確認を繰り返す部下との接し方

「これで大丈夫でしょうか?」「念のための確認ですが」などと、部下から確認を求められるたびに手を止めて仕事が中断することにイライラしていませんか?

「わからないまま進められるよりは、確認してもらった方がいい」と思うけれど、「それくらい自分で判断して欲しい」と思う場合も。
部下に優しく接したいけれど、自分が焦りやストレスを感じて、つい言葉がきつくなって反省していませんか?

確認しないと次に進めない部下は、業務の段取りとして確認をしているだけではないのかもしれません。
心配性な人の心理を理解しておきましょう。

●「失敗が怖い」その背景にあるもの

確認を繰り返すのは、「うまくできなくて怒られたらどうしよう」「間違えてはいけない」と失敗への不安が強いからかもしれません。
真面目なタイプや、完璧に業務遂行したいタイプの中には、失敗への不安を抱えている人もいるでしょう。

このタイプが接するのに困るのは、一貫性のない上司かもしれません。
以前は「任せる」と言ったのに、後から「なぜ前もって相談しなかった」と叱るなど、言うことに一貫性がないと、部下は混乱します。
叱られたくないので、「今度はどっちのつもりなんだろう?」と確認せずにはいられなくなるでしょう。

また、過去の誰かとの関係(例えば父親や母親との関係)でうまくできなくて叱られた経験から、目上の上司との間で「同じようなことが起こるのではないか」と怖れている場合もあるでしょう。
例えるなら、子供の頃に犬にかまれたことがあって、大人になっても犬を怖く思うようなものでしょうか。

だとしたら、上司は寛容さを示せるといいかもしれません。
部下が失敗への不安から「確認しないと怖い」と思っているとしたら、「たとえ失敗しても、この上司は父親のように怒ったりしない」と部下が思えるような接し方をしてみましょう。
安心感がある関係が築けると、部下が過度に失敗を怖れることを減らしていけるでしょう。

●「私には決められない」自信のなさ

「本当にこれで正しいのだろうか?」と自信がなかったり、「自分の責任ではない」と責任を回避したりする場合、心理的には「自分にはその仕事を引き受けるだけの力がない」と誤解している場合があります。
今まで「これでいいんだ」「これで大丈夫なんだ」と思えることが少なかったのかもしれません。

この場合、部下の自信を育てる必要がありそうです。
上司としては、先手先手を先読みして、リスクを避けたり、より良い選択を提示したりしたくなるかもしれません。
それは上司側の親心に近い善意なのでしょう。

とはいえ、人は経験してできるように成長していくものです。
自信がないタイプには、自分で考えて、自分で達成できたといった成功体験が必要なようです。
部下の成長に寄り添い、結果だけではなく過程にも着目し、具体的に「ここが良かった」とフィードバックしていきましょう。

また、部下が意見を言ったら、「なるほど、そういう考えもあるね」「そうか、あなたはそう考えたんですね」などと、いったん意見をうけとめる言葉を伝えましょう。
「それは大事な意見だ」「気がついてくれて助かる」「言いにくいことを伝えてくれてありがとう」といった肯定的な言葉も伝えるようにすると、部下の自信が育つでしょう。

●まずは自身の心の余裕から

いくら部下に「優しくしたい」と思っていても、自分がいっぱいいっぱいの状態では優しくなりにくいでしょう。
まずは、ご自身の心の余裕を取り戻すことから始めてもいいのかもしれません。

最近楽しいことはありましたか?
嬉しいと思ったことは?
もし今、余裕をなくしているのなら、何かご自身の心をゆるめたり、喜ばせたりすることをしてみてくださいね。

それから、「あなたの弱さは誰かの強さになる」という考え方があります。
自分一人で背負い過ぎているならば、部下を頼ってみてもいいでしょう。
あなたが部下を当てにすることが、結果的に部下が持っている力を引き出すきっかけになるかもしれません。

一人でがんばっている人ほど、「人を頼ると迷惑になる」と思いやすかったりします。
周囲の人をもっと信頼することにチャレンジしてもいいかと思います。
「この上司は私を信頼している」と感じられたら、いちいち不安から「確認しなきゃ」と思わなくてよくなるのではないでしょうか。

自分を喜ばせる心の余裕を取り戻し、部下を理解した丁寧なかかわりで、お互いが成長しあえたら素敵ですね。

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。