あなたは、なにかというと「俺に任せろ」というリーダーシップを発揮する上司が、部下たちのやる気をなくしているかもしれないと、考えたことがありますか?
頼りになる、任せておけば安心、部下を守ってくれる素晴らしい上司。
そう思う人がいる一方で、承認欲求が強くてウザイ、部下たちを駒としか見ていないなどと感じて、やる気をなくしていく人もまたいるようです。
◇ 俺に任せろ系の上司が部下のやる気をなくす心理的な理由
俺に任せろ系の上司が部下のやる気をなくす心理的な理由として代表的なのは、部下を「デキない人扱い」することといえます。
プレイヤーとして仕事がデキる上司だからこそ、自分がやったほうが早いとか確実だと思って、上司自ら目の前の仕事をやってしまうことがあるかもしれません。
部下にはルーティンのような簡単なことばかりやらせて、「何をすべきか」「どうすべきか」などを考えさせることすらさせないかもしれません。
頭を使うことや難しいこと、大変なことは上司である自分がやるべきだと思うのは、部下思いの側面があるものの、部下たちには無理だろうと無意識のうちに部下をデキない人として扱っているといえるのかもしれません。
「部下が育たない」と言われるのは、部下に考えたり決断したりする機会を与えず上司に依存的にさせてしまうことや、どうせ自分たちは役に立てないだろうなどの無力感を部下に感じさせてしまうからといえます。
無力感というのは、自分には何もできることはないと感じて、どうしようもなく虚しい気持ちになることです。
・「俺がやる。任せておけ」の落とし穴
デキる上司ほど、次にやるべきことが見えているからこそ、良かれと思って「俺がやる。任せておけ」などと自分が行動しようとする場合があります。
しかし能力のある部下ほど、困難に向かってチャレンジをさせてもらえない状況に、信頼されていないように感じてやる気をなくしていくのかもしれません。
・上司に信頼されてないと思うとやる気がなくなる理由
上司に信頼されていないと思うとやる気がなくなる心理的な理由は、職場が自分の居場所だと思えないことにあるのかもしれません。
私たちは本能的に、集団に属したいという帰属欲求があるといわれています。
会社のような組織の中で上司に信頼されると、自分が役に立てていると感じ、自分にはその組織に帰属する価値があると思えて(「そこに居てもいい」と思えて)帰属欲求が満たされるといえるのです。
上司というのは、その組織の中で権威があり、権威をもつにふさわしいと認められた人です。
そんな上司に信頼されることは、(たとえ普段は上司に反抗的な態度をとっている部下であったとしても)少なからずうれしさを感じるものではないでしょうか。
逆に言えば、上司から信頼されないと、そこに居てもいいと思えなくなり、自分が邪魔者だったり居ても居なくても同じような気分を感じたりしてしまうのです。
そんな気持ちになってしまっているとしたら、部下が仕事を続けることにやる気をなくすのも、わからなくはないかもしれませんよね。
◇部下をやる気にさせる上司のリーダーシップとは
部下をやる気にさせる上司のリーダーシップは色々ありますが、そのひとつに部下とヴィジョンを共有するというものがあります。
「これして」「あれやって」など具体的な行動の指示をするのは新入社員など不慣れな部下にとどめておいて、「どうなりたいか」というヴィジョンを見せることが大切なのかもしれません。
たとえば部屋を片付けることを例にするならば、「散らかっている雑誌類をこの本棚にしまって」「洋服はハンガーにかけて」などの具体的な行動を伝えるのではなく、「この部屋を居心地の良い場所にしよう(片付けよう)」というような具合です。
◇部下のやる気を引き出す秘訣は、上司の信頼を感じてもらうこと
部下のやる気を引き出す秘訣は、上司の信頼を感じてもらうことです。
人は「信頼してますよ」と言ったところで、その言葉通りに受け取る人は多くないかもしれません。
それよりも、これまで上司自らがやっていた仕事や権限の一部を委譲したり、上司が部下の意見を聴いたり、あるいは部下に相談するという方法をとったりすることなどで、言葉だけでは伝わらない「信頼していること」が部下に伝えられるのかもしれません。
信頼は、する側が「信頼したらかえってうまくいかないかもしれない」という「怖れ」を感じるからこそ、難しいのです。
しかし、信頼された側は、その信頼に応えようとするものです。
上司であるあなたが部下の信頼を得ようとするのではなく、怖れを乗り越え部下を信頼することにコミットした(決断した)ところに、やる気をもって仕事に真摯に向き合おうとする部下の姿があるのかもしれません。