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Lecture.850-3

期待の心理学(3)〜完璧主義とファンタジー〜

講師:浅野寿和

今回は「完璧主義とファンタジー(空想)」について。私達がたくさんの「期待」の中で生きている時。それはまだ自分が十分に自立しきれていない何か、を心のなかで感じている時、でもあります。大人になった私は、もちろん一人では生きていける力が実際には備わっている方が多いもの。実際に、しっかり一人で生きていく力は実際には備わっている方はたくさんいらっしゃるでしょう。しかしカウンセリングの現場では、そうであっても「自信を感じられない」「自分は不十分な感じがする」とお伝えいただく方も少なくないのです。では何故そんな感じ方ができあがるのでしょうか?実はそこにも期待の心理の影響を見ることができるのです。

Keywords
空想 完璧主義 べき思考 空想 不十分感 

■さて、3回目は「完璧主義とファンタジー(空想)」についての講座です。

私達がたくさんの「期待」の中で生きている時。それはまだ自分が十分に自立しきれていない何か、を心のなかで感じている時、でもあります。

大人になった私は、もちろん一人では生きていける力が実際には備わっている方が多いもの。

例えば、仕事をしてお給料をもらい、一人暮らしの部屋を借り、家事も行う、役所の手続きも一人で・・・なんだか当たり前のことを書いているように思うかもしれませんが、しっかり一人で生きていく力は実際には備わっている方はたくさんいらっしゃるでしょう。

しかしカウンセリングの現場では、そうであっても「自信を感じられない」「自分は不十分な感じがする」とお伝えいただく方も少なくないのです。

では何故そんな感じ方ができあがるのでしょうか?


こういった本当はしっかりオトナとして生きていく力を持っているけれど、しかしまだ「自分は未熟で自信がない」と感じてしまう部分に、期待の心理の影響は見て取れるのです。

そもそも期待とは「ものごとがこうあるべき」と思っていること。そう、期待のつきものは「べき思考」なのですね。

であれば、その人が「こうあるべき」と思っている自分にならないと自分を十分だとは認められない・・・という感覚を持っていても不思議ではありません。

そんな自分への期待が強力になった状態の一つが、いわゆる「完璧主義」ですね。「完璧にできないこと、完璧なものにしか意味を感じない」つまり、「完璧なもの以外に意味などない」と感じる状態です。

しかし私たちは人間ですから、常に自分が思うような完璧な状態になれるわけでもなく、またそれで普通なのです。が、それを許さない「自分への強い期待」を持つようになる方もいます。


そのような心理状態になると、どこか「私はこうあるべき・・・」という感覚にそぐわない観念、発想は無意味だと感じ、どんどん切り捨てていきます。

例えば「女性は美しくあるべき!」「仕事に取り組むということは必死であるべき!」という期待があれば、その「あるべき」という発想にそぐわない発想・・・例えば、「女性はもっと自由でもいい」「仕事にリラックスして向き合っていい」という発想は切り捨てられます。

すると、そう思っている人の周囲に「自由な女性」や「適度に力を抜いて仕事をしている人」を見ると、イラッとすること、時には攻撃性を向けてしまうこともあるかもしれません。

なんなんだよ、あの人は・・・!ありえない!

そう思う度合いだけ相手への批判も強まるかもしれませんが、それと同時に自分の中の『こうあるべき』と言った発想を強化していくことがありますね。それはもう「こうあるべき、絶対に・・・」そう思う分だけ、よりそこに完璧さを求めるようにもなっていくことがあるでしょう。

そこはもうまるで「白黒思考」のようになってしまうのですね。


しかしちょっと冷静に考えてみると、ここで人によって程度の差はあれ、自分自身にかけている期待そのものに、どこまで現実性、実現可能性があるのか?という部分は、意外と検証されていないことも多いのです。

そもそも期待とは「ものごとはこうあるべき」というあなたが持っているイメージ。そしてそれは未だイメージであり、実現されていないからこそ、「期待」となっているわけですよね。つまりこの時点ではあなたの空想(ファンタジー)である、とも言えるのです。

しかしその空想(ファンタジー)をもって「私はこうあるべきだ」と思い、その中で強いストレスや不満、自分への要求を感じていても、その空想があなたの現実として実現しなかった時、あなたの期待・空想はきっと消えないでしょう。むしろ、消えずにあなたの中にありつづけ、あなたが「私はまだこうあるべきという期待を満たせていない」と手厳しい自己批判の理由にもなリ続ける可能性もあります。

そう、何をしてもどこまで努力しても、自分を認めない、許さない・・・

そんな感覚や観念があなたの中に残り続けてしまうのですね。

これが、カウンセリングの現場で伺うことがある「本当はちゃんとオトナであるのに、思うような自分になれていない、自分に自信を感じられない、魅力を感じられない」というお悩みとして表面化してくるわけです。


なお、期待の心理が強まっている時代、私達が得ることができる恩恵は、「自信」でもあると第一回目のテキストに書きました。自分なりに努力して、あれこれと考えて、自己実現をしていくプロセスは、自分自身を信頼していくためにとても大切です。

が、その自分なりに努力する目的を何処かで見失った時に、「自信」という恩恵がやってこないことがあるんですね。

特に実現可能性を検証しにくい、感覚として実感できない空想を目的にしてしまうと、どこまで頑張っても手が届かない感覚や、天井知らずの期待にさらされて、いくら努力しても自分が満たされないという感覚に手を焼いてしまうわけですね。


ということで次回のテキストでは、この期待の心理の罠から抜け出すための幾つかの考え方をご紹介したいと思います。


>>>『期待の心理学(4)〜目標設定と「今できることをする」〜』へ続く


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