安心できる人を好きになれない理由
◆「わかっているのに選べない」
「私を好きだと言ってくれるのは、誠実で安定した人。でも、私が好きになってしまうのは、なぜか安心できない人なんです」
恋愛や婚活の相談で、こうした言葉を聞くことはとても多いです。誠実に向き合ってくれる相手を「いい人」と頭では理解していても、心は動かない。
一方で強く惹かれるのは、こちらを「翻弄するような人」。安定した人を選んだほうが幸せになれると知っているのに、選んでしまうのは逆のタイプ。このギャップは、多くの女性が抱える恋愛のジレンマです。
「どうして私は、ちゃんと愛してくれる人を選べないんだろう」
 「また同じタイプの人に惹かれてしまった」
そうやって悩み、自分を責めてしまう人も少なくありません。頭と心が別々の方向に進んでしまう苦しさを、どう理解していけばいいのでしょうか。
◆誠実な人を「好きになれない」理由
自分を好きだと言ってくれる人の特徴を思い浮かべてみてください。
 ・連絡がマメで、約束を守ってくれる
 ・誠実で、真剣に向き合ってくれる
 ・大切に思ってくれているのが伝わる
穏やかな湖のように、心が落ち着く存在。けれどその安心感が「恋のときめき」に直結しないことがあります。
「すごくいい人なのに、ドキドキしない」
 「優しいんだけど、恋愛対象としては見られない」
そんな気持ちの背景には、恋愛に対する「思い込み」や「心のクセ」が隠れています。
◆不安定な相手に惹かれる理由
一方で、安心できない相手に強く惹かれることがあります。
・LINEの返信が遅く、既読がつくまでソワソワしてしまう
 ・会えるかどうかが相手の気分次第
 ・冷たい態度のあとに見せる一瞬の優しさに舞い上がる
こうした不安定さは、本来なら心を疲れさせるはずです。けれどその「揺れ幅」が感情を大きく刺激し、恋だと錯覚させてしまいます。
心理学では、不安や緊張によるドキドキと、恋愛のときめきによるドキドキは脳の反応が似ているといわれています。そのため、不安を恋心だと勘違いしやすいのです。
さらに、これは「時々しか与えられないご褒美の方が、人を夢中にさせる」という心理の仕組みも関係しています。ギャンブルやガチャがやめられなくなるのと同じで、相手の気まぐれな優しさに心が釘付けになってしまう。
だから、不安定な人に振り回されるほど「もっと知りたい」「もっと愛されたい」と追いかけてしまうのです。
◆ギャップが生まれる心理的背景
では、なぜ誠実な人よりも安心できない人に惹かれてしまうのでしょうか。
1. 安心は退屈に感じられる
 安定した関係は心を落ち着かせますが、恋の始まりに期待する「胸の高鳴り」とは別物です。そのため「ドキドキしない=恋愛じゃない」と勘違いしやすいのです。
2. 愛着体験の影響
 子どもの頃、親からの愛情が不安定だった場合、「安心できない関係こそ愛」と思い込んでしまうことがあります。無意識のうちに「安心」より「不安」を選んでしまうのです。
3. 自分への自信のなさ
 「私は大切にされる価値がある」と思えないと、誠実な愛情を信じることが難しくなります。
 その結果、相手の気持ちをはっきり示してくれず、こちらを不安にさせることで「もっと追いかけたい」と思わせる人に惹かれてしまう。その方が「愛を勝ち取った感覚」が得られるからです。
◆本当に心が求めているもの
ヒリヒリする恋は刺激的で情熱的です。でもその裏には、不安や孤独がついてきます。一方、誠実な人との関係は、最初は物足りなく感じるかもしれません。
けれど安心の中で育つ愛情は、心を健やかに育ててくれます。派手さはなくても、じんわりと体を元気にしてくれる食事のように、あなたを支えてくれるのです。
大切なのは「安心=退屈」という思い込みを手放すこと。安心できる関係は、あなたの自己肯定感を回復させ、長い人生を支える土台になります。
◆安心を「退屈」から「豊かさ」へ
「自分を好きだと言ってくれる人は誠実で安定しているのに、自分が好きになるのは安心できない人」このギャップに悩む人は少なくありません。
でも、それは弱さではなく「心のクセ」にすぎません。安心を退屈だと感じてしまうのは、過去の体験や思い込みの影響なのです。
安心は退屈ではなく「心が休める場所」です。そして、その安心を心から味わえるようになったとき、人生の幸福度は大きく変わります。
恋愛のドキドキは素敵ですが、長い人生を支えるのは安心から生まれる愛情です。誠実に向き合ってくれる人の存在を、どうか軽く見ないでください。
火花のような恋が心を燃やすこともあります。けれど、本当にあなたを守り、支えてくれるのは、静かに燃え続ける炎なのです。
(完)
 
 
 
  
  
  
  
 