人間は死ぬことよりも、幸せになるほうが怖い
神戸メンタルサービスの平です。
私が心理学を勉強するようになって、いちばんびっくりした考え方は、「人間は死ぬことよりも、幸せになるほうが怖い」というものでした。
この考え方を聞いた当初はまったく理解することができませんでした。
それがだんだんとわかるようになってきたのですが‥‥、あなたはものごとが思うようにいかなかったり、パートナーにフラれたり、不幸な出来事があったりしたときに、「ああ、やっぱり」と思うことがありませんか?
つまり、私たちはなぜか、失敗や失望をすること、不幸になることを前提に置いて、準備万端、備えておこうとしているようなのです。
私どもに恋愛相談のカウンセリングを受けに来たある女性は、男性に対して非常に疑い深い人でした。
疑い深いので、彼女は何度となく彼氏をテストしようとしてしまいます。
そして、彼がそのテストに合格すればするほど、彼女は不安になるのです。
「いや、そんなはずはない。そんなわけがない。私がここまで愛されるなんてこと、あるわけがない」、と。
さらに、すこぶる過酷なテストを課して、彼が失敗すると、彼女は安堵します。
「ほらね、やっぱり。どの男も私を愛せない」、と。
そんな彼女に私は言いました。
「あなたは表面意識では、男性にフラれたり、失恋したりすることを恐がっているようですが、実際にしているのは、まるでフラれることを望んでいるような態度ですよね?
それはまるで、黒ひげ危機一発のゲームをしているとき、なかなか飛ばない黒ひげに対し、“もうそろそろ飛ぶはずだ”、“いや、さっさと飛べばいいのに”、“早く飛べよ!”と言っているのと同じです」
私たちは、「うまくいかないこと」には慣れ親しんでいますが、一方、「彼からほんとうに愛されている」ということは信じることができないようなのです。
そして、フラれることを予想し、そのときのための心の準備ば万端にできているのですが、一方、彼から愛されることへの準備はまったくできていません。
「そんなに私のことを愛してくれたとしたら、どうすればいいかわからない」というあなたがそこにいるわけです。
昔、私どもに泰三くんという車いすに乗ったトレーナーがいました。
彼は15歳のとき、交通事故で歩けない体になりました。
彼はその当時、「おれはもう恋愛も結婚もできないし、そもそも女性に好かれることもない」と思ったといいます。
その後、彼は2度結婚しましたし、女性関係はお盛んなほうでした。
この泰三くんに、あるとき、こう聞きました。
「タイムマシーンに乗って、15歳のときの自分に出会うことができたら、なんて言ってやる?」
「心配するな、おまえは恋愛も結婚もちゃんとできるぞと言って、安心させてやりたいです」
「きみがそう言うと、病院のベッドに寝ている15歳の彼はなんて言うの?」
「それは‥‥、じゃあ、おれ、歩けるようになるのか?だと思います」
「で、きみはなんて言うの」
「いや、歩けるようにはならないけど、恋愛も結婚もできる」
「そう答えたら、彼はどうなる?」
「ぼくの言うことを信じないと思います」
たしかにそうなのかもしれません。
私たちの多くが「こんな自分が愛されるわけがない」という信念をもっています。
それは、「どんなあなたであっても、愛してくれる人は出てくるのだよ」という未来が信じられないことともいえるでしょう。
期待して、裏切られるようなことが起こらないように‥‥、私たちは幸せに向かって開くはずのドアを防衛のために閉めつづけているようなのです。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!
(完)