人間関係のイライラの理由は?「シャドウ」と「自責」の心理
人にイライラすることはありませんか?「あの人が〇〇だから腹が立つ」「あの人はなぜ〇〇しないのか?許せない」など、相手の振る舞いで気分が悪くなったりしていませんか?
心理的な見方をすると、イライラは「本当の自分を知るサイン」と考えられます。人へのイライラは、自分の心を理解する入口と捉えられるからです。イライラを手がかりにして、本当の自分を理解してみましょう。
●イライラの理由〜シャドウ〜
イライラの理由のひとつに、「シャドウ(影)」という見方があります。シャドウは心理的には、そのままでは生きられなかった自分自身といった意味合いです。
例えば、子供の頃に「泣いてはいけない」「わがままを言ってはいけない」「迷惑をかけてはいけない」としつけられた人も多いのではないでしょうか。しつけの結果、私たちは人との関係で我慢することを覚えます。しかし、我慢して抑圧した感情や欲求は消えるのではなく、心の奥に押し込められがちなのです。
もし、自分は「泣いてはいけない」と我慢しているのに、すぐ泣く人がいたら。自分は「わがままを言わない」と決めているのに、堂々とわがままを言う人がいたら。自分は「迷惑をかけない」と一人でがんばっているのに、人を頼りまくっている人がいるとしたら。我慢していた気持ちが刺激され、イライラとなって暴れ出すことがあるでしょう。
●シャドウをうけいれるために
シャドウと出会ってのイライラだったとしたら、本当の自分を理解するチャンスです。
「泣きたい」と思っている自分がいるな、これまで泣くのを我慢してきたのかもしれない、とか。わがままと思って我慢してきたけれど「本当は〇〇したい」と思っている自分がいるな、あの人くらいのわがままなら受けいれてくれる人もいるのかもな、とか。「迷惑をかけちゃう」と思って我慢してきたけれど「もう少し人を頼ってもいいのかも」、「迷惑をかけないように」とずっと私はがんばってきたんだな、といった気づきにつなげてみてはいかがでしょう。
イライラは自分の心にある何かを知らせるサインと思ってみると、自分を知るチャンスにできます。自分の本当の気持ちに気づき、行動を整えていくと、シャドウだった相手の振る舞いが気にならなくなっていくでしょう。
●イライラの理由〜自分を責めているから〜
イライラの理由の背景に、自分が自分を責める気持ちが隠れている場合もよくあります。無意識的に「自分はできていない」「自分は不十分だ」と自分を責める気持ちがあると、人から言われる言葉が否定や批判に聞こえやすくなる心理があるのです。
例えば、料理が苦手と思っていたとしましょう。そこで、人から「野菜はもう少し小さい方が食べやすいね」とか「お味噌は白味噌を使うと美味しいらしいよ」と言われたら、どう思うでしょう?
苦手意識がある分、「ダメ出しされた」「がんばっているのに否定された」とか、人によっては「上から目線で文句をつけられた」と思う人もいるかもしれません。自分が「私は料理が苦手」と思っていると、料理についての人からの言葉が「あなたはできない人」「わかっていない人」と言われているように聞こえてしまうことがあります。
もし、自分が料理が得意だったとしても、同じように聞こえたでしょうか?もし、自分は料理が得意と思えていたら、野菜のサイズのことくらい「そうですね」と聞き流せたり、味噌の種類について「へぇ、そうなんですか」と話題を盛り上げたり、心に余裕を持って相手の言葉を聞けるのかもしれません。
●自分を責めているならば
イライラは自分が自分を責めていることに気づかせてくれるサインでもあります。イライラした時に、まずは「否定された」「批判された」と自分が感じていないかをチェックしてみましょう。そして、もし否定や批判に感じるとしたら、次に、自分の中に「私はできない」「私は役に立たない」などと、自分が自分を責める気持ちがないかをチェックしてみてくださいね。
そして、もし自分を責めているとしたら、「だから否定されていると聞こえやすくて、イライラしたのかもしれない」と思ってみましょう。これまで自分を責めてきたのだとしたら、しんどい気持ちになることも少なくはなかったのではないでしょうか。まずは、その状況で今日まで生きてきたことを「私、よくがんばったよね」と認めてみてはいかがでしょう。
●イライラをサインと理解する
なお、身体や尊厳を傷つけられたり、約束を破られたりと、健全な怒りもあります。すべてを内面を見つめるものとせず、必要な怒りはのみ込まずに、誰かに助けを求めてくださいね。
今回は、相手に悪意はないのに自分がイライラしてしまう場合に、シャドウや自分を責める気持ちの面から、イライラをサインとして捉える見方を解説してきました。本当の自分を理解することで、イライラする場面が少しでも減っていきますよう願っています。
(完)