多くの人が、ある時期までは「経済的な安定」こそが幸せの鍵だと信じて頑張ります。
学生時代から一生懸命勉強し、社会人になって成果を出し、キャリアを積んで収入を得る。
その過程では「お金を稼ぐこと」が大きなモチベーションのひとつになりますよね。
中には、社会的に認められるような役職に就く、ということがモチベーションになる方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、ある程度、それらが安定してきたときに、自分の在り方に疑問を持ち始めることも少なくないようです。
・ボーナスでブランド品を買っても、一瞬の満足しかない
・高級レストランに行っても「美味しい」以上の感情がわかない
・周りからは「幸せそう」と言われるのに、自分では実感がない
「これ以上頑張って、私は何を得たいんだろう」
「生活に困っていないはずなのに、なぜか虚しい」
◇心理学で見る「空虚感」の正体
心理学者マズローは、人間の欲求を5段階で説明しました。
1.生理的欲求(食事や睡眠など、生きるために欠かせない基本的な欲求)
2.安全欲求(経済的な安定や、安心できる生活環境を求める欲求)
3.社会的欲求(仲間とのつながりや愛情を求める欲求)
4.承認欲求(他者や自分からの承認を求める欲求)
5.自己実現欲求(自分の可能性を最大限に活かし、自分らしく生きたいという欲求)
キャリアを積み、収入が安定してくると、下位の欲求はある程度満たされます。
欲求が必ずしも「下から順番に」きれいに満たされるわけではないのですが、下位の欲求が満たされてくると、人は自然と「承認欲求」や「自己実現」へと進むといわれているのですね。
つまり「私は何を持っているか」ではなく「私は何者であるか」
「外からの承認ではなく、“自分の気持ちと行動が一致している”と感じられるか」
「私は何のために生きるのか」という問いに直面するようになるのです。
◇外側の承認から、内側の一致へ
承認欲求までのステージでは、外からの評価が大きなモチベーションになります。
しかし、ここからのステージで大切なのは「私は私でいい」と感じられる内側との一致感。
・誰かに褒められるからではなく、自分が心から納得できる生き方
・結果だけでなく、プロセスそのものを味わえること
・役割や肩書きではなく、「素の自分」で人とつながれる瞬間
こうした体験こそが、存在欲求を満たし、心に深い充実感をもたらしてくれるのですね。
このステージは「ただ、考えれば答えが出る」ものではありません。
日々の小さな選択や行動の積み重ねの中で、少しずつ自分の向かいたい方向を探っていくプロセスとなります。
今日は、実生活に取り入れやすい3つのヒントをご紹介しますね。
1.「自分にとっての意味」を問い直す
日々の忙しさの中では、「やるべきこと」に追われ、自分自身の方向性を見失いがちです。
意識的に立ち止まり、問いを投げかけてみましょう。
「この仕事を通じて、私は何を大切にしたいのか?」
「成果や収入のさらに先に、私が望んでいるものは何なのか?」
この問いに正解はありません。
立ち止まって見つめ直し、自分なりの答えを見つけるのがポイントです。
2. 小さな自己一致を積み重ねる
自己一致とは「感じていること」と「実際の行動」が合っている状態のこと。
たとえば、「休日には、家族と一緒に過ごす時間を大切にしたい」と思ったならば、自分との約束を守ってあげる。
こうした小さな選択の積み重ねが「自分の大切にしたいものを、ちゃんと大切にしている」という存在欲求の充足へとつながり「自分が本当にやりたいこと」を見つけやすくしてくれます。
3. 信頼できる場で言葉にする
存在欲求は、頭の中で考えているだけでは堂々巡りになりやすいテーマです。
社長やリーダーが顧問やメンターに相談するように、信頼できる相手に自分の感じていることや、これからのビジョンなどを言葉にしてみましょう。
安心できる場で言葉にすることは、自分の価値観を整理し、次の一歩を明確にしてくれます。
◇さいごに
「収入や立場だけでは満たされないと感じる」という悩みは、けっして一部の人だけの贅沢な悩みではありません。
努力を積み重ね、ある程度の収入や評価を手にした人だからこそ直面する、自然な心のプロセスです。
もし今、「なぜか心が満たされない」と感じているなら、それはあなたが次のステージ「自分らしく豊かに生きる」ための新しい出発点へ進もうとしているサイン。
その声を無視せず、丁寧に拾ってあげてくださいね。
安心して自分を見つめ直す時間を持つことで、きっとあなたにとっての“本当の豊かさ”が形になっていきますよ。
参考になれば幸いです。