言えないストレスを軽減するアサーティブ・コミュニケーション
自分も相手も尊重する「アサーション」とは何か、そしてその実践に役立つ「DESC法」を解説します。活用して、お互いを大切にしながら、対等で心地いい人間関係を築きましょう。
コミュニケーションでストレスを抱えていませんか?
「言いたいことがあっても言えない」
「相手を傷つけたくなくて我慢してしまう」
「断りたいのに、引き受けてしまう」
「言いたいことを言ったら、相手と関係が悪くなりそうで怖い」
言いたいことを言えない状態が続くと、不満が溜まったり、自信をなくしたり、人間関係に疲れたり、人との関わりを避けて孤独になったりすることがあります。
●コミュニケーションの3つのスタイル
コミュニケーションのスタイルはいろいろありますが、ここでは3つのスタイルを紹介します。かつての日本では、相手をコントロールするスタイルや自分が我慢するスタイルが多くありました。現在では、自分も相手も大切にするスタイルが普及しつつあります。
1)攻撃的なコミュニケーション
「~すべきだ」「~しろ」「あなたが悪い」などと威圧したり、意に沿わないと無視したりする形で、自分の意見を通そうと相手をコントロールするのは、攻撃的なコミュニケーションです。ハラスメントへの意識が広まった結果、以前よりは少なくなってきていますが、いまだにこのスタイルを取り続ける人もいるようです。攻撃的なコミュニケーションは、一時的に目的が達成されることもありますが、相手との関係性は悪化し、信頼関係は築けないでしょう。
2)受身的なコミュニケーション
「私が我慢すればいいか」「波風を立てたくない」という思いから、言いたいことを飲み込んで、相手の意見や要求に合わせるのが、受身的なコミュニケーションです。飲み込むことに慣れると、人から「何を考えているか分からない」「意見がない人」と思われたりします。また、我慢が多くなってストレスが溜まったり、「自分がない」ように感じて自信をなくす人もいます。
3)アサーション(アサーティブなコミュニケーション)
アサーションとは、自分と相手の両方の意見や感情を尊重し、自分を適切に表現するコミュニケーションです。相手に合わせて我慢をするのでもなく、「遠慮なく言う」とか「わがままを主張する」のとも違います。「私はこう思う」「私はこうしたい」と伝えながらも、相手の意見にも耳を傾け、対等な立場で関係性を築こうとするコミュニケーションです。
●アサーションの具体的なスキル
アサーションは誰でも練習すれば身につけることができるスキルです。今回は「DESC法(デスク法)」をご紹介します。DESC法とは4つのステップで、アサーティブなコミュニケーションを実践する枠組みです。
1)描写する(Describe)
客観的な事実を具体的に伝えましょう。その時のことが相手にも思い浮かぶように、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」したのか、具体的に伝えることを目指しましょう。
2)表現する(Express)
その事実や状況に対しての意見を伝えるのに、相手を主語にすると相手からは批判や否定に聞こえやすくなります。「私は〜と感じている」「私が〜と思っている」と、「私が」「私は」を主語にしたIメッセージで伝えましょう。
落ち着いた声のトーンで、相手の目を見て話すなど、言葉以外の要素も、相手にどう感じさせるかを意識してみてくださいね。
3)提案する(Specify)
具体的な解決策や、相手にしてほしいことがあれば、「~してほしい」「~してはどうですか」などと提案してみましょう。例えば、「わかってほしい」と漠然と伝えても相手には伝わりにくいです。「大変だったね」とか共感する言葉を言って欲しいなど、できるだけ明確に伝えるようにしましょう。
なお、提案は相手をコントロールすることではありません。自分の意見を伝えて、結果どうするかを相手に委ねることです。私に「NO」という権利があるのと同じように、相手の「NO」という権利も大切にしてくださいね。
4)選択肢を示す(Choose)/結果を伝える(Consequence)
人から「〜すべき」と決めつけられると、反発が生まれます。相手にいくつかの選択肢を示して、相手に判断を促してみましょう。
また、必要があれば、提案の結果を言葉にしてもいいでしょう。例えば、提案を受け入れた場合は「もし〜していただければ、〇〇ができる」といった結果を、提案を受け入れなかった場合は「もし〜が続くなら、〇〇かもしれない」といった結果を伝えます。ただし、提案を受け入れなかった結果が、相手への脅しや強制にならないようには気をつけたいところです。どちらかというと、提案を受け入れた結果、どれくらい嬉しいのか、どれくらい助かるのかを表現する方が、相手にもポジティブな結果をイメージしてもらいやすいでしょう。
●会話は臨機応変に
DESC法は、コミュニケーションに不安や怖れがある方のための4つの着眼点です。実際の会話は、相手の反応を確認しながら、臨機応変にやりとりしていってくださいね。
(完)