心が満たされない、その奥にあるもの

好きな仕事をして、趣味もあって、パートナーもいて、毎日が充実しているはずなのに、ふと心に虚しさを覚えること、ありませんか。

「好きな仕事に就けたら」「友達がいれば」「結婚したら」、そう思って頑張ってきたのに、どこか満たされない気持ちが残る。
そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
こうした気持ちは、何かが不足しているから生まれるとは限らないのです。

その心の奥には、「こうあるべき」という「役割」が隠れていることがあります。
背負ってきた役割に一生懸命になっているうちに、本当の気持ちと周りからの期待との間にギャップが生まれ、その違和感が積み重なって、気づかぬうちに心にぽっかりと虚しさが広がってしまうのです。

私自身も、そんなふうに感じたことがありました。
「なんとなく心が虚しい」「充実しているのに、心が動かない」。
家族との時間はかけがえのないものだと感じていたのに、気づけば毎日がルーティンのようになり、どこか疲れている自分がいたのです。
振り返ってみると、それは「妻」「母」としての役割を、私が無意識に背負いすぎていたからでした。

・心の中の「役割」とは

心の世界でいう「役割」とは、「こうあるべき」「こうしてほしい」といった周りからの期待に、自分を合わせて行動することを指します。

例えば私の場合、「妻」「母」として、そして「優しくあるべき」「明るくあるべき」といった感情の役割などが思い浮かびます。

こうした役割は、人との関係を円滑にしたり生活を支えたりするうえで、とても大切なもの。けれど、気づかないうちにそこにとらわれすぎてしまうと、自分らしさを閉じ込めてしまうことにもなるのです。
そして、そのとらわれの背景には、「補償行為」と呼ばれる心の働きが隠れているとも言われています。

・頑張りすぎの奥にあるもの

「補償行為」とは、過去の失敗感や罪悪感から「いい人でいなきゃ」「役に立たなきゃ」と思い、その気持ちを埋め合わせるように行動することを言います。
こうした行動は、心から「やりたい」と思ってのことではなく、「そうしないと認めてもらえないのでは」「嫌われたらどうしよう」といった不安から生まれることが多いのです。

私自身も、子育ての中で「ちゃんとできなかったらどうしよう」という不安や、「もっと優しくできたはずなのに」という小さな罪悪感が積み重なって、補償行為から「いい母親でいなきゃ」と頑張りすぎていたのだと思います。

・心が伝えてくれるメッセージ

こうして役割を背負いすぎると、心は少しずつすり減り、やがて虚しさとして表れてくることがあります。
けれども、その感覚は、ただのネガティブなものではなく、心からの大切なメッセージでもあるのです。

私自身も、虚しさを感じたとき、その満たされない気持ちを何かで埋めようと「もっと何かしなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と外に答えを探し、自分を責めてしまうことがよくありました。
けれども、そんなときほど、心の奥には「本当はこうしたい」「頑張りすぎてしんどい」「少し休みたい」といった素直な気持ちが隠れていたのです。

・自分らしさとのバランス

では、そんな隠れた気持ちに気づいたら、どう向き合っていけばいいのでしょうか。
大切なのは、「やらなきゃ」ではなく「やりたいから」と思える選択を重ねていくこと。

例えば、「今日はずっと気になっていた映画を観てみよう」「気分転換にカフェでのんびりしてみよう」「好きなスウィーツを買って、自分にご褒美をあげよう」など、日常のなかの小さな行動から始めてみるのもいいかもしれません。
こうした「やりたい」を選ぶことは、心に自由を取り戻すきっかけになります。

ただ、役割そのものを全て手放す必要はありません。
むしろ役割は、人とのつながりや生活を支える大切なものでもあります。
だからこそ、自分の気持ちを置き去りにしないように、役割とのバランスを上手にとっていくことが大事なのです。
ときには役割をちょっと横に置いて、自分の気持ちに耳を澄ませてみてくださいね。
安心して自分を大切に出来る時間が、少しずつ増えていきますように。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

アラフォーから婚活を経て40代で再婚、出産、子育ての経験を活かし、「人生いつからでも幸せになれる」を信条に、クライアントが安心して自己実現の道を歩めるように全力でサポートする。温かく寄り添う姿勢から、「勇気が湧いてくる」「心が落ち着く」との声も寄せられている。夫と娘の3人暮らし。