完璧主義を手放して「しなやかな強さ」を手に入れる 〜パフォーマンス向上のために〜

「もっと完璧にやらなければ」「成果を出せないなら価値がない」など、自分自身に対する厳しい評価に苦しくなっていませんか?

責任感が強く、優秀な人ほど、この「完璧主義」の罠に陥ります。
そして、燃え尽きるまで走り続けようとしがちです。
しかし、実はこの「完璧主義」こそが、パフォーマンスを低下させる原因かもしれません。

今回は、完璧主義を手放していく過程について、心理学の視点から解説します。

●真面目な人ほど陥る「100点以外は0点」の罠

ちょっと想像してみてくださいね。
あなたは重要なプレゼン資料の作成を担当しています。
深夜まで残業し、何度も見直し、自分なりに完璧に仕上げました。
しかし、会議当日にひとつの数字のミスを指摘されました。
その時、あなたならどう感じますか?

「次は気をつけよう」と前向きに思いますか。
それとも、「あんなに時間をかけたのに、なんで完璧にできなかったんだろう。プレゼンは失敗だ」と、すべてが台無しになったような気持ちになるでしょうか。
もし後者なら、あなたは「完璧主義」に縛られている可能性があります。

「完璧でなければならない」という思い込みは、過去の自分が「不完全をゆるせない」と思い、持ち始めた自分ルールであることが多いです。
あまりにも完璧を求めすぎると、自分に対してはもちろん、完璧でない他人に対しても厳しくなって、生きづらさのもとになりがちです。

●完璧主義が「仕事の効率」を下げる

「完璧は悪いこと?当然のことじゃないか?」と思われるかもしれません。
もちろん、完璧を目指すことは素晴らしいことです。
しかし、過度な完璧主義は心理的に大きなデメリットが3つあります。

1つ目は「先延ばし」です。
「完璧にしなければならない」というプレッシャーが大きいと、脳は失敗を恐れて回避する行動をとります。
「まだ準備が足りないから」「もっと情報を集めてから」と言い訳を作って、本当に重要な仕事に手を付けるのを遅らそうとしてしまうのです。

2つ目は「判断力の低下」です。
人間の脳の情報を処理する領域(ワーキングメモリ)には制限があります。
「完璧にしなきゃ」という不安でいっぱいになると、本来考えたいことに使える余白がなくなってしまいます。

3つ目は「燃え尽き症候群(バーンアウト)」のリスクです。
常に自分に完璧を求めていると、緊張状態が続きます。
緊張し続けていたら、いつか燃え尽きてしまうでしょう。

●「白黒思考」から「自分への優しさ」へ

それでは、完璧主義を手放していくためには、どうしたらいいのでしょうか。

1. 「白黒思考」に気づく

完璧主義の根底にあるのは、0点か100点かの白黒思考です。
「成功か失敗か」「完璧か無駄か」という二択でしか物事を見られない状態です。

しかし、現実は「グレーゾーン」がほとんどではないでしょうか。
自分としては80点の成果でも周囲からするとOKのこともあれば、自分では50点と思うことも全体では120点の結果になることもあります。

まずは、自分が「0点か100点かで考えているかも」と気づくことが、変化の始まりです。

2. 「セルフ・コンパッション」を取り入れる

「自分が完璧になったら、完璧主義が必要なくなる」と思っていませんか。
実は、自分に厳しくすることでは、完璧主義を抜け出せません。
正反対の「自分への慈しみ(セルフ・コンパッション)」が大切なのです。

「自分への慈しみ」とは、大切な友人が落ち込んでいる時にかけるような言葉を、自分自身にも向けてあげることです。
例えば、「ミスをしたかもしれないけれど、よくがんばったと思うよ」「ここまでがんばった自分をほめてあげようよ」など。
これは自分を甘やかしているわけではありません。

心理学の研究では、自分に対して寛容である人(セルフ・コンパッションが高い人)の方が、失敗から立ち直るスピードが速く、次の挑戦への意欲も高いということが証明されています。
これは、自分を責めるためにエネルギーを消費するのではなく、改善のためにエネルギーを使えるからです。

3. 「完璧」ではなく「今のベスト」を

「完璧」が常に100点を目指すことだとしたら、「今のベスト(最適)」は今ある時間・能力・財源などを使って「今できるベスト」を目指す考え方です。
「今の状況でできる最善は?」と考えるようにしてみましょう。

ビジネスの現場では、制限時間内に8割の完成度で提出し、検証を重ねて磨き上げていくようにすると、結果的に質の高い仕事に仕上がっていくようです。

●「しなやかな強さ」を

世界で活躍し続ける人に共通しているのは、折れない心ではなく、しなやかな心です。

木に例えると、硬い幹は強い力が加わると折れてしまうでしょう。
しかし、しなやかな柳はしなることでやりすごし、元に戻ってきます。
「たとえミスしても、自分の価値は変わらない」「この経験も財産」と思えるような「しなやかさ」が、本当の意味での強い心になるのです。

完璧主義を手放して、しなやかな強さを持つと、自然と本来持っているパフォーマンスが発揮され、仕事を楽しむ余裕も生まれるでしょう。

今日から、自分に優しい言葉をかけることから始めてみませんか。

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。