「どうしてこんなに冬が好きなんだろう」
そう心の中で、何度も問いかけてきました。
でも、「これだ」という理由は、ずっと見つからないまま。
暑さが引いて朝夕の空気が変わり、日が早まるのを感じるたびに、私は自分の胸の奥がわくわくし始めているのを感じるんです。
冬が来る。
そう思うだけで、心にあたたかいものが灯っていくような、なぜかそんな気持ちになるんです。
冬の張り詰めた空気。澄んだ空の青さ。その冷たさの中で感じるあたたかさ。
それは理由というより、心が勝手に反応する感覚に近いのかもしれません。
私は、そんな冬が待ち遠しくて、大好きなんです。
◆不安の中でフリーズした私に訪れた奇跡
そんなことをぼんやり考えていたとき、ある記憶がふと蘇ってきました。
5年前の12月。
私は翌月に、夢だった心理カウンセラーとしてのデビューを控えていました。
夢が叶うというのに、言葉にできない、なんとも言えない「ざわざわ」が胸の奥で止まらないのです。
やるべきことは山ほどあるのに、でもなぜか体が動かない。まるでフリーズしたように、前に進めない。
「私、いったいどうしちゃったんだろう」
喜びより先に、底知れない「怖れ」が押し寄せてくる。
不安で胃薬を手放せなくて、心が厚い氷に覆われていくようでした。
今思い返せば、その怖れの根っこには、ずっと蓋をしてきた妹への後ろめたさがあったのだと思います。
小さなころ、病気で何度か手術をした妹。
私は健康で、好きなことを選ぶことができました。
大人になってからも、私は地元を離れて暮らし、妹は実家のすぐ近くに住んで、両親のことを支えてくれている。
私が心理学を学び始めたとき、
「ようちゃんは好きなことができていいな」と妹が言っていると、母から聞かされました。
あのときの、胸がぎゅうっと締め付けられるような痛み、私はよく覚えています。
私にも言い分はありました。
「私は私で、幼いころからずっと、あなたにお母さんを譲ってきたんだよ」 と。
お互いに言えないまま抱えてきた、ずっと胸の奥にあった、深く重いわだかまり。
その言葉にできなかった思いが、デビューという大きな一歩を踏み出す直前の私の心を、鉛のように重くしていたのです。
◆砂となって流れ去った「罪悪感」
私は思い切って、妹に「プロとしての私」を映し出したプロフィール写真を見せました。
少し、背伸びをしているような一枚を。
すると写真を見た妹は、驚くほどまっすぐに伝えてくれました。
「この写真のようちゃん、やさしそうでいい!
私なら、この人に相談したいって思う!」
その言葉を聞いた瞬間。
胸の奥に抱えていた、黒く重い「罪悪感」の塊がサラサラと音を立てて砂になり、一気に流れていくのを感じたのです。
ああ、やっと許された。
やっと、認めてもらえた。
心の氷が融けていき、あたたかい安堵の気持ちが、静かに私の中に広がっていきました。
◆あなたは誰かの「小さなサンタクロース」
あれから、もう5年。
気がつけば、私はこの5年間、ずっと誰かの心に届く言葉を探しながら歩いてきました。
完璧じゃなくても、等身大の私で、一生懸命誰かの隣に並んで、誰かの思いに寄り添いながら歩き続けてきました。
そう思うと、なぜか熱いものが込み上げてきます。
どうして私は、こんなにも冬が好きなのか。
その本当の理由が、今ようやくわかった気がします。
この季節に私と出会ってくれた「最初の小さなサンタクロース」…それが、妹だったから。
妹は、クリスマスのすぐ前に生まれました。
だからきっと、妹が生まれてきてくれた冬の空気が、私には今でも特別に感じられるのかもしれません。
5年前、妹がかけてくれたひと言の贈り物がなかったら、私はここまで歩いて来られなかったかもしれない。
妹の言葉や、妹がいてくれた季節が、私の物語の最初の灯りになったのだと思ったんです。
そして今、あなたも誰かにとっての「小さなサンタクロース」になっていることを忘れないでください。
人は、誰かのたったひと言で救われることがあります。
誰かを思ってかけた言葉、静かに見守るまなざし、そして隣にいるという確かな体温。
そのすべてが、あなただからこそ誰かの心にそっと届けられる、かけがえのない贈り物なのです。
今まで自分がもらった愛を、今度はあなたの手から誰かへと渡していく。
あなたは、その光の連鎖の中に立っています。
それは、とても美しく、もっともあたたかい心の温もり。
私もまた、誰かが道に迷ったとき、そっとあたたかさを灯す言葉を届け続ける存在でありたいと、心から願っています。
この一年の感謝を込めて、
新しい年が、みなさまにとって希望に満ちたすばらしい一年になりますように。