あなたのおっしゃる“いい子”にならなかったとしたら、親をやめる気ですか?
こんばんは。
神戸メンタルサービスの平です。
昔、ある女性から、お嬢さんのことについてご相談を受けたことがあります。
それまでにも何カ所かでカウンセリングを受けられたようなのですが、どれもこれも、ぜんぜんうまくいかなかったとのこと。
ということで、お話をうかがったわけですが、お嬢さんは高校生になったころからファッションや美容にたいへん興味をもつようになったそうです。
で、夏休みに入ると髪を金髪に染め、8月31日には黒髪に染め直して新学期を迎えたりしていたんだとか。
しかし、高校2年の夏休みは、8月31日になっても髪を黒く染め直さず、そのまま学校に行って停学になったそうです。さらに、学校で禁止されているカラコンやエクステ、メイクなどをしたために、結局、退学するハメになってしまったのです。
その後しばらくは、通信制の高校に入るなどのチャレンジをしたのですが、お嬢さん自身の勉強する気がまったく起こらず、かといって、就職したり、バイトをしたりすることもなく過ごしてきたんですね。
おかあさんとしては、「これからいったい、どうする気なの?」とさんざんお嬢さんを責めたり、怒ったりしているわけですが、「放っといて。いまは考えてるところだから」とお嬢さんは答えるだけで、結局、なにもしないわけです。
「そして、あまりにも私が怒りすぎたのか、一人暮らしをしたいと言い出したんです」ということで、結局、家賃だけは出してあげるという条件で、一人暮らしをさせたそうです。
おかあさんとしては、「これが自立のチャンスになれば」とも思い、一人暮らしを許したのですが、やはりバイトするでもなく、お金に困って親に無心に来ることしきり‥‥。
その後、あまり来なくなったのですが、キャバクラや風俗の店に勤め出したようで、おかあさんはまたまた心配で仕方ありません。
それで、なんとかこのお嬢さんが普通の女の子に変わるようにと、あちこちでカウンセリングを受けたのですが、ぜんぶうまくいかなかったのがご相談内容だったわけです。
おかあさんに聞きました。
「彼女がキャバクラや風俗勤めをつづけて、あなたのおっしゃる“いい子”にならなかったとしたら、親をやめる気ですか?」
「えっ?」
「お嬢さんが素直なよい子になったら、たしかに心穏やかになれるでしょう。でも、おかあさん、それは“自分の育て方が間違った”とか“自分が怒りすぎた”とか、あなたのネガティブな感情をお嬢さんによってなんとかしようと、心のどこかで思っているということではありませんか?」
「‥‥‥‥」
「お嬢さんの人生を変えられるのは、お嬢さんだけです。今後も風俗の道を突き進むかもしれませんし、あなたのおっしゃるところのよいお嬢さんになることもあるかもしれません。
私のカウンセリングは、お嬢さんがどうあったとしても‥‥、仮にあなたの望まないお嬢さんのままだったとしても、あなたが彼女のいちばんの理解者であるように‥‥、そうあるためのお手伝いはできると思います。
しかし、どうにかしてお嬢さんをコントロールしたいということでしたら、それは無理です。
あなたは、こう思っているということでしょうか? よい子であれば、親としてあの子を愛することはできるが、今のままでは、親としてあの子のことを愛することができない、と」
私の問いかけに、モゴモゴといろいろな問題をお話しされるのですが、その「親になるかならないか」の質問へのお返事はなかなか聞けずじまい。
「私のカウンセリングを受けられるのであれば、お嬢さんがどのようなお嬢さんであっても、あなたがけっしてブレることなくわが子を愛せるあなたでいるための協力はいたします。
お嬢さんは自分自身を愛せないし、コンプレックスだらけでしょう。そんな自分のことも愛してくれるあなたがいることにより、結果的にお嬢さんにあなたの願いが通じることはありえます。が、それはコントロールすることではなく、お嬢さんが決められることです。
“なぜ、私はいまの娘を受け入れ、愛することができないのか”ということと向き合ってみませんか?」
この提案に、おかあさんは涙ながらに「そういう私でありたい」と思い、そこから彼女の癒しはスタートしたのでした。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!
(完)