたようです。

 

 

そして、お母さんの誕生日には温泉旅行をプレゼントしてあげられるようになっていました。
今までは義理で贈っていたものが、今回は本当にあげたい気持ちになっていて、自分でもびっくりしたそうです。
そして、母娘二人で初めて旅に出たそうなんですね。
今まではお母さんから誘われても、どうしても抵抗があって受け入れられなかったんですが、今回は自分からプレゼントという形で贈ることができるようになっていたんです。

 

それは小さいことかもしれませんけど、本当に大きな変化と言っていいのではないでしょうか。

 

●夫婦で向き合うこと(パートナーシップレベルでの癒し)

 

お母さんとの癒着が手放せるようになってくると、自然とご主人との関係も変わってきました。

 

知らず知らずのうちにご主人に対しても、その影響が出ていたんですよね。
必要以上に世話を焼いたり、ちょっとしたことに過敏になってご主人を責めてしまったり。
ケンカも多かったし、セックスに関する不満、経済的な不安なども多くありました。

こうしたご主人との関係ではお母さんとの癒着の問題だけでなく、距離が遠かったお父さんとの関係にも着目する事ができます。
自営業でいつも経済的に不安を感じていたお父さんの影響で、結婚してからも十分な収入があることを頭では理解していても、つい癖のように不安を覚えてしまいます。
また、心理的な距離が遠い分、どう接していいのか分からなくなり、男性へ不信感を持ったり、距離を置いた付き合いをしてしまいがちです。

 

「近いようで、すごく遠いような感覚」
「彼は私じゃなきゃ駄目、という気持ちと、捨てられたらどうしようという不安」

 

これは彼女がご主人に対して、ぼんやりと感じ続けていた気持ちでした。
実際はご主人に対してだけではなく、過去にお付き合いしてきた異性に対しても少なからずあった感情でもありました。

 

だから、お母さんの問題と同時に、お父さんとの心理的な距離を縮めるアプローチも提案していったんですよね。
異性の友人を作ろうとしてみたり、異性のお気に入りボランティア・カウンセラーを3人見つけてみたり。
もちろん、セラピーでも男性との距離を縮める、お父さんへの感情を解放していくようなアプローチもしました。

 

お父さんと距離があるってことは、男性からの愛情を感じにくい自分がいるんですよね。
表現を変えれば、男性のいない世界に住んでるような感覚になりますから、女性としての自分を意識しにくくなります。
つまり、周りが全員女性ばかりの世界ってことですから、女の部分を意識する必要を感じなくなるんです。
例えて言うならば、女性が95人、男性がわずか5人の街に住んでるような感覚です。

 

そうすると、自分の領域に入れた男性に対しては、どこかしら同性と同じような扱いをしてしまうこと(つまりは彼を男性として扱えない問題)が出てきてしまうんです。
まるで女の子ばかりのグループに入った男性が、男扱いされないのと同じようなものですね。

 

その代表例がセックスレスですし、男でいたい彼との間でのケンカや揉め事、浮気の問題なども出てきたりします。

 

だから、お母さんやお父さんとの関係を扱うのと同時に、男性であるご主人を受け入れていくプロセスも重要になります。

 

 

ある時、ご主人に男を意識するようなセラピーをしていったんですね。
そしたら、ある瞬間に恥ずかしさが溢れてきて、自分の気持ちがよく分からなくなって、とてもびっくりされてました。
カーッと顔が赤くなっていくのが自分でも分かって、ますます恥ずかしくなり、“まるで女子中学生のようになってしまった”自分を感じたそうです。

 

付き合って7,8年(結婚して5年)になるご主人に対して今更恥ずかしさを感じるなんて意外だったようで、「信じられない」って何度も繰り返されてたのは印象的です。

 

恥ずかしさというのは怖れの一種なんですけど、感情を封じ込める壁の役割を担います。

 

ですから、ただその恥ずかしさに向き合っていき、解放してあげると壁の奥に隠されていた感情が出てきてすっきりするんですね。
単に気持ちが楽になったり良くなるだけでなく、女性らしい魅力(セクシャリティ)が表面に出てきたりもしました。
表情や雰囲気が柔らかくなったり、素直な気持ちを表現できるようになったり、また、優しさが深まるような、そんな感じです。

 

そうすると自分の中にあった意外な一面に気付くようになっていきました。
彼女の話で印象的なのは「私がこんな女だったとは知らなかった」という表現です。

 

カウンセリングの最初に「最近はどうですか?」なんてお聞きするんですけど、佐藤さんは良く「私、こんな女だとは思わなかったんですよ」って話を切り出されることが多かったんです。
最初にお会いした頃には「女」であることに抵抗を覚えてた彼女からすれば、その間の変化を象徴するものだろうと思います。

 

●心と心が触れ合うとき~愛する意味を体感するとき~

 

そして、ご主人に対して次のような課題を出してみました。

 

・今まで与えられなかったこと、受け取れなかったものは何だろう?
それを受け取ってみよう!

 

・妻として、夫としての観念は?
それを手放してみよう!

 

・彼なりの愛し方、私なりの愛し方はなんだろう?
受け取り、与えてあげよう!

 

その方向性でセラピーや実習、宿題を繰り返していったんですね。

 

そうすると徐々にですが、ご主人に対する様々な感情が出てきました。
その中でも大きなものは「ごめんなさい」という気持ち。つまり罪悪感。
どうして「ごめんなさい」なのかは、よく分からないけれど、その言葉が何度も頭の中に浮かんでくるようになったそうです。

 

こういう形で浮かぶ言葉は、潜在意識や無意識からのメッセージであることが多いんですね。
だから、どうしてなのかは意識できないんですが、とにかく「ごめんなさい」なんです。

 

だから、ご主人にその言葉を実際に伝えることを提案しました。
理由はともかく、まずは、感じたままにその言葉を伝えてください、と。

 

だいぶ勇気が必要だったようですが、彼女はチャレンジしてくれました。
その時、自分でも信じられないくらい涙が溢れ出てきて、うまく言葉にならなかったそうです。
それくらい自分は彼に罪悪感を感じていたんだな・・・ということをその時実感されたんです。

 

だから、その一言ですーっと肩の荷が下りたそうなんです。

 

そして、そんな彼女を見ていたご主人も、唐突に「俺もすまなかった」と頭を下げてくれたらしいです。
彼女もその態度にびっくりするのと同時に、どういうわけか嬉しくなって、また泣いてしまいました。

 

その時は、お互いになんでそういうやり取りが出てきたのか、全然分からなかったそうです。

 

ご主人も意図したわけではなく「反射的に頭が下がった。自分でも何でそうしてるのかが分からなかった」そうですし、彼女も何で涙がこんなに溢れてくるのか?何でごめんなさいなのか?でも、心はすーっと軽くなっていくし、不思議で不思議でたまらなかったそうです。

 

心と心が触れ合うと、そうした理屈じゃない、理解できない動きになるものかもしれません。

 

そして、その後、すっかり魂が抜けたような二人は
「二人とも無理して頑張って来たんだな」
「知らないうちにいい妻、いい夫になろうと気を使いすぎたんだね」
なんて話をされたそうです。

 

そういう話をしてる間に相手への愛情、感謝、ぬくもりがじわーっと出てきて、今までにないくらい自然に「繋がってる」という感覚を感じられたんですね。
そして、結婚して良かった・・・としみじみ感じるに至りました。

 

結婚5年の夫婦がこうしていちゃいちゃするのは傍目からは気持ち悪いものかもしれませんが(?)、お互いにはもう夢中でロマンスを感じてるんですね。
それは付き合い始めた頃よりも遥かに大きく、かつ、強く、安心できるものです。

 

それは小さい頃から当たり前のようにあった心理的な壁がなくなって見晴らしが開け、遠くにいた異性が、近くにありのままに見えた瞬間だったろうと思います。

 

その後、ご主人とは今まで以上に自然な関係になってきたそうです。
言いたいことを言えるし、尊敬や愛情、感謝を表現する回数も増えました。
始めは恥ずかしかった愛情表現も、お互いに少しずつできるようになってきたんですね。
彼女の中にあった無力感や無価値感が夫婦の間でどんどん癒されていきました。

 

本当に人を愛するということは難しいことのように言われます。
でも、佐藤さん夫婦のようにお互いがお互いに対して自然体になればなるほど、当たり前のように感謝や愛情がわいて出てくるものです。
そして、そうした幸せに包まれていると、どんなことでも許せるようになるんですね。

 

この辺になってくると彼女の雰囲気は本当に柔らかく、優しく、それでいてセクシーな香りも漂わせる女性になっていました。
地に足が着いた感じで、いつしか自分に自信を感じられるようになっていましたし、余裕を感じながら日々過ごせるようになったそうです。

 

 

そして、そのほかの問題について。
子どもを作ることに関しても、今までよりもずっと自然に考えられるようになり、
「まだ怖れはあるけれど、来るべきときが来たらできるんだろうな・・・」
って思えるようになったそうです。

 

もちろん、そうした中で、仕事に対しても自然体で接することができるようになったんですね。
最近は職場でも「柔らかくなった」「トゲがなくなってきた」という評判だけでなく、「きれいになった」とか「前より女らしくなって憧れます」って言われることも増えてきたそうです。

 

※この記事はご本人に許可を頂いて掲載させていただいております。
※プライベートに関する部分(個人が特定できそうな情報)はできるだけ割愛させていただいております。

 

根本裕幸 

結婚して4年目の谷岡さん(仮名)。
旦那さんの態度が怪しいと思い始めたのは半年ほど前のこと。
最初は気のせいと思ったのですが、何となくよそよそしい態度が気になって、ある日、ご主人がお風呂に入っている間にこっそりケータイメールをチェックしてみました。
こういう女性の勘ってのはやはり鋭いんですよね、ほんと・・・。

 

そうすると、そこには見知らぬ女性からのメールが。
ショックを受けながらも過去の履歴も見てみると、頻繁にメールを交わしているようで、その中身もまるで恋人同士のやり取りのようでした。
そして、ケータイの着信履歴にも何度となく同じ電話番号からの着信・発信がありました。

 

思わず座り込んでしまった彼女は、しばらくそのまま呆然としていたそうです。

 

知り合って2年ほどで結婚に至り、彼女はとても幸せな気分で毎日を過ごしてきました。
まわりの友達が漏らす夫婦の問題もなく「うちはとてもうまく行っている」そう信じていただけに、そのショックは計り知れないものがあるのでしょう。

 

また、ご主人は優しい人柄で、とても浮気をするような感じには見えませんでした。
でも、メールの内容を見てみると既に肉体関係も何度もあり、また、見たことも聞いたことも無い情熱的な言葉を浮気相手には送っていたことが分かりました。

 

そこにはまるで自分の知らないご主人が存在しているようだったそうです。
それが更にショックを倍増させてました。

 

そして、お風呂から上がってきたご主人に対して、勇気を出して問いただしてみたんですね。
そしたら、ご主人は謝るどころか開き直って、彼女をこう罵ったそうなんです。

 

「お前はいつもわがままばかりで、きついことばかり言う。俺にはこの家には居場所なんてなかった。だから、お前が悪いんだよ。」

 

それを捨て台詞に、ご主人は着替えを済ませると家を飛び出して行ってしまいました。
その言葉や態度が、やはり見たことも無いご主人の姿だったので、彼女は本当に悪夢のように感じて一睡もできずに朝を迎えたそうです。

 

自分が今まで信じてきたことや感じてきたことの全てが嘘だったのか?
自分は今まで何をしてきたのか?
ご主人がまるで別人と入れ替わってしまったのではないか?
これから自分はどうしたらいいのか?
など、考えれば考えるほど、落ち込むばかりでした。

 

でも、その一方で、よくよく考えてみれば、もご主人の愛情を過信してしまった自分がいて、ご主人が言うようにきついことやわがままをたくさん押し付けてしまったことにも気づきました。
いつしか、ご主人の愛情に胡坐をかいてしまっていた自分を見つけたんですね。
でも、それは同時に「私が悪い」と自分を強く責める気持ちへと変わって行きました。

 

2年前に新築のマンションを購入されたのですが、その家の中を見回してみても、どれも自分が欲しいと思って選んだものばかり。
自分では夫と話し合って決めた家具のつもりが、結局は自分の気持ちを押し付けて、彼が黙ってそれを受け入れた結果だったことに彼女は気付いたのでした。

 

結局ご主人は朝になっても帰ってこなかったので、彼女はご主人にこんなメールを打ったそうなんです。
「一晩、私も考えました。今まで、信二(夫の名前、仮名)にひどいことをしてきたことにも気付きました。今までごめんなさい。本当にごめんなさい」

 

でも、ご主人からの返事はありませんでした。

 

彼女は途方にくれて、そのまま近くに住んでいた友人の久美さん(仮名)に助けを求めました。
久美さんとは幼馴染で、いつも一緒にいた女の子だったんです。
彼女はまだ独身だったのですが、美沙さんの話を親身になって聴いてくれました。
気付けば美沙さんは泣きじゃくってしまったそうなんです。
その姿に久美さんは「美沙がそんなに泣くなんて、珍しいよな・・・」と驚いたそうなんです。

 

美沙さんは、ちょっと勝気なところもある元気なおねえちゃん、という感じで、いつも健康的でみんなに元気を振りまくような、笑顔がとても似合う女性だったんですね。
そして、恋愛でも、仕事でも、いつも周りから憧れと尊敬を受けるような女性でもありました。

 

そして、どうにか方法はないかと一緒に考えて、カウンセリングを使ってみることにしたそうなんです。
実は久美さんも恋愛のことで、僕のカウンセリングを受けたことがあって、それで勧めてくれたんですね。

 

だから、最初にお会いしたときは、その久美さんも一緒だったんです。
最初は電話で状況をお話しておきたかったそうなのですが、なかなか予約が取りにくいこともあって一緒に面談に来られました。

 

●感情の解放

 

まずは今の状況をお聞きしたり、彼との馴れ初めから現在に至るまでの関係をお話していくうちに、彼女はまた泣き出してしまったんですね。

 

ご主人は家を飛び出して以来、ほとんど帰ってくることもなく、連絡もない状態だったんです。
浮気相手と一緒かどうかは分かりませんが、その嫉妬や崩れ去った自信のために、彼女自身、相当疲れていらっしゃいました。

 

そして、辛い気持ちがたくさん出てきたので、久美さんに手伝ってもらいながら、彼女の溜め込んでいた感情を解放していくことにしました。

 

美沙さんはとても素直で芯の強い女性だったので、一層一層色んな感情を解放して行きます。
感情というのは感じてあげると、徐々にその下の感情に変わっていきます。
それはちょうど地層の発掘作業をするような感じで、掘り進めて行くと色んな感情に出会えるんです。

 

最初は強い悲しみがあふれ出てきました。
そして、その悲しみが流れていくと、次には強い寂しさが出てきます。
孤独で、一人ぼっちで、震えているような姿が見えるようでした。
その寂しさの層を抜けると、今度は不安な感覚が出てきました。

 

そして、さらに進めて行くとまた深い深い悲しみが出てきたようでした。
これはご主人との関係というよりも、もっと昔からある感情のようです。
サポートしてくれていた久美さんももらい泣きするほど強い感情でした。

 

そして、さらにその層を抜けると、一瞬、彼女はほっとした表情になりました。
ちょっとポカンとしたような感じで、彼女に「今、何を感じていますか?」とお聞きしても「何も感じないです。少し落ち着いたような感じがします。少しすっきりしました」<とのこと。

 

でも、ちょっと引っかかるところがあったんですね。
何かあるなあ、と。
もちろん、美沙さんが嘘をついているわけではないことは分かっていたんですけど。

 

それで、こう聞いてみたんです。
「美沙さん、いつも心の中にこの感覚って持ってませんでした?いつも明るく元気に振舞ってる美沙さんだけど」

 

そして、彼女は小さく「そうかもしれないです」と小さく呟かれました。
そこでピンとくるものがあったので、彼女にこう伝えてみたんです。

 

「これは“絶望”なんじゃないでしょうか?いつも美沙さん、心の中で、絶望を感じていませんでしたか?」

 

そういうと、ふっと表情が揺れて、彼女は今度は号泣し始めたんです。
後から美沙さんも「どうして涙が出たのか分からない」という感じでした。
(自分の中に当たり前にある感情に触れると、意識上は気付かなくても、こうした感情的、感覚的、身体的な変化が現れることが良くあります)

 

後から聴いた話なんですけど、久美さんも笑っている美沙さんの顔に、ふっとその時のような表情を浮かべる美沙さんを何度も見たことがあったそうです。

 

そして、さらに心の深い感情の層に入っていくことができました。
絶望の層を抜けると、そして、その下には強い熱い感情があって、怒りが噴き出てきます。
そして、その次には強い強い恐れの層があるような感じでした。

 

そんな風に何度か色んな感情の層を抜けていくと、あるところで、じわーっと本当に温かい気持ちが湧いてきたのが分かります。
この辺から苦しそうな表情から、安堵の表情へと変わっていったんですね。

 

そうするとカウンセリングルーム内の空気も明るく、温かい雰囲気に変わってきたんです。
不思議なこともあるものだなあ、目に見えない何かってのは本当にあるんやなあ、と思わずにはいられない瞬間です。

 

そして、美沙さんは最後は久美さんにもたれて眠ってしまいました。
その寝顔は本当に小さな女の子が安心しきっているような感じで、久美さんがつい頭をなでなでしてあげるようなものでした。
そうすると美沙さんは全く無意識でしょうね、久美さんに甘えるような仕草も見せ始めるのでした。

 

1回目のカウンセリングはこうして、感情をただ解放していくことだけで終了しました。

 

私たちの感情は何層にも重なっているのですが、その感情を深く掘り下げていくと、必ず、こんな安心感や親密感の層にたどり着きます。
そこでは本当に強い安心感が得られる場所で、僕も経験したことがあるのですが「状況は何も変わっていないのに何か楽な気分」というものが得られます。
これが希望の光を生み出す原点になるものなんですね。

 

美沙さんの場合は、とても感情に素直に、またまっすぐな方でしたので、一緒に感情を見ていく(感じていく)だけで、この感覚にたどり着けたんですね。
久美さんのサポートもとても貴重なものでした。

 

このまま問題が解決すればいいんですけど、そうは問屋が卸さず、また不安な気持ちや寂しさ、悲しみ、嫉妬を持つこともあるんですが、一度、こうした経験をしておくと、ちょうど楔が打たれたように心のどこかに余裕を持つこともできるんですね。
なかなかこんなセッションはできないんですけどね。

 

そこで、お別れするときに宿題を一つ出しておくことにしました。
「美沙さんがご主人に与えてこなかったものを探し出してみてください」と。

 

●手放す、自由になる

 

2回目はお一人でいらっしゃっいました。
状況はますます酷くなるようなところもあって、ご主人が会社の近くにウィークリーマンションを借りることにしたそうで、実質的な別居が始まりました。
でも、前回のセッションのお陰か、冷静に受け止められる自分もいるそうです。
もちろん強い不安に襲われることもしばしばあったそうですけどね。

 

特に彼を失いたくない気持ち(執着心)が強くで、自分がこれほどまでに旦那のことを好きだったのか改めて思い知らされたようなんです。

 

そこで、僕はこんな話をしました。

 

「美沙さんは今でも十分魅力的なんですけど、彼を取り戻すために、もう一つ上の
魅力を手に入れてみましょう。
彼の心はすっかり彼女に奪われていますよね?
これは辛いことだけれど、恋愛で言えば、失恋したも同じだと思うんです。
だから、もう一度彼を惚れさせよう、それだけの女になろう、というのが
今の目標だと思ってみてください。

そして、もう一つ辛いことだけれど、二人がお付き合いしている間も含めた6年で
二人で創ってきたものは今の状態なんです。もちろん、こんな風になりたかった
なんて思えないかもしれませんが、これも一つの事実としてきちんと向き合って
いきましょう。辛いけれど、この覚悟が必要だと思うんです」

 

そして、続けてこんな提案をしました。

 

「彼への執着を手放して、もう一度、自由になって彼を選びなおすことにしましょう。
あなたがご主人に執着して、強い依存心を見せてしまうと、彼はどんな気持ちで
美沙さんを見るでしょうか?罪悪感を感じて、ますます美沙さんから遠ざかろう
としてしまうでしょう。だから、美沙さんが執着を手放して、本当に自分自身を
見つめ始めたとしたら、彼もまた自分自身を見つめ始めることができます。

 

 その時に初めて彼は選択できるんですよね。美沙さんを選ぶのか、どうするのか、を。 でも、その前にお伝えしておきたいことがあるんですけど、最後は美沙さんが
選択する時期がやってきます。ご主人をもう一度選ぶのか、あるいは他の男性を
探すのか。今のところは信じられないかもしれませんが、この最後の選択が
一番悩むところなんですよ」
と。

 

そうすると彼女はこんな質問をしてくれました。
「今は別居しているのですが、それでも彼は私の変化に気付いてくれるのでしょうか?」と。
もちろん、目に見えない、会話を出来ない状態ですから、この疑問は当然浮かんできますね。
自分が変化したって、それが相手に伝わらないんじゃないか?伝わるわけがないんじゃないか?そう感じることが自然なことかもしれません。

 

でも、夫婦ともなれば、郵便物や実家との連絡など必要に迫られて連絡を取らなければいけない場面も出てきます。
そのほんのちょっとした時間、タイミング、言葉の雰囲気、その人に漂うムードなど、目に見えないコミュニケーションを私達はずっと繰り返しています。
目に見えない繋がりを人は持っているものです。

 

だから、僕はこういう風にお答えしました。

 

「離れているのに気付くのか?って確かに思われますよね。
でも、分かりやすく言えば、毎日一緒にいても髪が伸びるのって気付きません。
でも、1ヶ月ぶりに会ったとしたら『お、髪の毛伸びたね~』って分かるん
じゃないかな?
僕たちの変化って少しずつ起きていくものだから、毎日近くにいたら返って
変化がわかりにくくなるんです。

そうすると、一番気付いて欲しい人が最後まで気付いてくれない、なんてケースが
出てきちゃうんです。望んだ別居じゃないけれど、これはチャンスですよね。
自分がより魅力的になるチャンス。
だから、これを生かそうと思ってください」

 

そして、2回目のセッションでは彼を手放していくイメージワークをしていきました。

 

イメージの中で一歩一歩彼に近づいていきます。
そこでも色んな感情が動きます。
寂しさ、悲しみ、不信感、怒り、不安、恐れ。
でも、やがては強い愛情を感じるようになり、その頃、イメージの中では彼の目の前にたつ彼女がいました。

 

そして、彼にこう伝えてもらったんです。

 

「あなたはもう自由よ。本当に。今までありがとう。また私を選んでくれたら嬉しいけれど、それはあなたにお任せします。本当に今までありがとう」

 

涙しながらも、美沙さんは強い決意で、そう語ってくれました。
そして、イメージの中で、彼に背を向け、一歩一歩遠ざかっていただきました。

 

このセッションが終わったとき、美沙さんは
「不思議なんですけど、何かとても心が落ち着いたんです。寂しさもありますけど、なぜかホッとした感じです」
っておっしゃってくれました。

 

執着を手放すと、こんな安堵感が手に入れられるから不思議なんですよね。

 

「もちろん、一度手放しても何度も何度も執着が出てきます。そのときはこの感覚を思い出してくださいね」
とお伝えして、2度目のセッションを終えました。

 

執着を手放すことは、彼を自由にしてあげることだけでなく、自分自身を自由にするものです。
自分を解放し、自由にして初めて自分を変えていくことが可能です。
がんじがらめに縛られた状態では、なかなか身動きが取れないでしょう?
それが痛みや執着、欲求から生まれるものだとしたら、相手を苦しめるだけでなく、自分自身を本当に追い詰めてしまうものです。

 

●心の隙間を埋めていく~許しのプロセス~

 

1回目のカウンセリングの時に感じた「絶望」。
彼女はいつもこの感覚を心のどこかに持っていました。
その先に現れた恐れや怒り、痛みもご主人に対するものというよりも、もっと古い感情のように感じていましたので、この3回目にお会いした時には、その部分をもう少し深く扱っていくことにしました。

 

美沙さんの希望で詳しいことは割愛させていただきたいのですが、幼少の頃から複雑な家庭に育ち、そんな中でも彼女はくじけることなく強く明るく元気に育ってきたようです。

 

彼女の恋愛遍歴を見ると、特に10代~20代前半には自己破壊的な男性との恋愛を繰り返していたそうなんですね。

 

久美さん曰く「美沙みたいな女の子が何で、あんな男と?」と思うことが少なからずあったそうなんですね。
だから、美沙さんが優しそうな信二さんと結婚すると聞いたときは、とても安心したそうなんです。

 

一言で言えば、その複雑な家庭環境の中でもお父さんとの関係が一番大きいと感じたので、今回からはお父さんとの関係を中心を見ていくことにしました。

 

彼女のお父さんは仕事人間で、家庭を顧みないお父さんに対して、美沙さんは助けたい気持ちをたくさん持っていたんですね。
そして、彼女が持っていたどうしようもないくらいの絶望や孤独感は、お父さん自身も持っていたものでした。
お父さんの生い立ちも伺いましたが、時代背景もあり、とても孤独で、何の希望も持てない環境の中で育ってこられたようなんです。

 

だから、美沙さんの心には、大好きなお父さんを助けたいけど助けられない、ただ、見守るしかない、見過ごしかない、そんな絶望や無力感がいつも彼女の心の中にあったんです。

 

彼女が今まで付き合ってきた男性達も、傷つき、孤独で、絶望の中に生きているような男性ばかりでした。
お父さんに対して感じた「助けたいけれど助けられない」気持ちが恋愛を通じて再現されてきたような感じです。
これを私達は「パターン」と呼びます。

 

もちろん、そんなことを考えてお付き合いするわけではないし、「お父さんのことが大好きだった」なんて彼女も認めたくないもんです。
お父さんは彼女に対して、特に優しくしてたわけでもなく、また、彼女自身もお父さんを求めてた記憶がまったくないからです。
むしろ、距離を空け、嫌っていた存在として大人になった彼女はお父さんを捉えていました。

 

でも、そのパターンからは「出会いすらも無意識では選択している」ことが良く分かります。
「傷ついてる男性を見つけると放っておけないでしょう?」
って彼女に聞けば、
「うん、そう言われてみれば、そうなんですよね・・・」
と、“痛いところ突かれた”って表情して彼女は答えられます。

 

だから、このパターンを変えていくことが求められていると感じました。

 

そこで、イメージを使ったセッションの中で、そんなお父さんとの繋がりを取り戻し、助けられる自分になることを目指しました。

 

お父さんはどんな孤独と絶望の中で生きてきたのか?
そのお父さんを助けることが彼女にとってどんな意味を持つのか?
どんな女性になれば、お父さんのような傷ついた男性を助けられるのか?

 

それを感情ベースで行っていくのがセラピーの本質です。
理屈ではなく感情で。

 

それは隠れた才能を引き出すようなプロセスです。
多くの問題は自分の持って生まれた才能を使って乗り越えることが出来ます。
すなわち、彼女自身の中にある「男性を助ける才能」を解き放つことで、今回の問題も解決できる、そんな風に僕は見ていたわけです。

 

そして、それを意識ではなく、感情的に受け入れ、理解した分、深いところで自分自身との繋がりを感じることができます。
これが「自信」の正体なのかもしれません。
そうすると、隠れていた魅力が自然に、勝手にあふれ出してきます。

 

この辺はとても説明するのが難しいんですけどね。
雰囲気が変わったり、漠然とした自信を感じられたり、気付く範囲でも色々な変化が起きてきます。
でも、無意識的な変化が起きたからといって、すぐに状況が好転するわけでも、気分が晴れ晴れとするわけでもありません。
少しずつ変わってきてはいるんですけど、それが実感を伴うにはもう少し時間が必要です。

 

むしろ、さらに過酷な状況が訪れることも少なくないんです。
でも、その状況に向き合ったとき「あれ?少し私変わったかな?」って感じられたりします。

 

それに親子関係で生まれた痛みは年数が経っている分だけ根が深く、1度や2度のセッションではなかなか癒されないことも多いんですよね。
ですから、美沙さんにもじっくりと時間をかけて取り組むことをお願いしました。

 

特にこうした許しや手放しのプロセスを扱うと、その時から数日、もしくは1週間くらいは調子が良くても、その後、揺り返しが起きることがよくあります。
ですから、この後強い怒りをお父さんやご主人に対して感じても、ただそれを流してあげること、そして、久美さんでも誰でもいいから助けを求めて一人で抱え込まないことを提案しました。

 

●自分の魅力を受け入れる

 

美沙さんはこの頃から僕の勧めもあって仕事(アルバイト)を始めることにしたのですが、一番しんどかったのはこの辺りかもしれません。
別居しているとはいえ、夫婦ですから、時々連絡を取らざるをえませんよね。
着替えや郵便物などを取りにご主人が家に帰るときにはたまに顔をあわせることもあります。

 

そんなとき、彼はもう目も合わさないか、あるいは、暴言を吐いて出て行くそうで、心がはちきれそうになることも少なくないそうなんです。
そして、ついに「離婚」を切り出されたのもこの頃です。

 

彼は「(浮気相手の)彼女がどうのこうのって問題じゃない。お前と離婚するかどうかの問題なんだ」<と盛んに言うようになります。

 

こういう浮気の問題を扱うときには、かなりの確率でこういう展開になります。
それはご主人の中にある罪悪感が作り出すものでもある一方で、浮気の問題というものが、本質的には、元々夫婦の間にあった潜在的な問題をあぶりだすものなんですね。
だから、浮気相手がどうのこうのではなく、「そもそも論」的に、夫婦関係を見つめ直すきっかけになるわけです。

 

こういう時には
「お前との結婚は間違ってた」
「本当はお前と結婚したいなんて思ってなかった」
「今までの結婚生活は全部俺が我慢してたから成り立ってた」

などと、「今までなんだったの?」って言いたくなるくらい、聞けば聞くほど傷つき、自信を失う言葉が多く発せられます。
(男女逆の場合でも同じです)

 

そんな美沙さんにこんな話をしてみました。

 

「ご主人が口にする暴言ってね、すべてを信じなくてもいいですよ。
ご主人は本当はすごく優しくて誠実な方なんですよね。
そんな彼が自分のしていることに気付かないわけはないんです。

だから、ものすごく強い罪悪感をご主人が感じているんです。
もちろん、そんな素振りは一切見せないと思います。
でも、罪悪感がある分だけ心にも無いことを言い、後戻りできないような
態度を取ってしまうんです。

いわゆる罪が罪を重ねる状態ですね。
だから、今はご主人が何を言われようともじっと耐えてみて下さい。

そして、美沙さんは自分自身のことだけを見つめ続けてみてください。
今は自分に意識を向けるときです。
自分のことだけを考えていてください。

離婚するかどうかも今はご主人に委ねたままにしておきましょう」

 

そして、より魅力に磨きをかけるようなイメージワークをしていきました。
自分自身の美しさを知ること、今ある魅力をより磨くこと、そして、新しい魅力を受け入れていくこと。
どれも大切なテーマです。

 

魅力のない人っていないのですが、多くの人が自分の魅力に気付いていなかったり、大したことのないもののように扱ってしまいます。
それはそれが自分にとっては当然のように感じられたり、あるいは、原石のまま心の中に眠ったままになっていたりするのです。

 

ちょっと無意識を扱うセッションをしながら、眠っていた彼女の情熱や魅力が目覚めるようにしてみます。

 

彼女が、そのセッションの後に感じたのは、ふんわり、ふわふわ浮いているような気持ちよさ、安心感、ちょっとエッチな気持ち、といったポジティブなものでしたね。

 

それを伺って、苦しい状況でありながらも、彼女の中で心が解放され、余裕と自信が少しずつ身についてきたことが実感できました。

 

問題は何一つ解決していないけれど、感情的(心理的)には余裕を作ることは可能なんです。
むしろ、そうした余裕が生まれて初めて、問題を解決する意欲や可能性、希望が見えてくるといえるのかもしれません。

 

ちょうど最も苦しい時期でもあり、また、自分自身が変わる大きな分岐点になってきたようです。

>参考:心理学講座「バランスの法則~パートナーシップの見えない繋がり~ 」
心理学講座「二人で作る土壌~美しい花を咲かせるために~ 」

 

●強さを手に入れる

 

でも、その頃のご主人の暴言や攻撃は日々強くなっていったようです。
彼女自身、彼の信じられないような言葉の数々に、この頃には「もうだめかも・・・」といったメールをよく頂くようになりました。

 

でも、面談の時には改めて彼女自身「強くなりたい」という気持ちを持っていらっしゃいました。
今までならば、ぽっきりと折れてしまいそうな自分だったのに、こうして今毎日苦しいながらも歯を食いしばって耐えられるのに不思議な気分になることがあるようです。

 

それにこんなこともおっしゃってました。
「電話でも会ってでも『離婚や、離婚』て言うのに、一向に離婚届を持って
来ないんですよね。
それにふと気付いて『???』なんですけど・・・」

 

そんな時、僕はこんな話をしました。

 

「彼の言葉の多くは本音ではない、ということ、前にもお話しましたよね。
だから、彼の言葉よりも態度に注目していくのが大事ですよ。
そして、同時にあなたの態度の一つ一つがとても大切なんです。彼の本音を
この嵐の中で見つめ続けていくのは難しいですが、まな板の鯉ですから、
いい意味で開き直って自分自身を見つめていきましょう。
そして、嵐になびく柳のような、地震が起きても倒れない竹のような、
しなりのある強さを受け取っていきましょうね」

 

今回はご主人とと向き合うセッションをしていきました。
荒れ狂う彼を見つめるのは本当に勇気の要ることかもしれません。
そこで彼女にこういう質問をしてみました。
「あなたが彼にしてあげられなかったことって何でしょうか?」と。

 

「居心地のいい家」「安心感」「幸せ」「心地のいいセックス」などぽつぽつと答えられます。

 

それを与えられる自分になるのが今回のテーマでした。
もちろん、そう思ってもなかなかすぐに変われるわけではありませんが、その一つ一つを彼女自身が受け取り、彼に与えていく、そんなイメージワークをしていきます。
彼に与えるとき、強い恐れが彼女をかけめぐります。
「どうせ、無理なんじゃないか?」
「彼はもう戻ってこないに決まってる」
「私みたいな女と一緒になんていたくない」
「私には彼を助けられない、幸せにしてあげられない」

たくさんネガティブな感情が浮かび上がっては消えていきます。

 

一度楔を打っているので、こうした感情の流れはとてもスムーズです。
感情に向き合えると、どれだけ楽になるのか?というのを彼女は体現してくれてるようでした。

 

そうしたネガティブな気持ちに負けないように一歩一歩勇気を持って彼に近づくようお願いしました。
この近付くことが「強さ」を基礎になります。

 

強さというのは強がることではないんですよね。
恐れを感じながら、弱い自分を感じながらも、そんな自分自身と向き合うことを“強さ”というのかもしれません。

 

彼の中にある痛みを受け入れ、それでも尚、彼に手を差し伸べる力が導き出されてきます。
それは彼を助けられる強さを身に着けるような、筋力トレーニングなのかもしれませんね。
しんどいけれども、目的意識を持つことで強いハートを創っていくことができます。

 

そして、彼女には「腹を括って向き合いましょう」とお伝えしました。
彼を信じること、自分を信じること、そして、希望を捨てないこと。
そうした男性性の強いエネルギーを彼女に実感してもらいながら、一歩一歩セッションを進めて行きました。

 

セッションを終えた後には、胸がとても熱くなっていること、そして、強いセクシャリティを感じていることを教えてくれました。
男性性のエネルギーのせいでしょうか?
強さとともに、大人の女性の色香のようなものも漂ってきたのは不思議な感じすらします。

 

●自分自身を見つめ続ける~苦しみを乗り越えたとき~

 

彼の態度や自分の感情に振り回されずに、しっかりと自分自身の気持ちを見つめ続けることはとても難しいことです。
でも、乗り越えよう!という強いコミットメントがあると、そんな中でも希望を見失わずに前に進むことができます。

 

状況は最悪なままなのに、この辺から彼女はこんな話をされるようになりました。

 

「不思議なんですけど、何とかなるような気がするんですよね。
彼の言葉に怒りを感じたり、辛い気持ちにもなったりしますけど、
でも、なんか違うんですよね」

 

腹を括った分だけ、この感覚がやってきます。
これが「希望」と呼ばれるものでもあり、また「自信」と言うものでもあり、そして、彼との関係性が変わってきたことを暗に示唆するものでもあるんです。

 

彼女の表情も最初にお会いした時よりもずっと変わってきました。
それは彼女自身も感じるようで、また、周りの人達もそんな変化に気付く人が現れてきたくらいです。
そして、気が付けば、彼女自身、自分にだいぶ自信が持てて来ました。

 

だから、こんなことも言ってくれたんです。

 

「なんかね、旦那と別れてもいいかも・・・とか思えるようになったんです。
彼がそうしたいなら、そうさせてあげるのも大事だろうと。
私自身は彼と一緒にいたいんですけど、彼が嫌ならそれも仕方ないかな、と。
私にもいつかいい人が現れるだろうし、彼の幸せを考えれば、その方がいいかも
しれないです。」

 

これが彼女の本当の強さなんですよね。
こういう気持ちになれたとしたら(もちろん、揺れることはありますけど)、後は勝手に良い方向に進んでいくものです。

 

よく「彼を手放せるくらい愛せますか?」という命題をお伝えすることがあります。

 

彼を自分のものにしておきたい、それは自然な欲求かもしれませんが、でも、それはあくまで欲求なんですよね。
ですから「彼の幸せを願い、彼を手放すことができますか?」というのは辛いけれど、とても勇気ある決断なんです。

 

もちろん、いきなりその気持ちを持つことはできません。
彼女もその人生とこの短期間での出来事を通じて学んできたことだろうと思います。

 

この日のセッションは自分の心をリラックスさせるようなものにしてみました。
だいぶ頑張ってきて疲れも出てくる頃です。
強い気持ちを持つことができたとしても、それを持続できないと意味がないですよね。
だから、少し心をほぐして行くようにしました。
僕がよくストレス・カウンセリングなどでやる方法を応用したんですけど、やっぱり疲れていたのか、最後は少しこっくりこっくりされていました。

 

●彼を受け入れる~許しのプロセス再び~

 

前回のときに関係が変わりつつある、ということをお伝えしていたのですが、そう思ったのは彼の態度を聞いたのも理由の一つになりました。
なぜか用事も無いのに電話をかけてくる回数が増えたり(でも、暴言は相変わらず)、また、彼女がいる時間にわざわざ用事を作って帰ってくるような素振り(でも、顔は見ずにすぐに出て行きます)を見せたり。

 

そこから時間が経つうちに、そんな態度はちょっと見え見えになってきたいたようです。
でも、そこで困ったのが彼女。
「信二がいなくても大丈夫なようになってきて、この態度でしょ?
戻ってきてくれるのは嬉しいけど、今はまだちょっと待ってって感じで・・・」

 

そうなんですよね。
彼を手放す方向を意識し、自分を見つめ続けていたので、いざ、彼が戻ってくるような雰囲気を感じ始めると逆にそんな違和感が出てきます。

 

実は美沙さんにとっては新しく始めたバイトに慣れ始め、それが思った以上に楽しくて、“プチ独身生活”が楽しくなってきた矢先だったんですね。
しかも、そのバイト先の『かわいい男の子』が美沙さんのことを凄く慕ってくれていて、彼女自身、まんざらでもない気分だったんです。

 

自信があるから「かわいい、かわいい」って彼の相手をしてあげられてる状態なんですけど、ついつい一線を越えてしまうような、あるいは、そんな雰囲気を作ってしまいそうな状態になることもあります。
(つまり、自分が浮気してしまう、ということ)

 

女性としての魅力を再発見してるわけですから、求められることに対して嫌な気分はしないですよね。
この頃になれば美沙さん自身も、とても自分に自信を感じてるようで(本人はあまり認めたがらなかったんですけど)、言葉や態度、服装などにもそれが現れてました。

 

実際「旦那が浮気してるんです」という悩みからスタートして自信を付けていくと、今後は逆に「あたしが浮気したい」って気分になってくることが非常に良くあります。
だから、最近では「浮気問題」ならば「あなたが浮気しないように注意してくださいね」って始めの頃に伝えるくらいです。

 

夫婦はとてもバランスを取り合う関係です。
一方が浮気したとしても、それが相手一人の問題ではなく、自分自身の問題でもあります。
すなわち「今回は浮気したのは旦那の方なんだけど、一歩間違えば(タイミングがずれていたら)私が浮気していたかも」なんて状態で、浮気の問題が起きるんです。

 

だから、今回は敢えて彼をもう一度受け入れるようなセッションをしていきました。
ただ、近付いてくるご主人を受け入れる、受け止める、そして、彼を安らかにさせてあげるようなイメージワークです。

 

これが実は思ったよりもずっと抵抗が強かったですね。

 

「え、ちょっと嫌。待って。ほんとに」

 

なんて気持ちになっていました。

 

怖い気持ちもありますし、もうちょっと一人で頑張りたい気持ちもあります。
自分にまだ準備が出来ていないような感じもします。
(でも、チャンスはこういう時にやってくるものです。深層心理では準備が出来ているんですよね)

 

でも、その一方では、強い恥ずかしさも感じて来られたんですね。
この恥ずかしさが出てくると、ロマンスが再びやってくる合図なんです。

 

思春期に突然大好きな男の子とばったり出会ったときのようなドキドキ感、恥ずかしさが次から次へと沸いて出てきます。

 

(こういう時は、あまりにその態度がかわいらしくて、僕は笑ってしまいそうになるんです。)

 

でも、セッションを重ねるうちにすっかり素直になってきた彼女は、嫌がる表情の中にも喜びを隠しきれないようです。
その葛藤を感じながら、彼を受け入れることができたとき、彼女はまた“なんで涙が出てくるのか分からない”と言いながら泣き出してしまいました。

 

心の深いところで「許し」が生まれたようですね。
これで一通り準備はできたような気がしました。

 

●エピローグ

 

この後数週間して、突然ご主人から「すまなかった。もう一度やり直して欲しい」ということを伝えられたそうです。

 

彼曰く
「気持ちはあの彼女のところにあるかもしれないが、誰を愛するのか?としたら、
やはりお前なのかもしれない。
許してもらえるとは思っていないが、やり直して欲しい」
と。

 

彼女はそれを聞いて一瞬頭が空白になったそうです。
ずっと願ってきたことで、そのために頑張ってきたのに、それを聴いた瞬間は思わず逃げ出したい気持ちでいっぱいになったそうです。

 

でも、何とか踏みこたえてご主人の言葉を受け入れ、そして、新しい日常が始まりました。
もう何だか全てにおいてぎこちなく、目が合えば恥ずかしくなってしまったそうです。
もちろん、不安や怖れから全て解放されたわけではありません。

 

「ほんと、高校生のような恋愛ですよ。
恥ずかしいやら嬉しいやら、でも、いつ嫌われるかどうか不安だったり。
ほんと私、変になっちゃったんじゃないか?って思うくらいです」

 

って明るくおっしゃってた美沙さんがとても印象的でした。

 

ご主人はしばらく彼女との関係は続いてたそうなのですが、別れる方向で彼が話を進めていったそうです。
美沙さんの方も“かわいい男の子”を手放すのは惜しいと思いながらも、「やっぱりこの男なんだなあ・・・」とご主人を見つめられるようになっていました。

 

ただ、問題はまだちょっと残っていました。
それはセックスの問題。

 

浮気の問題が解決したとしても、セックスレスの状態になってしまうことがあります。
だから、僕は彼女とその後お会いした時にこう伝えました。
「もう一度、ハネムーンに出かけてみてください」って。

 

ぎこちなさがある分だけ、日常の中では分かっていても距離が縮められないことが少なく無いんですよね。
だから、二人でちょっと長めの旅行に出かけるとそれがいい“理由”や“きっかけ”になるんです。

 

ご主人が運良く休暇が取れたこともあって、二度目の新婚旅行を楽しめたそうです。
最初ぎこちなかったセックスも、徐々に今まで以上の情熱を持ってできるようになってきたそうで、二人の絆が本当に強まったことを実感しているそうです。

 

彼女から頂いたメールにはこんなことが書かれていました。

 

「浮気のことを本当に気にかけなくなる日はまだ先だと思います。
今でも嫉妬したり、辛い気持ちになることも少なくありません。
でも、信二は今まで以上にとても優しさを持って接してくれていますし、
私も強い愛情を彼に感じることができています。
だから、この問題は本当に二人にとっても、私にとっても大切なことで、
いい経験ができたと思っています。
これからいい関係を育てていって、いつかは彼の子どもを産めたら、と
考えられるようになりました」

 

苦しみを乗り越えた時、その苦しみは本当に学びになり、自信になるものです。
乗り越えた人だけが感じられるその気持ちを彼女は改めて体験してくれたようです。

 

これからまだまだ問題は出てくるでしょうけれど、この経験が自信となり、乗り越えて行けるでしょう。

 

※ご本人からのご希望により、一部割愛させていただいた部分があります。

 

(この記事は本人の許可を得て掲載しています)

 

根本裕幸

秋元さん(男性・仮名)は、僕にこんな話をしてくれました。

(秋元さん)「僕は証券会社に勤めてるんです。まぁまぁ大きい会社で給料も
結構もらってますし、職場の人間関係もそこそこで、一見順調なんです。」

(原)「なるほど。」

(秋元さん)「でもね、なにかいつも虚しさがあって物足りなさを感じているんです。
そういうのがずっと積み重なってきて、もういい加減疲れてしまって・・・。」

そして秋元さんが大学生の頃の話もしてくれました。
周りの友達が“就職を決めなきゃ”と一生懸命になって就職活動をしている時、
秋元さんは友達のように就職活動に力を入れる気にはならなかったそうです。

なぜなら、“自分は何がしたいのか? ”ということがピンとこなかったからだそうです。
そして時間は過ぎ、周りの友達はどんどん就職先が決まっていきました。
秋元さんは特に焦りはしなかったんですが、そこでご両親が焦ってこられたそうです。

「就職活動はどうなってるの?」
「いい会社見つからないの?」

秋元さんが幼い頃にご両親は離婚しており、
相談相手はもっぱら一緒に住んでいるお母さんでした。
しかしこの時ばかりは離れて住んでいるお父さんも心配して、時々電話をくれていたそうです。

不安がっている両親を見て、秋元さんも“早く仕事を決めなくては・・・”という
気持ちになっていったそうです。
でも、自分が何をしたいのかは全く思いつきませんでした。
ただ“両親の不安をなんとかしなきゃ”という思いばかりが募ってきたそうです。

そんな時、お父さんから金融関係の会社だと将来安泰(当時の話です)だから
金融会社に入ったらどうだ?とアドバイスされました。
その言葉を聞いた秋元さんは、別に金融関係の仕事がしたいとは思いませんでしたが
お父さんの薦め通りにいくつかの金融会社を面接し、証券会社に入社することになりました。

(原)「なぜ、金融関係の仕事に就こうと思われたのですか?」

(秋元さん)「父親の薦めがあったからですかねぇ・・・?」

(原)「なるほど、ご両親のアドバイスというのは影響が大きいかもしれませんね。
今日は秋元さんが抱えておられる虚しさを無くす為に、更につっこんで考えてみましょうね。
お父さんの薦めがあったけど、別に金融関係の仕事がしたいとは思わなかったんですよね。
でも金融会社にしようと決めた理由がもしあったとしたら、それは何でしょうか?」

(秋元さん)「両親が離婚してからずっと母親に育ててもらっていたんで、
とにかく母親に心配をかけたくなかったんです。
母親のためにも、とにかく早く会社を決めたいという気持ちがあったんだと思います。」

(原)「優しい方ですね、お母さんにご心配をかけたくなかったんですね。
僕も母子家庭で育ったんで、その気持ちはよくわかります。僕も同じことを考えたことがあります。」

お母さんに心配をかけたくないと思ったことや、その他にもお母さんに抱いていた
気持ちについて色々お話した後、お父さんの話がまったく出てこなかったので
お父さんに関しての質問をさせていただくことにしました。

心理的なメカニズムとして、問題の核心に近づくと本人が無意識のうちに
核心に触れる部分を避けようとして、話がずれていくことがあるんです。

(原)「お母さんに心配をかけたくないという優しい気持ちから就職を決めたということですよね。
その気持ちは本物だと思うんですね。
職種を決めたのは、お父さんのアドバイスからでしたよね。
お父さんのアドバイスに対して何か思うことはありましたか?」

(秋元さん)「金融会社に入ったら喜んでくれるかな・・・と思っていましたね。」

(原)「なるほど、あと幾つか質問させていただいてもよろしいですか?」

(秋元さん)「もちろんです、どうぞどうぞ。」

(原)「お父さんはどんな人なんですか?」

(秋元さん)「離れて暮らしているので話をすることは少なかったんですが・・・
就職や進学の時はアドバイスとかくれてました。無口で働き者の父親でした。」

(原)「そんなお父さんのことをどう思ってましたか?」

(秋元さん)「そうですね・・・・」

カウンセリングを進めていく内に色々なことがわかってきました。
秋元さんも自分で話していて今回初めて気づいた事がたくさん出てきました。

高校入試、大学入試、就職活動・・・と、いつもお父さんのアドバイスに従ってきたこと。
そうすることで、お父さんに褒めてもらいたかった、認めてもらいたかったこと。

ご両親の離婚でお父さんが家にいなくなり、幼い頃は悲しくて仕方がなかったこと。

だけど一生懸命働くお母さんに迷惑をかけないように、心配をかけないように
悲しくても寂しくても一人で踏ん張ってきたこと。

お母さんの前では寂しさは見せなかったけど、本当はずっとお父さんを求めていたこと。

・・・・いっぱい出てきました。

そして秋元さんはこう言ってくれました。

「僕が今の仕事に就いたのは、本当はお父さんに認めてもらいたかっただけで、
好きでこの仕事に就いたんじゃなかったことを思い出しました。」

(原)「子供の頃から、お父さんに認めてもらいたかった?」

「そうです、ずっとお父さんに認められたくて、高校も大学も会社も、
認められたい一心で選んでたんだと思います。」

(原)「お父さんを、ずっと求めていたんでしょうか?」

この質問をさせていただいた時に、秋元さんの目から涙がこぼれはじめました。
幼い頃ご両親の離婚でお父さんとお別れになってから、お母さんの手前
口にこそ出しませんでしたが、ずっとお父さんの愛を求めていたんですね。
だけど、お母さんを苦しめたくない優しさから、決して口には出しませんでした。

そんな秋元さんが堂々とお父さんの愛情を感じられるのが
高校入試、大学入試、就職活動の時だけでした。
それらを通して、お父さんに「良く頑張った!」と褒めてもらいたかったんですね。

幼い頃感じていたお父さんの愛を求める思いは心の奥底に抑圧されていくので、
普段意識上では“お父さんに褒めてもらう為にがんばっているんだ”とは思えないんです。
しかし今回のカウンセリングを通して、心の奥底にある欲求が今までの秋元さんを
動かしていたことがわかりました。

入社したことでお父さんに褒められる・認められるという目的を果たしてしまった為に、
もうお父さんに褒められる対象でない会社人生に虚しさを感じるようになっていったんですね。

秋元さんの心にはお父さんの愛を求める傷ついた少年の心が存在し、
愛を求めるその満たされない思いが、秋元さんの行動原理になっていました。
これからはお父さんを求める為に会社を選んだり人生を生きるのではなく、
秋元さん自身の為に会社を選んだり、人生を生きられるように
この傷ついた少年の心を癒していくことにしました。

トイレ休憩を5分程はさんでから、心の奥(潜在意識)にある心の傷を
セラピー(心理療法)を使って癒していくことにしました。

まずは、ソファーに楽な格好でもたれかかってもらい、目をつぶって
深ーく深ーく深呼吸しながらリラックスしてもらうことから始めました。

そしてこうイメージしてもらいました。

「時計が逆回転してると思ってみてくださいね。
それにあわせて秋元さんの体が小さくなっていき、子供の頃に戻っていくと
思ってみてくださいね。」

そうしてご両親が離婚した子供の頃に戻っていくイメージをとってもらいました。
子供の頃に戻った秋元さんに、ご両親が別れた時の気持ちをいくつか
質問させていただきました。

すると忘れていたことや、眠っていた悲しみの感情が湧きあがってきて
秋元さんの閉じているまぶたから涙が流れてきました。

(原)「お母さんに遠慮して、ずーっとずーっと我慢してきたんですよね。
本当はどんな気持ちだったの?」

子供に問いかけるように秋元さんに問いかけてみました。

(秋元さん)「お父さんに会いたい・・・。」

そう言うと今まで言えなかったこと、我慢してきたこと、
いっぱい溜め込んできた悲しみの涙がいっぺんに溢れてきました。
この溜め込んでいた悲しみこそが、お父さんを求める心を作っていたのです。
20数年間溜め込んでいた悲しみを、思うままに吐き出してもらいました。

感情を充分感じてあげて吐き出すことができれば、心は癒されていくからです。

そして、今まで満たされなかった思いを満たしてあげることで
実際の生活でお父さんを求める為にではなく、自分の人生を生きる為に
行動できるように、傷ついた少年の心を癒していくことにしました。

(原)「お父さんと会ってどうしたいですか?」

(秋元さん)「キャッチボールがしたい。」

イメージの中でお父さんに会いに行き、お父さんとキャッチボールをしてもらいました。
実際にお父さんに会ってキャッチボールをしているわけではないのですが、
イメージの中でお父さんと会っている喜び、お父さんの愛情を感じている感情を
充分に感じてあげることで、潜在意識レベルで満たされない思いは満たされていき、
傷ついた少年の心は癒されていくのです。

こうしてゆっくり1時間という時間をかけ、セラピー(心理療法)を進めていきました。


セラピー(心理療法)が終わった後の秋元さんの顔は
少年のように無邪気な顔をしており、とてもスッキリされたようでした。

そしてこれからは自分の為に会社に行って仕事をし、そして自分の為、家族の為に
人生を生きたいと話してくれました。

カウンセリングを終え、その後何通かお礼と近況を記したメールをいただきました。
会社で感じていた虚しさが消え、今は自分の為に会社に行こうと思いながら
毎日出勤されているそうです。
“自分の為に・・・”という今までの秋元さんの心には存在しなかったことを考えながら
会社に行っているせいか、まるで新入社員に戻ったかのように
仕事に新鮮味を感じているとのことでした。

そのメールを見ながら、セラピーが終わった後少年のように無邪気な顔をしていた
秋元さんを思い出し、とても嬉しい気持ちになりました。


※実はここで紹介した以外にも色んなアプローチをしています。
ここでは大きな流れを見たときにポイントとなった部分を紹介させていただきました。

また、秋元さんの希望で公開を割愛させていただいた部分も一部あります。

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

原裕輝

初めて上原さん(仮名)がカウンセリングルームに来られたとき、当日にご予約いただく珍しいケースだったこともあって、 緊張しながら、うつむき加減に悩みをお話してくれたことを良く覚えています。
・なかなか人とうまく話せないんです。
・男性と恋愛はおろか、まともに付き合うこともできないんです。
彼女の悩みは大きく分けるとこの2つに集約されていました。

 

本当は元気で、明るい性格なのは顔つきや雰囲気などから伝わってくるのに、どうしてこんなに大人しいのかな?なんて疑問に思ったことを今では懐かしく覚えています。

 

その数ヵ月後、何回かのカウンセリングを通じて、笑顔で話もでき、言いたいことを結構言えるようになってきていたので、僕がこんな風に彼女に話しかけたんです。
「はじめの頃って、そんな風にしっかり話せなくて『人とうまく話せないんです』とか『何を話していいのか分からないんです』みたいなことを良くおっしゃってましたよね」

 

そうすると彼女は、はっ?という表情になって、
「え?そうでしたっけ?」
とおっしゃるんです。

 

「おいおい」と心の中でツッコミを入れながら、この機会に彼女の変化を一つ一つ追ってみることにしました。
お互いに記憶を手繰りながら。
その結果が以下の表です。

カウンセリングを受け始めた頃
今現在(数ヶ月後)
人と話していて沈黙が怖かった。 そんなこともあったっけ???という感じ
何を話していいのかがわからずによく混乱した。 そんなこともあったっけ???という感じ
会社の人におやつの飴ちゃんを配るタイミングをすごく気にしていた。 ぜんぜん気にならない。そんなこともあったっけ?と思うくらい。
人にどう思われるのかをとても気にしていた。 多少はあるけど、意識することはかなり減った。
「どうせ私は・・・」という口癖が多かった。 そういう言い方はあまりしなくなったと思う
友達に男性を紹介されるのを異常にためらってしまった。(どうせダメだと思った。嫌われるに決まってる。) ダメならダメで仕方がないな、と思えるようになった。最近はむしろどんな風に自分が相手に移るのかも(怖いけど)興味を持てるようになった。
決まりきった友達しかいなくて、交友関係が異常に狭いと思う 友達の友達など、交友関係は徐々に広がりつつある。先日も、お気に入りのレストランに友達の友達を招いて食事会を開いたら、すごく気に入ってもらった。
友達や先輩、同僚などの一言をとても気にしてしまって、落ち込む自分がいた 落ち込むことは落ち込むが、前ほど気にしなくなった。 また、前ならきついことを言われても落ち込むだけだったが、今は、その人から「あんまり気にしないでね」などのフォローが入る。(無意識的な変化。象徴)

 

真央さんの例に漏れず、対人関係(男女関係も含む)の問題は、髪の毛が伸びるように毎日少しずつ変化していきます。
彼女はご家族と同居しているOLさんなのですが、会社に行けば毎日同僚や上司がいて、家に帰れば家族との対人関係が必ず毎日あります。
電車通勤ならば見知らぬ人とは毎日接しますし、プライベートな時間には友達との時間もあります。
毎日どこかで対人関係が起こってくるので、なかなか自分の変化に気づくことができないんですね。
それで、何かの拍子に「あ、そういえば、昔はこうだったけど、今はこうだなあ・・・」と思いついたり、友達や家族から「あんた、最近変わったなあ」と言われたりして初めて「あ、そうか」と気づくものなんです。
だから、彼女が「え?そんなことありましたっけ?」というのは、記憶力がどうのこうのという問題ではなく、とっても順調に変化が起きてきた証拠でもあるんですね。

 

カウンセリングを受けた直後にがらっと変わるケースも無いわけではないのですが、多くは真央さんのように知らないうちに変わっているものなんです。
だから、カウンセリングも何度か回数を重ねるうちにこうした変化を確認していく機会を持つことも少なくないんですね。

 

もちろん、僕自身、変化というのはそういうもんだって認識があるので、毎回毎回お会いするたびにどんな変化が起きているのかを結構繊細に気にしています。
プロとしてカウンセリングというサービスを提供させていただいている以上、まったく効果がなかったらすごく責任を感じますし、自分の腕を疑うことにものなりますよね。
僕のカウンセリングを何度か受けらた方は経験があるかと思いますが、時々僕が昔話をし始めるのは、こうした意識からなんです。
ぼーっとしてますけど、ぼけちゃったわけではありません(笑)

 

真央さんにもご了解を頂いて、今回は彼女のたどったプロセスを順を追って紹介させていただこうと思います。

 

●家族との関係

 

対人関係の基礎は生まれ育った家族との関係が基本となります。
真央さんの場合は、ご両親と弟さんが一人の長女として育ちました。
お父さんはけっこうな問題児で、ギャンブルや女性関係などで家を空け勝ちだったんですね。
職人でしたが、仕事もあまり熱心ではなく、でも、変に面倒見がいいところがあったんです。
一方、お母さんは、感情的な人で、お父さんの仕事や女性関係に悩まされて暗い毎日をすごし、彼女に愚痴をよくこぼしていました 。
お父さんにかまって貰えない寂しさからか、過干渉で、おせっかいなところがあって、彼女自身、コントロールされたり、いろいろ心の中に進入された経験が少なからずあったようです。
今でも、友達と遊びに行こうとすると「あら、毎週お出かけしていていいわね」なんて嫌味を言ってくるタイプで、依存的な部分も多分にあるようです。

 

そんな彼女はずっと優等生で迷惑をかけないいい子をしてきたんですね。
ただ、過干渉だけれど、あまり甘えさせてくれないお母さんからの愛情には飢えていたようで、 「家のお手伝いをしなさい」といわれても、断固拒否していたそうです。
これはお母さんが最後にはあきらめて「仕方ないわね」という言葉を待っているんですね。
そうして、お母さんからの愛情を確かめていたところもあるみたいです。

 

●そこから生まれるパターン

 

お父さんとの関係では、距離がある分だけ、お父さんを遠くに感じますから、それが彼女の男性との距離感のベース(ものさし)になります。
また、お母さんがお父さんに苦しめられている様子を目の当たりにしているわけですから、男性への不信感や疑いの気持ちを持つようになって、男性となかなか近づくことができなくなってしまうんですね。

 

また、お母さんとの関係では、過干渉で心の中に進入された、侵略されたような痛みを持つので、その対応策として心の中に城壁を作るようになります。
それは自分自身を守るための防衛本能みたいなものなのですが、お母さんもさるもの、ちょっとした城壁ではすぐに乗り越えてきてしまいますから、徐々に高く、分厚い壁を心の中に建設していくようになるんですね。
そうすると、人に対しても「侵略されるのでは?」という恐れでできたその壁を使って接するようになりますから、人との間に何らかの障害を抱えやすくなります。
壁が高ければ、人とは壁越しの会話になりますから、なかなか親密感は感じにくいですよね。

 

また、同時に小さな女の子としてはお母さんに従わざるを得ない部分も少なからずありますから、お母さんの顔色を伺うようになります。
これは子どもならばみんなしてしまうことなのですが、お母さんが感情的になってしまう分、行動に一貫性がありませんから、表情や態度をこと細かく伺って自分の態度を決めるようになるんですね。
そうすると、対人関係でも相手の表情を伺ってしまったり、必要以上に気を使いすぎるようになるんです。

 

そして、もうひとつの側面ではお母さんとの「癒着」の問題も隠れています。
子どもたちはお母さんのことが好きですから、お母さんが苦しい表情をしていると、とても胸が苦しめられるんです。
真央さんのお母さんはお父さんとの関係がよくなかったことから小さい頃から愚痴をこぼし、苦しんでいらしたようです。
それゆえに彼女は「お母さんに迷惑をかけてはいけない。私までお母さんが困るようなことはしてはいけない」といい子ちゃんになり、優等生になってきました。
自分の気持ちを抑え、我慢することと引き換えに。
そういう風に真央さんは困っているお母さんを助けようとしたんです。

 

子どもが困っている親を助けられる方法といったら、それくらいなのかもしれません。
我慢して、いい子をして「私は大丈夫よ」というほかは。
でも、そこで助けたい気持ち(でも助けられない無力感)から、お母さんに心理的に癒着してしまう構造が生まれるのです。

 

彼女が抱えていた問題の中核はこのお母さんとの関係にありました。
「何を話していいのか分からない」「沈黙が怖い」「飴ちゃんを配るタイミングが怖かった」といった、人と接するときに感じていた不安の多くはそんなお母さんとの関係からやってきたようです。

 

●お母さんと向き合い、そして、手放し

 

それで、まずはお母さんと向き合っていくことにしました。
小さい頃の感覚はインナーチャイルド・ワークを用い、また、今のお母さんとはイメージを使って向き合う実習をしながら、向き合っていきます。
最初はとっても嫌な感情がやってきます。
「お母さんを思い出してください」って僕がお願いするだけで、表情が険しくなったり、思い浮かべ続けるのがつらくなってしまったりするものです。
でも、そこを真央さんはしっかりと向き合おうとしてくれたんですね。

 

また、お母さんとの癒着を手放していくことも一生懸命やってくれました。
この癒着の元をたどれば、先ほどお話したようにお母さんを助けたい気持ちから生まれてきたわけですから、イメージの力を借りて、お母さんを助けてみることにもチャレンジしてみました。
子ども時代の自分は助けられなくても、大人になった今ならばできることは山ほどありますよね。
そうして、未完結になっていた「お母さんを助ける」というテーマを克服していきました。

 

そうしているうちに徐々に現実の世界でもお母さんとの関係が変わってきました。

 

お母さんに嫌味を言われても今までほど気にならなくなったり、逆に、自分からお手伝いを申し出たり、自ら望んで週に1、2度は家族のための料理を作る日まで設けるようになってきたんですね。

 

●お父さんとの関係を見つめていく

 

男性への苦手な感覚や、彼女が会社の中で感じていた居心地の悪さの多くは、自分をあまりかまってくれなかったお父さんとの関係に起因する部分が多いようでした。
お父さんに対しては真央さん自身、強い怒りの感情を持っているような感じです。
「許せない・・・」
そんな言葉も何度も口にされたように覚えています。

 

でも、お母さんとの関係が良くなったことが成功体験になったのか、あるいは僕を信頼してくれたからなのか、果敢にも彼女はお父さんと向き合うことを決意してくれました。

 

彼女は男性が苦手でしたが、僕はオトコですから、カウンセリングを通じてコミュニケーションを図っていくだけでも、「オトコ慣れ」する機会になるみたいなんですね。

 

だから、僕に対して素直な気持ち(もともと真央さんはとっても素直な方なんですが)をどんどん表現していけるようになるのと、会社や友達の紹介で知り合った男性と普通に話せるようになるのは、ほぼ同時進行で起きていきました。

 

だからこそ、以前は「嫌われるに決まってるわ」と思っていた部分が、恐れは多少はあるけど「まあ、なんとかなるかな」と少しずつ余裕を持てるようになってきたのも、そうしたチャレンジの効果かもしれません。

 

●自分から近づく~与えるやり方を学ぶ~

 

ご両親との関係を扱う以外に、彼女には自分から人に近づくトレーニングもやっていきました。
先ほどお話したように人と接するところで城壁を構えてしまっていますから、彼女の対人関係はどちらかというと「受身」=「待ち」の姿勢になってしまうんですね。
つまりは、誘われたらついていくけど、自分からはあまり誘わない、そんな関係が多かったんです。

 

だから、自分から近づくことができるように、「与える」ことを学んでいきました。
具体的には、ただ「何かしてあげるとしたら、何をしてあげたいだろう?」という意識付けをしていくんです。
「疲れているみたいだから、肩を揉んであげたいな」
「寂しそうだから、話を聴いてあげようか」
「お腹がすいているのかな?ご飯作ってあげようか」
実際にする/しないは別にして、そうした与える気持ちを持つことは対人関係でとても大切な要素です。

 

でも、受身に回ってしまった分だけ、なかなか自分から与えることは難しくなってしまうんですね。

 

彼女も実際に初めて実習をしたときには、ほとんど何も思いつきませんでした。
何もしてあげたいことが浮かばない・・・この経験は彼女にとってはすごくショックだったみたいなんですね。

 

でも、その後、何度かこの実習を繰り返すたびに、格段に「してあげたいこと」が浮かぶようになってきました。
日ごろから目の前にいる人、近くにいる人に対して、「してあげたいこと」を考えてみるように宿題として出していたんです。
その効果かもしれませんね。

 

そのうち彼女は自分のお気に入りのレストランに友人を誘って出かけることが多くなってきたそうです。
自分が好きなものを相手に提供したり、一緒に分かち合おうとするときって、すごくエネルギーが高まりますよね。
「すっごくいいところだから、行って見ようよ!」って誘いやすくもなります。
その後、そのレストランは彼女にとっての迎賓館になったようで、知り合った人は必ずといっていいほど“ご接待”しているみたいです。

 

そんな風に与えることを学ぶことで、自分から人に近づいていけたり、また、その態度から好感をもたれやすくなるんですね。

 

●最後に

 

そうした経験を通じて、最初にお話した表の完成を見るわけです。
でも、彼女はまだまだもうひとつのテーマが残っています。
「彼氏を作ること」
それに、対人関係についても、細かいことかもしれませんが、いろんなテーマが他に出てきました。
なかなか自分の問題を本当にクリアにしていくのは難しいことかもしれませんが、彼女自身も言ってましたが「きっと何とかなるんじゃないか?」って楽観的な気持ちをもてるようになります。
こうなると強いもので、前向きにチャレンジし続けることができますから、さらに大きな成功や自信を手に入れやすくなるんです。

 

残りのテーマやこれから出てくるいろんな問題に対しても、きっと前向きに取り組んでくれるでしょう。
そして、また何か分からないところが出てきたら、 ひょこっとカウンセリングルームに訪れてくれるんじゃないかって思ってます。

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

 

根本裕幸

一緒に暮らして数年経つ内山さん(仮名)。
結婚したいと思いつつ、でも、二人の間にはタブーになりつつある話題でもありました。
そんな中、彼が昨年から不遜な動きをし始めます。
なんとなしに女の子の影がちらほらし始めたんですね。
メールでいろいろやり取りしているみたいで、気が気じゃなくてカウンセリングにこられました。

 

何度目かのカウンセリングの時に、さくらさんとお父さんとの関係がクローズアップされてきましたので、今回はその時の様子をお伝えしたいと思います。

 

●トラウマ

 

彼女のお父さんは仕事人間で、優しさもある反面、あまり構ってくれないところがありました。
だから、愛されてる実感も持てずにちょっと心理的に距離のある関係になっていました。
彼女はこの距離感をベースに男性を作るようになりますから、彼氏ともちょっと距離のある関係を作りやすいんですね。
※詳しくは心理学講座「お父さんとの関係を見つめてみよう(女性編) 」をご覧下さい。

 

彼との間に「仕事」を挟めばどちらかがハードワーカになり、「異性」を挟めば浮気問題に、(物理的な)「距離」を挟めば遠距離恋愛になってしまうわけです。

 

でも、彼女自身も距離はありつつもお父さんからの愛情を感じていたんですね。
恥ずかしがり屋さんだったり、意地を張っていたり、そんなお父さんの弱さもきちんと受け入れていました。
だから、彼女は男性からの印象は良く、彼女自身も男性と知り合うことに「恥ずかしくて緊張してしまうけど、でも、なんとなくうまくいってしまう」という関係を作ります。

 

また、彼女は幼い頃、きょうだいのように仲のよかった隣の家の男の子がいました。
毎日家を行き来する仲で、今から思い起こせば「初恋?」なんて感じられる相手でもあったんですね。
ところが、まだ彼女が4歳の時に、突然お隣の家が引越ししてしまったんですね。
大人になってもまだ覚えているくらいショックな経験だったそうです。
この体験は彼女にとっては大きな喪失感となり、大好きな人を失う恐れを作り出すようになります。

 

●幼少の時の体験が影響を与えるもの

 

彼との関係にこの幼い頃の経験がどう影響しているのかを見ていくことにしましょう。

 

お父さんとの距離のある関係から、彼に対してすごく気を使ったり、遠慮したりといった反応が出てきます。
でも、お父さんに愛されたように、その距離で彼からの愛情を感じることもできてしまうんですね。
でも、ちょっと心理的な距離が空いてしまうと彼側からすれば、やっぱり寂しくなってしまうんです。
それで、彼は他の女の子と仲良くなろうとしたのかもしれません。

 

また、距離がある分、彼のことを冷静に見ることができますから、パートナーとしての査定なんかもしてしまうんですよね。
(で、よくないところを見つけて困惑したりしてしまいます)

 

そんなところから、一緒に暮らしているのに、頭では「結婚したいな・・・」と思いつつも、でも、なかなかその話題を避けてしまったり、結論を先延ばししてしまったりしてしまいますし、その一方で、仲はいいのにセックスレスになってしまうんです。

 

また、彼女にとっては隣家の男の子が突然いなくなってしまった経験から、「とっても仲良しな人」=「急にいなくなっちゃうかも?」という図式(感情的には「不安」や「恐れ」)が心の中で成り立ってるので、彼と仲良くなればなるほど、その喪失感が二人の関係が前に進むことを邪魔していきます。

 

つまりは、いなくなっちゃうことを想定してお付き合いするようになる、というか、もう喪失感でひどく傷つかなくても済むようにちょっと防衛的にお付き合いするようになるんです。
もちろん、無意識的にしてしまうことなので、まったく意識できないんですけどね。

 

でも、好きな気持ちがあるから彼に居なくなっては欲しくないですよね。
それで、輪をかけて彼に気を使うようになりますし、彼に嫌われないように物分りのいい女になろうとします。
これではすごく我慢していることが増えそうですよね。
実際に内田さんは彼が家にいるときは、ほとんど彼に合わせた生活をしているようです。
部屋が暗いのが好きな彼に合わせて部屋の電気をすべて消してしまったり、テレビがあまり好きでない彼に合わせて、彼が帰ってくるとテレビを消して、ラジオに切り替えたり。
今回のセッションでは直接は扱いませんでしたが、彼女自身、とっても感情を抑圧してしまっていました。

 

●そのパターンを癒すアプローチ

 

ですから、今回のセッションではそんなお話を伺いつつ、お父さんとの距離感を縮めること、そして、4歳の頃の喪失感を手放すことをテーマにしてみました。

 

まずは、インナーチャイルド・セラピーの手法を応用して、イメージの中で4歳の女の子を思い浮かべてもらいます。
そして、そんな彼女が、大好きだったお隣の男の子を失うシーンを回想していきます。
急にいなくなってしまったわけですから、きちんとお別れの言葉も伝えていないんですよね。
だから、彼女の心の中でお隣の男の子との関係は未完結なままでした。
それを完結させるために、男の子に伝えられなかった気持ちを表現してもらうことにしました。
※僕たちの感情は実際にそれを体験しても、こうしたイメージを使って後追いで体験することになったとしても、心の世界ではほぼ同等の効果をもたらします。

 

徐々に心の蓋が開いて、内田さんの隠れていた痛みが表面に出てくる様子です。
彼の名前を呼んでみたり、寂しい気持ちを伝えてみたりしながら、その喪失感を徐々に手放していきます。
悲しみのエネルギーが彼女の体からじんわり浮かび上がってくるような感じすら伝わってきます。

 

そして、一呼吸おいて次はお父さんと向き合う番です。
イメージの世界の中で4歳の女の子と一緒に家に戻り、お父さんの帰りを待ちます。
お父さんを待つ、という時点で彼女の表情はこわばってきました。
それくらいお父さんとの距離を感じ、恐れがあったんですね。

 

ここから先はそのイメージの力を使って作り上げた世界です。

 

しばらくしてお父さんが帰ってきても、4歳の女の子はなかなかお父さんに近づけませんし、思い切って近づいてみても、距離が近づくにつれて俯いてしまい、お父さんの顔をまともに見ることができないようでした。

 

そこでは彼女に4歳の女の子をサポートしてもらいながら、お父さんに伝えたいこと、聞きたいことをコミュニケーションしていきます。
「お父さん、いつもがんばってるね。ありがとう」
「お父さん、寂しいの?」
「お父さんのこと、大好きだよ」
内田さんがそのとき思いついた言葉を次々お父さんに伝えていきます。

 

すると、徐々にそのイメージの中でお父さんが涙を見せ始めました。
びっくりしつつも、ぐっと優しい表情になってお父さんを慰める内田さんがそこにいます。

 

ずっとお父さんの寂しさとか悲しみを彼女は見てきたんですよね。
でも、それと知っていても、かまって貰えない寂しさや恐れの中で彼女はお父さんのその要素を見過ごしてしまっていたようです。
これが彼女にとっては潜在的な罪悪感になってしまってもいるようで、彼女の口からは自然と「ごめんなさい」という謝罪の言葉が出てきました。
自分ではぜんぜん意識していなくても、心の中では罪の意識をずっと持っていたのかもしれません。

 

そして、その寂しさや孤独感が今の彼氏の心の中にもあることを、彼女はどこかで知っていたんです。
でも、お父さんも彼もなかなかそんな部分を見せてはくれないし、助けさせてくれないわけですから、彼女は分かっていても助けられないもどかしさや無力感をずっと心に抱えていたようです。

 

つまりは、お父さんとの関係の中でおきてきたことが、感情的に彼との関係で再現されているようでした。

 

そこで、イメージの中でお父さんを抱きしめてもらいます。
無力感を手放すために、感情的な成功体験を作り出すために。
そして、お父さんにさらに感謝の気持ちや愛情、聞いて欲しかったお話などを次々と伝えていきます。
お父さんは4歳の女の子の腕に抱かれて恥ずかしそうに、でも、うれしそうな表情に変わっていったようでした。

 

そして、お父さんに心からの笑顔が戻ったとき、今度は彼女がそのお父さんからの愛情を受け取る番です。
イメージの力を借りて、お父さんに抱きしめてもらいます。
このときの彼女の表情は本当にうれしそうで、明るい顔になっていたんです。
ちょうどパッと花が咲くようにカウンセリングルームの部屋までも明るくなったようでした。

 

セッションを終えると、もともと無邪気な内田さんの笑顔にさらに磨きがかかったようで、ちょっとまぶしいくらいでした。
芯の強さや自信を手に入れたような、そんな雰囲気も漂わせていましたね。

 

この1回のセッションでお父さんからの影響がすべて無くなるとは思いませんが、お父さんに近づけ、また、助けられたことはひとつの成功体験のように心の中に刻まれていくと思います。

 

その場でこうして紹介させてもらうことをお許し頂いて、今回のカウンセリングを終了しました。

 

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

 

根本裕幸

結婚して3年目のめぐみさん(仮名)。
ご主人とは付き合って6年になりますが、結婚前後からセックスレスの兆候があったそうです。
そして、「結婚すれば変わるだろう」という期待も虚しく、ここ数年セックスレスの状態が続いていました。

 

ご主人はシステムエンジニア。
朝早くから終電まで忙しく働くビジネスマンです。
帰ってきたときには、本当に疲れ果てているようで、彼女自身、普段感じていることや、これからのこと(子どもはどうするの?)など、を話し合う機会もほとんどもてません。
土日の休みの日にも彼は寝てばかり。
めぐみさんの心には「私って何なの?疲れているのは分かるけど・・・」という疑問が日に日に強くなっていったそうです。

 

彼女は今は大阪に住んでいますが、元々は横浜の出身で周りに友人も少なく、一人で抱え込んでしまうほか無かったのかもしれません。

 

そんな中でも学生時代からの親友2人には相談したそうです。
独身の友人は「そんなの寂しすぎるじゃん。さっさと別れるか、浮気でもしてみたら?」と。
もう一人の友人は結婚して子どももいらっしゃるのですが、同じ悩みを持っているようで、「分かる分かる。辛いよねー。どうしたらいいんだろうね。」とじっくり話を聞いてくれたそうです。
その時に、こんなホームページがあるよって教えてくれたのをきっかけにカウンセリングサービスを知ることとなりました。

 

話を聞いてもらったり、ホームページの色んな話を読むたびに少しずつ気が軽くなったものの、家に疲れた顔をして帰ってくるご主人を見るたびに気が滅入るようにもなってしまったので、思い切ってカウンセリングを受けてみようと思ったそうです。

 

●ファースト・ステップ~感情の解放~

 

初めてお会いした時から、とても我慢していらっしゃる様子が目に浮かびました。
知り合いの少ない大阪の地で、一人で家にこもっていることが多かったそうですから、無理も無いですよね。

 

元々は彼女もキャリア志向の女性で、たまたまご主人が彼女の会社のシステムを構築したことがきっかけで知り合い、付き合い始めたそうです。
彼女は東京の会社、彼は東京にも事業所はありますが所属は大阪ですから、遠距離恋愛です。
ただ、ご主人も出張が多かったせいで、月に何度かは必ず会えていたんです。
それで結婚を機に、大阪へ移住。
不安もあったそうなのですが、自立心が強かったり、大阪という土地に興味があったりしたので、あまり抵抗は感じなかったそうなんですね。

 

しばらく落ち着いたら仕事でもしようかな、と思ったのですが、この不況。
事務系の職種はありましたが、なかなか年齢的なこと、主婦であることもあってか、就職も決まらず、生活が落ち着くにつれ、一人で考える時間が徐々に増えていきました。

 

また、彼女は妹一人の二人姉妹の長女で、幼い頃から妹の面倒を良く見るいい子でもありました。
お父さんの仕事が忙しく、また、お母さんは地域の役員などを務めたりして忙しく過ごしていたので、あまりご両親から(特にお父さんから)かまってもらうことは少なかったそうなんです。

 

だから、幼い頃から寂しい思いをかなり詰め込んでこられたんだろうな・・・と僕は思ってました。

 

面談でお会いしていると、確信はないんですけど、何となく分かることが少なく無いんですね。
この時もその寂しさのほかにも、甘えん坊な女の子、どうしていいのか分からなくて途方にくれている女の子、しっかりしなきゃ!と強く思っている自立的な女の子の姿が見えるようでした。

 

そんな感想をお伝えすると、彼女はふっと顔が和らいだようになりました。
明るい面も持つ一方で、人見知りする性格もあって、あまり口数は多くない彼女。

 

ご両親との関係で、また、ご主人との関係で、色んな我慢があり、でも、その状況にいつも耐えてきた自分の姿をお話するうちに、彼女も緊張が解けて徐々に饒舌になっていきます。

 

屈託の無い笑顔(これはね、とても無邪気な笑顔で、彼女の魅力の一つですね)で、過去の恋愛のことやご両親のこと、仕事のこと、そして、もちろん旦那のことをたくさんお話してくださいました。
面談の後に「だいぶ溜まってたようで、お話しすぎちゃってごめんなさい」って言ってたように、時間の経つのはすごく早かったようです。
あっという間に1時間半が経過して、場も和んできましたので、今日はシンプルに今溜め込んでいる感情を吐き出す方法をちょっと考えてみました。

 

お話をしているうちに、イメージを使った方法にも抵抗はないだろうな、と感じたので、こんな話をしてみました。

 

裕幸:
「じゃあ、ちょっと想像してみてくださいね。今、目の前のソファ。そう、僕のすぐ横にあの旦那が座ってるって思ってくださいね。どんな顔してるように見えます?そして、その顔見てどんな気持ちになるでしょうか?」

 

めぐみさん:
「疲れてる顔してますね。本当に。何だかかわいそうな気もするし、私も疲れたような辛い気持ちになってきます」

 

そして、曲を数曲かけながら我慢で膨れ上がっているような彼女の心をほぐしていきます。
徐々に涙も流れてくるようになりました。

 

その後は、僕もお手伝いしながら、ご主人に対して本当に伝えたい気持ちを伝えていく実習をしていきます。
怒っている自分、寂しさ、辛い気持ち、私のことをちゃんと見て欲しい気持ち、そして、セックスがしたい、という気持ち。
言葉を重ねるに連れて、彼女の表情から色んな感情が涙となって流れ落ちていきました。

 

でも、徐々に雰囲気が変わってきます。
自分を責めるような言葉になってきたんですね。
「私が悪いんだよね。ごめんね。」
「何もしてあげられないね」

 

そんな彼女の告白をお聞きしていると、本当は彼を助けたい、癒したいんだな・・・ということが痛いほど伝わってきます。
そして、それくらい彼のことが大好きなんだな・・・と。

 

でも、彼女、そんな言葉はこのセッションの中ではまだ伝えてないな・・・と気付いたので、最後に彼女にこう伝えてみたんです。

 

裕幸:
「彼のこと、本当は助けてあげたいんじゃないでしょうか?彼にそれを伝えてみたらどうでしょうか?」
「そして、彼のこと、本当に大好きなんですね。最後に一言だけ、彼を見つめて『大好き!』って伝えてみてください」

 

静かに彼女は頷きながら、それを伝えてくれました。

 

時間はだいぶオーバーしてしまいましたが、少しすっきりした表情で彼女がこんなことを言ってくれました。
「すごく我慢してきたんだな、ってことが本当に実感できました。それ以上に、彼のことが今も好きなんだってことに気付けて本当に良かったです。私もその気持ちを疑っていましたので、改めて向き合えそうな気がします」

 

たとえ彼のことを好きな気持ちがあったとしても、不満や寂しさが募ると、その好きな気持ちを覆い隠して分からなくしてしまいます。
シンプルなセッションでしたが、遺跡を発掘するように少しずつ少しずつ覆い被さっている感情を取り除いていくと、やがては好きな気持ちが出てくるのかもしれません。

 

彼女とお話していて、いくつかその魅力や価値、才能に気付いたのでお伝えしました。
人の気持ちが分かる人だということ。
優しさや思いやりの気持ちが強いということ。
芯がしっかりしているので、とても信頼できるということ。
そして、彼のみならず、男性を助けて癒す才能があるということ。

 

そして、彼女に宿題を三つ出しました。
1つめは、疲れた彼に触れてあげること。寝ている彼にそっと手を置くだけでもいいですから。
怒りを感じるかもしれないし、寂しさが強くなるかもしれない、でも、気持ちに余裕があるときは愛情を強く感じたり、いとおしい気持ちを感じることができるよ、と。

 

2つめは、わがまま娘になってみましょう、ということ。もし疲れてご飯が作れなかったときは、彼に「ごめーん、コンビニかどこかでご飯買ってきてくれない?」って言ってみてください、と。
彼女の中には、幼少時代からの経験で、無意識的に「自分さえ我慢すれば」というパターンが根付いてしまっています。だから、ちょっと意識的にわがまま娘になってみることも大切なことなんです。
「え?ほんとにいいんですか?」と戸惑う彼女に一言言いました。
「うちの嫁さんも同じだったんですよ。でも、わがまま娘になろうと思ってもなかなかできませんし、むしろちょうどいい具合に収まりますから面白いですよ」

 

3つめは、スカートを履きましょう、ということ。
家にいることが多かったり、あまり外出の機会が多くなかったりして、結婚後はいつしかパンツが多くなってしまったようでした。
セックスというのは「男と女」の営みなわけですから、自分がより「女」を強めていくことが、セックスレスの解決に繋がることが少なくありません。

 

●セカンドステップ~失われた気持ちを取り戻す~

 

彼女は幼少時代から今に至るまで、思う存分甘えたり、自分をただ受け止めてもらうことが無かったんですよね。
これは「長女」という属性にも影響されることでもありますね。

 

「妹さんは要領よくて、甘え上手だったりしません?」とお伝えすると、「そうなんですよ。悔しいくらいで。妹はさっさと23で結婚して、今は2人の母親なんですよ。ちょっと先越されてばっかりでずるいって思うこともありますね」と彼女。

 

だから、2回目にお会いした時にはそんな彼女がずっと我慢してきた思いを扱うことにしました。
インナーチャイルドセラピーです。

 

ただ、ちょっと嗜好を凝らして、こんなイメージを作ってみました。

 

「ちょっと想像してくださいね。今目の前に小さな女の子がいるって思ってみてください。何歳くらいの女の子でしょう?」
「彼女の体には頭の先からつま先まで鉄の鎧を着込んでいると思ってください。彼女が動くたびにその鉄の鎧がこすれてがしゃがしゃ音を立てます。その音にちょっと耳を傾けてください。そして、そんな彼女はどんな表情をしているでしょう?」

 

彼女がずっと我慢しているということは、自分の心に鎧を着せて抑圧してしまっているイメージと重なります。
その一方で、繊細で傷つきやすい心を持つ彼女でもありますから、その心を守るための鎧でもあるんですね。

 

その小さな女の子(これは彼女自身の心の投影ですね)に言葉をかけたりしながら、鎧を剥いで行ってもらいました。
取った鎧は遠くに放り投げてもらいます。
でも、鎧の裏から覗く皮膚には無数の傷が付いています。
彼女が受けてきた心の痛みのシンボルです。

 

その小さな女の子を癒してあげることに時間を費やしました。
色んなイメージを使って、小さな女の子、そして、めぐみさん自身の細かい痛みを洗い流していきます。

 

このセッションが終わったとき、彼女はちょっと魂が抜けたようにぼーっとされていました。
ただ、ほっとしたようなとても気持ち良い感覚だったようで、ただソファにもたれて、静かなかわいらしい顔をしていました。
そこで、その彼女を慰めるような曲を使っていると彼女はすやすやと寝息を立て始めました。
本当に安心したのでしょう。
そのままじっとその場にいて、静かな音楽をかけながら彼女の目が覚めるのを待っていました。

 

10分くらいして、ゆっくりと目を開けた彼女は、恥ずかしそうにしながら、でも、深い安心感を感じていらしたようです。

 

そこでちょっと面白い話をしてくれたんです。
「今、ちょっと夢を見たんです。主人がここに入ってきて、優しく頭をなでてくれるんです。そして、優しくキスをしてくれて、私は思い切り甘えていました。本当に居心地が良くて、遠くで鳥の鳴き声が聞こえたり、風の音が聞こえたり、とても不思議な世界に行っていたような感じがしました。それで彼がゆっくり私の胸に触れてくれたんです。本当に安心しました。そこでまた眠ってしまったような感じなんです」

 

実は彼女が寝ている間にかけていた曲が、彼女のイメージそのままの曲でもありました。
リラックスできるような曲、自然を感じられるような曲をちょっと選んでかけていたんですね。

 

●サードステップ~セクシャリティを解放する~

 

3度目ともなるとだいぶ打ち解けてきました。
ご主人に対して優しい気持ちで接することができて来るようになったそうです。
心に余裕も生まれて、部屋の模様替えをしたり、ご主人や自分の服を買うにも今までとは違う楽しい気持ちで出来たそうです。

 

今日はいているミニスカートもその時購入したときのものらしく「ほんと、久しぶりにこんな短いスカート履いたら恥ずかしいですね。でも、なんか気持ちもいいです。昔は、かなり短いスカート履いて仕事してましたから、そのころのイキイキした気持ちも取り戻せたような感じです」

 

それから、何年かぶりに一緒にお風呂に入ることにも成功したそうで、じっくり深い話をするために、これまた何年かぶりにちょっとお洒落なお店に出かけたりもできました。

 

セックスレスの状態から、いきなりセックスまでこぎつけるのは難しいんですよね。
お互いに知らないうちに抵抗を持ってしまっていますし、恥ずかしさもあります。
何年もそういう関係が続くと、セックスが無いことが当たり前の雰囲気になって硬直化・マンネリ化してしまいますからそれを変えるときには、相応のパワーが要ります。
だから、最初は彼女自身の心を解放していくことで、そのパワーを入れる余裕を心の中に作ってあげることから始めるんですね。(これが1,2回目のセッションでした)

 

そして日常的には、少しずつ二人の距離を縮めるために、言葉を交わしたり、触れてみたり、デートしたり、お風呂に入ったりすることを提案するんですね。
お洒落な店にデートするのも、半ば彼女が強引に店を予約して彼を連れ出した様子なんですが、意外に彼は喜んでいたようです。

 

まだ、男性は理論的な分だけ、テクニックに走ることがあって、愛し合う行為というよりは、ご奉仕的な感覚を抱くようになってめんどくさくなってしまうことも少なく無いんです。

 

彼女のご主人も性欲が無いわけではなく、一人で処理している様子です。
ま、それがまたむかつくんですけど、そんな男性側から見た、あるいはご主人から見たセックス観を見ていくと理解できないこともありません。
(だからといって許せるかどうかはまた別なんですけどね・・・)

 

だから、そんな背景を踏まえて今回はセクシャリティ(女性的な魅力)を高めていくセッションをしていきました。
イメージを進めていくうちに、彼女の表情が和らいだり、赤らんだりしていきます。
解放的な気持ちと、ちょっとエッチな気持ちを感じながらセッションを終えました。

 

なんだか気持ちいいですね・・・というその声のトーンも普段よりも低く、色っぽい感じがします。

 

そして、セックスを通じて彼を癒していく意識を持つように提案してみました。
される一方のセックスでは、男性は先ほどお話したようにめんどくささを感じてしまいます。
でも、彼に一方的に与えていく姿勢を持つことで、その思いを消してあげることができます。

 

いきなりは難しいと思ったのですが、余裕もでき、セクシャリティも受け入れられるようになってきた彼女ですから、今がチャンスだと思ったんですね。
最初はどうしても「欲しい、欲しい」と欲求が先に立ちます。
でも、その欲求を処理したり、あるいは心に余裕が出来るようになると、与える女になるチャンスが訪れるんです。

 

だから、セッションの最後には、こんな話をしました。
「あなたの手や唇、体、全部が彼を癒す不思議なヒーリングの道具だと思ってみてください。そして、寝ている彼にただ『彼を癒そう』『あなたを癒してあげる』そんな気持ちで触れてあげてください。特に背中や胸の真ん中辺には疲れや感情がよく溜まりやすいです。あと喉や顔、頭。そして、足など、ただ、触れてあげてみてくださいね。彼には『そのままじっとしていね』とだけ言いながら。もし、自分の優しい気持ちが続かなくなったら、そこで辞めてたらOKです。そして、本当に彼をリラックスさせてあげよう、癒してあげよう、と思いながらやってみてください。ちょうどあなたの手から彼を癒す不思議なエネルギーが流れてる、なんて思ってみてもいいですよ。最初はそんなこと無いんだけど、そういうことを何度かしていると、全身はリラックスしてるのに、とある一箇所だけ緊張してるところが出てきたりするんですよ(笑)そしたら、そこを今度は優しく愛してあげましょう」

 

ちょっと潤んだ目で彼女はその話を嬉しそうに聞いてくれました。
「その目であんまり他の男性を見つめない方がいいですよ・・・。僕が何だかドキッとしちゃいました(笑)」

 

●その後・・・

 

彼女はさっそくそんなことを彼にしてあげたんです。
そして、びっくりしたのが、彼に触れているだけで、今まで感じたことも無いくらい強い優しさ、いとおしさが湧いて出てきたそうなんですね。
そして、朝から晩まで頑張ってる彼を思いながら、ついつい泣いてしまったこともあったそうなんです。

 

彼女もその後おっしゃってくれましたが、自分の心の中に彼にして欲しいことを求めるばかりで、与えてあげることを疎かにしてしまうことってあるんですよね。
だから、彼女に伝えたことというのは、実は彼にもっと与えていく姿勢を作っていくことだったんです。
彼に触れることも、彼を誘うことも、彼を癒すことも。

 

そして、徐々に一緒にお風呂に入って、寝る前に彼に軽いマッサージをしてあげることも増えてきました。
すぐに寝入ってしまうご主人の顔を見るのが楽しみにもなってきたみたい。

 

そして、あるとき予告どおり、半分寝ている彼の体の一部が硬くなっていたんですね。
今までなら、そこで引いてしまったり、待ってしまったのですが、どきどきしながら、彼女は自分からそこに触れてみたんです。
そうしたら、また強いいとおしさを感じて来たんですね。
同時に、自分の中の女を強く感じて、今までに無いくらい強い情熱を感じたそうです。
そして、ちょっと目を覚ましかけた彼に「そのままじっとしていてね」と言って、自分から彼を求め、愛してあげたそうです。

 

その時のセックスは今までに感じたことのないくらい気持ちよく、情熱的な感じで、彼を本当にいとおしく思う気持ちを感じたそうなんです。

 

彼もそのセックスがすごく良かったんでしょうね。
今まで抑圧してきたのか、今までとはまったく違ったセックスを今ではしているそうです。
彼も彼女も、その後は元気になっていったようで、二人で過ごす時間もどんどん濃密になっているみたいです。

 

今もある問題を持って彼女は通い続けてくれています。
半年前に初めてお会いした時とは雰囲気がずいぶんと変わっているようにも見えます。

 

※実はここで紹介した以外にも色んなアプローチをしています。大きな流れを見たときにポイントとなった部分をここでは紹介させていただきました。
また、彼女の希望で公開を割愛させていただいた部分も一部あります。

 

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

 

根本裕幸

 「今日も、暑いですね。ここまでくるのに汗をかいちゃいました(笑)」
3回目の面談カウンセリングで、僕ともすっかりうちとけてリラックス
されている笹木さん(仮名)は笑顔で話しかけてくれました。

 冷たいお茶を飲んで、涼みながらカウンセリングをはじめました。

 笹木さんのご相談内容は、「居場所がない感じする」ということでした。
彼女は結婚5年目、2歳になる娘さんがいる一児のお母さんです。
結婚5年で、ご主人との関係もよいそうです。近々マンションも購入される
そうで、とっても幸せとは思うそうですが、心のどこかで感覚的にいつも
違和感を感じているそうで、私はここにいてもいいんだという
安心感がないそうです。

漠然とした違和感、漠然とした不安の為、笹木さん自信も、
なんでこんな感じがするのか原因がわからないそうです。
この違和感を抱えたまま、今までだましだましやってきたそうですが、
長い人生この感覚を抱えたままやっていくのは、しんどいし、
せっかくの幸せを充分に味わえないし、
人生を楽しめないと思いカウンセリングにこられたそうです。

 一度目のカウンセリングでは、今までお家で感じられていた、
漠然とした違和感、漠然とした不安の中で知らず知らず感じていた、
緊張を解いていくことを行いました。
本人も知らず知らずのうちに緊張していたようで、
カウンセリング後の緊張が解けた状態の感想を聞くと慢性肩こりで
いつも肩が痛かったそうですが、肩がほぐれて楽になったと言われて
いました。それほど肩に緊張が走っていたんですね。

 二度目のカウンセリングでは、今ある幸せを受け取れるようになる為の
カウンセリングをしていきました。
笹木さんがおっしゃられるには、
ご主人はすごく笹木さんのことを愛してくれているそうです。
子供もすくすくと育ち、経済的にも安定し、頭では絵に描いたような
幸せな家族だなと思うそうです。
でも、“居場所がないという感覚”が常にあり、
私はここにいていいんだろうかと感じたり、
愛してくれるご主人と、可愛い娘に囲まれた家庭なのに孤独を感じたり
していたそうです。
そして、孤独感と不安がつのり、今ある幸せを受け取れなくなっていました。
カウンセリングをしていくと、彼女の心の奥底に
“私は幸せになれないんだ”という観念が眠っていました。
これは、彼女の少女時代に家族関係で傷ついたことが原因でした。
セラピーでこの傷を癒し、“私は幸せになってもいいんだ”と
観念を書き換えていききました。
そして、今ある幸せを受け取れるようにしていきました。

 三度目のカウンセリングは“私は幸せになれないんだ”という観念が
作られた少女時代を詳しくみていくことにしました。
カウンセリングを進めていくと、「居場所がない感じする」のは、
結婚してからこの感覚がでてきたのではなく、
少女時代から家族の中でずっと感じていていたことがわかりました。
笹木さん自身このことは、今まで気づいておらず、
今回のカウンセリングで初めて気づいたことでした。

 この家族の中で感じていた、“居場所がない感覚”が、
結婚して自分の家族を持つようになってよみがえってきてたようでした。
“居場所がない感覚”という感覚は笹木さんが家族の中で感じる感覚でした。

 なぜ、少女時代に“居場所がない”と感じてしまったのかという原因を
見つける為、更にカウンセリングを進めていきました。
すると、笹木さんが少女時代に思ったあることを話してくれました。

「私は一人っ子なんです。一人っ子ということもあり、
両親はとても私のことを大切にしてくれました。
でも、女の子はいつかお嫁にいきますよね。そうすると笹木家を継ぐ人が
いなくなるじゃないですか・・・
なぜか知らないけど・・・たぶん両親が跡継ぎのお話かなにかしてるのを
聞いたんだと思いますが、
“跡継ぎとして男の子が欲しかったんだ”と思ってしまったんです。」
(笹木)

 「今思えば、両親が“跡継ぎとして男の子が欲しかったんだ”と
言ったわけではないと思いますが、そう思い込んでしまったんです。
男の子が欲しかったんだ、私っていらない子供だったのかな?と思いました。
そう思ったことがありました。」              (笹木)

 笹木さんが居場所がないと感じだしたのは、少女時代に私っていらない子供
だったのかなと思ってしまったことで、家族の中で居場所がないように感じて
しまったようでした。
そしてこの感覚が今も笹木さんを苦しめていました。

本当に両親が跡継ぎとして男の子が欲しかったと言ったのか、
何かの誤解で笹木さんが思い込んでしまったのかまでは思い出せませんでしたが
私っていらない子供だったんだと傷ついてしまったようでした。


少し休憩をとってから、この傷を癒すべくセラピーをしていくことにしました。

「まずはリラックスするところからはじめましょうね。楽な姿勢で深呼吸して
みましょうね。」                      (原)

3回目のカウンセリングですっかり、セラピーになれていた笹木さんは、
僕がそう言うと、肩の力を抜いて目をつぶって深呼吸を始めました。

そして小さい頃に戻っていくイメージをしてもらいました。
「時間がどんどんさかのぼっていき、それと同時に笹木さんの体もどんどん
昔に戻って小さくなっていくと思ってくださいね。
大学生、中学生、小学生、幼稚園、赤ちゃんの頃、
そしてお母さんのお腹の中にいる頃まで時間がさかのぼっていきます。」

 じっくり時間をかけながら、イメージの力を使って潜在意識・無意識に
アプローチをかけていくことにしました。
潜在意識・無意識の中に入っていくと、今まで思い出せなかったことまで
思い出すことがあります、赤ちゃんの頃の感覚や、生まれてきた時の感覚、
まで思い出すことがあるのです。
潜在意識・無意識にアプローチをかけていくと
笹木さんは、お母さんのお腹の中にいた時の感覚がでてきたようでした。

「今、どんな感じがしますか?」 (原)

「暗くって狭い感じがします。」 (笹木)

「何かありますか?手で周りを触ってみてもらってもいいですか?」(原)

「じめじめしています。壁がでこぼこな感じがします。」 (笹木)

 笹木さんがイメージの中で感じていたのは、
お母さんの子宮から産道を通ってくる途中の感覚を感じていたようでした。
そして、暗くて窮屈な産道を少しずつを進んでいくと光が見えてきました。
光に向かって進んでいくと、今度は外の世界にでてきました。
大きな手が伸びて、産道から生まれてきたばかりの笹木さんを取り出し
抱きかかえました。
そして生まれたばかりの笹木さんになにか呼びかける声が聞こえてきました。

「なんて言っていますか?」 (原)

「はっきりと聞こえません。でも私になにか言っているようです。」(笹木)

「よーく耳を澄ませて聞いてみてください」(原)



「なんて言ってますか?」 (原)

「ありがとうって・・・(涙)
生まれてくれてありがとうって・・・言ってます」(笹木)

「私、望まれた・・・ありがとうって・・・」   (笹木)

嗚咽に近い声でそう言ってくれた笹木さんは、
その後10分以上、涙を流し続けました。

それは悲しみの涙ではなく幸せの涙でした。
その涙が流れると共に、笹木さんの心の傷の
“私っていらない子供だったんだ”という傷は癒えていきました。   


そして、イメージの中でうっすらと目をあけて
お母さんと、お父さんを見てもらいました。
赤ちゃんの笹木さんを覗き込むようにしてみている両親を見て
笹木さんは生まれてきて良かったと感じたそうです。
私ここにいていいんだと思ったそうです。

 セラピーを終えて目をあけた笹木さんに

「今はどんな感じがしますか?」 (原)

と質問すると、

「今は、ぼーとして話したいことが思い浮かびませんが、
暖かい気持ちです。」

と話してくださいました。
潜在意識・無意識という深い意識に入っていくと、
少しの時間寝起きのようにぼーとする感じになることがあります、
と説明しました。
そして、今後の課題と日ごろ取り組める心のエクササイズの話を
少しした後、その日は暖かい気持ちを抱えて帰られました。

それから1ヶ月くらいたってから
笹木さんは4回目の面談カウンセリングにこられました。
そして、近況を話してくれました。

3回目のカウンセリングの後、お家で居心地がいいそうです。
ご主人と娘さんと一緒にすごしていても、違和感や、不安もなく、
居場所がないと感じることもなく、とてもリラックスした気持ちで、
すごせているそうです。

実家にも一度帰ったそうですが、セラピーの中の両親を思い出しながら、
実家の両親をみると、涙がじわりとにじみでてきて、
涙がでてくるのをごまかすのに大変だったと笑いながら話してくれました。
もちろん、実家での居心地も良かったそうです。


今回の4回目のカウンセリングは、
調子はいいし、家でも居心地がいいし、特に問題という問題は思いつかないが、
もっと、幸せだと思えるようになりたいし、
もっと自分自身を成長させたいのでカウンセリングを使いたいとの
ことでした。
そして4回目のカウンセリングがスタートしていきました・・・

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

原裕輝

「暖かいお茶と、冷たいお茶と、コーヒーと、紅茶、がありますが何が
よろしいでしょうか?」
カウンセリングルームに初めてこられて、少し緊張している感じで
座っておられる、真鍋さん(仮名)に飲み物のリクエストを聞きました。

「じゃあ、暖かいお茶をお願いします。」

 お茶を飲んで一息ついたところでカウンセリングがスタートしました。

 真鍋さんは会社にはいって3年、
彼女が今ついている仕事は、イラストレータだそうです。
この仕事は学生時代から彼女の夢だった仕事だそうでした、
夢だった仕事に就けて当初は嬉しくてしかたがなかったそうです。

そんな彼女の会社は1年前人員削減で人を減らし、
人が減った分仕事が忙しくなり残業も多くなったそうです。

そして毎日、毎日仕事に追われるような生活になって行ったそうです。
今日中にこれを仕上げなければ、明日はこれと、あれもこれもしなければ、
とやらなければいけないことだらけになって行ったそうです。

 当初は好きで始めた仕事で情熱に燃えていたのですが、
仕事が増えるにつれ毎日がしんどくなっていったそうです。

「お話を聞いていても、今本当にしんどそうですね。
やりたいことよりも、やらなければいけないことだらけになって
しまった感じでしょうか?」(原)

「はい、まさにその表現がぴったりだと思います。」(真鍋)

「だとしたら、毎日追われている感覚でしんどいと思います」(原)

「そうなんですよ、毎日会社に行くのが嫌で・・・・
でも好きで始めた仕事ですし私が甘ったれているんだと思います。
もっと頑張らなくっちゃと思うんですが・・・」 (真鍋)

 真鍋さんは、もっと頑張らなくてはと思うのですが、でもどうしても
しんどくなってしまって会社に行きたくないと思ってしまったり
時にはしんどくて会社を早退させてもらうこともあるそうで、
そんな頑張れない自分が許せないと言っていました。

 そして、そんな真鍋さんのところに新しい上司がやってきたそうです。
運が悪いことに、その上司は真鍋さんが苦手なタイプの方だったらしいです
その上司は揚げ足をとってネチネチと小言を言うタイプの方らしく、
真鍋さんは幾度となくその上司に捕まっては小言を聞かされたそうでした。
ただでさえ、仕事に追われて参っている真鍋さんはその小言を聞くと
もうなにもする気がおきないくらい疲れきってしまうそうです。

真鍋さんはそんな上司の小言を聞くたびに
『私がしっかりしていないから毎回小言を言われるんだわ』と
自分を戒めていたそうでした。

「私っていっつも、いっつも同じことで失敗してしまうんです。」(真鍋)

「そんな時、自分のことをどう思うんでしょうか?」(原)

「自分って駄目だな、情けないなと思います。」(真鍋)

「自分って駄目だな、情けないなと思ってしまう?」(原)

「はい、だからしっかりしなくちゃと思います。」(真鍋)

「なるほど、しっかりしなくちゃと思ってしまう。
でも、今それがプレッシャーになってしまって疲れてしまっているんじゃ
ないでしょうか?」(原)

「はい、そうですね。そうだと思います。(涙)」(真鍋)

 彼女は自分は駄目だな、情けないといつも自分を責めてしまい、
自分でプレッシャーを作ってしまっているようでした。
ただでさえ、疲れていた心を自分で責め立てて、
もっとがんばれ、もっとがんばれと鞭を打っていたようです。
そして、鞭の打ちすぎでボロボロになっていました。

でも彼女は、自分は駄目な人間という自己概念があったので、
がんばらないと、もっと駄目になってしまうという思いがあり、
自分に鞭を打つことを止められないようでした。

 そして、彼女に今していることは、自分にとってひどいことをしていると
思うよということを伝えました。
そして、それをやめる練習をしてみましょうという提案をしました。
そして、その練習と一緒にボロボロになった心をケアーしていきましょうと
提案しました。
この提案は彼女も本当にそうしたいと思ったそうで同意をしてくれました。

 そしてセラピーを通して鞭を打つのを止める練習と、
疲れきってボロボロになった心をケアーしていくことにしました。

 真鍋さんと僕と二人でお茶をすすりながら談笑をして5分間ほど
休憩をとりました。
そして、休憩が終わりセラピーに入っていきました。

「まずは、リラックスをするところから始めましょうね。
ソファーにもたれてもいいし、寝転んでもいいですし、一番楽な姿勢で
目をつぶって深呼吸してみましょうね。」(原)

(リラックスしやすいようにゆった~りとしたBGMをかけました。)

「はい、そういわれると緊張しますね(笑)」(真鍋)

「そうかもしれませんね。(笑)まぁ、そんなに意識せず深く息を
すってみてくださいね。」(原)

「はい」(真鍋)

「そして、ちょっとイメージしてみてくださいね。
仕事で疲れているもう一人の真鍋さんが、あなたに背中を向けて座って
いると思ってくださいね。
その背中をあなたが見ていると思ってくださいね。」(原)


「どんな感じがしますか?」(原)

「疲れきっている感じがします。しょんぼりしている背中に見えます。」
(真鍋)

「じゃあ、その背中を疲れているなという目で見てあげてくださいね。」
(原)

音楽をかけながらイメージの中で自分の背中をみてもらうことにしました。
しばらくすると、真鍋さんの頬に一粒の涙が流れ落ちました。

「彼女は本当にしんどそうです。つらそうです。」(真鍋)

「今度は正面に回りこんでみてくださいね。」(原)

「彼女の顔は見えますか?」(原)

「苦しそうな顔をしています。しんどそうです。」(真鍋)

「苦しそうなんですね、しんどそうですよね。
でも、彼女は自分は駄目だな、情けないと自分を責めているようです。
そして、こんな私は駄目だからもっと頑張らなくては
と思っているようです。」
(原)

こう言って、いつも自分をどう責めているのか見てもらうことにしました。
すると彼女はボロボロと涙をこぼしました。

「自分自身に酷いことをしていたんですね。
こういう風に見ていると自分がかわいそうです。」(真鍋)

しばらく自分を責めて苦しんでいる自分自身を見ていた、真鍋さんに
こう聞きました。

「なにか、彼女に言ってあげたいことってありますか?」(原)

「そんなに自分を責めないでって言ってあげたいです。」(真鍋)

イメージの中のもう一人の自分に、
そう伝えると彼女の感情があふれてきたようでした。

「もう無理しないでね、今までよく頑張ってきたね。」(真鍋)

涙を流しながら真鍋さんは今まで頑張ってきた自分にそう言い続けました。
真鍋さんは自分自身を今まで駄目な私と思い
自分を責め、自分を否定し続けてきました。
しかし、初めてここで自分を承認することができました。

「他になにか、言ってあげたいことはありますか?」(原)

「あなたは駄目な人じゃないと言ってあげて、
背中をさすってあげたいです。」 (真鍋)

そうして背中をさすりながら、あなたは駄目な人じゃないと
いたわりの声をかけていると真鍋さん自身の心が暖かな気持ちに
なっていったそうです。

「今は、彼女はどんな顔をしていますか?」(原)

「笑っています。少し元気になれたかもしれない」(真鍋)

笑っているもう一人の私の顔を見て、真鍋さんも笑顔になっていました。
そして目を開けてもらいセラピーを終了しました。

「どんなご気分ですか?」(原)

「なんか、すっごく暖かい気分です。」(真鍋)

「自分で自分をあんなにも責めていたんですね。
あれだけ責めていたら、疲れてしまってあたりまえですね。
でも、今まで自分自身で気づきませんでした。
カウンセリングを受けて、このことに気づけてよかったと思います。
自分自身にあなたは駄目な人じゃないと言ってあげて、背中をさすって
あげた瞬間、今までのプレッシャーから解放された気がしました。
今はすごく気が楽です。」(真鍋)

すっかり、気分がよくなった真鍋さんはとても嬉しそうな表情で
今の気分を語ってくださいました。


その後、真鍋さんは定期的にカウンセリングを受けに訪れてくださいます。

カウンセリングを受けてからとても気が楽になり、
仕事もまた楽しくなってきたそうです。
しかし、長年癖のように自分を責めてしまっていたので、
知らず知らずのうちに自分を責めてしまう時がまだあるそうです。
以前より比べれば格段に自分を責めることは少なくなったそうですが、
この癖を完全になくしたいそうでカウンセリングを利用して
この癖をなくそうと思ったそうです。
また、自分のストレスケアーの為という意味も
含めて使っていこうと思うということを語ってくださいました。


(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

原裕輝

「今日はどんなお話をお聴きしましょうか?
緊張してしまいますよね、どうしても。
でも、2時間ずっと緊張しっぱなしだった、という方もあまりいらっしゃらないですし、
お話したいときに自由にお話してみて下さいね」

カウンセリングルームに入ってこられて緊張した面持ちの香織さんにお茶を勧めながら、そうやってカウンセリングを始めていきました。

 

「私、自分に全然自信が持てないんです」と香織(仮名)さん。
一生懸命にぽつりぽつりとお話を進めてくださいました。

「仕事でもつまらないミスばかりをしてしまって」
「彼氏もいるんですけど、やっぱり全然愛されてる自信なんてないし」
「友達や会社の人と話をしていても、なかなか付いていけないことも多くて」
「いつも人の顔色を伺ってしまうんです」
「もっとしっかりしなくちゃ、と思うんですけど、全然頑張れなくて」

 

・・・そんな自分をすごく責めてしまっていませんか?(裕幸)

 

「ええ。自分のことは前からすごく嫌いだったんです」

 

・・・いつ頃から、そうなっちゃったんだと思いますか?(裕幸)

 

「もう、小学校の高学年ごろからかな・・・」

 

・・・それまではどんな子どもだったの?もしかしたら、すごく活発だったとか?(理加)

 

「え?どうして分かるですか?本当にいつも目立ってる子どもでした。でも、それが小学校の高学年とか中学になると、全然目立たなくなってしまって」

 

・・・私もね、小学校の頃までは近所のガキ大将だったの。でも、ある友達の一言から、急に目立っちゃいけないって思うようになったの。(理加)

 

「私の場合は、そういうことがあったわけじゃないけど、何となくだんだん変わってしまったみたいで。小学校の頃は友達もたくさんいたと思うんです。でも、中学の頃にはほとんど一人ぼっちになってしまって」

 

小さい声でしたが、慣れてくると徐々に口調もはっきりしてきて、色んなお話を伺うことができました。

・中学生になるとお姉さんのいる子などが徐々にお洒落をするようになったり、女の子同士でグループを作ることも本格的になってきたりしたそうですが、自分はお洒落とかそうしたグループにあまり興味を持てずに気付けば孤立してしまった。

 

・それまで親友だと思っていた女友達が、あるグループに入ってしまって取り残されたような気持ちになった。

 

・それではいけないと思って、周りの女の子に合わせるように話題やお洒落などの話題にもついていけるように必死に頑張った。

 

・それが高校から短大に至るまでずっと続いてしまった。

 

家族のお話も伺うことが出来ました。

・お父さんは優しいけれど、仕事が忙しくてあまり構ってもらえなかった。
・母は厳しい人で、感情の起伏が激しい人。
・長女だったために「お姉ちゃんだから」とよく言われて我慢がたくさんあった。
・同時にあまりお母さんに褒められたことがあまり無かった。

 

彼氏とは、次のような状態でした。
・前の会社の同僚で、つきあって3年。
・忙しくしているので我慢していることも多いが、優しい人
・ついつい顔色を伺ってしまうことが多くて、彼に怒られることもある
・結婚の話も出ているが、お互いにまだ踏ん切りがつかない状態

 

今までの恋愛は?

・前の彼氏は好きな人が出来たと振られてしまった
・その後は声をかけてくれる人はいたけれど、なかなか踏み切れずに数年ブランクがあって今の彼氏とであった
・いつも依存的になってしまい、彼の顔色を伺ってしまうことが多い
・男性に誘われることも少なくないが、自分のどこがいいのかが全く分からないので、いつも体が目当てじゃないか?と思ってしまう
・短大の頃に付き合った彼は実際に体が目当てだったようで、セックスがしたくなると呼び出されるような関係だった。好きだったので、当時はなんとも思わなかった

 

そんなお話をしてくれながら、だんだん緊張が解けてきたのか饒舌になってきました。
少しずつ笑ってくれるようにもなってきましたね。

でも、僕らから見ると、すごく自分の感情を抑えていらっしゃるような感じがひしひしと伝わってきます。

 

「いっぱい我慢してるでしょう?」とお聞きすると、「私さえ我慢すれば・・・っていつも思ってしまう」とのこと。
心の中にとても重たい荷物をたくさん詰め込んでしまっているようでした。

 

だから、僕はこんな話をさせてもらったんです。

「何かもう心がいっぱいいっぱいで、全然余裕が無いような感じじゃないでしょうか?だから、頑張ろうとしても全然頑張る気力もわいてこなくなっちゃうんじゃないかな?」

 

「だって、例えば衣替えをしようと思って押入れを空けたとしたら、そこに荷物がいっぱい入ってたとするでしょう?そのとき、香織さんならどうします?まずは、押入れの中のものを一度外に出しますよね。それで、不要なものを処分するなりして、新しいものをなおすでしょ?(注:関西弁では「しまう」ことを「なおす」と言うんです)」

 

「心も同じでね、まずは心に溜まった感情を外に出してあげることが大事だと思うんですよね。そうすることで、心にスペースが生まれるでしょう?そのスペースがあると、新しくやる気とか、自信というものを入れてあげることが出来るんです」

 

「僕達はよく『自分さえ我慢すれば・・・』って思うんですけど、我慢っていうのは、気持ちを押さえ込むことだから、押さえ込まれた気持ちはそのまま心の中に留まってしまうんですよ。だから、少しの我慢ならばいいけれど、たくさん我慢すると本当に心の中がいっぱいいっぱいになってしまうんですよ」

 

そんな話を彼女は時折頷きながらも真剣に聴いてくれました。

そして続けてこんな話をさせていただいたんですね。

 

「だから、まずは自分の心の中にスペースを作ってあげること、余裕を作ってあげることを目標にしましょうね。そして、その余裕が出来たら、いよいよ自分に自信を付けるプロセスを考えて行きましょう」と。

 

彼女の話を聴きながら、いくつかのポイントを僕なりに抑えていました。
家族との関係で、喜怒哀楽の激しいお母さんの顔色を伺うことが癖になってしまったし、長女ってことで我慢することが多かったから、そのパターンが一番のルーツになっているだろう、と考えました。

 

友達や彼氏との関係にもそれが出てきました。
そして、周りに合わせること、人の顔色を伺うこと、気持ちを我慢することで、自分らしさを失ってしまったわけですね。

自分らしさを失ってしまうってことは、自分の個性を抑圧してしまうことでもありますから、これでは自信は全然持てません。

だって、今の私は「周りに合わせて作られた張りぼての私」であって「本当の私」ではないから。

 

だから、彼女に「本当の自分探しの旅に出ましょうね」と提案していきました。

最初のカウンセリングでは、まずは彼女の心の中にずっとあった孤独感や寂しさに焦点を当てました。
いつも誰かの顔色を伺っていた彼女にとって、自分はいつも後回し。
だから、いつも寂しさや不安を心に抱えながら生きてきたような感じなんです。

 

「これでいい?これなら嫌われない?一人にならない?」

 

そんな彼女の心の声が聞こえてくるような気持ちすらします。

彼女のそんな心を表す曲を数曲使いながら、彼女の心の扉を開いていきます。
少しずつ彼女の目に涙が浮かんでいきました。

 

でも、彼女は相当我慢する癖がついてしまっているのでしょうね。
涙が少し出てくるとすぐに一生懸命我慢しようとされてしまっていました。

 

「いつも、そんな風に我慢していらっしゃるんですよね。出来るだけ我慢せずに、感じたまま感情を外に出してあげようって思ってくださいね」

 

とお伝えすると、彼女は徐々に、涙を流すことを自分に許し始めてくれました。

 

そのまま、彼女の感情を直接解放していくイメージワークに移ります。
1回目の今回は、シンプルなインナーチャイルドワークを用いました。

 

彼女の心の中には、本当に寂しそうな女の子がいたんです。
うさちゃんのぬいぐるみを持って、公園にぽつんと立ってる女の子。
その子をイメージしただけで、香織さんの目からは次から次へと涙が出てきました。
イメージの力を使いながら、その子との繋がりを作って行きます。

そして、その小さな女の子が言えなかった言葉、我慢していた言葉を次々と話させてあげました。

 

「一人で寂しい」
「誰もわかってくれない」
「もっとお母さんに甘えたい」
「わがままももっと言いたい」
「どうしていいのか分からなくて怖い」

 

そんな気持ちをその小さい心の中の女の子と分かち合う度に、彼女は涙と一緒に感情をどんどん解放していきました。

そして、その小さな女の子をイメージの中で抱きしめて思い切り泣かせてあげます。
最初は啜り泣きだった女の子が、香織さんの腕の中で声をあげて泣き始めました。
本当に長い時間、その小さな女の子は感情を爆発させるように泣き続けたそうです。

そして、その彼女が安らかな寝顔を見せた時、香織さんの表情にも深い安堵の気持ちが浮かんでいました。

 

そして、このセッションが終わった後、彼女に僕達が感じた色々な価値や魅力を伝えていきました。
優しさや思いやりがたくさんあること、人の気持ちが分かること、とても繊細な感性を持っていること、本当はすごく情熱の女であること、などなど。

そして、1回目のカウンセリングは終了しました。

すっかり安堵の表情に変わってニコニコしている彼女に一つ宿題を出しておいたんです。

 

「自分のいいところを探してみましょう。自分で分からなかったら彼氏に聞いてもいいですから、年の数だけ探してみてください。すぐには難しいですから、じっくり時間をかけてくださいね。」

 

その後頂いたメールにはこんなことを書いてくださいました。

 

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カウンセリングを受けるまでは、ちょっと怖くて不安でした。
でも、話をしていくうちに、すごい勢いで緊張が溶けて行くのを感じました。
お二人がじっとお話を聴いてくださったお陰だと思います。
よくよく思えば、これほどゆっくり自分のことを誰かに話したことはありませんでした。

カウンセリングを受けてみて、今までの私は目を瞑って生きてきたことに気が付きました。
周りのことばかりに意識を向けてしまって、自分のことをぜんぜん構ってあげられなかったことにも気付きました。
だから、あのイメージの中の女の子はあんなに寂しそうな顔をしていたんだと思います。

カウンセリングが終わって外に出た時、本当に景色が違って見えました。
色がはっきりと見えて、空気が大きく吸えたような気がします。
ボーっとしていたので、下の喫茶店でお茶をして帰ったのですが、その間も、何か自分の手が自分じゃないような気がしていたんです。
それくらいすごい経験をさせてもらったんだ、と改めて実感しました。

宿題はとても難しいです。
彼氏に聞くのも勇気が要りますが、何とか頑張ってやってみようと思います。

何となく、これからの自分に希望が持てるようになりました。
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※色々と個人的なことを書いてくださっていましたので、根本が編集させてもらっています。

 

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そして、約3週間後にまた彼女はカウンセリングに来てくださいました。
いいところ探しを頑張ったけれど、12,3個しか集められなかったことを申し訳無さそうに話してくれます。
でも、僕は「そういうものですよ。残りの15個くらいは今から集めていきましょう」と伝え、2回目のカウンセリングを始めました。

 

メールで何度かその後の報告を頂いていましたので、スムーズにセッションに入っていくことができます。

今回はまずは繋がりや親密感を感じるセッションからスタートしました。
ゆったりした気持ちで、彼女が今まで知らず知らずのうちに拒んできた人との繋がりを感じられるようなセッションです。

彼女にとってみれば、人の顔色を伺ってしまう背景には人に対する恐れがあるんですね。
だから、人との本当の繋がりを今まであまり実感せずに来てしまいました。

 

そして、前回のセッションで扱った寂しさや孤独感をいつも心のどこかに持たなければいけない状態になってしまったんです。

彼女が少しずつ繋がりや親密感を感じ始めると、また少しずつその目から涙が溢れてきます。
そして、彼女の心にはだんだん温かい気持ちが広がっていくように、表情にも赤みが差してきました。

そのセッションを終えて、彼女は「心がぽかぽかと温かいです。本当に。こんな気持ちになったのは初めてかもしれません。知らず知らずとはいえ、私は本当に誰も心の中に入れてあげられなかったんですね」とおっしゃっていました。

 

そして、短い休憩を挟んで、また次のセッションを始めます。
彼女にとっては、お父さんと距離があり、お母さんの顔色を伺ってしまい、かつ、いいお姉さんをしてきたような部分から、どこかしら「お父さん、お母さんに愛されている実感」というのが乏しいようです。

その部分をケアするようなセッションを提案してみました。

 

そして、赤ちゃんに戻ったような感覚をイメージの力を借りて作り出していきました。
そうして彼女はもう一度改めてご両親の愛情を感じることが出来るようになってきました。

 

「お父さんが笑ってる顔、本当に久しぶりに思い出しましたし、お母さんってこんな優しい顔してたんだ・・・って改めて気付いてびっくりしました」

 

セッションが終わった後の彼女の感想です。

今回のカウンセリングの終わりにはこんな宿題を出してみたんです。

 

「魅力探しパート2!ってことで、今度は“女性としての魅力”というのを探してみて下さいね。あっ、即効『無いです』って顔しないしない(笑)」

 

そのカウンセリングの後に頂いたメールには、「女性としての魅力なんて、私には全然思い当たらないんです。困りました。」と書いてくださっていたので、僕から「じゃあ、ますます、彼氏に聞いてみてくださいよ」と返事しておきました。

 

そこで彼女は勇気を持って彼氏に聞いてみてくれたんですね。

 

実は彼女にとって、これこそが一つのビッグチャレンジでもあったんです。
自分の魅力を人に聞くことは、本当に勇気が要ることですよね。
彼女のように自信がないっておっしゃる方の多くは、そんなこと怖くて出来ないよって思ってしまうものです。

だから、逆に言えば、彼に聞くことが出来た、ということは彼女が少し自分に自信を取り戻した動かぬ証拠になるんです。

 

こうした傍目にはちょっとしたことに映る出来事が、自分の人生をより良く変えていくきっかけになっていくものです。

その時彼は「えー?ちょっと待てよー」とか言いながら、こんなことを伝えてくれたそうです。

「かわいい、だろ。気が利くし、優しいよな。それに甘えん坊やな。俺を頼りにしてもくれるよな。それから、素直ってのもいいところだろうな。それから、スタイルもいいし、エッチもいいよ」
彼は恥ずかしそうにそんなことを言ってくれたそうです。

 

でも、それ以上に恥ずかしかったのは彼女で、その時、付き合って3年にして、初めて顔を真っ赤にしてしまったそうで、その様子を彼氏に笑われてしまったそうです。

 

でも、彼女にとって意外だったのが「甘えん坊」「頼りにしてくれる」というところ。
これは彼女にとっては「自分のダメなところリスト」の上位に入っていたみたいなんです。
「私は甘えん坊、もっとしっかりしなきゃ」
「人に頼ってばかりじゃダメ」
って彼女はいつも思ってきたんですね。

 

それから、エッチもいいって言ってくれたのは恥ずかしいけれどちょっと自信になったそうです。
彼女は女性としての自信がない一つの要因として、セックスの自信の無さがあったそうなんですね。

 

多くの女性が心の中に秘めているものでもあるのですが、彼女にとっても、私いいのかな?下手じゃないのかな?といつも思っていたそうです。

 

3回目に彼女に会った時、明らかに雰囲気が変わってました。
髪型が変わったり、それまではパンツが多かったのに、短いスカートをはいてたってこともあるかもしれません。
でも、それ以上に醸し出す雰囲気が明らかに違うんですよね。
これには僕らもびっくりさせられました。
だから、最初に「この1ヶ月でどんなことがあったの?」って聞いてみたんです。

 

「彼に『私の魅力って何?』って聞いてから、色々とそういう話をすることになって、『どうしたらもっといい女になれるのかな?』って聞いてみたんです。そしたら『ファッションをもう少し女っぽくしたら?』とか『もっとわがまま言えよ』と言う話になったんです。」

 

「今までなら、彼に『ミニスカートはいて』って頼まれてもなかなかウンとは言えなかったんですけど、今回は『ま、いいかな』と思えて。それも変化ですよね?」

「それで新しいミニスカートを買ったら、彼がすごく喜んでくれたので、今はむしろスカートの方が多いんですよ。あと根本さんが昔書いてたエクササイズとか読んで、ミニスカートがいいっておっしゃってたのもあるんですけど」

 

他にも彼と色々と話をすることが出来て、自然と二人で過ごす時間も増えてきたそうなんです。
そして、彼にカウンセリングのことも漸く話せるようになったそうで、彼は一瞬「え?」ってたじろいでいたものの、話を聞くうちに「そっかー、それはお前に向いてるかもなあ」と応援してくれるようになったそうです。

 

3回目のセッションでは、そんな女性としての魅力をアップするようなセッションをしていきました。
“セクシャリティ”って言うんですが、思春期の頃から強く出てくる性的なエネルギーで、彼女のような我慢しぃな女の子の場合、そのエネルギーに翻弄されるのが怖くて、ものすごい力で押さえ込んでしまっているものです。

 

これは大人の女性になるためには必要なものなんですけど、抑圧してしまうと、子どもっぽい雰囲気がなかなか抜けなくなってしまいます。
もちろん、これは生命力のような意味もあるので、イキイキと元気に過ごすこともなかなか出来なくなってしまうんですよね。

これを解放してあげることで、大人の女性らしい魅力やフェロモンなどが出てくるし、落ち着きや慈愛などの柔らかい雰囲気も醸し出されてくるものなんです。

 

このエネルギーを解放してあげる一つの方法は「恥ずかしさ」を感じることです。
恥ずかしいときって、顔がぽっと赤くなって、体がかーっと熱くなりますよね。
それがセクシャリティのエネルギーなんですけど、そのままその熱い気持ち、恥ずかしさを感じていくと、ぽわーんとした感覚に変わっていきます。
(もちろん、その感覚が出てくるまでには色んな感情がでてくるものですけど)

そうして、まるで春の暖かい陽だまりにいるような、冬の寒い朝に温かい毛布に包まっているような、そんな柔らかくて、気持ちいい感覚が出てくるようになります。

それがセクシャリティの実体で、心が本当に解放されて、自然で、温かい状態を表しています。
この感覚って言うのは僕達みんなが大好きなもので、セックスでオーガズムを感じた後のけだるい感覚にも通じるものもあるようです。

 

口で言うのは簡単なんですけど、僕らはこのエネルギーを巧みに隠し、抑圧してしまっているので、すぐに解放できるものでもありません。
ただ、香織さんのように日常でもミニスカートを履くようにしたり、彼とのセックスをより充実させたりすることで、確実に解放されていくものでもあるようです。
もちろん、こうしたセッションを通じてやっていくと、より加速度的に早く楽になるみたいですね。

 

さて、そんなセクシャリティを扱う方法は色んなものがあるんですけど、彼女は恥ずかしがり屋さんでもあるので、あまり刺激の少ないイメージワークを提案していきました。
これは僕達が無意識的に心の奥底に隠してしまった“毒”を美しいものに変化させてあげることで、セクシャリティを解放していくものです。

 

(僕達は思春期の頃にこの強いセクシャリティを感じ始めると、まるでそれを毒のように扱って抑圧してしまうものなのです)

 

そのセッションが終わった後には彼女自身、すっかりとぽかぽか、ぽわーん、とした雰囲気に包まれていました。
ふわふわと浮いているような感覚で、柔らかく温かい感覚も感じていました。

香織さん自身「何かすごく気持ちいいです。本当に」とおっしゃってました。
そんな感覚が馴染んでくると、彼女の目が少しうつろになって、その姿勢も柔らかくて、美しい女性のような雰囲気に変わってきていました。

 

それをお伝えすると、恥ずかしそうに頷きながら「そんな気分ですね」とおっしゃってくれたんです。

その日はカウンセリングの後は彼とのデートが待ってました。
ちょうどカウンセリングルームの外で彼は待っていてくれたんですけど、出てきた彼女を見て、彼はその雰囲気の変わりようにちょっとびっくりしたみたいです。

彼女がその後、また報告メールを送ってくれました。

 

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カウンセリングを受けるたびに楽になっていくのを感じます。
そして、傍で見ていてくれる彼もそのことを良く感じるようで、「お前、本当に変わったなあ」と最近は何度も言ってくれます。
私も最近は少しずつ自分の変化に気付けるようになりました。
例えば、朝会社に行く時に選ぶ服も何となく女性っぽいものが増えたと思いますし、久々に会った友達にも『彼氏とうまくいってるやろ?』って言われましたし、取引先の営業さんにも『いつもと雰囲気違うねえ』と言ってもらいました。
彼に対しても、最近は我慢せずに色んなこと言ってるような気がします。
彼が言うには、今までの私はどこかつかみ所がなくて、何を考えているのか分からないところがあったそうなんです。

実は、今度の週末、彼の実家に挨拶に行くことになりました。
結婚というわけではないんですけど、彼のお母さんが、連れて来いって最近急に言い始めたそうなんです。
これもカウンセリングの効果なのでしょうか?

根本さん達がいつも眼に見えないものの話をしてくださるので、私の心の奥深いところが何か変化してこういうことになったのかな?とも思えるんです。
それと、前の私だったら、彼の実家に行くなんてこと、怖くて苦しくて仕方が無かったと思います。
でも、今は、緊張してしまうだろうけれど、何となく楽な気持ちでいられるんです。
不思議なものですね。
自分にいつしか自信が持てるようになったのかもしれません。

カウンセリングを受けるたびに、色んなことに気付いて、もっと良くなりたい、もっと魅力的になりたいって気持ちが本当に強くなりました。
この年になって、もっと成長していけるんだと思うと嬉しいです。
こういう前向きな気持ちになれるようになったのもカウンセリングの効果なんですよね。
カウンセリングに出会えて本当に良かったと思っています。

実は他にも聞いていただきたいお話がいくつかあるんです。
今まで忘れよう、忘れようとしていたこともあって、それを癒して頂けたら、と思っています。
これからも宜しくお願いします。
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※掲載に当たって、改行位置や文節、一部表現を改めています。

 

香織さんは間隔を空けつつも、その後も何度か足を運んでくださっています。
最初の頃の大人しさはいずこかに消え、親しみを持って、また、楽しく笑いながらお話が出来てくるようになってきました。
雰囲気も本当に変わってきて、いつしか、大人の女性らしさがにじみ出て来ています。
本人は至って「自分では意識しないとあんまり分からないんですけどね」なんておっしゃってますけど。
いつかは彼と一緒に来て見たい、とおっしゃってましたので、また揃ってお会いできるのを楽しみにしています。

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

根本裕幸&理加

「セックスや性的なことに嫌悪感を感じてしまう」という理子さん(仮名)。
彼女はとてもかわいらしい感じの女性で、彼氏もほとんど切れ間なくいたようです。
今は結婚されてご主人と仲のいい毎日を過ごされていますが、セックスへの抵抗のような、違和感のようなものを感じることが多くなってきました。
このままではセックスレスになってしまうし、何よりもセックス自体が嫌いになってしまうのでは?と感じてカウンセリングにいらっしゃいました。
実はこのセッション以前に仕事の問題で2回ほどカウンセリングを受けられていましたので、今回で通算3回目のカウンセリングとなりました。

 

理子さん:
「エッチそのものは嫌いじゃなくて、好きな方だと思うんです。裸でくっつくのは大好きだし、してあげるのも、してもらうのも嫌いじゃないし。でも、なかなかイクことができないし、エッチそのものに何かいけないことって思いがぬぐえないんです。しかも、彼のことを好きになればなるほど違和感というか、怖いような感じもしてしまうんです」

 

裕幸:
「いけないことのように感じてしまう、という気持ちはずっと前からありました?」

 

理子さん:
「昔からあったような気がします。母親がそういうことにオープンな性格なので、頭では『当たり前のこと』『変なことじゃない』って思うんですけど・・・」

 

裕幸:
「なるほどね。その違和感ってね、どの辺りから感じ始めます?エッチしようって雰囲気になったときからもうありますか?」

 

理子さん:
「そうですね・・・。最初はどっちかというと『嬉しい』って感じです。でも、気持ちよくなり始めると『いけないことしてる』って気持ちが出てくるような感じです」

 

裕幸:
「気持ちが盛り上がってくると、ブレーキがかかってしまうような感じでしょうか?」

 

理子さん:
「そうそう、そんな感じです。だからイクこともできないんでしょうか?」

 

裕幸:
「そういう風に見ることもできると思いますよ。もちろん、他にも原因はあるかもしれないけれどね。そんな違和感を感じたり、いけないことって感じたり、違和感を覚えるのは自分が抱かれているときだけ?例えば映画でそういうシーンがあったりするときは平気?」

 

理子さん:
「映画のシーンとかはどちらかというと好きな方だと思います。ロマンチックだし、自分もしたくなっちゃうときもあります」

 

裕幸:
「そうすると、、、何か自己嫌悪の匂いがちょっと匂いますね~」

 

理子さん:
「え?私、よく夫からも自己嫌悪が強いって言われて、私もそう思うんですけど、何か関係あるんですか?」

 

裕幸:
「大いにありますよ。自己嫌悪とね、こういう性的な、セクシャリティの部分って繋がっているんですよ。
自己嫌悪のルーツの一つは思春期に自分の体がどんどん変化していく時期にあるんです。胸が大きくなったり、陰毛が生えたり、生理が始まったり、声変わりしたり。そうすると、その変化をすごく意識しますよね。
他の人、特に異性の視線をすごく意識するようになって、いつも自分自身をチェックしてしまいます。いわゆる自意識過剰になるんですね。
中高生になると鏡を見る時間やお風呂に入る時間が長くなりませんでした?それはきれいに見られたい、っていう強い意識の現われなんですよ。でも、それくらい繊細にチェックすると気に入らないところって必ず出てきますよね。
重箱の隅をつつくくらいに自分を見つめるわけですから。そうすると『もうちょっときれいだったら』『もうちょっと胸が大きければ』『ここの形が気に入らない』なんて風にね。」

 

理子さん:
「そういえば、私、自分の体があんまり好きじゃないんですよね。細すぎるというか、色気がないって感じがしてしまうんです。理加さんもすごく細いですけど、何か色っぽい感じがしますよね?けど、私ってそういう部分ってあんまりないんじゃないかっていつも思っちゃうんです」

 

理加:
「理子さんも素敵で、女の私から見ても色っぽいですよ。でも、そう思ってしまうくらい自分のことを否定してしまうみたいですね。実は私も自己嫌悪がすごく強くて、性的なコンプレックスもあったんです。胸が小さいので『こんなに胸が小さかったら誰も好きになってくれない』って真剣に思ってました」

 

理子さん:
「あ、私、今もそう思ってます。それに私、自分の裸が好きになれないんです。お風呂上りに鏡を見ると、何か気持ち悪いような感じがしてしまって」

 

理加:
「理子さん、今まで、痴漢にあったり、性的ないたずらを受けたことってありませんでした?」

 

理子さん:
「どうして分かるんですか?何度かあるんです」

 

理加:
「直感!というとかっこいいですけど、エッチがうまく行かないって感じてて、自己嫌悪が強い方って、そういう経験がトラウマになってることが少なくないんですよ。そんな経験の中で今も強く覚えてる出来事って何かありますか?」

 

理子さん:
「そうなんですか・・・。痴漢は電車に乗ってるときに時々会いましたけど、確かに気持ち悪くてイヤでした。でも、そういうお話を聴いて思い出したんですけど、小さい頃に、多分、4歳とか5歳だったと思うんですけど、お父さんとお母さんがエッチしてるのを見てしまったんだと思うんです。エッチが何かも分からない頃なんですけど、多分夜中だったと思うんですが、目を覚ますといつも一緒に寝てるお母さんがいなくて、お父さんの部屋の方からお母さんの声がしたんです。それで襖をちょこっとあけてみると、お父さんとお母さんが裸になってて。それで、お父さんがものすごく怒って『バカやろう、外に放り出すぞ』って喚いてものすごく怖かったんです。その後、慌てて自分の部屋に戻ってお布団に入って泣いてました。でも、そのことと性的なことに嫌悪してしまうのって関係あるんでしょうか?」

 

裕幸:
「それは、ものすごく怖かったですよね・・・。それが、エッチなことだった、ってことは当時は分からなかったと思うんですよね。多分、大人になってから、後付けでそう解釈したんじゃないでしょうか。でも、お父さんとお母さんが裸になってるってことは分かってるんですよね。何をしてるかは分からないけれど。
それで、その後、ものすごく怒られたわけですから、その“裸である”ということと“怒られて怖い思いをする”ということが感情的にくっついてしまったんじゃないでしょうか。もちろん、そんなに幼い頃の出来頃ですから、思考って働かないですよね。だから、そんな風に感情的にその情景を受け取ってしまうんです。そうするとね、自分が裸になったときに感覚的にその恐れを取り戻すんじゃないかと思うんです。
それに加えて、思春期の頃にセックスなるものを知りますよね。その時に、あのときお父さんとお母さんがセックスをしてたんだ・・・と知るんです。でも、お父さんとお母さんがセックスしてるなんてね、最大のタブーっていってもいいくらい気持ち悪いものですから、そこで性的なモノに対する強い嫌悪感が生まれるんでしょう。
もちろん、それらは意識するかしないかは分からないくらいのものだけれど、この二つの要素があいまってしまったのかな?って感じがします。」

 

理子さん:
「そうだったんですね。確かに、思春期の頃、お父さんを非常に嫌ってましたし。」

 

—————————
セックスの問題、レイプや性的虐待、痴漢の問題など、様々な性的なケースを扱いますが、そのような性的なトラウマを扱う場合には、いつも以上に繊細になりますね。
なかなか人に話せない話題ですし、お客様自身も恥ずかしかったり、抵抗があるのが普通です。
それくらい勇気を持ってお話してくださるわけですし、向き合おうとされているわけですから、できるだけ優しく、ゆっくりとプロセスを進めるようにしています。
時にはセッションの途中で強い抵抗が出てくるときもあります。そこはカウンセラーとすれば、もう一歩深く入って大きな癒しをもたらしたい、と思うところなのですが、そんなときに発せられる「No」のサインを見逃さないように注意しています。
—————————-

 

裕幸:
「それじゃあ、ゆっくりと深呼吸を何度か繰り返してみましょう。そうして、準備ができたら目を瞑ってみてくださいね。
・・・。
そして、ちょっと想像してみて下さいね。タイムマシーンに乗って、あの4歳の夜の自分に会いにいくと思ってください。ゆっくりと時間がさかのぼり、あの日、あの夜の自分の部屋に戻って見ましょう。
・・・。
彼女が夜中に起きて、そして、お母さんを探している様子を思い浮かべてください。
そして、そっとお父さんとお母さんの部屋を襖をあけて覗いているシーンを。
・・・。
そうするとお父さん、お母さんがその子に気付きます。
そして、お父さんがものすごい剣幕で『何してるんだ!バカやろう!外に放りだしてやる!!』と怒鳴る声を聞いてみてください。」

 

理子さん:
「(思わず頭を抱える)」

 

裕幸:
「そして、その4歳の理子さんが慌てて、自分の布団に戻って丸くなります。あなたはただ、その子を見続けてあげてくださいね。
・・・。
そして、お布団に包まっている女の子をイメージしてください。そして、その子をちょっと離れたところから見てあげてくださいね。
彼女は今、お布団に包まってどんな風になっていますか?」

 

理子さん:
「丸くなって、震えています」

 

裕幸:
「それを見ているとどんな気持ちがするでしょう?」

 

理子さん:
「とてもかわいそうな感じがします。何も悪くないのに・・・」

 

裕幸:
「その子の近くにゆっくり近づいてみてください。そして、お布団の上から優しく手を置いて見てください。
・・・。
彼女はどんな様子に感じられますか?」

 

理子さん:
「丸くなって、小さな声で『ごめんなさい、ごめんなさい』って。(涙ながらに)かわいそうに。すごくお父さん、お母さんに申し訳ないって思ってるみたい」

 

裕幸:
「その彼女の気持ちを感じながら、できるだけ優しく彼女の背中をさすってあげて下さい。その子はどうなるでしょう?」

 

理子さん:
「震えは止まりましたが、じっとしています」

 

裕幸:
「じゃあ、ゆっくり、本当にゆっくり、布団をずらしてみてください。彼女はどんな顔をしてあなたを見ていますか?」

 

理子さん:
「・・・。(涙をあふれさせて)涙をいっぱい浮かべて、怯えるように私を見ています。なんだか、すごく不憫でかわいそう、です。」

 

裕幸:
「その子をゆっくりと抱き寄せてあげてもらえますか?そして、あなたの腕で優しく抱きしめてあげてもらえますか?その子はあなたの腕の中でどんな風になっていますか?」

 

理子さん:
「震えています。ぎゅーっと私の服を掴んで。何も悪くないのに。不憫で、不憫で仕方がないです・・・」

 

裕幸:
「でも、その子は自分が悪いことをしてしまったような気がしているんですよね?その子の耳元でこうささやいてもらえますか?『お父さん、お母さんにすごく悪いことをしてしまったと思ってるの?』って。その子はどんな反応をしますか?」

 

理子さん:
「小さく頷いています。ずっと震えてます。どうしたらいいんでしょう?」

 

裕幸:
「優しく優しくその背中を撫でてあげてくれませんか?そして、こう伝えてあげてもらえるでしょうか?『怖かったね、怖かったね。もう大丈夫よ」って。」

 

理子さん:
「(たくさん涙を流しながら)怖かったね、怖かったね。もう大丈夫よ。もう大丈夫だからね」

 

裕幸:
「続けて、こう言ってあげて下さいませんか。『あなたは何も悪くないよ』って。できるだけ、優しく、ね」

 

理子さん:
「あなたは悪くないよ。あなたは悪くないよ。大丈夫、大丈夫」

 

裕幸:
「今、その子はあなたの腕の中でどんな風になっているでしょうか?」

 

理子さん:
「少し落ち着いたみたい」

 

裕幸:
「今、お父さんとお母さんはどこにいるでしょうか?」

 

理子さん:
「たぶん、父と母の部屋にいると思います」

 

裕幸:
「じゃあ、その子の手を取って、お父さんとお母さんの部屋に行って見ましょう。ゆっくり襖をあけて、その部屋に入ってみてください。お父さんとお母さんは今どんな顔をして、4歳の娘を見つめていますか?そして、ちっちゃな理子ちゃんはどんな顔をしてお父さん、お母さんを見てますか?」

 

理子さん:
「お母さんはものすごく申し訳なさそうな顔をしています。お父さんは俯いています。怒ってはいないみたい。小さな私は・・・、すごく怖がって、でも、申し訳なさそうな顔をしています」

 

裕幸:
「そうしたら、その子にこういわせてあげてくださいね。『お父さん、お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい』って。何度も何度も。その子はどんな風にその言葉を伝えてますか?」

 

理子さん:
「(大粒の涙を浮かべて)小さな、かすれた声で、俯きながら言ってます」

 

裕幸:
「それはお父さん、お母さんの耳に届いたでしょうか?もし、届いたのなら、お父さん、お母さんはどんな表情をしていますか?」

 

理子さん:
「届いたみたい。お母さんは泣き出しそうです。お父さんは俯いているけど、申し訳ないような様子です」

 

裕幸:
「じゃあ、理子ちゃんに大きな声で『お父さん、お母さん、ごめんなさい』て叫ばせてあげてください。何度も何度も。そして、こう言わせてあげてください。『お父さん、理子を捨てないで』と。その声を見て、お父さん、お母さんはどんな様子でしょう?」

 

理子さん:
「(頷きながら、涙を流しながら)お母さんは泣いてます。お父さんは、俯いたまま、じっと唇をかんでいます。小さな私は泣きながら叫んでます」

 

裕幸:
「じゃあ、理子ちゃんにこういわせてあげてください。『お父さん、お母さん、だっこして』って。そして、二人にだっこしてもらってください。
・・・。
3人は今、どんな様子でしょうか?」

 

理子さん:
「お母さんは何度も『ごめんね、ごめんね』って言ってます。ちっちゃな私はいっぱい泣いてます。『ごめんなさい』って言いながら。お父さんは、唇をかみながら、だっこしてくれています」

 

裕幸:
「その様子をただ見てあげてください。どんな気持ちになるでしょう?」

 

理子さん:
「(とめどなく流れる涙を拭きながら)良かったな、って。ほんとに良かったって」

 

裕幸:
「そうして、あなたはお母さんの声を聞いてもらえますか?『理子、こっちへおいで』って声を。そして、あなたもお父さんとお母さんに抱いてもらってくれませんか?」

 

理子さん:
「(わっと涙を流して、ご両親に近づきます)」

 

裕幸:
「そして、お父さん、お母さんの腕に抱かれながら、その手を感じてみて下さい。お父さんの大きな力強い手があなたの頭をなでてくれています。お母さんの柔らかくて、優しい手があなたの背中をさすってくれています。ただ、それを感じてみてもらえませんか?
・・・。
そして、お父さん、お母さんにこう言ってみて下さい。
『お父さん、お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい』って。
何度も何度も叫んでみてください。」

 

理子さん:
「(泣きじゃくりながら)ごめんなさい、お父さん、ごめんなさい、お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい」

 

裕幸:
「そのまま、ゆっくりとお父さん、お母さんに抱かれていてください。あなたのその罪悪感が癒されるように、お父さん、お母さんの罪悪感が流れていくように」

 

————————–
セッション後、彼女は憑き物の取れたような表情をしていました。
ゆっくりと目を開けて頂いて、ぼーっとして何も考えられないという彼女に、少し自分自身を感じて頂きました。
今の私、女の私。
成長して、結婚して、成熟した女の私。
理加に背中や手を優しくなでてもらいながら胸とお腹に手を当てて頂き、大きく呼吸をしながら、その感覚をゆっくりと体に馴染ませていきます。
彼女はちょっと吐息を漏らしながら、少し色っぽい大人の女性の目付きに変わっていきます。

————————–

 

裕幸:
「すっきりしたでしょ?」

 

理子さん:
「はい。なんでこれだけのことで?という感じです。でも、何も考えられません」

 

裕幸:
「今は、そのまま、今の自分を感じていてください。今日はゆっくりお休みくださいね。そして、また何日か経ったらメールでも送って下さいな」

—————————

その後、彼女からメールを頂きました。
個人的な内容が多いので、ここではセッションに関する部分だけをご紹介させていただきます。

「あの日、ずーっとぼうっとしていたんです。主人が迎えに来てくれて良かったと思いました。主人は私を見るなり『なんか、えらく大人っぽい目をしてるでー。いいカウンセリングやったんやな』と言ってくれました。そしたら、なぜかすごくほっとして、主人に抱きついてしまったんです。その日はすごく疲れていたんだけど、面談の効果を試してみたくてエッチしてみたんです。そしたら、いつもブレーキがかかるようなところで、どんどん気持ち良くなってしまって、後はあんまり良く覚えていないんです。でも、主人のことが今まで以上にすごくいとおしくて、終わったあともいつまでもこのまま居たいって初めて思いました。後から主人に聞くと『いつもと全然違ってたでー。めっちゃ、良かったわ』って言われてしまいました(あーすごく恥ずかしいです。でも、ぜひお伝えしたかったので)。このまま、こんなエッチがいつも出来るといいな、と思います。」

 

(この記事はご本人の了解を得て掲載しています)

根本裕幸&理加

カウンセラー:原 裕輝

兵庫県からお越しの森安さん(仮名 女性、32才)は恋愛のことでご相談にお越しくださいました。

ご相談内容は、彼氏への不満がいっぱい溜まってきて彼とのお付き合いがしんどくなってきていたそうです。

でも、彼のことは好きだし、なんとか彼と上手くやっていく方法がないかと思案している時にカウンセリングサービスを知りご相談に来てくださいました。

森安さんの話しを聞くと、昔から男性とお付き合いが始まると、だいだい1年くらいでお別れになることが多かったそうです。
そして面談カウンセリングに起こしにいただいた時は彼氏とお付き合いして8ヶ月程たった頃でした。
『このまま行けば後4ヶ月・・・・・・』
いつものように彼とのお付き合いも1年で終わってしまうんじゃないかという恐れも森安さんの悩みの種でした。

彼への不満が溜まっているということで、森安さんにどんな不満が溜まっSているのか聞いてみました。

森安さん:「どう話せばいいのか・・上手く離せないかも・・」

原   :「森安さんの話しやすい話し方で話していただけれ結構ですよ、
僕も解りにくいことがことがあれば、後で質問させていただ
きますから。」

森安さん:「彼に不満が溜まってきて、イライラしてしまうんです。
でも、そのイライラした顔を彼に見られたくないから、無理
して笑顔でいるんですけど、それも疲れてきてしまって・・」

原   :「なるほど、無理してしまうんですね。無理するとしんどいで
すものね。例えば、彼にどんな不満があるんですか?}

森安さん:「些細なことなんですが、待ち合わせをしていると遅れてくる
ことが多かったり、電話をかけるのは私からばかりで、彼か
ら電話をくれることはほとんどなかったり、大切にされてい
ないような感じがしてきてしまって、つらくなってきてしま
うんです。」

原   :「大切にされてない感じがするとつらいですよね。
でも、森安さんのそのつらい気持ちを彼は知っているんで
しょうか?」

森安さん:「いいえ、知らないと思います。」

原   :「ということは、彼に話したことがないということでしょうか?」

森安さん:「はい、話したことがないんです。
彼のことを友達に相談すると、ちゃんと気持ちを伝えなきゃダメ!
って怒られたことがあったんで、彼に伝えてみようと思った
ことはあるんですが、彼の前にいくと言えないんです。
ついつい我慢してしまうんです。」

原   :「言おうと思っているんだけど、言えなくなってしまう。
フラストレーションも溜まるんじゃないですか?」

森安さん:「はい、もうしんどいです。
いつも恋愛をするとだんだんしんどくなってきて1年ほどで
分かれてしまうんです。」

原   :「お話しを聞いていて思ったんですが、だいぶん我慢されてい
るようですね。
とても、しんどいと思います。
この我慢することって癖のようになっていませんか?
彼との関係だけではなく、例えば、会社で・・とか、友達関係
で・・とか。いろんな関係で我慢するというパターンがでてく
ると思うんですが?」

森安さん:「はい、そのとうりです。
だから、どこに行ってもストレスがたまっちゃうんですよね
特に彼に対しては、特別!(笑)」

原   :「この頭で言わなくちゃと思っていても、なぜだか分からないけ
ど彼の前に行くとこの言わなくちゃという気持ちを抑えてしま
うような感覚がでてくるわけですよね。
この感覚が森安さんを苦しめてると思うんですね。
でも、なんで我慢しちゃうんでしょうね?
癖になっているくらいだから、ずいぶん昔からこの我慢する
パターンをお持ちのだと思うんですが?」

森安さん:「う~ん・・・どれくらい前からあるのかなぁ?
彼と付きあって・・・もっと前かなぁ、中学校の頃にはすでに
我慢する子だったように思います。(笑)」

原   :「中学校の頃にはすでに今の自分の言いたいこと我慢する森安
さんがいたんですね。なるほど。
子供ってたいていは、無邪気で自分の欲求に対して素直
でしょ、遊園地いきた~いとか、おもちゃ買ってほしいとか、
でも、何らかの経験があって、我慢して、しんぼうして、
たえるというのを僕たちは覚えていき、成長することが多い
んだけど、森安さんはもうものおぼえついたころから、自分
の言いたいこと我慢するような女の子だった?」

森安さん:「そういえば・・・・」


こうしてカウンセリングをしていくと、森安さんは小学校の頃は、今の自
分とはまったく違うタイプの女の子だったことを思い出してくれました。
小学校の頃は、無邪気で、活発で、自分の気持ちも我慢せずよく言うほう
だったことを思い出してくれました。
更にカウンセリングを続けていくと、
お父さんとのある思い出を語ってくれました。

小学校の頃、森安さんはお父さんが大好きだったそうです。
お父さんが大好きだったんで、お父さんが仕事から帰ってきた時に、
「お父さん遊んで~」
と言いながら抱きつきにいったそうです。
すると、お父さんは、
「うるさい、向こうで遊んでなさい」
と少し怒りぎみに小学生の頃の森安さんに言ったそうでした。

僕たち大人の頭で考えると「お父さんキゲン悪いのかな?」とか「会社で
嫌なことあったのかな?」と考えることができるのですが、
小学生の森安さんが感じたことは“嫌われちゃった”と感じたそうでした。
そして、小学生の頭で考えたことは、『うるさい、向こうで遊んでなさいっ
てお父さんが言ってた・・・私がうるさいから嫌われちゃったんだわ』と
考えたそうです。
そして嫌われない為におとなしくしていたそうでした。

すると、お父さんは「今日はいい子にしているね」と褒めてくれたそうです。
でも、彼女は褒められたとは感じず『やっぱり、うるさいからこの間は嫌われ
てたんだ』と思ったそうです。

その日から彼女の愛される秘訣は、
自分の気持ちを抑えて、我慢して、しんぼうして、たえるということに
なっていきました。
我慢する理由、それは愛される為にでした。

大人になるにつれ、お父さんとの思い出は忘れていったようですが、
我慢しなきゃ嫌われてしまうという恐れの感覚や、我慢したら愛されるとい
う感覚は残り、この感覚が彼の前にいくとでてきたようでした。
我慢する理由それは、彼に嫌われない為に、彼に愛される為に・・・・


原   :「嫌われない為に、愛される為に我慢していたんですね。
でも、この我慢が今は逆にコミュニケーションを取れなくしたり、
ストレスを溜めて1年で恋愛が終わる原因になったりしているよ
うですね。
森安さんの場合、ストレスを溜めないようにもっとコミュニケー
ションをとれるようにしていかないとしんどくなると思うんです
ね。それと今の我慢するしかないという状態から、我慢してもい
いし、我慢せず彼に伝えても良いという選択肢がある自分になっ
ていかないとしんどいと思います。
よければ、セラピーでこの我慢しなきゃ嫌われるという感覚を
変えていきませんか?」

森安さん:「はい、ぜひ!
そんな自分になっていきたいです。」

原   :「じゃぁ、セラピーに入る前にちょっと深呼吸してリラックスする
ところからはじめてみましょうね。」

森安さん:「よろしくお願いします。」

こうして森安さんと原とのセラピーが始まりました。
小学生の時の森安さんは“我慢しなきゃ嫌われる”と傷ついてしまい、その
傷が今もでてきているようなので、イメージの力を使い傷ついた頃の小学生の
森安さんに会いにいき、我慢しなきゃ嫌われるという誤解を解いていくことに
しました。
これは、インナーチャイルドワークといってイメージの力を使って潜在意識に
潜っている傷を癒し、“我慢しなきゃ嫌われる”という感覚を変えるのに、
森安さんの場合この手法が有効だと原が判断したからでした。     


原   :「じゃあ、目の前にタイムマシンがあるとイメージしてみてくださ
いね。今からそれに乗って、小学校の頃の森安さんに会いに行っ
てみましょうね。」

森安さん:「はい」

原   :「小学生の頃の森安さんにあえましたか?」

森安さん:「はい」

原   :「どんな、顔をしていますか?」

森安さん:「泣いています。」

原   :「なんで泣いていると思いますか?」

森安さん:「お父さんに嫌われたと思って泣いている思います。
嫌われないようにしなくっちゃって、いっぱい我慢してるような気
がします。」

その言葉を言うと、森安さんの目から涙があふれていました。
昔、お父さんに嫌われたと思いその時感じた時の感情が湧き出てきたようでした。

この感情が心の傷となって“我慢しなきゃ嫌われる”という思いを作っていった
ようなので心の中に潜っていたこの感情を一旦浮かび上がらせて、
癒していく為にそのまま感情を感じ続けてもらい、感情をどんどん出していくこ
とにしました。

感情を感じる補助をする為に、カウンセリングで森安さんが話してくれた内容
に関連するような歌詞の曲を2曲ほどかけました。
すると森安さんは更に深い感情に入っていきました。

原   :「目の前の女の子を見てもらってもいいですか?
彼女に何か言いたいことや、してあげたいことはありますか?」

森安さん:「もう我慢しなくていいよって、そのまんまでいいんだよって
言って抱きしめてあげたいです。」

原   :「彼女にそう言って、抱きしめてあげてくださいね。」

森安さん:「はい」


森安さんはイメージの中の幼い頃の自分を抱きしめました。
すると暖かい感覚が森安さんに湧き上がってきました。

でてきた感情をより感じやすくする為に、
森安さんのイメージしているシュチュレーションにあった
自分を愛する歌詞の曲を1曲かけて、暖かい感覚を感じ続けてもらいました。


後で森安さんに聞いてみると幼い頃の自分を抱きしめた瞬間、もう我慢して
、しんぼうして、たえなくてもいいんだ、無理しなくてもそのままの私でも
いいんだという安心感ややすらぎのような感覚がでてきたそうです。

心理的に何が起こっているか説明すると、我慢しない自分は受け入れられな
いんじゃないかという自己概念を変える為に、
イメージの力を使い傷ついた幼いころの自分や傷ついた感情を自分自身で
受け入れることをしていくことで、そのまんまの私でも大丈夫、受け入れら
れるという自己概念の変化が起こっているのでした。

原   :「他に、何かしてあげたいことはありますか?」

森安さん:「お父さんの元に連れて行ってあげたいです。」

原   :「じゃあ、彼女(幼いころの森安さん)の手をつないでお父さん
の元につれてあげてもらってもいいでしょうか?」

森安さん:「はい」


イメージの中で幼い頃の自分と手をつなぎ、お父さんの元に連れて行くと、
イメージの中のお父さんは、少し落ち込んでいたそうでした。

原   :「なんで、落ち込んでいると思いますか?」

森安さん:「たぶん、自分のイライラを子供にぶつけてしまったからだと
思います。」

原   :「彼女(幼いころの森安さん)は、お父さんがイライラを子供
にぶつけてしまったことを知っていますか?」

森安さん:「いいえ、自分が嫌われていると思っています。
うるさいから、嫌われたって。」

原   :「じゃあ、彼女の耳元でこういってあげてもいいですか?
“お父さんに私のこと嫌いになったのって聞いてごらん”って」

森安さん:「はい、言いました。
お父さんに今、聞いています。」

原   :「お父さんは、なんて言っていますか?」

森安さん:「ごめんよって誤ってます!
イライラしててあたってしまってごめんよって。
嫌いじゃないよ、愛してるよって抱きしめてくれています。」

森安さんの目から涙があふれて、愛されていたんだという感情があふれてきました。
愛する人と接したとき、今までは嫌われてしまうという恐れがでてきていたのが、
お父さんとの間にあった誤解を解いていくことで、
愛する人に愛されているんだという感覚に変わっていきました。
理屈ではなく、感情的に、感覚的に、愛されていると感じるように変わっていきま
した。

原   :「森安さんもいっしょにお父さんに愛してもらってくださいね。」

森安さん:「はい」

涙できちんとした声にならず、何回も森安さんはうなずいていました。
もう1曲曲をかけて愛されている感じを感じてもらいました。
そして、その愛されている感じを心にとどめたまま、ゆっくりと意識を
カウンセリングルームに戻してもらい、目を開けてもらいました。
そして、しばらくして、森安さんのほうから話しかけてくれました。

森安さん:「とっても暖かい感じがします。」

セラピーの感想や、今回のカウンセリングやセラピーの内容の疑問質問などのに
関して、紅茶を飲みながらしばらく二人で話しました。

森安さん:「彼と今度会うときは、嫌われないかなと気にするんじゃなくて、
彼に愛されているんだなぁ、って感じながら会える気がします。
今度、彼と会う時は自分の思っていることや、自分の気持ちを
彼に伝えられそうです。」

原   :「彼とうまいこといけるといいですね。」

森安さん:「ありがとうございます。
また来させてもらいます。」

とっても、やわらかな笑顔で森安さんはそういってくれました。
そして、この日のカウンセリングを終えてお帰りになられていきました。


1ヵ月後、森安さんは再び面談カウンセリングにお越しくださいました。
前回の面談カウンセリングの後、彼と会って話し合う機会を設けたそうでし
た。そして、自分の気持ちを伝えることができたそうでした。


森安さん:「彼に自分の気持ちを伝えたんです。
時々さみしくなるからたまには、あなたからも電話とかちょう
だいね。って」

原   :「彼はなんて言っていました。」

森安さん:「いいよって、それから時々電話をくれています。
こんな、簡単なことが私今まで言えなかったんですね。
前までは、電話を手に取る時には、大切にされてないとか、
さびしいとか感じていたんですが、、
今は、携帯電話の着信音が鳴って、彼の名前がでていると電話を
手に取るとき、愛されているって感じるんです。
それが、嬉しくて。」

原   :「よかったですね。」

森安さん:「もっと、もっと変わりたくて、カウンセリングを又受けに来ました。
それに20年以上も我慢する癖があったでしょ・・たまに、その癖
がでてしまって、そこもしっかり変えていきたいなって思っている
んです。
それに、原さんが優しい声で、言って下される言葉を聴くとなんだか
自分に自身がわいてきて、わたしもきっと変われる、なんでもできる
じゃないかって気になります。そんな勇気をもらいたいのかもしれま
せん。」

原   :「わかりました。20年以上続けられて自分のパターンですから、
焦らずにじっくり変えていかれるといいと思いますよ。
じゃあ、今日はどのような話しを聞かせていただけるのでしょうか?」

こうして森安さんと原の2回目の面談カウンセリングが始まっていきました・・・・

29歳になる小林百合子さん(仮名)は過去に付き合った男性と、結婚の話になるたびに何となく逃げてしまうパターンを繰り返していました。
結婚寸前まで行った彼は今まで3人ほどいらしたようです。
中には2年近くも同棲し、両方のご両親ともに結婚に前向きだった時もありました。
それはちょうど4年ほど前に付き合った彼だったのですが、最後は彼が浮気を繰り返すようになり、やがては別の女性の元へ走ってしまったようです。

 

実際彼女もそれ以来、男性への不信感が高まって、彼氏は出来るもののあまり深い付き合いが出来なくなってしまっていたんです。
ですから、結婚話が出てもついつい乗り気になれず、自然消滅したり、彼の方から愛想をつかされてばかりでした。

 

でも、彼女は「彼の方から別れを切り出して来たのですが、でも、私がいけないんだと思います。」とおっしゃっています。
彼女自身もそのときの心が痛みが残っていることは自覚されていて、その経験を癒したいとの思いでカウンセリングを選ばれたのでした。
1回目のカウンセリングでは、その彼を思い出し、浮気されたときの思いや「出て行ってくれ」といわれたときの感情を取り戻し、その痛みを手放すことができました。

 

今回ご紹介するのは彼女の2回目のプロセスです。
彼女が過去の恋愛の痛みを手放せた次は、彼女のその恋愛パターンを生んでいる痛みを癒すことに焦点を絞られました。
彼女は比較的男性にもてるタイプで、彼氏も出来るのですが、恋愛をするたびに次のような状態になってしまっていたんです。

 

・我慢ばかりしてしまって言いたいことが言えない。
・彼に気を使って尽くしすぎてしまう。
・依存的になってしまい、彼が仕事で遅くなるだけでも不安になってしまう。
・付き合いが長くなると彼の面倒を見ることが多くなるし、セックスも少なくなる。

 

そこでまずはご家族のお話を伺うことにしました。
お父さんは寡黙なおとなしいタイプで、仕事の関係で出張も多かったようです。
百合子さんのことは“たぶん”かわいがってくれたそうですが、あまり接点は無かったようで、あいまいな記憶が多いとのことです。
一方、お母さんは逆に元気なタイプで、時々ヒステリックになることもあったそうです。
妹が幼いころから病気がちで経済的に苦しかったこともあり、彼女が小さい頃から忙しく仕事をされていました。(今ではその仕事が成功されているそうです)
だから、彼女は一人で妹の面倒を見たり、お留守番をする場面が多かったようです。

 

裕幸:「寂しい子ども時代だったんでしょうか?」

 

百合子さん:「妹がいましたから寂しいという感じはあんまり無かったです。妹はかわいかったですし、病気がなかなか良くならないのでいつも心配していました」

 

裕幸:「思春期の頃は?反抗期とか。ちゃんと暴れましたか?(笑)」

 

百合子さん:「うーん。そういうのは無かったですよ(苦笑)何かいつも“いいお姉さんでいなきゃ”って思ってました。」

 

裕幸:「その分、妹さんは暴れてたでしょ?」

 

百合子さん:「え?どうして分かるんですか?妹はよくお母さんとケンカしていました。今で言う“プチ家出”なんかもしてましたね。その度に私が探しに行ってましたし、お母さんをなだめたりしてたんです。」

 

理加:「お母さんにも“お姉ちゃんなんだから”とか良く言われていませんでした?」

 

百合子さん:「ええ、いつもそうでした。妹の面倒見なさいとか、お手伝いを頼まれることも多かったですね」

 

裕幸:「何だか、恋愛でもそんなことになってません?」

 

百合子さん:「そう言われてみれば・・・確かにそうです。うんうん。今の彼もそうなんですが、いつも心配ばかりしてしまうんです。それで色々気にかけたり、面倒見てしまうんです。この前お話した彼はそれで重たくなってしまったんでしょうね」

 

理加:「言いたいことが言えないっていうのも、お母さんや妹さんへの態度とおんなじですね」

 

百合子さん:「そうです。特に母には小さい頃から言いたいことなんて全然言えなかったと思います。でも、どうして私はそんなことしてしまうんでしょう?」

 

家族って小さい頃から一緒に過ごす時間が一番多いですよね。
それで、僕達は人との距離や接し方の基本となる“ものさし”を、家族との関係の中で作り上げて行くんです。
そして、その“ものさし”を使って対人関係を築いていくので、親子関係はカウンセリングをしていく上では見逃せないポイントなんですね。
特に恋愛では家族ほどにお互いの距離感が縮まりますし、大切な気持ちが芽生えますから、尚更その関係が反映されやすいものです。

 

百合子さんの場合、お母さんや妹さんに対して「何も言えない」「いいお姉ちゃん」「我慢」を繰り返してきたので、それが彼女の対人関係の基本となってしまっていると言えます。
それで、彼氏に対しても、我慢やいい彼女を演じ、言いたいことが何も言えなくなってしまっているのかもしれません。

 

そこで僕達は今回のカウンセリングではそんな彼女の古いの痛みを扱うことにしました。

 

裕幸:
「軽く目をつむってくださいね。そして、心の中に一人の辛そうな表情をしている女の子を思い浮かべてみてください。」

 

百合子さん:
「はい」

 

裕幸:「その子は何歳くらいなのでしょう?」

 

百合子さん:「そうですね・・・。5,6歳くらいです・・・。」

 

裕幸:「その女の子はどこにいますか?誰かと一緒でしょうか、それとも一人ぼっちでしょうか?」

 

百合子さん:「一人ぼっちで、野原みたいなところでぽつんとしています」

 

裕幸:「少し離れたところから彼女をちょっと見てると思ってくださいね。どんな気持ちがしますか?」

 

百合子さん:「とっても寂しそうで、かわいそうです。」

 

裕幸:「じゃあ、ゆっくりとその女の子に近づいて行ってみてください。ゆっくりね。彼女は近づいてくるあなたに気付きます。そうして彼女の目の前まで近づいてみてください。彼女は今、どんな表情をしてあなたを見ているでしょうか?」

 

百合子さん:「少しびっくりした顔をしています。怯えているような感じがします」

 

裕幸:「じゃあ、あなたが誰なのかを説明してあげてもらえませんか。・・・。あなたが怪しい人じゃないってこと、味方だってことが伝わったと思ってくださいね。今彼女はどんな表情をしていますか?」

 

百合子さん:「ちょっと安心したような感じです。でも、また少し俯いてしまいました。」

 

裕幸:「じゃあ、そっと彼女の手を取ってあげてください。その手は冷たいでしょうか?暖かい?あるいは柔らかいでしょうか?それとも堅いでしょうか?」

 

百合子さん:「・・・。とても冷たい手をしています。それに少し堅いです。かわいそう」

 

裕幸:「じゃあ、ゆっくりその女の子の手を優しく、優しく、さすってあげてください。両手でゆっくりゆっくり。彼女の手が冷たい、ということは、その女の子は今、百合子さんの暖かさを感じていますよ。その暖かさが少しでも彼女の心に届くように、優しくさすってあげてください」

 

百合子さんの表情が少しずつ曇り始め、悲しそうな顔へと変化していきます。

 

裕幸:「彼女がそんな暖かい手で優しくされるのは、いったいいつ以来なのでしょう?」

 

百合子さん:「(ポツンと涙を流して)もしかしたら、初めてなのかもしれません。お母さんはいつも忙しそうにしているし、お父さんはお家に居ないし。。。」

 

裕幸:「彼女はどんな気持ちで今まで生きてきたのでしょうね。暖かい手に包まれることもあまりなく、こうして一人で野原に立っていて・・・」

 

百合子さん:「ずっと我慢していたと思います。こんなに小さいのに。」

 

裕幸:「じゃあ、もう一方の手で彼女の頭をなでてあげてください。今彼女はどんな目をしているでしょうか?」

 

百合子さん:「辛そうな目をして、涙を浮かべています。」

 

裕幸:「どうしてなのか、あなたには分かりますよね」

 

百合子さん:「(涙を流しながら)はい。」

 

裕幸:「じゃあ、彼女の頬もさすってあげてください。どんな言葉をかけてあげたいでしょうか?その言葉を彼女に伝えるように実際声に出して伝えてみて下さい」

 

百合子さん:「辛かったね・・・。」

 

裕幸:「彼女は今どんな感じでしょうか?」

 

百合子さん:「泣いています」

 

裕幸:「彼女がどんな気持ちか、それはよく分かりますよね。じゃあ、ゆっくり彼女を抱きしめてあげてください。腕の中で彼女を感じて見てください。そして、その冷たい体をぎゅっと抱きしめてあげてもらえませんか?」

 

百合子さんは声を押し殺すように静かに泣いています。

 

裕幸:「彼女は腕の中でどうなっているのでしょう?あなたは何を感じているのでしょう?」

 

百合子さん:「はい。今も泣いています。辛かったんだな。ずっと我慢してたんだなって気持ちがしてきます。」

 

裕幸:「どんな泣き方でしょう?声をあげて?それとも静かに?」

 

百合子さん:「静かに泣いています。それが余計辛そうです」

 

裕幸:「彼女、今も我慢しているのが分かりますか?彼女にこう伝えてみてください。『もう我慢しなくていいよ』って。『辛かったね』って」

 

その後、彼女もその腕の中の女の子も涙を流しつづけます。
長い間、その女の子はイメージの中で泣きつづけます。
少しずつ声をあげ始めた百合子さんを僕達も静かに待ちます。

 

やがては百合子さんの表情も柔らかくなり、彼女の呼吸も静かなものに変わって行きます。

 

裕幸:「今、その女の子はどんな表情であなたを見つめているのでしょうか?」

 

百合子さん:「目を腫らしています。嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をしています。かわいらしい、女の子らしい顔です」

 

裕幸:「じゃあ、ただ、彼女の表情を見つめてあげてくださいね。どんな気持ちがしますか」

 

百合子さん:「ほっとしたような、暖かい気持ちです。彼女も笑ってます」

 

そして、そのイメージ中で一緒に遊んだり、色んなことをお話したりして過ごします。

 

百合子さん:「私はほんとに大人しい子ってみんなに言われていたんです。でも、彼女はすごく饒舌に、たくさん話をしてくれます。」

 

そして、プロセスは一つの区切りを付けて、次の段階へと進みます。

 

裕幸:「夕方になって来たので、二人で手を繋いで家に帰ることにしたと思って下さい。一緒に話をしながら歩いて帰りましょう。そして、家について玄関の前に立ったとき、彼女はどんな顔してますか?」

 

百合子さん:「さっきまでは楽しそうだったのに、今はちょっと寂しそうな感じで俯いてしまってます」

 

裕幸:「玄関を空けて一緒に中に入ってみてください。あなたの姿は他の人には見えませんから安心してくださいね。そして、彼女が『ただいま』って言ったと思って下さい。どんな風に言ってますか?」

 

百合子さん:「ちょっと元気の無い声です」

 

裕幸:「誰かその声に応えてくれましたか?」

 

百合子さん:「はい。お母さんが『おかえり』ってそっけない感じで言ってくれました。」

 

裕幸:「お母さんはどこで何をしてるんでしょうか?」

 

百合子さん:「台所でご飯の用意をしています」

 

裕幸:「その後、彼女はどこへ向かっていって何をしますか?」

 

百合子さん:「居間に向かっていきます。妹がいて、一緒にテレビを見ています」

 

裕幸:「どんな顔していますか?」

 

百合子さん:「ニコニコして妹と楽しく話そうに話してます」

 

裕幸:「じゃあ、彼女の手を取ってお母さんのところに連れて行ってみましょう。妹さんも一緒に連れて行って下さいね」

 

百合子さん:「え?・・・。はい。」

 

裕幸:「お母さんの側まで来ました。彼女はどんな顔していますか?」

 

百合子さん:「こわばって、固まってます」

 

裕幸:「彼女にこう伝えてみてください。『お母さんと仲良くしたいよね。いつも我慢ばっかりしてたから。今日はお姉ちゃんが一緒についていてあげるし、妹も一緒にいてくれるから大丈夫だよ。頑張ろうね』と。まずは、彼女に『お母さん』って呼ばせてあげてください。彼女は言えましたか?どんな風に彼女は言えたのでしょう?」

 

百合子さん:「小さな声です。何か震えてるみたいです」

 

裕幸:「お母さんはどんな反応しましたか?」

 

百合子さん:「返事はしてくれたけど、『なに?』って。やっぱりそっけない感じです。」

 

裕幸:「じゃあ、もう少し大きな声で『お母さん』って言わせてあげてください。彼女が小さい声になってしまう気持ち、あなたには分かりますよね?だから、励ましてあげてくださいね。彼女はお母さんを呼ぶことはできたでしょうか?」

 

百合子さん:「はい。さっきよりも少し大きな声で呼べました。」

 

裕幸:「お母さんはどんな反応?」

 

百合子さん:「顔だけこっちを向けて『何?』って。この子、それ見てとっても辛そうです」

 

裕幸:「彼女の背中をさすってあげて下さいね。そして『大丈夫。お姉ちゃんが一緒にいてあげるから』って言ってあげてください。そして、今度は彼女にこう言わせてあげてください。「お母さん、忙しいところにごめんね。迷惑かけちゃいけないって知ってるけど、ちょっとだけ私のわがまま聞いて欲しいの。』って。彼女がそれをどんな風に言えたでしょうか?そしてお母さんの反応は?」

 

百合子さん:「怖い感じですけど、でも、しっかりした口調です。いつもみたいに怯えてはいないです。お母さんの反応は・・・えっ・・・ちょっと優しい顔になってます」

 

裕幸:「じゃあ、続けて彼女にこう言わせてあげてください。『お母さん、いつも忙しそうだから、迷惑かけちゃいけないっていつも思ってるの。それで、もっとお母さんに甘えたかったけど、我慢していい子にしてきたの。でも、もうそれも我慢ができなくなっちゃって』と。」

 

百合子さん:「途中から泣き始めながらも一生懸命言ってます。それ見てたら私も泣けてきてしまいました。」

 

裕幸:「我慢しないでくださいね。お母さんはどんな風にそれを聞いていますか?何か言ってくれますか?」

 

百合子さん:「はい。ちょっと優しい顔になってます。それに『どうしたの?』って。申し訳なさそうな顔してます」

 

裕幸:「続けて彼女にこう言わせてあげてください。『お母さんにね。ずっと甘えたかったの。迷惑かけちゃ行けないと思ってずっと我慢してきたの。でも、もう我慢できなくなって、今日だけでいいから、明日からまたいい子になるから、お母さんに甘えてもいい?』って言わせてあげてください。お母さん、どんな顔してそれを聞いてますか?」

 

百合子さん:「悲しそうです。『ごめんね。お母さん、全然百合子のこと気付いて挙げなかったね。ごめんね』って。」

 

裕幸:「じゃあ、彼女にこう言わせてあげてください。『お母さん、だっこして』って。お母さん、なんて言ってくれますか?」

 

百合子さん:「『うん、いいよ。こっちいらっしゃい』って」

 

裕幸:「彼女をお母さんのところに連れて行ってあげてください。そして、たくさん、だっこしてもらってくださいね。彼女、どんな顔してそこにいますか?そして、それを見てる妹さんはどんな表情してるでしょう?」

 

百合子さん:「嬉しそうです。本当に嬉しそうです。妹もはしゃいでますね。お母さんも嬉しそうです。ちょっと泣いてくれてます、お母さん。信じられない」

 

裕幸:「お母さんは、忙しいあまり気付けなかったのかもしれませんね。でも、それを百合子ちゃんが勇気をもってお母さんに言ったから、お母さん、振り向いてくれたのかもしれませんね。今、彼女があなたを手招きしてます。小さな百合子ちゃんは妹も抱き上げて一緒にだっこしてもらっています。あなたもお母さんにくっついてください。どんな気持ちがする?」

 

百合子さん:「あったかいです。何か本当にあったかい気持ちがします」

 

百合子さんには、この後もうしばらく、その温かさを感じていただいて、セッションは終わりました。

 

百合子さん:「何か、すごくほっとしたような気持ちで、安らいでいます。温かい気持ちがいっぱいです。彼に言いたいことがあっても言えなかった理由がなんとなく分かったような気がします。我慢してしまうのも。妹はいつもお母さんに甘えてたんです。だから、自分はいつも甘えちゃいけないって思ってました。我慢してたんですね。だから、妹にもかわいいんだけど辛く当ってしまうこともあって。お母さんを盗られてしまったように感じてたのかもしれないです。」

 

彼女にとって、お母さんに気を使い、言いたいことを我慢してしまうことや、妹さんの面倒をよく見て、ある意味お母さんのようになってしまうことなどは、今の恋愛の中でも如実に出てきているパターンとなってしまっていました。

 

その後、彼女は徐々に「自分らしい自分」へと変化し始めました。
そうすると如何に自分が我慢して、遠慮していたのかに気付いてきました。
そして、それがとっても窮屈で、不自然なことも。

 

このセッションの後、約2週間後にまた面談をする機会を頂いたのですが、彼女はそこで面白い変化を教えてくれました。

 

・お母さんとの関係が変わった。温かい気持ちでお母さんを見ることができた。
・妹にも優しくすることができた。
・家に居るのが苦痛ではなくなってきた。
・前から友達だった男性と仲良くなった。その人の前では今まで以上に自然にいられる。
・友達から、笑顔が増えたって言われてる。自分でも面白いことを心から笑えるようになってきたと思う。

 

彼女はその後、コミュニケーションや女性らしい魅力を解放するセッションを何度か受けられて僕達の元を卒業されていきました。

 

最後に頂いたメールには感謝の言葉とともに「気になる男性とお付き合いをはじめて、何かうまく行きそうな予感がします。彼は今までとは全然違ったタイプで、色んな話をしています」と書いてありました。

 

その手紙にはこんな嬉しいことも書いてくださってました。
「もし、彼と揉めたら今度は二人で伺います。困ったときに頼れる場所があるって見つけられただけで楽な気持ちでやっていけます」と。
そう、僕たちの目指しているのはそんな場所なんです。
でも、幸いまだ彼女は彼と揉めてはいないようですね。
卒業されて数ヶ月が過ぎた今でも、まだ何のヘルプメッセージも届いていませんから。

 

いつまでもお幸せに。

 

 

 

(この記事は本人の了解を得て掲載しています)

根本裕幸&理加

三重県からいらした結婚5年目の中本夫妻(仮名 ご主人が34歳で奥様は32歳で3歳になる娘さんがいらっしゃいます)は2年くらい前からセックスレスの状態で、それをなんとかしたいと夫婦でカウンセリングにいらっしゃいました。
最初に問題意識を持ち始めたのは奥様の方だったのですが、ご主人もついつい家族を疎かにしてしまったところもあって反省し、自分でも性欲がないわけではないのにセックスしたい欲求がないことを疑問に感じてのカウンセリングでした。

 

カップルカウンセリングの場合、最初の「意志確認」がとても大切になります。
中本さん夫妻のように両方が前向きな気持ちであれば、そのカウンセリングはとても効果を発揮しますが、どちらかの意識が引き気味の場合はむしろ単独カウンセリングの方が長い目で見たときに効果的なようです。
特にセックスに関する問題については、セックスレスだけでなく嗜好的な問題も含みますので、なかなかカウンセリングに踏み切るのは勇気が要ることですね。

 

さて、無料の問診(これは奥様のお話を理加が伺いました)を通じて、2年半前のご主人の人事異動がカギになることが分かってきましたので、まずはそのお話を詳しく伺うことにしました。

 

その人事異動ではご主人が新規のプロジェクトの実質的なリーダーを任される、というものでした。
そのプロジェクトは勤め先の今後の方向性を左右する大きなものでもありましたので、ご主人としてはやる気も大きく、同時に強いプレッシャーを感じていたようでした。
奥様とは社内結婚で、ある程度状況が分かり、奥様もご主人を応援するために色々と心を尽くそうと決意されたそうです。
プロジェクトの立ち上げから、夜遅くまで帰れない状況が続き、やがては土日も仕事でつぶす日が少しずつ増えてきました。
最初は理解を示していた奥様も徐々に寂しさや辛さも募っていきます。
もちろん、ご主人の体のことも心配で、食事にも気を使ったり、疲れたときにはマッサージをしてあげたりとケアも自分なりに一生懸命されていました。
それまで手伝ってもらっていた家事や子育てもほとんど一人で抱え込むようになり、その辺でもストレスを強く感じていたようですね。

 

ご主人はそんな状況で何とか早い段階で見通しを立てたいと必死に働いていましたが、なかなかうまく事が運ばずに家族への配慮や一緒に過ごす時間も無くなり、イライラするようになってきたそうです。
それで少しずつケンカも増えて来たのが2年くらい前で、それまでは“細々と”あったセックスもすっかり無くなってしまいました。
当時はそれも無理ないことだと考え「仕事の見通しが立てば余裕ができるから」というご主人の言葉を信じて待つことにしたそうです。

 

もともとは周りも羨むカップルで休日も一緒に出かけたり、平日も色々話をしたりして仲良く過ごしていたそうですし、セックスもお互い積極的な方で相性も良く、お子さんが生まれた後もお互いに満足感を得ていたようです。

 

それがご主人の仕事環境が変わり、子育てが忙しくなって来た頃から二人の間に大きな溝ができてしまったようですね。
そして、お互いに余裕がすっかり失われてしまったようです。

 

ご主人の仕事は幸い1年くらい前に一区切り付けられて少し余裕が出来たものの、その溝の存在は大きく、今度は奥様がご主人の求めに応えることができなくなってしまっていました。
触れられるのもイヤな時期がしばらく続き、それでも頑張ってセックスしようとしたものの、今度は痛みを感じて途中で拒絶してしまったり、ご主人が途中で萎えてしまったりとうまく行かないことが続いて、半年くらい前からは再び自然消滅的にセックスレス状態になってしまったようです。
それからは表面上は仲のいい夫婦に戻ったのですが、どこかにぎこちなさを感じてしまうようになったそうです。

 

奥様としてはこの状況はやはりおかしいし、何とかしたいという気持ちでインターネットを検索して、夫婦のカウンセラーならば・・・というお気持ちで三重県からこられたんです。

 

僕も理加も仕事や子育ての忙しさが作り出した夫婦間の溝を埋めることが再優先だろうと考えて、次のようなセラピーを提案しました。

 

まずは、せっかくお二人がいらっしゃってくださっていますから、向かい合わせに座っていただきました。

 

裕幸:
「じゃあ、ちょっと相手の顔を見てくださいね。どんな感じがしますか?」

 

そうお聞きするまでもなかったのですが、お二人はなぜか恥ずかしそうに目を合わせようとさせていません。
奥様はきゅっと肩をすぼめて顔を赤らめていらっしゃいますし、ご主人も何だか居心地悪そうにソファに座っていらっしゃいます。

 

裕幸:
「今そのままでちょっと気付いてくださいね。今までも何度もこうして向き合う機会ってあったんじゃないかなってこと。食事のときやカフェなどでも。以前はきっとこうして見詰め合うことも心地よかった時代もありましたよね。でも、この二人の間にいつしか溝ができてしまったのかもしれません。ただ、そのことを思ってみてもらえませんか?
そうして、今ちょっと目を瞑ってみてください。
そして、曲を1曲かけますからその間、ただ今のその気持ちを感じて見てくださいね」

 

そうして、孤独な気持ちや心の壁の存在を歌った曲をかけ、その歌詞を理加が読み上げます。
その曲の間、ご主人の表情は徐々に硬く、一方奥様の表情は悲しげに移り変わって行きます。

 

曲が終わり、またプロセスを一つ進めて行くことにしました。

 

裕幸:
「そのまま目を瞑ったままで進めて行きましょう。まずは奥さんは今、どんな気持ちでいらっしゃるのでしょう?」

 

奥様:
「(しばらく考えられてから)どうしてなんだろう?という気持ちです」

 

裕幸:
「悲しい気持ちを感じていらっしゃるみたいですね。それと何か虚しさのような気持ちもあるみたいですね。」

 

奥様:
「(小さな声で)はい。悲しいような、虚しいような、情けないような。」

 

裕幸:
「じゃあ、しばらくその気持ちを感じていてくださいね。ご主人は今、どんな気持ちでしょうか?」

 

ご主人:
「(何度も首をかしげながら)うーん。ちょっと分かりません。」

 

裕幸:
「はい。いいですよ。そのままでいらしてくださいね。ただ、今額に皺を寄せて難しい顔をなさってる、ということはお気づきでしょうか」

 

ご主人:
「え、そうなんですか。気付きませんでした。」

 

裕幸:
「はい。そのままでいいですよ。ただ、そのまんまでいらしてくださいね。さて、奥さんに質問させてもらってもいいでしょうか。奥さんがご主人が仕事で頑張っていらっしゃる間、ずっと我慢してきたことがあったとしたら、それはどんなことでしょうか?」

 

奥様:
「ええ。やっぱり正直に言えばすごく寂しかったんです。徐々に主人がどこかへ行ってしまうような気がしていました。でも、そんなんじゃいけないと思って、一生懸命我慢してました。幸い子どもも小さかったので気は紛れましたが、どこかにいつも寂しかったように思います。」

 

裕幸:
「じゃあ、ちょっと、ご主人がほとんど家にも帰れずに頑張っていた頃を思い出してみませんか?どんな気持ちでご主人を待っていたのでしょうね。ご主人、その頃は本当に大変だったんですよね?」

 

ご主人:
「はい。本当に大変でした。毎日のように部長や役員が様子を伺いに来るんです。そして、少しでもおかしいところがあるとやり直しを命じられることも増えてきました。時には怒鳴られることもありました。:

 

裕幸:
「じゃあ、すごくしんどい思いで毎日過ごされていたんですね。奥様やお子様のことを思い出すことも無かったんでしょうか?」

 

ご主人:
「いや、特に家に帰るときなどは申し訳ない気持ちもありました。でも、妻も同じ会社にいましたし、話さなくても状況を理解してくれるだろう、と思ってました。でも、おっしゃる通り忙しくなるにつれて徐々に家のことは考えられなくなっていたかもしれません。どこでも仕事のことを考えるようになっていました。」

 

裕幸:
「その頃奥様はどんな気持ちでいらっしゃいましたか?」

 

奥様:
「(涙を流して)主人がそういう状況というのも分かってはいたんです。でも、何か寂しくて辛くなってしまって、嫌味を言うようにもなってしまいました。その度にすごく自分が嫌になって・・・。」

 

裕幸:
「我慢してしまったんですね。本当に辛かったんでしょうね。そんな自分をすごく責めてしまったみたいですね」

 

奥様:
「はい。本当に自分が弱くて、情けなくて。つい主人に当ってしまうことも1度や2度じゃなくて。我慢しなきゃ、と思ったんですけど、できなかったんです」

 

裕幸:
「ケンカがしたいわけではないんですよね?振り向いて欲しかった、もっと私を見て欲しかった、そんな気持ちではなかったでしょうか?」

 

奥様はティッシュで顔を覆いながら、頷いていらっしゃいます。

 

裕幸:
「ご主人はその奥さんの気持ちを聞いて、どんな気持ちになるでしょうか?」

 

ご主人:
「全然気付いていませんでした。何度か当られたことがあったときは『こんな疲れているときになんでこんなことをするんだ』と逆に怒ってしまっていました。でも、仕事の大変さや重要さを分かってくれているだろうと思ってました。」

 

裕幸:
「それをお話したこと。仕事のしんどさを直接お話したことってあったんでしょうか」

 

ご主人:
「(しばらく考えられて)無かったかもしれません。でも、分かってくれてると思ってましたし、信じてくれてると思ってました。申し訳無いことをしたのかもしれません。」

 

裕幸:
「奥様はそれを聞いてどんな気持ちになりますか?」

 

奥様:
「(小さな声で)言ってもらいたかったです。全然話もしてくれなくて・・・。それで本当に辛くなってしまって。」

 

裕幸:
「男性にとってはなかなか『話をする』というところまでは気が回らなくなってしまうんですよね。特にご主人のようなまっすぐに生きていらっしゃる方の場合、一つのことに夢中になるとなかなか他に気が回らなくなってしまうところがあるんですね。
ご主人としても、決して悪気があったわけではありませんよね。家族のため、会社のためって頑張っていらっしゃいます。
それはもちろん悪いことではありません。
そのことがわかるからこそ、奥様はそんな自分を責めてしまうんですよね。
でも、それをどこか一人で頑張ってしまったところがあるのかもしれませんね。お二人とも、夫婦でありながらお互いに一人で重たい荷物を背負ってしまっているのかもしれません。それを二人で分け合って、二人で一緒に持って行くことが大事ではないでしょうか。」

 

お二人とも頷いてくださいます。
しかも、まったく同じタイミングで。
夫婦というのはこんな風に、ちょっとした仕草が似てしまうものなのかもしれません。

 

裕幸:
「では、その溝に今から橋をかけていきましょうね。
今、ご主人だけ目を明けて頂けませんでしょうか。」

 

ご主人の目には時折ティッシュで涙を拭いている奥様の姿が目に映ります。

 

裕幸:
「また曲を一曲かけます。ご主人はただ奥様をそのまま見つめていてください。そして、奥様はただそのままで今の気持ちを感じていて下さい」

 

そして、理加の選曲で二人の間の距離を縮める曲をかけます。
理加が読む歌詞を聞きながら、奥様がまた涙をぽつりぽつりと流し始めます。
それを見ているご主人は最初の苦しそうな顔が徐々に優しい顔に変化していきます。
曲が終わる頃には、赤い顔をしながらいとおしそうに奥様を見つめていらっしゃいました。

 

裕幸:
「ご主人。奥様を見て、どんな気持ちがしていますか?」

 

ご主人:
「自分の気付かないところで、本当に妻が苦しんでいるとは知りませんでした。私は自分のことしか考えられない人間なのではないかと思います。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 

裕幸:
「では、そのまま奥様を見ていてくださいね。何か胸があったかくなってくるのを感じませんか?」

 

ご主人:
「ええ、その通りです。」

 

裕幸:
「それは、とても奥さんをいとおしく思う気持ちではないでしょうか?」

 

ご主人:
「(涙を浮かべて)はい。そうです。」

 

裕幸:
「ご主人も感情を我慢しないで下さいね。ただ、そのいとおしさ、『こいつが好きやな』という気持ちを感じてみてください。」

 

ご主人は、涙を浮かべながら本当に愛情深い表情で奥さんを見つめています。

 

裕幸:
「奥様も今、目を空けて見てください。あなたの前にいるのは誰でしょうか?」

 

奥様は搾り出すように「主人です」と言い、そのまま声をあげて泣いていらっしゃいます。
そして、ご主人もその姿を見て、ついホロリと涙を流されました。

 

裕幸:
「奥さん、あなたがずーっと欲しかったものですよね。2年以上もずっと待っていたものではないでしょうか?ご主人、今、あなたの奥様にしてあげたいことって何かありますか?」

 

ご主人:
「本当に心から謝りたいです。」

 

それを聞いて僕はご主人に耳打します。
「こういうときは、側に行ってただ抱きしめてあげて下さい。そのままの気持ちでね。はずかしがってもダメですよ」

 

そして、ゆっくりご主人が奥様に近づいて、ぎこちなくその肩を抱いて下さいました。

 

理加:
「奥さん、甘えていいですよ。ずっと待っていたでしょ?」

 

奥様はご主人にもたれかかるように静かに泣いていらっしゃいました。
ご主人はそんなご主人を本当にいとおしそうな目で見つめていらっしゃいました。 その後数日して、奥様からお手紙を頂きました。

本当にありがとうございました。
私もご主人もカウンセリングを受けてみて本当に良かったと思っています。
特に主人は『自分がいかに未熟だったのかが良く分かった。根本さん達に出会えて本当に良かった』と毎日のように言ってくれますし、私も同じ気持ちです。
あの日は子どものことがありますので、カウンセリングが終わったらそのまま帰るつもりでしたが、理加さんがおっしゃったように喫茶店で二人で話をしているうちに、帰る気持ちがなくなってしまって、そのまま江坂のホテルに泊まったんです。
その夜は久々に主人と体を合わせることができました。
大変お恥ずかしいお話ですが、今まで感じたことが無いくらい素敵なものでした。
主人もそれを感じていたらしく、改めてカウンセリングの効果を実感しています。
その後はまるでこの数年間を取り戻すかのように二人で話をしました。
仕事のこと、子どものこと、将来のこと、お互いのこと。
裕幸さんに出していただいた宿題も早速やってみました。
お互いのいいところを37個も探すというのはなかなか難しかったけど、楽しいゲームのような感じで出来ましたし、主人が私の意外な一面を見ていたことにも気付けました。
セックスレスも多分解消していくのではないかな?という期待もある反面、これからずっとこの調子で続くのか不安もあります。
ですから、また月に1回くらいのペースでお邪魔して、お二人のようなカップルを目指して行きたいと思っています。
本当にありがとうございました。

 

その後のお二人は毎月1回ずつくらいのペースでいらっしゃっています。(時には2セット連続で)
ちょっとした旅行気分で、また、夫婦だけの時間を作ることを目的として。

 

セックスレスは、少しずつ、でも確実に解消に向かい、3ヶ月くらい経った頃には週に1、2回くらいは・・・というお話でした。
そして二人の表情も最初にお会いしたときよりも生き生きとしています。

 

多くのセックスレスの問題を見て行くと、中本さんご夫婦のように「感情的な溝」が作られてしまっているケースがあります。
それの溝に掛け橋をかけるために僕達はその夫婦の状態やそれぞれの性格的な部分を見ながらセラピーを提供させていただいています。(今回お話したものは「中本ご夫妻専用」のもので、別のご夫婦ではまた違った形になるでしょう)

 

その掛け橋となるものは、優しさや思いやり、いとおしさといった愛情なんですね。
あのご主人の愛情深い顔を見たときに、その愛がまっすぐ奥様のハートに飛び込んでいきました。
そこに癒しが生まれます。
だから、僕達はその感情をどのようにして引き出してあげようか?と考えて、色々と思い巡らせているんです。

 

 

 

 

 

(この記事は本人の了解を得て掲載しています)

根本裕幸&理加

1年以上も前に別れた彼のことが忘れられず次の恋に踏み出せないと話す田中真奈さん(仮名)。彼を手放す決意を持ってセラピーはスタートしました。

「彼とは最初は遠距離恋愛だったんですが、付き合って1年くらいしてから結婚するつもりで東京で一緒に暮らし始めたんです。でも、このまま結婚しちゃいけないって強く感じてこっちに戻ってきたんです。それが去年の夏ごろでした。」

「彼はマイペースっていうか、ほんとに何でも勝手に決めてしまう人で、結婚したら彼のお母さんと一緒に住むことすら話してくれなかったんです。それにすれ違いも多くて。彼はもともと東京の人だったので友達は多かったんですが、私は誰も知り合いがいない状況で寂しかったし、そのことも全然分かってくれなくて休日も勝手に遊びに行っちゃうし。相談する誰かもいなかったし。その頃根本さん達と知り合えてたら違ったんでしょうけど(苦笑。初回の無料電話カウンセリングは理加でした)。それで一緒に住んで3ヶ月も経たないうちに『京都へ帰ろう』って思ったんです。」

「それで、春頃から少しずつ準備を始めてて、でも、二人でいるときは今までどおりにしてました。彼は結婚するのが当たり前のように思っていたみたいで、荷造りを始めた最初こそ不安そうなときもありましたが、結局何も言ってくれなかったんです。その前に一度だけ『私、京都へ帰るわ』って言ったんですが、『そうか』みたいな顔してるだけでした。それで最後の朝も彼は当たり前のような感じで会社に行き、私は荷物を持って東京駅に向かったんです。」

(理加)「何も感じることなく、ですか?お話を聴いているとすごく淡々とされてる感じがしますね」

「そうですね。私は『帰ろう』って思い始めた頃こそ迷いも強く、すごく悩んでいたんですが、それが去年の12月ぐらいで、今年になってからは、もうそんなに悩まなかったです。『いつ帰ろうか?』ばっかり考えてましたし」

「帰ってからもしばらくは落ち着いていたんです。両親も兄も別に何も言わなかったですしね。姉がちょっと心配してたみたいですが、もう結婚して家を出てるので詳しく話することもなかったんです。就職もあっさり決まったし。でも、それから徐々に彼のことを思い出すようになったんです。自分から『帰る』って出てきちゃったのに気になるようになって彼に電話したんです。でも、なかなか出てくれなくて、ようやく掴まったと思っても彼は普通なんですよね。それで彼の声聴いてますます後悔するようになって、彼に手紙を書いたんです。『戻ってもいいですか?』って。でも、彼からは返事もなくって。」

「それで彼が好きなアーティストが大阪でライブするので、チケットを買って送っちゃったんです。彼は東京にいるのに。それでも全然連絡がなくて、ライブもダメでした。その後に手紙が来たんです。その消印見てびっくりしました。彼がその手紙を出したのはそのライブの当日で、京都の消印だったんです。一瞬頭が真っ白になりました。『なんで?』って。『どうして京都まで来て連絡も何もしてくれなかったの?』って。その手紙には『もう会えない』みたいなことが書いてありました。チケットも一緒に入ってました。辛かったんですが、涙は全然でなかったです。私あまり泣けない人なんです。この前電話で『あまり感情を出さないんですね』って理加さんに言われたときもはっとしたんです。つい先日も友達に同じこと言われたので」

「帰ってきてからコンパも誘われてよく行くんですが、全然他の人が目に入らないんです。友達もいい人がいるって紹介して会うことは会うんですが『いい人だな』って思うだけで付き合おうって気力も全然無くて。このままずっと恋も出来ないんじゃないかと不安になっちゃいます。彼のことを早く忘れたいです」

彼女はとっても可愛らしい素直な女性です。年は27歳ということですが、全然若く見えるし、コンパに行ったらそれなりに声もかかるタイプだろうな、というのが正直な感想。それだけに尚更辛いだろうな、と思いました。

また、彼女の行動を聴いていると未だに彼とお付き合いしているかのように感じられました。別れて帰ってきたというよりは、単に帰ってきただけでそのまま付き合いが続いているような。理加もかつて遠恋をしていたのでよく分かりますが、別れたあとも付き合ってるときとほとんど状況は変わらないんですよね。日常生活も普通に家族と過ごし、仕事に行って、友達と遊びます。彼に電話したり、メールを書くことが無くなる以外は。だから、なかなか彼のことが手放せないってケースが良くあります。

彼女の場合は1年ほど一緒に暮らしていたわけですが、すれ違いも多かったりして、一緒にいる感覚をあまり味わえなかったのかもしれませんね。心はずっと遠距離だったような感じです。そういえば彼女も「旅行に行く感覚で東京に行ったのかもしれない」と話してくださっていました。心はずっと京都だったのかもしれませんね。

さて、彼女にとってそんな風に未だに彼と付き合ってる感覚が続いている(最後の手紙が来てから1年が経とうとしてるんです!!)のはなぜでしょう?

私たちはそのヒントを彼女の「感情を表に出さない」部分に求めました。淡々としていたり、表情があまり変わらない彼女の心はまるで蓋で覆われてしまったような感じがします。

感情に蓋をしてしまうとその感情は行き場を失ってくすぶるようになります。彼のことが大好きな気持ちや、別れて辛い気持ち、寂しさ、悲しみ、それらが蓋の向こう側にあって、解放されないまま残っているんです。そうすると頭ではもう過去の事と思って割り切ろうとしても、心はその思いでいっぱいになっていますからなかなか次の恋を入れるスペースが出来ないんですね。

だから、まずは私たちはその蓋を柔らかくしてその奥の気持ちを解放できるように、敢えて彼のことを思い出しながら、曲を数曲聞いてもらうことにしました。
彼と別れた現実を心でも頭でも本当に受け入れれられるように、真奈さんが自分の心と向き合えるように。

理加が失恋の痛みを歌った曲を数曲選び、真奈さんには彼のことをただ思い浮かべてもらいました。
彼のことが今も大好きだということ、別れたことがほんとに辛かったこと、そして、その後はすごく寂しさがあるということ、その気持ちに向き合えるように。

曲が進むにつれ、彼女の表情は徐々に曇り、流れないと言っていた涙も頬を伝わり始めました。

「こんなに苦しかったんですね(苦笑)」

彼女はそんなときにも笑おうとしています。

(裕幸)「いつも、そうやって辛いところでも笑ってきたんじゃないかな?今すごく悲しいでしょう?そういうときはそういう顔してたらいいんですよ」

そういうと彼女は「ウッ」と声を詰まらせます。
心の痛みを本当に感じ始めてくれたみたいです。
私たちにもその辛さがひしひしと伝わってきます。
そういうときは私たちも彼女の痛みを感じて心が熱くなります。
まるで自分のことのように胸が痛くなります。
その曲のメッセージを伝える理加の声も震えています。

曲が終わると幾分彼女はほっとしたようです。

「なんだかすごくすっきりしました」

表情もかなり柔らかくなりました。
気持ちをただ感じることで、その感情は解放されていきます。
感情を解放してあげれば、心につかえているものが無くなり、心に余裕、スペースができます。
そのスペースの分だけ人は自然に笑え、自然に振舞うことができます。

心と思考が離れてしまうと私たちは理論的な機械のように淡々と行動します。
でも、心は死んだわけではありません。
ただ、通話が途切れた電話のように機械的な音を繰り返すだけになります。
それでは寂しさや悲しみを感じない代わりに、喜びや愛を感じることもできなくなります。

ほっとして楽になったので彼女にはコーヒーを飲みながら少し休憩を取ることにしました。個人カウンセリングという場ではありますが、私たちは居心地のいい喫茶店のように感じて欲しいと思っています。だから、私たちが最初にクライアントの方にする質問は「お飲み物は何がよろしいでしょうか?」なんです。
ちなみに真奈さんのリクエストはホットのコーヒーでした。ブラックがお好みということで、胃が弱くてコーヒーがあまり飲めない理加を羨ましがらせていました。因みにこの時は理加がホットココア、裕幸はミルクを少し入れたコーヒーでした(ダイエットのため、裕幸はお砂糖は控えめにしています)。

さて、そこでいよいよ彼を手放すセラピーに入ります。

その前に彼女にこう伝えました。
「今日真奈さんに一つだけチャレンジして欲しいことがあるんです。それはただ自分の心に注目して欲しいということです。誰に気を遣うことなく、ただ、自分の心に素直になってください。怒りが出ても、悲しみが出てもそれを抑えないようにしようってチャレンジしてみてください。もちろん、無理することはありませんよ。今できることしかできませんから。だから、できる範囲でやってみようって思ってください」と。

まずはイメージを使って彼と手をつないでもらいます。彼女の心の中ではまだ彼とのお別れが完了せずにまだお付き合いしている感覚があります。だから、敢えてそれを強く意識してもらいます。

そして、彼女にいくつか質問をします。
今回はセラピーの中で彼にも登場してもらうので、まずは彼の名前を聴きました。

「こうちゃんって呼んでました」

続いて「あなたに何があればこうちゃんと幸せになれたと思いますか?」と。

・彼を包んであげられるくらいの優しさ
・寛容さ
・自立した大人の女性らしさ
などを挙げてくれました。

「もしそれがあったら彼と幸せになれたって思うんですよね。じゃあ、それをこれからの目標としましょうね。でも、今は今の真奈さんにその要素を加えた女性をイメージしてみてください。それはまるで女神様のような女性かもしれませんね。美しさと優しさと強さを併せ持った女性のようです。」

「本当は真奈さんがこうちゃんを幸せにしてあげたかったんだけど、残念ながらそれは叶いませんでした。今、彼のために、彼の幸せのために、辛いとは思うけど、彼をその女神様のところへ連れて行って手渡してあげてみませんか?」

そうして一歩一歩、イメージの中で彼を連れて前に進んでもらいます。
彼女は本当に苦しく、辛そうな顔をしています。
でも、同時に彼女は本当に強い人だとも感じさせられます。

そして女神様の前に来た頃、こんなお願いをしました。

「女神様に向かってこう言って欲しいんです。『こうちゃんをお願いします。こうちゃんを幸せにしてあげてください』と」

彼女は一瞬びくっとなったようです。
そして、しばらくじっと考えている様子。
無理もありません。
本当に辛い言葉だと思います。
でも、こうちゃんを手放すためには必要な言葉だと私たちは考えました。

やがて・・・
「こうちゃんをお願いします」

小さな声でした。その声の裏でイヤイヤをしている彼女も少し見えます。
だから、敢えてまたもう一度その言葉を口にしてもらいました。

今度は幾分しっかりした声で
「こうちゃんをお願いします。こうちゃんを幸せにしてあげてください」

(裕幸)「ありがとう。今、女神様がこうちゃんを連れてゆっくりとあなたから去っていきます。それを感じてください。ゆっくりと、でも、確実に彼を連れて遠ざかっていきます。でも、真奈さんはそれをただ見ていてください。ただ、それを感じてください」

彼女の目からはたくさんの涙が流れ始めました。

「いっちゃった・・・」

ぼそっとつぶやく真奈さん。
どんな感じ?と尋ねると

「心がぽっかり空いたようで、ほっとしました。すごく楽です」

(裕幸)「今、あなたの側に誰かが一緒にいてくれるとしたら、誰に一緒にいて欲しいですか?両親でも兄弟でも友達でも誰でもいいですよ。彼以外の誰か思い浮かびますか?」

「うーん・・・。お父さんです」

(裕幸)「じゃあ、今、お父さんをただ思い出して、ただその存在を感じてみてくださいね。お父さんの優しさとか愛情とかをイメージして、ただ、それを感じてみてください」

お父さんの愛情を感じられるような曲をBGMに彼女にイメージワークを続けてもらいます。
そうすると徐々に彼女の表情に温かみが差してきました。
安堵の表情に変わっていき、心が安らいで来るのも感じられました。

彼を手放しただけでは彼女が言ってくれたように「心にぽっかり穴が空いたまま」になってしまいます。それはそれで長い時間引っかかっていたわだかまりや痛みが解放されて楽に、すっきりと、気持ちよくはなります。
やがてはそこに次の恋が入るわけですが、それまでの間は今の日常で接する誰か、できることならば家族の愛情を入れてあげると効果的なのです。
そこで愛すること、愛されることを学び、また、新しい彼には家族に接するような親密感が作りやすくなるんです。
また、家族を愛することはそれ自体が大切なことですし、とても良い恋のレッスンでもあります。

曲が終わるのに合わせ、個人カウンセリングを終了することにしました。

「ぼーっとしてます。でも、すごく気持ちいいです」

確かに言葉も始めのころのはきはきした感じではなくて、ずっと緩やかな柔らかい感じになっています。
言葉もちょっとしどろもどろな感じがあって、ほんわかしています。
ちょっとにやけてもいますね。
ほんとに気持ち良さそうな感じです。

しばらくコーヒーを飲みながら心理学とは関係ない話を交わして彼女と別れました。

「彼のことがずっと引っかかっていたんですが、何だか胸のつっかえが取れたみたいで本当にすっきりしました。ありがとうございます。また来ますのでお願いしますね」

真奈さんはほんとに素直で、魅力に溢れた女性でした。
個人カウンセリングを終えたときに私たちがいつも思うことなんですが、これからの真奈さんがすごく楽しみです。どんな女性になり、どんな男性と幸せになるんだろうって。

そんな風に思いながら次の方を迎えられる私たちも幸せです。

(この記事は本人の了解を得て掲載しています)

根本裕幸&理加

「家族もばらばらで、私もすごく孤独を感じて、それを何とかしたいんです」と話す黒崎公子さん(仮名 28才)。元々神戸メンタルサービスの電話カウンセリングでお話させていただいていました。今は東京で一人暮らしをする彼女ですが、今回は思い切って大阪まで足を運んでくださいました。

「電話でお話してる方と会うっていうのはちょっと緊張しますが、やっぱり安心ですね。いきなりお尋ねすることなんて、私にはきっとできなかったと思うんです。」

「小さい頃からお父さんは仕事が忙しくてほとんど帰って来なくて、今も都内に単身赴任しているんです。週末は必ず帰ってきますが、昔からずっと小言ばかり言うんですよ。テストでいい点を取っても『100点取れ』とか言うんですよ。成績表を見ても良くないところばっかり見て怒ったり、散々だったんです。だから、お父さんが帰ってくる週末はイヤでイヤでたまりませんでした。でも、そうかといってお父さんのことが嫌いかっていうと、不思議とそうじゃないんですよね。お父さんが東京へ行ってしまう月曜日の朝には泣いて抱きついてた記憶もあるんです。矛盾してますよね?」

(理加「いえいえ、お父さんのやってることは嫌いだったかもしれませんが、お父さんそのものは大好きだったんじゃないかな?それにお父さんのいない平日はすごく寂しかったのかもしれないですよね」)

「小学校の3年生くらいに神奈川県に引越ししてきたんですが、新興住宅地みたいなとこで、私たちはその最後の方に来たんです。引越しした頃には周りの家同士はもう仲良くなっているような感じでなかなか地域に溶け込めなかったんです。」

「お母さんは、人付き合いがうまくないというか、苦手にしていて、近所づきあいもせずに孤立していたみたいです。向かいの家の奥さんがちょっと変というか、私たちより先に引っ越してきてたんですが、近所の人から仲間はずれにされていて、その人とは仲良くなれたみたいなんですけど、それで余計他の人と孤立してしまったんじゃないかな。」

「それでお母さんはすごく寂しかったんだと思うんです。だから、子どもばかりにかまうようになって過干渉になってて、なんにしても口出ししてくるんです。学校のこと、成績のこと、友達のこと、なんでもかんでも。ヒステリックになるときもあって私も妹もよく泣いていました。私に彼氏ができると半狂乱になることがあって、隠して付き合うばっかりでしたね。すごく干渉してくるんです。前に電話で根本さんに言われたように、お母さんは私が家から出るのがすごく嫌なみたいです。今は仕事の関係もあって一人暮らしをしてるんですが、家を出るときも大変だったんです。」

「私は最初は良かったけど、高学年ぐらいからいじめにあいました。頑張っていい点を取ると『いい子ちゃん』とか言われてシカト(無視)されるんです。だから勉強するのもいやになってしまって。中学に入れば変わるってすごく思っていたんですが、実際は小学校とほとんど同じ同級生ばかりで、何も変わらないっていうか、全然楽しく無かったです。すごく暗い子でした。高校2年生くらいでいじめは収まったんですが、その後もなかなか友達が出来なくて、彼氏が出来てもうまくいかなくてギクシャクしてしまったり、いつも孤独なんです。今も会社に行くのがすごく辛くて。嫌な人がいるってわけじゃないんですが、時々仮病を使って休んでしまって、もう有給も使い切ってしまって。」

そこまで話してくれると、俯いてしまいました。ほっとしたような感じです。
彼女は話し口調もしっかりしているし、頭もいい人だなって感じました。見た目もかわいいので、男性からももてる方なんじゃないかなあって思ったのですが、
「うーん。でも、うまくいかないんですよね。確かに近づいてきてくれる人はいるし、私もそんな嫌いじゃなければお付き合いするんですが、うまく行かないですね(苦笑)」
「振った数と振られた数はおんなじくらいかな。どっちもあります。振られるときは、たいてい『つまらない』とか『面白くない』とか言われます。振った人にもそういわれたことあるんです。自信なくしちゃいますよ、ほんと」

確かに彼女を見ていると、すごく孤独な感じを受けます。ぽつんとしているような。
一人でものすごく頑張ってきたって感じです。
裕幸「家族のお話を聞いても、お父さんが不在だったり、お母さんが不安や孤独を強く感じていたりして、その分『家族を守らなきゃ』じゃないですが、家族を背負ってしまったような感じですね」と伝えると、

「確かにそうかもしれないです。小さいころから『私がしっかりしなきゃ』ってずっと思ってきたような気がします。もう今ではそんなこと思わないんですが。」

理加「それが当たり前になっちゃうこともあるんですよ。例えば小さい頃に共働きのご両親でずっと寂しい思いをすると、それが当たり前になって寂しさを感じない大人になってしまうことも多くあるんですよ」

両親が離婚したり、不在だったりすると、子どもたち、特に長男・長女は無意識的にその穴を埋めようとします。
公子さんの家では、お父さんが不在の間は、公子さんがお父さんの役割やお母さんの夫の役割を担い、一方では、お母さんも子どもたちの父親役を担いますので、家族全員が本来の「子」「母親」などの役割だけでなく、二役、三役を背負うことになります。
そうするとみんなどうなってしまうでしょう?

そうです。みんなが家族であることに疲れ、ばらばらになっていってしまいます。
多くの場合、その疲れは大人たちが先に感じ始めます。やらなきゃいけないこと、気を使うことが多いせいかもしれません。一生懸命やってはいるけど、徐々にその役目が果たせなくなっていって、場合によっては放棄してしまうことも少なくありません。
そうするとその負担は一気に子どもたちのところにやってきます。

公子さんにもそのお話をしました。
「ああ、うんうん。そうですね。ほんとそうです。お母さんからいろいろ相談されることも多かったんですよ。新しい洗濯機を買いたいけどいいか(笑)とか、町内会のこととか、わけがわからないことをいっぱい聞かれたんです。勝手にしてくれとか思ったけど、私はそれに一生懸命考えて答えてましたね。それをお母さんは鵜呑みにしたこともあります。そうかあ、それはお父さん役をしてたんですね。それに、妹の面倒は私が見なきゃ、っていうのもずっと強く感じてます。今でも妹のことはすごく考えてしまいます。妹は今も実家(神奈川県)にいるんですが、お母さんとよく揉めてるみたいですごく心配なんです。電話でも相談させていただきましたよね。ケンカするとお母さんと妹が交互に電話かけてきたりするんです(苦笑)」

裕幸「それに、家族のつながりとか、公子さんはすごく気にされますよね。普通、大人になったらまずは自分の幸せってものを考えるものなんですよ。結婚とかね。でも、公子さんはまるでお父さんやお母さんが考えるように家族のことを本当に気にかけてらっしゃいますよね。それは、すごくいいことなんだけど、一人置き忘れている人がいるんです。誰だかわかりますか?」

「うーん・・・。妹じゃないですよね。。。うーん、私?あ、そうかもしれません。でも、私も自分のことしか考えてないような気がするし、そんなにがんばったって家族に何もできてないですよ」

理加「自分ではそう思っちゃうものかもしれませんね。私もお父さんがアルコール依存症みたいなところがあって、公子さんと同じような感覚をずっと持っていたんですよ。でも、子どもの頃の公子さんはどう思っているでしょうか?もし、子どものときの私が今も心の中にいるとしたらどんな表情をしてるでしょうか。ちょっとイメージしてみませんか?」
とまずは一つ目のイメージワークに入ります。

「寂しげにしてますね。それにすごく怒ってるかも」

裕幸「ずっとしんどい思いをしてきたんですよね。自分を省みずにがんばってきたんじゃないかな。その小さな女の子、なんて言って怒っているでしょう?」

「うーん、なんて言ったらいいのかわからないです。でも、怒ってますね。ほんとに」

理加が「そのままでいてくださいね。今日は自分を自由にしてあげようよ。何をしても、何を思ってもいいって自分に許してあげてみて」

そのうちに徐々に怒りが出てきて、吐き出すように
「なんでなのよ。寂しいよ。なんでこんなにがんばらなきゃいけないわけ?私が何したっていうの?」
と次々に言葉が出始めます。

うつむき加減に、でも、顔も紅潮して感情が外に出始めています。

この「個人カウンセリングの実際」でも何度も出てきますが、僕たちを悩ませ、苦しめるものがあるとすれば、僕たちが心の中に溜め込んでいる怒りや悲しみやそんな感情なのです。でも、僕たちは日常生活の中で感情を解放する機会には恵まれているとはいえませんよね。だから、セラピーの第一段階としてはいろんな方法を使って感情を解放してあげることが非常に大切なんです。

公子さんにはしばらくそのまま続けてもらいました。「何が出てきてもここでは大丈夫ですからね」などと言葉をかけながら。
徐々に怒りの表現も変わってきます。
周りへの怒りから徐々に自分自身への怒りへと。

「こんなにやってるのにうまくいかないなんて。ほんとに(私は)何もできないんだから。何やっても中途半端で、失敗ばかりいて、会社にもいけなくて、みんなに迷惑ばかりかけて」

裕幸「公子さん、ずっと一人でがんばってきたみたいだね。本当に家族のことを思ってやってきて、でも、それがうまくいかなくて自分に怒っているみたいですね。すごく無力な自分がいるんですね。そして、そんな自分をいつも責めているんですね。」

公子さんは徐々に悲しげな表情になっていきます。
彼女は悲しみ、寂しさを本当にたくさん溜め込んでいたのかもしれません。
私たちにもその思いが伝わってきます。
すごく寒いような、ぎすぎすした感覚。きっとそれが公子さんの「孤独」の正体なんでしょう。

そして、だるくなるような感覚。これは「無力感」という感情のようです。
どれだけ頑張ってもうまくいかないとき、どんな手を使っても失敗ばかりしてしまうとき、力が抜けたようになります。重たくなって、身動きが取れなくなるような感じが私たちのところにも届いてきます。

そのまましばらく自分の心を見つめてもらいました。
無力感も孤独も感情から逃げずに向き合えば、必ず抜けていきます。
だから、公子さんには逃げないようにただ、ただそのままでいることをお願いしました。
数分後、公子さんは力が抜けたようにぼーっとしてます。
さっきまで幾筋か流れていた涙も止まって。
「なんだか、力が抜けてふーっと楽です」

休憩を少し取って、いよいよ本題に入ることにしました。

彼女は一人頑張って家族をつなごうと奔走してきました。
お父さんのかわりを一生懸命務め、お母さんを守り、また、妹を育て、と。

でも、そのお陰で彼女は子どもとして「愛される経験」や「守られる経験」をすることができなくなってしまったんです。それが彼女の中の孤独感を作り、誰からも愛されないような感覚や自立して一人で生きなければならないプレッシャーとなって今の彼女を苦しめています。

そればかりか、お父さんとお母さんの間に彼女が挟まってしまうことになって、お父さんとお母さんの間のつながりの障害にもなってしまいます。お父さんが関わらなきゃいけないお母さんの仕事を公子さんが担い、お父さんにしてあげなきゃいけないお母さんの仕事を公子さんが背負ってしまっているような感じです。

これが彼女の役割になっていてるので、まるで常に一人三役ぐらいをこなしているような感覚を作り出します。2,3時間の演劇ならばそれもヒロインの晴れ舞台となりますが、人生という舞台では過酷な負担になってしまいます。

でも、それは同時に公子さんの才能を表してもいるんですね。
ここがセラピーの面白いところなんです。
問題(悩み)の影に才能あり、という。

それくらい家族に対して、両親に対して頑張ることができる公子さんは、いわば「愛の天使」のような存在です。
人を愛することを知っていて、愛が何であるかも知っているんです。
でも、家族をつなげること、それは少女にはすごく過酷な課題です。
だから、彼女は失敗したような、役に立っていないような感覚を覚えてしまうんです。
彼女にとっては愛の使い方を学ぶ必要があるわけですね。
ま、材料は手元にある、で、これをどうおいしくするか?という調理法を学ぶような感じです。

彼女がバラバラな家族をつなげたいと思うとき、彼女に必要な要素は「信頼」だと思いました。家族個々人への信頼。お父さん、お母さんへの信頼。
そして、それがあったときに初めて彼女は安心して自分本来の「娘」という役どころに収まる事ができ、そしてその位置で「愛される」「満たされる」「守られる」経験をすることができます。それが彼女の孤独感を癒す一歩になるでしょう。

そう考えて私たちはこんなセラピーを提案しました。
先に書いたように彼女はお父さんとお母さんの間に挟まってしまっています。
実は私たちがジレンマと呼ぶ状態もこのような感じなのです。
嫁と姑の間に挟まれた夫、上司と部下から板ばさみになっている課長、前彼と今の彼の間で揺れる女性の心理、そんな板ばさみの状況から抜けるカギはその両者への信頼です。

そこで、彼女にまずはご両親それぞれを信頼してもらうように決意してもらいます。
これには必ずといっていいほど恐れが付きまといます。

「うーん。そんなことをしてしまったら、家族がもっとバラバラになってしまうような気がします。」

裕幸「でも、あなたがそこにいる限り、お父さんとお母さんはあなたが接着剤にならないと繋がれませんよね。でも、あなたはやがては結婚して家を出て行く身ですから、ずっとそれをやっているわけにもいかないですね。お父さんの中の大人の部分、お母さんを愛する部分、そして、お母さんの中のお父さんへの愛情を見つめて下さい。公子さんが直接接着剤にならなくても、彼らは一人の人間として繋がりを作ることは可能です。やったことないことでしょう?怖いし、自信がないのも無理はありませんよ。ゆっくりで構いませんから、ご両親の中の成熟した大人の部分を見つめてあげてください」

「わかりました。やってみます」

イメージの中で、ゆっくりとお父さんとお母さんの間から一歩外に出る実習(ワーク)をしてもらいました。彼女がそれだけでぶるぶると震えてくるのがわかります。彼女の表情は苦しげに曇り、歯を食いしばっています。
私たちも彼女のその強さを信頼してこのイメージワークをやっていますし、彼女の頑張り屋さんな部分はこういうところでほんとに役に立ちます。

裕幸「ありがとう。今、どんな感じですか?」

「これからどうなるか不安が強いですが、私はなんだかほっとした感じもあります」

理加「挟まれていて接着剤になるのが苦しかったのかもしれませんね。大丈夫ですよ。そのまま、お母さんとお父さんの手を取ってください。そして、ゆっくり二人の手を近づけて、お互いの手と手が繋がるように持っていってあげてください」

彼女は震えながら、でも、イメージの中でやってくださいました。
ご両親の手が繋がった頃でしょうか。
彼女の目からは大粒の涙が出てきます。

「これがしたかったのかもしれません・・・」

そして、ご両親のつながった手の上に、彼女の手を重ねてもらいました。
うんうん、と強く強く彼女は頷いています。

最後はその繋がったご両親に愛されることを象徴して、ご両親に抱きしめられるイメージを思い浮かべてもらいました。
理加が選んだ曲に耳を傾けながら、公子さんが本当に安心しているのが手に取るように分かります。
深い安心感や愛情を感じているのでしょうか。
ちょっとうつらうつら眠りだしてしまったみたいです。
2,3曲そのまま曲をただ流していて、「おはよう!!寝覚めはいかが?(笑)」と言葉をかけたところで個人カウンセリングは終了しました。

終了後、ぼんやりしながらも彼女はこんな話をしてくれます。
「お父さんやお母さんにずっと怒っていたんですね。『あんたたちがしっかりしないからダメなんだ』って。お母さんが彼氏ができるたびに反発するのも分かりました。お母さん、ほんとに一人になっちゃうって怖がってます。だから、信頼してくださいって言われたときは、できないって思いました。でも、それしかないような気がして頑張ったんです。そしたら、すごい安心感がして。生まれてはじめて感じたような気もします。すごいですね。今、私寝てましたよね?はずかしいです(笑)でも、信じられないくらい楽になりました。」

後日談。
公子さんは東京へ戻ってから、しばらく後の電話カウンセリングで
「今日電話でだったんですけどお父さん、お母さんに『育ててくれてありがとう』って言えたんです!!お父さんはしばし呆然としてたみたい(笑)。お母さんはなんだか泣き出しちゃって、私の方が困惑してしまいました」

私たちは心のどこかでは思っていても、なかなか両親に感謝の言葉をかけられません。それは「あれしてくれへんかった、これもしてくれへんかった」という恨み・辛みがいっぱいあったり、「今さら・・・」「言わなくても分かってるだろう」と恥ずかしかったりしますよね。でも、感謝というのは関係性回復の大きなパワーがあって、繋がりを作るためには必須のものなんですね。
私たちもかつてはそうでしたが「わかっていてもできない」ものではありますが・・・。

これを読まれた方皆さんへ。
今日はあなたの身近な人、両親、家族、恋人、友人、誰か一人でもいいので感謝をしてみましょう。言葉にすることが難しければ心の中で「○○してくれてありがとう」と言って見ましょう。きっと心が安らかになるのが感じられると思いますよ。

根本裕幸&理加 

(この記事はご本人の許可を得て掲載しています。)

「仕事に行きたくないって日に日に強く思うようになったんです」と語り始めたのは松本美和子さん(仮名)。でも、23歳の彼女の心に本当に引っかかっていたのは仕事のことではありませんでした。

美和子さんは私たちの質問に答えながらぽつぽつと話しています。
「就職活動を頑張って頑張ってようやく決まった職場なのに、課長の小間使いのような仕事ばかりで、イヤになってしまったんです。」
「ぎりぎりまで頑張って決まらなかった同級生のことを考えると、今仕事があるだけでも満足しなきゃいけないのに、それができない自分が情けなくなるんです」
「うちの会社は、昼ご飯は社内で食べるって暗黙の決まりごとがあるんですが、本当に息が詰まりそうになったので、最近は昼ご飯を社内で食べた後は外に出て気分転換するようにしてます。」
「でも、何も充実感とか満足感とかがなくて、つまらなくなって、定時に会社を出て家に帰っても、一人で何もすることがないのがイヤで、何か勉強を始めなきゃって思ったんです。それで、社会保険労務士の参考書とかを買ってきたんですが、やっぱり身が入らないんです」

話が進むにつれ、緊張も取れてきたのか徐々に話が弾むようになっていきます。
「就職活動はほんとどうしようかって思っていたんですよ。今年の1月にようやく内定をもらって、ちょうど同時期に何人かの友達も内定が出てみんなでわいわいやってました」「会社も嫌なことばっかりじゃないんです。楽なことは楽だし、みんないい人ばかりだし。うちの課長は最初怖い人だなって思ってたんだけど、仕事をちゃんとやれば褒めてくれるし、いい人なんじゃないかって最近は思うことがあります。」

彼女はずっと自由に話せる環境を探していたのかもしれませんね。
私たちの日常生活では、この日の美和子さんのように自由に自分のことや、心のことを話す機会は案外限られているのかもしれません。
美和子さんの顔にもそれだけで徐々に笑顔が出てきて、冗談にも笑えるようになっています。

「でも、何か退屈してしまってるみたいですね。どきどき、わくわくが無いような感じってしませんか?」と聞いてみると「そうなんですよね。それで目標が必要だと思って勉強を始めたんだけど、すごく難しい試験だから、最初から通らないような気がして身が入らないような感じなんです。」

そこで唐突に質問を投げかけてみました。
「パートナーシップなんてのはどうですか?」
「え?ああ、うん。今年の2月までは彼氏もいたんですけどね」
「あ、今ちょっと感情が動きましたね」
「えっ?あ、そうですか。確かに『え?』ってびっくりしたんですけど。そんなこと聞かれるとは思わなかったので」
「今、ちょっと表情に影が差したっていうか、悲しそうな目になったんですよ」
「確かにいい思いはしなかったんですけど、もう終わったことって思ってるんです。もう随分前のことですし」

「パートナーシップは?」って質問したときに彼女はふっと悲しげな顔をしたように感じました。彼女ももちろん気付いていないんですが。
でも、そういう『自分では気付いていないところ』に悩みの根があることが実は多くあります。少し彼のことを聞かせてもらうことにしました。

「1年ぐらい付き合いましたが、彼はすごく優しい人で、仕事もすごく頑張っていて、私が就職活動の間もずっと支えていてくれたんです。門限が厳しいので、もっと一緒にいたいって私を無理に帰してくれたこともありました。」
そこまで言うと彼女はすごく悲しそうな顔になってしまいました。そして、ぽつぽつと涙を流し始めます。そのことに一番びっくりしたのは他ならぬ彼女自身だったようです。
「あ、どうしたんだろう?ほんとにもう昔の事って割り切れてると思ったのに・・・」

「普段は考えないように考えないようにしていませんか?」
「うん。思い出さないように、忘れようとずっとしてました」
「それくらい素敵な人だったんですね。思い出すと本当に辛くなってしまうから、自分で彼への気持ちをずっと押さえ込んできたんじゃないかな?」
「・・・。確かにそうかもしれないです。思い出すと辛かったんです」

「どうしてお別れしてしまったの?」
「うちの親はとても厳しいんです。彼氏が出来たなんて知ったら、うるさくて邪魔されるんです。前の彼のときもそれでダメになったし。それでずっと隠していたんです。でも、あるとき門限を破ってしまって。それで母親にしつこく追求されて、隠しているよりはましだと思って彼のことをしゃべってしまったんです。そしたら、ものすごく反対されて。彼はちょっと特殊な商売をしてる人で、うちはサラリーマン家庭なので、親はそういう人、絶対反対なんです。それでお父さんも一緒になって『あんな人やめなさい』とか悪口とかを言うようになって。で、私もバカだから、ふと彼に『うちの親、あなたのことあんまり良く思ってなくて』って言ってしまったんです。そしたら、彼はそのときは笑顔でいてくれたんですが。でも、そんな風に言われて気分いいわけがないですよね。だんだん連絡が取りにくくなって、別れてしまったんです」
「すごく悲しいね」というと、彼女は声を出して泣き出します。
私たちのところにも美和子さんの心の痛みがずしずし響いてきます。
理加の頬にも涙が流れてきました。
その悲しみとは別に彼女のご両親への怒りも伝わってきますし、何よりも自分自身のふがいなさを責めて、責めて、責めている彼女の姿が目に浮かびました。

「ずっとずっと自分を責めていたんじゃない?いつも夢見てたでしょう?彼が家に来て、お父さんとお母さんと4人でご飯を食べて団欒する姿。楽しく笑う彼と両親の姿。でも、それをずっと美和ちゃんの心の中に押さえ込んできたんだね。考えちゃだめって思えば、思うほど、彼との幸せを夢見てしまったりしなかったかな。そのたびにその思いを本当に押さえ込んで、そして、彼と別れたとき、全部を失ったような、そんな感じになったんじゃないかな」
美和子さんは、何度も何度も頷きながら泣きつづけています。
そのとき部屋の中は彼女の悲しみでいっぱいになっています。
それが彼女がずっと押さえ込んでいた悲しみの姿なのかもしれません。

「そして、ずっと自分を責めつづけているよね、今も。彼に悪いことしたって。自分のふがいなさを本当に責めてるよね。それって本当に辛い事なんじゃないかな。そうやって散々蹴飛ばしてる自分は今どんな顔をしてると思う?ぼろぼろなんじゃないかな。もう許してあげてもいいんじゃないかな。」

彼女に十分泣いてもらいました。
遠慮気味に手に取るティッシュもその数を増やしていきます。

「今、その悲しみに決着をつけましょうね」
「はい」と小さく頷く美和子さん。
「残念だけどそんな大好きな彼は今、美和ちゃんの側にはいないよね。でも、彼と出会ったこと、彼と付き合えたこと、美和ちゃんにとっては苦しいだけの時間だったのかな。楽しいこと、嬉しいこと、いっぱいあった素敵な時間じゃなかったんかな」
「そうです・・・。本当に・・・。・・・。素敵って言葉が、ぴったりです。」
「今、彼の姿を思い出してください。辛いけど、勇気をもって」
「はい」
「彼は今どんな表情をしてるかな」
「申し訳無さそうな、辛そうな顔をします」
「じゃあ、その彼に『ありがとう』って言って見て下さい。声に出して」
「・・・・・。ありがとう。」
「もう一度、いや、何回も美和ちゃんが納得するまで何度でも、今までいえなかった感謝の言葉を彼に投げかけてください」
「ありがとう・・・。ほんとにありがとう。ありがとう」

彼女の目からはまた大粒の涙が流れていきました。

ゆったりした音楽に、理加が歌詞を合わせて美和子さんに聞いてもらいました。
彼女の心が軽くなるように、楽になるように願いながら。

そして、個人カウンセリングが終わったあと。
「こんなに泣いたのって生まれて初めてかもしれないです。でも、彼のことがこんなに引っかかっていたなんて、びっくりしました。本当にもう忘れたって思っていたんです。でも、そうじゃないんですね。なんかすごく軽くなりました。ずっとつっかえていたものが取れたような感じです。
本当に思ってもみませんでした。正直、今でもびっくりしています。」
「やられたぁー?って感じ?(笑)」
「(笑)ほんとそんな感じです。ああ、でも、ほんと楽になりました。信じられないです。」

私たちが「しんどいなあ」「うまくいかないな」って感じている裏には多く「考えちゃだめ、忘れなきゃ」って抑圧している感情があります。それは美和子さんのように、意識上では「仕事のしんどさ」という悩みが、その裏側に「彼との別れの悲しみ」があったように、意外と感じるところ、普段はあまり意識しないところに原因があることも多くあります。私たちはそこで目に見える「仕事」をナントカしようと頑張るわけですが、根っこにある「彼」のことに決着をつけない限り、そのしんどさ、退屈さからは抜け出せないでぐるぐると同じパターンを繰り返してしまうでしょう。

そして、美和ちゃんが彼への気持ちを抑圧していたら、その他の感情、楽しさとかわくわくするような感覚も一緒に感じなくなってしまったように、痛みを隠すことにエネルギーを使いすぎて、他のことになかなか力が出せなくなってしまうこともよくあります。

これを読んでるあなたにも何か見落としている過去はありませんか?
そして、抑圧している何かはありませんか?
そこには今のあなたをより輝かせる秘訣が隠されているのかもしれません。
ちょっと勇気を持って、その何かを見つけていきましょう。

根本裕幸&理加 

(この記事はご本人の許可を得て掲載しています。)

宮脇静さん(仮名)は、3年前にご主人を亡くされました。
それ以来、お仕事の創作活動に身も入らず、現在お付き合いしている彼とも、しっくりこないところを感じられています。
少し遠方から来られることもあり、2セッション(4時間)連続で予約を入れていただきました。

最初は緊張された感じでソファに腰掛けていましたが、徐々に口調もなめらかになっていく静さん。実は彼女、ペンネームを持つ有名人で、何年か前までは売れっ子として活躍されていたそうです(もちろんサインはすぐに頂きました(笑))。
しかし、ご主人を亡くした後は創作活動にも身が入らず、彼ができてもうまくいかず、春頃から付き合い始めた現在の彼ともどこかしっくり来ないとのこと。
「やはり、主人を亡くしたことが原因なのでしょうか・・・?」

カウンセリングを進めていくと、今も彼女のハートの中心には亡くなったご主人がちょこんと鎮座ましていることが分かってきました。

「やっぱり今でも主人、なんですよ。(嫁ぎ先の)宮脇の家にもよく顔を出していて、お義母さんとも仲良くしているんです。『いつでもいい人がいれば結婚してね』といっては下さるんだけど、何か悪いような感じもするんです」

「宮脇さんの心の中に『旦那が亡くなったのは自分のせいだ』と自分をすごく責めてらっしゃる部分があるみたいですね。それは無理ないと思います。
自分の身近な人が亡くなられたらそれが病気であっても何かできることがあったのでは?私がもっとしっかりしていれば・・・と思うものなんですよ」(裕幸)
「私も父をガンで亡くしたときにはすごく自分を責めたんです。何かできたんじゃないか?もっとやれたのにって後悔もしたんです」(理加)

とは言え、彼女の心は今も痛みのあまり閉ざされているようです。そのため彼との関係が親密になればなるほど、その閉じているハートが気になってくるし、彼女の仕事は創作活動ですから、ハートが閉じていたらやる気も起きません。

最初のセラピーはその閉じた心をゆっくり開けていくことから始まりました。理加が曲を選び、静さんに自分の心をイメージしてもらいました。

裕幸「目の前の扉をコンコンとノックして開けて見てください。そこはどんな部屋で何が見えますか?」
静さん「ものすごくまぶしい部屋です。中には・・・、えっ・・・(絶句)。3歳のときの私がいます。一人ぽつんと座っています。かわいそうな感じです。さみしそう。」

その後、静さんにその3歳の女の子に近づいて、その子が十分温まるように抱きしめてもらいました。
そうすると静さんの表情に深い安堵を浮かびます。
そうしてまた次の部屋への扉を探して、ノックして入ってもらいました。次の部屋にもそのまた次の部屋にも成長した自分がいます。
そうしてセラピーを進めていくと、最後にはからっぽの部屋に出ました。

裕幸「そこには何もありませんか?じゃあ、そこは今のあなたの部屋、今のあなたの部屋なのかもしれません。どんな部屋にしていきたいですか?今から自由に選べます。そして、後ろを振り返ってください。今まで色んな部屋で出会ってきた自分が静さんのの後をついてきているのが分かりますか?みんな、今の静さんに希望を託しているのが分かりますか?」

ただ、心の中の自分の応援する気持ち、背中を押してくれる気持ち、彼女たちの希望を感じてもらいました。
彼女の目に見る見るうちに涙が浮かんできます。気付かなかっただけで彼女の心の中には助けを待ち、また、幸せを託す自分がいつもいたのです。
そして、徐々に表情も明るく、さわやかなものに変わっていきました。本来の静さんの表情ってこんな感じだろうなあって感じさせるくらいのものがありました。

「こんな自分がいるなんて気付きませんでした・・・。頑張らないといけませんよねっ!ほんと。すごく新鮮な気持ちがします。こんなのがあったんだって感じです」

私たちは失恋や大切な人を失うと痛いあまり、多かれ少なかれ心が閉ざされてしまうことがあります。
でも、心は決して死ぬこともなく、私たち自身が扉を開けるのをずっと待っているのです。

さて、ちょうどお昼の時間になりましたので静さんと一緒に食事に出かけ、2本目はその後に行うことにしました。食事の間は創作活動などについて色々話を聞かせてもらいました。私たちもやっぱりミーハーなんです(笑)

後半はご主人のことについて色々お話を聴かせていただきました。
そうすると彼女の中に二人の自分がいることが分かってきます。一人は彼を許そうとする静さん、もう一人は亡くなった彼を責めている静さん。
それが葛藤となり、今の恋愛や創作活動に影響を与えていることが容易に想像できます。
心の葛藤は私たちのエネルギーをすごく費やしてしまう代物なのです。

そこで静さんにはその二人の葛藤を言葉にして表現してもらうことにしました。
いわば一人二役をやるように「許したい自分」と「怒っている自分」を演じてもらうんです。
この二人が同時にいるので葛藤するわけで、きちんと話し合いをしてもらおうという魂胆です。向かいあっているソファを交互に行き来して二人の自分になりきってもらいました。

許したい静さん「もう亡くなって3年経つんだし、許してあげてもいいと思うの。亡くなった人を悪く言うのも良くないことだし」
怒っている静さん「でも、あの人は私を置いていってしまった、って感じがすごくするの。好き勝手やって逝っちゃったみたいですごくやりきれない」

徐々に怒っている静さんの語気が荒くなっていき、許したい静さんは弱っていくのが分かります。

許したい静さん「だってあの人のこと今でもやっぱり好きだもの。だから、あの人がああなってしまったということも受け入れたいの」
怒っている静さん「そんな人のいいふりしてるから、いつもしんどい思いをするんじゃないの。もっと自分を大事にしたらいいのに、そしたらもっと楽なのに」

静さんの目からは涙が溢れてきます。

許したい静さん「でも、本当にあの人は悪くないのよ・・・」
怒っている静さん「そうよ、悪いのはあの人じゃないってことは分かってるのよ。でも、どうしたらいいのか分からなくって。本当に」

言葉にならない想いが溢れてきているのが分かります。

裕幸「何か、二人とも彼のことが大好きみたいですね。怒っている静さん。ちょっと目の前にいる自分を見てください。どんな感じがしますか?このまま争いを続けますか?それをも目の前の自分を許したいとは思いませんか?」

静さんは深く頷いて「うん。彼女を助けたいです」と。
そうして心の中で争っていた二人は手を取り、和解することが出来ました。
彼女の中の葛藤が癒された瞬間です。
さっきまで怒っていた彼女の顔は、いつしかほっとした安堵感を浮かべ、深い安らぎを感じていることが手にとるように分かります。

「今でも亡くなった主人のことを愛しているんだって気付けました。でも、今までこのことに気付きたくなかったんだってことも分かります。誰とお付き合いしても、うまく行かないはずですよね。だってお付き合いするたびに主人への罪悪感を感じなきゃいけないんですから。でも、今はすっかり気分が軽くなりました。主人はもういないけど、応援してくれてるような気もするんです。早く今の彼氏に会いたくなってしまいました・・・。」

彼女からはすごく愛が溢れています。
人をいとおしく思う気持ちはすごく素敵な経験です。心に豊かさをもたらし、また、気持ちをイキイキさせます。
静さんの中でそれがずっと封印されていたために、何に対しても情熱を感じることができないばかりか、どこかに寂しさを抱えていたのです。

私たちが「寂しい」と感じるとき、誰かとのつながりが切れています。
そして、そのときあなたは誰のことも愛していません。
そこを乗り越えるのはあなたが誰かを愛したいという気持ち、誰かを愛するという意欲を持つことです。
静さんのセラピーを通じて、私たちももう一度そのことを学べたような気がします。

個人カウンセリングが終わった彼女は自宅に帰る予定を変更して、彼氏の元に飛んで帰るつもりだったそうです。でも、カウンセリングルームのあるマンションを出るとそこに見慣れた車が・・・。そうです!なんと彼が迎えにきてくれていたのです!!
「そんなこと想像もしてなかったし、そんなことしてくれる人でもなかったのに!!」

後日談。
彼女がメールを下さいました。
「1ヶ月も経とうとしているのに、まだあのときの幸せな気分が続いています。彼とは毎週末会って、お互い楽しみに、ラブラブにすごしています。セラピーのすごさをまざまざと実感しています。他の方にも是非この気持ちを味わってもらいたいので、色んな人に勧めてみようと思っています。」

根本裕幸&理加 

(この記事はご本人の許可を得て掲載しています。)

 

後日、お礼のメールを頂きました。

数年前に離婚し、現在は2人の子どもを育てながら仕事をこなす安田美幸さん(仮名)。
相談内容は1年半前から始まった不倫の恋について。

彼も奥さんと離婚し、きちんと付き合う予定だったのですが、その前に新しい彼女ができてしまった、とのこと。
「彼とこの先どうなるのかって思うとすごく不安になってしまいます。顔を見たい、でも、怖くて電話をかけることも出来ないしどうしたらいいのか分からなくて。それから、彼の気持ちも知りたいんです。今どんな風に思ってるのか、なんで彼女の方にいってしまったんだろうって分からないんです。」

最初は彼の心理分析を交えカウンセリングを進めていきました。
付き合いはじめから、不倫ということもあって、我慢することが多かった安田さん。
彼の方も奥さんとの離婚の際のストレスがずいぶん大きかったみたいです。もともと仕事が忙しく、かつ誠実なところがある彼ですから、無理ないことかもしれません。

でも、その頃から彼との間に距離を感じていた安田さんは「もう終わりなんじゃないか」と不安に思うあまり、他の人と付き合うことを真剣に考えたそうです。

その頃久々に彼から電話があったそうですが、そんな気持ちが出てきたところ、彼の話に真剣に耳を傾けることができませんでした。大好きな彼の前でも、自分の心に大きな不安や恐れを感じていたとしたら、優しくできないことってよくありますよね。
「優しくしてあげたい」と思っても、自分の不安な気持ちが強すぎたせいで、彼に冷たくあたってしまったような感覚が後に残っていたようです。

でも、安田さんにとってはそれが後悔の元になってしまいました。
その後も全然連絡がなく、1ヶ月後にようやく電話がかかてきたときには、今までの彼とは全然違う態度で「彼女ができた。もう会うことはできない」と冷たく言われてしまいました。

「せっかくチャンスだったのに・・・」と後悔、後悔、後悔。
そのときの気持ちを思い出して、安田さんは本当に苦しそうな顔になってしまいました。

私達は「なんでそうなってしまうんだろう?」という部分を見ていきました。
安田さんが話をしている間も2人の間の距離が遠くに感じられていましたし、何かその距離感に関する何かがあるように私達は感じていました。

そうすると、安田さんが心に大きな鎧を着て生きてこられたことが見えてきました。
彼に近づくチャンスだったのに、なぜか受け取れず、遠ざけてしまった安田さん。
ずっとそのチャンスを待っていたはずなのにね。

それを伝えると安田さんは次のように答えてくれました。
「ああ、そういわれてみると、前の主人とも『機会があれば別れたい』と思っていましたし、付き合う男性に対しては、いつも『距離』や『壁』を感じていました。なんとなく、なんですけど。いい関係になってきたなって思うと、なぜかうまくいかなくなるんです。」

心に鎧を着てしまうと男性が安田さんを愛そうと近づいてきたり、愛を与えたりしても、この鎧が邪魔して、愛を受け取れなくなってしまいます。
逆に安田さんが彼に愛を与えようとすると、すごく力が必要ですから、関係に疲れやすくもなってしまうのです。

では、その鎧はなぜ彼女の心を覆ってしまったのでしょう?
それを見つけるためにカウンセリングを進めていきました。すると彼女はこんな話をしてくれました。

「私の育った家は、父親がとても厳しい人だったんです。お母さんも妹たちも私もみんながその存在に怯えて生活してたんです。お父さんが家に帰ってくると家族全員にぴりっとした緊張感が走って空気が凍てつくような感じ。そんなお父さんですから、甘えたいと近づいていっても怒鳴られたり、怒られたり、そんな毎日だったんです。」

私たちは今でも怒鳴られたり、怒られたりするのは苦手ですよね。幼い頃からそんな毎日だったとしたら、どうなるでしょう?
怒られて怖い思いをしないように、いつもおびえてびくびくしないように、自然と自分を守ろうとするとは思いませんか?

実はそれが私達が「鎧」と呼ぶものの正体なのです。

ところが、お父さんの攻撃から身を守るために着た鎧が、安田さんのように男女関係においては思わぬ足かせに変貌してしまいます。私たちは小さい頃から「男性の象徴」として「お父さん」を捉えますから、知り合う男性みんなに無意識的にお父さんをダブらせてしまうのです。

ちょっと想像してみてくださいね。
あなたが女性だったとして、大好きな彼とデートに行くとき、あの中世ヨーロッパの戦場で使われる鎧を着ていかなきゃいけないとしますね。彼ともっと親密になりたいな、くっついていたいな、と思っても・・・?そもそも、愛されるような気がしませんよね。流行も何もかも関係ないファッションですから(笑)
逆にあなたが男性だったとして、付き合い始めた彼女が鎧を着てきたら???その彼女に愛の言葉をささやく勇気があるでしょうか?

現実的にはないけど、ココロの中ではそういうことが頻繁に起こっているのかもしれません。

私達も安田さんにその話をさせてもらいました。
「ああ、そういえば彼によく『何故か美幸のことを遠く感じて触れられないような気がするんだよな』って言われていました」と。

「じゃあ、その鎧を外していきましょう」

今回私達が彼女のために、次のようなセラピーを提案しました。
彼女は幼い頃からお父さんを恐れて、自分を守るために鎧を着てしまいました。
でも、当時の彼女に、もし安心感や守られている感覚があれば、その鎧を着る必要は無かったわけです。だから、イメージを使って、安田さん自身にその幼い女の子が安心できる存在になってもらおうというわけです。

これは非常に強力なインナーチャイルドワークの一つで、過去のトラウマなどを癒す際によく使う手法です。

まず、そのセラピーを始める前に、心をほぐす準備運動をします。それは私達がよく使う手法の一つで、カウンセリングを通じて今の安田さんにぴったりだと思う曲を理加が数曲選び、それを聞いてもらうんです。私達が使う曲はヒーリングミュージックというよりは、ゆったりとしたバラードやポップスが中心で、映画やドラマなどでも使われる曲が多いですね。

その曲をかけていると、安田さんの表情がみるみる変わっていきます。
何か心に変化が起きてきたようです。

そのまま、イメージを使ったセラピーに入っていくと、彼女の心の中から6歳の女の子が出てきました。その女の子は友達とは離れて公園にぽつんと、一人寂しげに立っています。

安田さんに「その女の子に近づいていってみてください」とお願いしました。そして、イメージを使って話をしたり、肌に触れてもらいます。
その子が寂しい気持ちや不安な気持ちが取り除けるように、あったかい気持ちを感じられるように。
始めのうちは、なかなかうまくいきませんでしたが、しばらくそうすると、その6歳の女の子の目から涙が溢れ、温かみが戻ってきたようです。

それに合わせるかのように、始めは苦しそうで辛そうだった安田さんの表情が、徐々に温かみを増して、愛が溢れてくるようです。
「この子のことがすごくいとおしいです。」
「辛かったね、よく我慢したね、って言ってあげたいです」

最後はイメージの中でその女の子を思いっきり抱きしめてもらいました。

終わった後、安田さんは晴れやかな表情をしながら
「彼の事でずっと悩んでいて、答えが見えなくて、本当にしんどかったんですよ。私の中にそんな女の子がいるなんて思っても見ませんでしたし、お父さんとの関係が、他の男性と距離なんて・・・。普通はそうは思わないですよね?それが原因で彼とうまく付き合えないってことも分かりませんでしたし、本当に私って何も知らなかったんだって思います。でも、今までのもやもやが嘘みたいにすっきりしました。彼の心理もわかってよかったです。本当にありがとうございます。」
と話してくれました。

その後、安田さんから感謝のメールを頂きました。

「帰り道、駅から歩いて30分ほどの道のりを散歩気分で歩いて帰りました。不思議だったのが、今までだったら周りの景色や、些細なことなど見ようともしなかったのに今日は偶然見かけた花が『何てキレイなんだろう。。』と思いました。

昨日までの一杯一杯の感じがなくなりました。癒されるってこういうことなんだな、と思いました。もっとセラピーを受けて本当の自分を取り戻していきたいです。

彼のことはこの先どうなるか分からないけど、前のような不安はもうほとんどないんですよ。そしたら、もう彼1人にこだわることなく、別の人のこともきちんと見てきたいなって思えるようになりました。」
とおっしゃってくださいました。

どうやら6歳の女の子、その子はずっと安田さんの心の中で寂しげに、うつむいていました。でも、その子が本来持っていたイキイキした部分が戻り始めたようです。
そう思うと私たちも嬉しくなります。

安田さんのように自分で閉じ込めてしまった小さな女の子は私たちみんなが持っているものです。
その子と出会い、心を解放していくことは、私たちにイキイキさ、無邪気さを取り戻させてくれます。それはより自然な自分、より楽な自分への第一歩なのです。

根本裕幸&理加 

(この記事はご本人の許可を得て掲載しています。)

山西恵美さん(仮名)は、付き合って3年になる彼とのすれ違いが続き、彼に近づくことが怖い自分に気付いて個人カウンセリングに来られました。

「彼との関係を良くしたい。でも、彼から近づいてきてくれるのをいつも待ってしまうんです」
と恵美さんはおっしゃいます。カウンセリングを進めていくと、彼女は人に対する恐れがとても強く、常に頭で考えてしまうクセがあることが分かってきました。
そのためか彼女の話口調はとても理路整然と淡々として、感情を殺したような話し方をしています。

そこで私たちはまずは彼女のハートをマッサージして、リラックスしてもらうことから始めました。
それは、今の恵美さんにぴったりと感じた曲と詞を理加が5曲ほど選び、自分の心に注目してもらいながら聴いてもらうのです。
私たちのセラピーではよく音楽を使います。音楽といっても瞑想曲や癒し系と呼ばれる音楽ではなく、ちょっとゆったりめのポップスやバラードがほとんどで、皆さんが聞き覚えのあるメロディのものを多く使います。そして、その日本語の詞をメッセージのように曲に合わせて伝えます。そうすることで音と言葉(声)を使ってハートをほぐしていくのです。

曲をかけていくうちに段々彼女がふーっと息をつき、肩の力が抜けていくのが分かります。彼女もそれを自覚されたようで、ちょっとほっとした様子をしています。
でも、
「心に注目しているつもりなんですが、何も感じないんです」
とのこと。無理もありません。
「気にしなくていいですから、そのまんま自由にしていてください」

私達は大人になればなるほど、理性的に振舞おうとすればするほど、感情を抑えるクセをつけてしまいます。
だから、個人カウンセリングの現場では、まずは自分の気持ちに気づくところから始めます。経験上、それには先の音楽を使った心のマッサージが一番有効だと私達は思っています。

さて、カウンセリングの中で、山西さんはこんな話をしてくれました。
「私のお父さんは小さい頃からあまり家に帰って来なかったんです。だから、私はいつもお母さんと二人で暮らしていたようなもの。でも、お母さんはあまり文句をいうことなくお父さんをずっと待っていたんですね。私も、お父さんのことは好きでしたから、お母さんと一緒にいつもお父さんの帰りを待っていたような気がします。」

「あなたの彼を待ってしまうパターンはお母さんから引き継いだものみたいですね。」
というと、

「ああ、そうみたい。ほんと、そうですね、きっと。彼を待っている気持ちってあのときの気持ちともしかしたら一緒なのかもしれないですね」
と恵美さん。

「でも、お母さんのことを考えると気分が悪くなりますし、むかむかするような気がします。今でもお母さんとはとても仲がいいんですが、そういえば、ときどき無性に離れたくなるときがありますね。」

「それはきっと、その思いが辛いから、心理的にお母さんから離れよう離れようとされてきたのかもしれませんね。お母さんのところに恵美さんの心を置き忘れてきたみたいです。今日はそれを取り戻しに行きましょう」

今回私たちが提案したセラピーは、ただ、自分の心に注目しながらお母さんに近づくということ。それを恵美さんに伝えると「えーっ!?」という反応をされます。
「でも、気分が悪いってことはきっとそれが必要なんだって思いますから、頑張ってみます」
と同意してくれました。ありがとう。

イメージを使いながら、ゆっくりゆっくりお母さんに近づいていってもらいました。
最初は
「うーん、ん?何も感じないです・・・」
と戸惑ってましたが、徐々に表情は曇りがちになってきます。
「なんか、怒ってるのかな、私」
そのまま怒りを感じながら、近づいていってもらいました。怒りは今回扱うテーマではないからです。

「だんだん、寂しいような、悲しいような、切ない気持ちになってきました。どうしてだろう?」
「ああ、そのまま感じるだけにしてくださいね。そうやって考えるとせっかく上がってきた感情を押し殺してしまうことになります。何か怒りの下にはそんな寂しさや悲しみがあるみたいですね。それを感じながら、さらに一歩近づいてみましょう。」

私達の持つパターンはこういうところで強く出てきます。
頭で考えるクセがついてしまうと、こういうところでも分析や答えを求めてしまうんです。
考えることが悪いというのではもちろんありません。
ただ、それによって感情をかき回してしまうことがよくあり、そうすると、もやもやした感じが出てきたり、イライラしてしまったりします。
それでは気分をすっきりさせることができなくなってしまうんです。

そうして、一歩一歩感情を感じながらイメージの中で歩みを進めてもらいます。
すると、あと3歩ぐらいでお母さんのところにたどり着く、というところで突然彼女の表情が変わりました。

「なんだろう?これ。すごく熱いです。ああ、お母さんを助けたいって気持ちがどんどん強くなってきます。ずっとこんな気持ちを持っていたんでしょうか?」
彼女の目からは自然と涙が溢れてきていました。
そのまま駆け足でお母さんに抱きつく恵美さん(もちろん、イメージの中でのお話です)。

「お母さんのこと本当に愛してらっしゃったんですね。でも、何もできない、助けられないって自分を責めていたんじゃないですか?」
というと、深く頷いています。
そのまま、ゆったりとした曲を背景にして、お母さんの温かさを感じてもらいました。

恵美さんの表情は2時間前とはまるで違って、イキイキとした若々しい表情をしています。
「なんか、胸のつかえがすーっと取れたような気がします。息をするのもすごく楽です。不思議な感じですね。すごく楽なんですよ、本当に。これが癒しっていうことなんですね。すごいです。ほんとすごいです。もっと早く受ければ良かったー。」
と言って彼女は部屋を後にしました。

今回のテーマはお母さんへの深い愛情に気付くことでした。
子ども達はみんなお母さん、お父さんを愛しています。そして、何かあれば助けたいと思っています。恵美さんの中にも常にそんな気持ちがあったにも関わらず、どんなに頑張ってもお母さんの寂しさや悲しみを取り除くことはできなかったのかもしれません。

その無力感のために、愛することよりも待つことしかできなくなってしまったようです。
今回はその自分から近づいていく、そして、恐れを取り除いて愛情を感じるセラピーをしました。

ここからは、個人カウンセリングの数日後に電話でのカウンセリング(有料セットコース)でお話した内容です。
「今までは『会いたい』とか『~してくれないの?』とかばかり言っていたのに、昨日は自然と『会おうよ』って口から出ちゃったんです。彼もびっくりしていましたけど、私の方がびっくりしましたよ。彼もなんか嬉しそうでした。今まで彼に頼るばかりで重たい女になってたのかもしれませんね。今週末は久々のデートなので根本さんのところへはいけないんです。ごめんなさいね(笑)でも、彼に会うのがこんなに楽しみだなんて、ちょっと信じられないです。」

「ごめんなさい」なんて(笑)
どんどん楽しんできてください。

根本裕幸&理加 

(この記事はご本人の許可を得て掲載しています。)