「うるさい! いいかげんにして! ママが忙しいの、見てわからないわけ!?」
まだ子どもが小さいころ、無邪気に駆け寄ってくれた子どもの「ママ見て~」に、私は思わず大声で怒鳴ってしまいました。
本当は、あんな対応をしたかったわけじゃない。あの日の私はそれしか選べないほど、余裕がありませんでした。言った直後に「なんてことを言ってしまったんだ」と、後悔が押し寄せたことを今でも覚えています。
そのあと、子どもは以前のように「ママ見て」と言わなくなりました。胸がギュッと痛む一方で「ママ見て」が一日無限回だったことから解放されて、ほっとした自分も確かにいました。
「ママ見て」が、辛かった。
私の心のなかに「優しさタンク」があったとしたら、底の底までつきかけていたのだと、今ならわかります。
そして、正直言えば、今だって子育てのやらかしは毎日のようにあります。これを読んでくださっているパパママも、もしかしたら心の中で「うちもそうだよ」と、思ってくださるのかもしれません。
「ママ見て」地獄の一日の終わり方
子どもが小さいころ、一日の大半は「ママ見て!」で終わります。
最初の数回は「すごいね~」「上手だね~」と、笑顔でこたえられる。でも、ここから先が本番です。その日の心の状態によって、どんどんしんどくなっていきます。
子どもの「ママ見て」が、だんだん何を見せられているのかわからなくなることも。
床に転がる謎のポーズ(なに?儀式?)
片足で立って「どう?」のどや顔(もう100回見た)
ティッシュを一枚、宝物のように披露(うん。ティッシュだね)
子どもの頭の中にはストーリーがあるのだと思うのです。「それ、な~に?」と、笑顔で聞いたら、子どもは絶対に喜ぶことも知っています。でも、それに付き合える余裕が1ミリもない。
そんなときの私たちの優しさタンク、底をつきかけているのかもしれません。
・他人の子どもなら・・
他人の子どもには、にっこり微笑んで、外向きの顔で
「すごいね~」
「見てるよ」
と、軽やかに言えます。
でも、自分の子どもとなると、できなくなってしまうのです。あれだけ愛しているのに。なによりも大切なのに。
本当は、子どもに愛されているのを知っていて甘えてしまう。そして、子どもの愛にこたえられない自分にがっかりして、苦しくなってしまうのです。
「ママ見て」にある深い意味
「ママ見て」には、実は深い意味があります。あの言葉で、子どもは自分の存在を確認しています。
私はここにいるよ!
私の世界を見てほしい
ママと心がつながっていることを、確認したい
子どもにとって、ママは安全基地なのです。だからこそ、意味不明なものまでみせてくれるし、謎ダンス(笑)も披露してくれるのです。
・安全基地とは
子どもにとって親の存在は、自分の世界の中心です。そのパパとママに全部見てほしいのです。いい時、いい結果が出たときだけではありません。不器用でも、途中でも、意味不明でも、プロセスも含めて全部をまるごと見てもらいたいのです。
「ママ見て!」が苦しい理由
「ママ見て!」
何度も呼ばれることそのものが、本当は苦しいわけではありません。
呼ばれるたびに、「ちゃんとしなきゃ。ちゃんと答えなきゃ、いいママでいなきゃ」と、自分を追い込んでしまうことがしんどいのです。
でも、それだけあなたが「いいママ」なのです。
「ママ見て」が苦しいと感じているご自身を、「いいママじゃない」などと思わないであげてほしいのです。むしろ、逆なのですから。
・今は無理なら無理でいい
「ちょっと待ってね」
「あとでゆっくり見るよー」
「ママも今は、休憩タイム~」
「一緒に休憩しよー」
と言って、大丈夫です。
そう伝えたあと、子どもに「やだー!!」と言われたら、ママも「ママだってやだー!!」と、言っていいのです。
「ママ見て!」にすべて答えようとすると、心のスペースはガンガン削られていきます。無理をせず、自然体でいることが、長持ちの秘訣です。
子どもにとって大事なのは
子どもにとって大事なのは、完璧な返事ではありません。
戻ってきたときにそこにママがいる。
もっといえば「ママ見て」と言えていることそのものが、子どもにとって、もうすでに安心だったり、満足だったりすることも多いものです。
つながりは量より「質」。その質はママが元気なときに自然と生まれます。
だから、あなたが疲れた日は「ママ見て!」に、必ずしもこたえなければいけないわけではありません。
・どうか、自分に優しく
あなたは、子どもの「ママ見て」が苦しいくらい、向き合ってきた、いいママです。
どうか今日くらいは、あなた自身にも優しい視線を向けてあげてください。子育て、楽しいこともあれば、髪を振り乱して必死なときも多いものですから。そうやって毎日を積み重ねているあなたの愛は、もうすでに届いているものです。
「ママ見て」
と、子どもが言えるほど、あなたはすでに安全基地であり、心の底から愛し愛されているのです。
とはいえ、しんどさが積もり重なってきたときは、一人で抱えずいつでもお話し聞かせてください。一緒に、あなたの心の「優しさタンク」を回復するお手伝いをさせていただければと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
来週は小川のりこカウンセラーです。
どうぞお楽しみに。