上司に自分の意見を伝えるのが怖い──「すみません」で黙ってきたあなたへ

□自分の意見を言えますか?

上司に自分の考えを伝えるのが、怖い。そう感じたことはありませんか。
たとえば、何かを指摘されたとき。
意見がないわけじゃないし、考えていないわけでもない。
でも、いざとなると喉の奥で言葉が止まってしまう。
そして、代わりに出てくるのは「すみません」という一言。

それは、あなたの誠実さかもしれません。
まず相手の言葉を受け止めようとする姿勢は、仕事をするうえでとても大切なものです。
ただ、その誠実さが、ときに“自分の価値”を下げてしまうこともあります。

たとえば、上司から「返信が遅い」と注意されたとき。

「データを確認してから返信した方が正確だと思い、確認中だった」
「急ぎの案件が重なっていたので、優先順位を自分なりに考えた」

本当はそんな理由があったのに、「言い訳に聞こえたらどうしよう」と思って、とっさに「すみません」とだけ返してしまう。
そんな経験はありませんか。

でも、「すみません」だけで終わらせてしまうと、ちゃんと理由があったにもかかわらず、それが伝わらず、仕事への向き合い方まで違って見えてしまうことがあります。
ここで、少し視点を切り替えてみることが大切です。

まず、「言い訳」と「説明」は、まったくの別物です。

言い訳とは、自己保身のために事実を歪めたり、不必要な情報でごまかしたりする行為。
説明とは、物事がなぜそうなったのか、その根拠や理由を明らかにすることです。

頭ではその違いがわかっていても、「説明したら、“言い訳”だと思われるかもしれない」という怖さが先に立ち、言葉を飲み込んでしまう人は少なくありません。
でも、説明は「言い訳」でも「反論」でもありません。

説明をしないことで、相手から見ると「考えが見えない状態」になってしまうことがあります。
人は、何を考えているかわからない相手に、無意識に距離を取ります。

説明は、単に状況の共有だけでなく、頑張っている自分を知ってもらう行為であり、仕事の中で欠かせないコミュニケーションなのです。

□言えなくなった理由がある

説明したほうがいいと頭ではわかっているのに、言葉が出てこない。
それには、人それぞれ理由があります。
子どもの頃に、誰かからこんな言葉を言われた記憶はありませんか。

「言い訳するな」
「とにかく謝りなさい」
「口答えしないの」

あの頃は、それが必要な考え方だったのだと思います。
怒られないために、波風を立てないために、小さな自分を守るために。

そうして身につけた「生き延びるためのルール」を、大人になった今も無意識のまま使っていると、本来伝えるべき説明まで飲み込んでしまうことがあります。
子どもの頃から何度も飲み込む経験を重ねるうちに、心の中に、こんな言葉が居座るようになる人も少なくありません。

「どうせ言っても無駄」
「どうせわかってもらえない」

こうした思いが積み重なると、必要な説明すら控えるようになっていきます。
過去に、誰にもわかってもらえなかった。話しても否定された。受け止めてもらえなかった。
そんな体験が重なるほど、自分の意見や事情を伝えること自体が、怖いものになっていくのです。

でも、ここで思い出してほしいことがあります。
あなたがやってきたことを、一番よく知っているのは、あなた自身です。

だからこそ、相手が理解してくれるかどうかに関係なく、「自分のために」事情を説明することに、少しずつチャレンジしてみてほしいのです。

□小さな練習から始める

実は私自身も、人から指摘されたときに自分の意見が言えなかった時代があります。
頭が真っ白になり、その場では言葉が全く出てこない。

帰り道になってから「あのとき、こう言えばよかったな」「なんで言えなかったんだろう」と、ようやく言葉が浮かんでくる。
当時の私は、意見を言う以前に「自分はどう思っているのか」を感じ取る余裕すらなかったのだと思います。

その私が最初にやったのは、仕事で意見を言う練習ではありませんでした。

「いつものコーヒー」
「とりあえずビール」

それをやめてみたんです。
今日の私は何が飲みたい?コーヒー?紅茶?それとも全然違うもの?そんな小さな問いを自分に向けるところから始めました。

長い間、自分の意見を飲み込むことで自分やまわりとの関係性を守ってきた人が、いきなり仕事の場で意見を言えるようになるのは簡単なことではありません。
だから、いきなり大事な場面で言おうとしなくて大丈夫です。

まずはリスクの少ないところから練習してみることをおすすめします。

・「私も同じものでいいです」をやめて、今、自分が何を食べたいか、何を飲みたいかを考えて伝える。
・同僚との雑談で、映画や本について自分の感想をひとこと添えてみる。
・仕事の場では「こう思ったのですが、いかがでしょうか?」「一案としてなのですが…」と、相手を尊重する形で伝えてみる。

大切なのは、自分の考えを外に出す経験を、少しずつ重ねていくことです。

□おわりに

自分の意見を伝えることは、言い訳ではなく、むしろ誠実な姿勢そのものです。
「〜という事情があり、こう判断しました」と伝えるだけで、信頼関係をつくる一歩になります。

上司や同僚は、あなたの仕事のすべてを見ているわけではありません。
あなたの行動には、あなたにしかわからない理由があります。
だからこそ、あなたの言葉で背景を伝えなければ、伝わらないのです。

その理由を説明することは、あなたの努力と誠実さを、あなた自身が大切に扱う行為です。

どうか今日から、自分のために、あなたの言葉で、あなたの行動を説明してあげてください。
それは、仕事でも人間関係でも、あなたを救い、結果として信頼を育てていく力になるのです。

私もあなたに、心からのエールを送ります。

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

孤独感の中で生き続け、離婚や再婚、うつを乗り越えた経験から、パートナーシップや自分自身の問題を多く扱う。圧倒的な受容力と繊細な感性を活かし、言葉に出来ない感覚や感情にフォーカスすることが得意。問題に隠れた愛や魅力を見つけ、クライアントが安心して自己実現できるようサポートをしている。