みなさんは、上司として朝令暮改はアリだと思いますか?それともやってはいけないことだと感じますか?
朝令暮改とは、朝に出した命令を夕方には改めるなど、方針や指示がコロコロ変わることをいいますよね。
最近では、世の中の変化にスピーディーかつ柔軟に対応できるという意味で、朝令暮改こそが上に立つ者に必要な要素であるという考え方も広くあるようです。
朝令暮改が組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性を理解し、適切な対応をとることが大切といえるかもしれません。
◇朝令暮改にまつわる心理
組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼす朝令暮改の心理として代表的なのは、部下が感じる無駄足感、理不尽さ、無力感ではないでしょうか。
上司に右と言われたから右に進んでいたのに、「あ、やっぱり左だ」と言われると、「えーなんだよ、せっかく右に進んでいたのに、今までのことが無駄足になったじゃないか。」とか。
上司が右と言ったから右へ行ったのに「なぜ右に行くんだ。左だろ。」と言われることもあるかもしれません。
「あなたがそう言ったから右に行ったんでしょう」という理不尽さを感じる、とか。
部下の状況を考えもせずに上司が物事を決めていくことに対して「自分は何も決められないし、意見も聞いてもらえない、ただのコマだ。」などと感じる無力感。
部下たちにとって、指示がコロコロ変わる上司に対して「信頼できない」という思いが増えていくことが考えられます。
信頼できない人のもとで指示を受けて働くことは苦痛ともなりえますから、朝令暮改は部下がモチベーションを下げていく原因のひとつと言えるかもしれません。
部下たちのモチベーションが下がることで、組織としてのパフォーマンスも下がるという悪影響も考えられるでしょう。
◇朝令暮改による支障を最小限にする
一般的に朝令暮改による支障を最小限にするには、方向転換する理由や背景を説明することが大切だと言われています。
人は、論理的に説明され物事に筋道が通っていると感じたならば、変化を受け入れやすいといえるからなのですね。
たとえば市場や顧客の状況に変化があったことなどを、データを用いて説明するということも必要かもしれません。
指示の変更はリーダーの気分や思いつきではなく、組織にとって必要なことなんだと現場が納得できることが大切なのです。
◇思いつきの朝令暮改
さて、ここでこんな疑問が湧く人もいらっしゃるかもしれません。
「リーダーの思いつきによる朝令暮改もあるのではないか?」と。
実は朝令暮改によって組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼすのは、気分や思いつきで指示を変えるリーダーといえるのかもしれません。
なぜなら、リーダーの気分や思いつきで部下たちを翻弄させていることに、リーダー自身が気づきにくいからです。
リーダー自身が朝令暮改をしている自覚がないと、指示が変更となった説明もできませんから、上司の思いつきや気分に振り回される部下たちは、不愉快で極まりない思いを持ち続けることになってしまいかねません。
◇思いつきで朝令暮改が起きる心理
リーダーが思いつきで朝令暮改をしてしまう心理として代表的なのは、デキる上司がいれば組織はうまくいくという思いかもしれません。
リーダーの自信ともいえるかもしれませんが、部下たちがいてこそ組織がまわっているのだという(感謝の)意識が少し足りないといえるのかもしれませんね。
思いつきで指示が変わる場合、以前の指示内容を忘れていることも考えられるでしょうか。
忘れてしまうほど、その上司にとっては些細なこととして捉えているともいえます。
指示を受ける部下たちからすれば、重大な方針転換に思えることも少なくないはずなのに、です。
そのため、上司が気づかないうちに部下たちの不満がたまっていき、組織がうまく機能しなくなるというリスクもあるでしょう。
◇思いつきの朝令暮改を軽減するための対処法
思いつきの朝令暮改を軽減するための対処法としてもっとも大切なのは、リーダー自身が「自分は思いつきで朝令暮改をしていないだろうか」という謙虚な姿勢でいることではないでしょうか。
私たちは自分が気づいていないことに気づこうとするのは難しいのですね。
そのため、謙虚な姿勢で自分の言動を見つめてみようとすることがおすすめです。
また、過去に自分が出した指示と新たに出した指示に、リーダー自身が気づいていないような齟齬があったときに、それを教えてくれる部下がいることも大切です。
つまりリーダーのあなたの発言に対して、意見が言える部下を持ち、かつ重用することかもしれません。
あなたに誰も意見が言えない組織は、部下たちの不満がモチベーションを下げ、組織の勢いも滞りやすいといえるのです。
◇部下の信頼を得ることの大切さ
朝令暮改というのは、朝令暮改そのものが悪いのではなく、その後のフォローのやり方によっては部下からの信頼が失墜し、組織のパフォーマンスが下がることが問題といえるのではないでしょうか。
組織の士気を維持するには、強いリーダーやデキる上司がいればいいだけでなく、部下たちの信頼を得ることの大切さをあらためて考えてみる必要があるのかもしれませんね。