そんな時、それは“干渉アレルギー”かもしれません。
親の干渉がつらいと感じる心理の仕組みと、干渉アレルギーを克服された方のケースをご紹介。
■干渉されるとイラッとする…それは“干渉アレルギー”かもしれません
あなたが一人暮らしだったとします。
そして、お母さんから電話がかかってきたとします。
お母さんはあなたに言うのです。
「ご飯はちゃんと食べてるの?
体を壊さないように野菜を取るのよ。
家の畑で取れた野菜、送ってあげようか?」
どうやら、あなたの健康を心配して電話をかけてきた模様です。
あなたは、どんな気持ちがしますか?
1・「私、愛されてるなぁ」親の愛を感じて心が温まる
2・心配してくれてるのはわかるけど、イラっとする
3・愛してくれてるんだろうと思うけど、電話を切ったあとぐったりする
もし、2番や3番の感想に近い人は、干渉アレルギーなのかもしれません。
■「悪いことを言われたわけじゃないのに疲れる」──A子さんのケース
とあるケースです。
A子さんは、お母さんから電話があると、わずらわしく感じてしまう方でした。
「ご飯はちゃんと食べてるの?
体を壊さないように野菜を取るのよ。
家の畑で取れた野菜、送ってあげようか?」
このような会話があると、ついイラっとしてしまい、
「自分の体調管理はちゃんとしてるから、そんなことまで心配しなくていいよ(怒)」
と、強い口調で言ってしまいます。
別に悪いことを言われたわけではないのですが、
お母さんと会話するだけで、電話を切る頃には疲れてしまっています。
ところが、電話を切った後には、
「心配して言ってくれたのに、あんな言い方しなくてもよかったな」
と自己嫌悪に陥ってしまいます。
お母さんは電話のたびに「たまには実家に帰っておいで」と言うのですが、
電話で話すだけで疲れ切ってしまうので、家にあまり帰る気になれません。
そのことも「私って親不孝だなぁ」と自分を責めてしまいます。
お母さんのことは嫌いじゃないけど、
関わるのが煩わしいというのがA子さんの悩みでした。
■なぜ“干渉される”と疲れるのか?愛?それとも干渉?
どんなことが煩わしいのかというのをカウンセリングで見ていくと、
どうやらお母さんとの会話で“干渉されている”と感じると、
心が嫌な気持ちになってしまい、そのストレスで疲れてしまっていたようでした。
「ご飯はちゃんと食べてるの?
体を壊さないように野菜を取るのよ。
家の畑で取れた野菜、送ってあげようか?」
というのは、愛しているから心配してくれているという取り方もできます。
しかし、自立した大人の女性の生活に親が干渉しているという取り方もできます。
よくよく話を聞いていくと、
お母さんとの関係だけでなく、職場の人、恋人、友達との関係でも、
“干渉されている”と感じるとストレスが溜まってしまうことがわかりました。
たとえば、友だちが
「寝る3時間前以降は食べないほうがいいよ」
などと言われると、
「へぇ、そうなんだ」と聞き流すことができず、
干渉されていると感じて、
「そんなの知ってるよ。私の好きにさせてよ」
とイラッとしてしまうのです。
このように、干渉(かんしょう)の“か”の字くらいの干渉でも、
嫌な気持ちになってしまいます。
どうやら、A子さんは“干渉アレルギー”のようでした。
■過干渉によるつらかった体験
お母さんとの関わりは今後もありますし、
世の中には、ある一定数、干渉ぎみな距離感で接してくる人がいます。
この干渉アレルギーを持っている限り、
A子さんは嫌な気分になることが待ち受けてしまう人生になってしまいます……。
そこで、この干渉アレルギーをなくしていくために、
なぜ干渉アレルギーができたのかを見ていくことにしました。
すると、子どもの頃の体験が出てきました。
両親はあまり仲の良い夫婦ではありませんでした。
母親は夫との心の距離が離れていたため、
その分、子どもにべったりのお母さんになっていました。
つまり、過干渉ママになっていたのです。
たとえば、A子さんの学校の進路も、
「ここの学校のほうが将来のためにいいんじゃないの」
と干渉してきます。
それは助言や提案の域を超え、
お母さんの提案に「そうする」と言うまで言い続けるものでした。
服装、髪型、友だち関係──
いろんなことに干渉してこられていたようです。
子どもといえど、一人の意志や考えがある人間です。
その意志や考えを尊重されず、過度に干渉されるのはしんどいことです。
A子さんも、そのしんどさを感じていました。
自分の領域に侵入されてくるような不快感を、ずっと感じていたようです。
そのため、大人になったときには、
お母さんと距離を取れるように一人暮らしを選択したそうでした。
子どもの頃に干渉され続けてしんどかったという思いが、
干渉アレルギーとなって大人のA子さんに影を落としていたようでした。
A子さんは、子どもの頃のつらかった思いを話し、
そのつらかった感情を解放していきました。
また、「インナーチャイルドワーク」といって、
子ども時代の心の傷を癒す瞑想も何度もしていきました。
そうやって、子ども時代のつらかった思いが癒えてくると、
干渉アレルギーも緩まり、お母さんと関わることも煩わしくなくなっていきました。
また、職場の人や恋人、友達が干渉気味なことをしても、
過度にストレスになることもなくなり、笑って流せるようになりました。
■必要なのは自分を責めることではなく干渉アレルギーを緩めること
これは一例ですが、
このように干渉されてつらかったという経験があり、
その思いがまだ癒えていないときに、干渉アレルギーになってしまうことがあります。
あなたには、干渉アレルギーはありませんか?
もしあったとして、
そして仮にこのケースのA子さんと同じように、
お母さんからの心配の電話にきついことを言ってしまった後、
「心配して言ってくれたのに、あんな言い方しなくてもよかったな」
と自己嫌悪に陥ったり、
「私って親不孝だなぁ」と自分を責めてしまうタイプの方だったとしたら──。
もしあなたがそう感じてしまうなら、
自分を悪く思ったり、自分を責めたりはしないでください。
気にしてしまうということは、
あなただって、そうしたくないんだと思います。
したくないにもかかわらず、そうしてしまうのは、
干渉アレルギーがあるからなんだと思います。
だから、あなたが悪いわけでもないし、
あなたが自分を責めなくてもいいことなんです。
必要なのは、ご自身を悪く思うことでも、責めることでもなく、
あなたがこれ以上、苦しい思いをしないために、
干渉アレルギーを緩めていくことなのです。
干渉アレルギーを作っている、
“干渉されてつらかった”という思いを癒していくことで、
干渉アレルギーを緩めていけた方、なくしていけた方はたくさんいます。
もし、あなたに干渉アレルギーがあったら、
そのアレルギーを作ったつらかった気持ちを、
誰かに話して受け取ってもらうといいかもしれません。
受け取ってもらう行為を通して、感情を解放していくのです。
感情を解放していくことで、
心は癒える方向に向かっていきますから。
干渉アレルギーから解放されるよう祈っていますね。
(続)