オンライン時代の遠距離恋愛
神戸メンタルサービスの平です。
昔々、みなさんのお父さんやお母さんが青春を謳歌していた時代、当時はまだネット社会ではなく、文通というものが流行っておりました。
文通とはお手紙をやりとりすることなのですが、一つのブームのようになっていて、そこから遠距離恋愛がはじまったりもしていたのです。
文通は会ったことのない人とすることも多く、そうした人たちはお手紙をやりとりする中で、たまに写真を送り合ったりしていました。
あとはお手紙に書いてあることぐらいでしか相手のことはわかりませんから、「彼(彼女)はきっとこういう人に違いない」と推測するしか仕方がありません。
そのため、遠距離恋愛に発展したとしても、各自が勝手に作ったイメージが先走り、現実の彼や彼女とは乖離していたこともよくあったわけです。
また、なかなか会えない相手に対しては、イメージがふくらむとともに恋心が爆発しそうなぐらい大きくなっていたりしがちです。
すると、ようやく会えたときにはうれしくてたまらないのですが、少し経って落ち着いてくると、「私が思っていたかんじとなんか違う‥‥」ということもよく起こりました。
その後、携帯電話やメールの時代が訪れてからは、遠距離恋愛をしていてもリアルタイムに相手と連絡を取ることができるようになりました。
しかし、実際に会うことはなかなかできないので、どうしても自分で作るイメージが先行してしまうことがまだまだ多くありました。
ただ、そんな遠距離恋愛を心地よいと感じる人も少なくなかったようです。
たとえば、パートナーができたとしたら、なにかと会いたいと思いますよね。とくに依存的なタイプの人は、「会えないぐらいならつきあっている意味はない」とまで思うかもしれません。
一方、遠距離恋愛というのは、なかなか会えないことが当たり前です。
依存的なタイプの人だと長続きしにくいのですが、淋しいと感じるときも、一人ではもてあますようなことが起こったときも、自分で解決したり、自分一人で楽しむ術を見つけたりすることのできる人なら、遠距離恋愛もそれほど苦ではなかったりするのです。
言い換えれば、相手に過度な期待をすることなくおつきあいをする能力がある人と言ってもよいでしょう。
そして、一人でも人生を過ごせる人は、パートナーをもったときも、相手に不平不満をあまりもつことなくおつきあいできるというメリットがあります。
一人でいるのが気楽でよいと思っている人の場合は、二人でいる時間は気を使いすぎてしまうので、あまり好きではないという人もいます。
さて、話を近年のことに進めますと、昨今はZoomなどのWeb環境やテレビ電話が普及しておりますので、遠距離恋愛のパートナーがたとえ地球の果てにいたとしても、リアルタイムに映像でつながることができます。
とくにコロナ禍以降はリモート環境で仕事をする人が急増しましたが、恋愛においてもバーチャルにデートを楽しむカップルが増えています。
バーチャルでは、触覚、つまりふれあうことはできないので、リアルなデートに比べると少し淋しいかもしれません。
でも、パートナーとは十分にコミュニケーションをとることができますし、外出しなければコロナ感染のリスクも小さくなります。
かつては月に1度とか、2、3カ月に1度しか会えなかったという遠距離恋愛のカップルが、バーチャル・デートができるようになったら、淋しさが激減したという例はとても多いようです。
そして、まだおつきあいの浅い二人でも、パートナーの容姿や人となりをバーチャルに見たり感じたりできることで、かつてのようにパートナーを理想化して恋心に揺れるということは、以前に比べてずいぶん少なくなっていったようです。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!
(完)