コミットメントの効用

こんばんは

神戸メンタルサービスの平です。

心理学に“コミットメント”という言葉があります。これは、決意する、決断するということです。

パートナーシップにおいてコミットメントというときは、「彼とやっていくと決める」、「彼が私の唯一のパートナーだ。これから二人で人生を歩んでいくと決める」といったことを意味します。

恋愛に関するご相談をうかがっていると、こんなふうにおっしゃる人がよくいます。

「ほんとにこの人でいいのかなぁって思ってしまうんです」

「どうしても、前の彼と比べてしまうんですよね‥‥」

この場合、「いまの彼が前の彼以上に十分に魅力的であったなら、迷わずにいまの彼に決めるのに」と考える人は多いですよね。

しかし、私たちカウンセラーは違う見方をします。つまり、そう思うのは、「いまの彼にコミットしていない」ということなのです。

あなたがいまの彼に決めていない度合いだけ、あるいは迷っている度合いだけ、「彼も私に決め切れていない、迷っているんじゃないかな」と考えてしまいます。

もちろん、決めきれないのには理由はあるのでしょうが、それは次のようなものであることが多いようです。

「彼に決めて、どんどん好きになってしまったあとに、以前のようにフラれて傷つくことになったらツラすぎるな‥‥」

「どうせ、男はいつも私を選ばない」

つまり、過去の男女関係のツケを全て現在のパートナーに押しつけ、「疑う」ということをしているわけです。

そして、自分自身はなにもせず、ただ「彼が魅力的であれば、私はきっと彼に決められるだろう」と考えています。

しかし、残念ながら、あなた自身が彼に決めないかぎり、この疑いは消えず、それがあなたと彼の間の心の距離となります。

「どうなろうが、なにがあろうが、私は彼とやっていく!」

「全身全霊、彼を愛し尽くす!」

あなた自身がそう決めることがコミットメントなのです。

それができないのだとしたら、昔のパートナーと別れたときの心の傷や痛みの感情の処理がまだできていないということなのかもしれません。

また、彼に向き合うときは依存的な立場になりすぎ、「ぜんぶ男性がリードしてくれなければ」と思い込んでいるかもしれません。

さらに、「いまの彼と、もし別れるのだとしたら、また一人ぼっちになってしまう。そうしたら、寂しいし、将来の不安が押し寄せてきて、私はつぶれてしまうかもしれない‥‥」などと考え、その感情に向き合う準備ができていないと思っているのかもしれません。

ですので、「私はなにもできない子ネコちゃんなの。だれか私を見つけて救って! 私をその気にさせてよ!」と思ったりするのですね。

けれども、この疑いのワナからは、あなた自身がコミットしないかぎり抜け出すことはできません。

彼に決めないかぎり、あなたは彼の愛を疑うことになります。

「ほんとうに私に本気なの? 私はまだあなたに決めていないのに」

「本当に私とやっていくつもり? 私はまだ決めていないのよ」

その思いはなんらかの悪い態度となって、彼の前で出てしまいがちです。

あなたがほんとうに言いたいことは「ほんとうに、ほんとうに、こんな私でいいの?」ということですよね。

コミットメントするまで、つまり、彼に決めるまで、あなたはもっとほかにいい人がいるのではないかとキョロキョロしてしまいます。

しかし、コミットメントをしたら、あなたにはもう彼しかいません。

二人の間になにか問題が出てきても、「この人とやっていく」と決めているあなたには、「じゃあ、どのようにしてこの問題を乗り越えようか」と考える選択肢しかないわけです。

すると、問題を乗り越えられる確率も格段に高まります。

「コミットメントがすべてを癒す」という恋愛法則があるのもこういうことなのです。

来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。