お母さんを許したい

許すときは理解が必要

「子育てをしていると大変だけれども、我が子は可愛い。
大切に愛情をたっぷり注いで育てよう」

私は、我が子を可愛く大事に思っている。
親たるもの、そんな気持ちを抱くのが当たり前だと思う。
なのに、うちの母親はいつも私を否定してぞんざいに扱ってきた。
子育てをしていると辛い記憶が思い出されて、母を許せない気持ちになる。

けれど、友達と話していると親子が仲良さげでうらやましくも思う。
どうしたら、親を許せるのでしょう?

そんなお話しを伺うことがあります。
誰かを許したいと思うときに、ただただ怒りを抑え込んで自分の悔しさや悲しみを飲み込んだとしてもなかなか許すことには至りません。
一時的に許せた気がしても、抑圧された感情は押し込められただけで無くなるわけではないからです。

誰かを許したいときは、その誰かを理解する必要があります。
では、どうやって親を理解してゆけばよいのでしょう。

 

言動の裏側にあるもの

子供を持って初めて親への感謝の念が湧いてきた。
子供を育てるってこんなに大変だったんだ。
親って凄い。

そう思えるといいのですが

子供を持って改めて親への怒りが湧いてきた。
なんで母はあんなひどいことを言ったんだ?
あの対応は傷ついた。
あの母のせいで私は自己肯定感が低いのでは?
と許せない気持ちがムクムクと湧いてくる。

そういう場合もあります。
また、その両方の気持ちを持つことだってあります。

感謝出来る部分はそのままで問題はありませんが、許せない気持ちは持っている当人をとても不快な気分にさせ疲れさせます。
なので、許せない気持ちは自分自身のために手放してゆきたいところですね。

そのためには、なぜあのときお母さんはあんなことを言ったのだろう?
なぜあのときお母さんはあんなことをしたのだろう?
と表面上に見えていることだけでなく、その裏側にあるものその下に隠れている心情を見ていくとお母さんの違う側面に気づいてゆくことで理解が深まります。

 

お母さんの劣等感

たとえばA子さんのお母さんは、A子さんが小さいころから「ホントにあなたはバカだね」「あなたって学年イチ不細工なんだから」「従姉の〇〇ちゃんは優秀よね~」そんなことを言う人だったとします。

けれど、子供の頃はお母さんが大好きでお母さんに認めてもらいたいという気持ちを強く持ちます。
お母さんからの言葉にショックを受けながらも「もっとがんばらなきゃ」とか「私が至らないからダメなんだ」と自分を鼓舞したり自分を責めながらも耐えます。
子供は自分の傷ついた気持ちや悲しい気持ちは脇に追いやって、自分を叱咤激励してがんばることの方が多いのですね。
けれど、傷ついた気持ちや悲しみはずっと心の中に残ったままなんです。

その心の痛みが、自分が親になって子供を育てているときに心の奥底の方から怒りや悲しみの感情と共に浮上してくることがあるんですね。
お母さんと同じ親という立場に立ったけれど、私は子どもを愛している。
でも、お母さんは私を愛していなかったのだろうか?という疑問が湧いてきます。

お母さんはとても酷いことをA子さんに言っています。
それは許しがたいことであることは前提として、なぜお母さんはそんな酷い言葉をA子さんに投げかけたのでしょうか。

心理学的にみると、お母さんのA子さんに対する酷い言葉から、お母さん自身がとても劣等感を強くお持ちなのかなと推測できます。
私たちは自分の心を守るために人を批判することがあります。

お母さんは「勉強が出来ないと人から軽蔑される」「容姿端麗でないと見下される」「我が子が優秀でないとバカにされる」つまり『色んな条件が揃わない私は人よりも劣っている』そんな劣等感を感じるのは、痛すぎるのでそんな痛みを感じそうになるとA子さんを批判してしまってしたのかもしれません。

では、お母さんはなぜそんな劣等感を持つようになったのでしょう。
もしかしたら、お祖母ちゃんもまた厳しい人だったのかもしれないし、誰かからバカにされたことがあるのかもしれません。
お母さんが自分自身に厳しいと、一番身近にいる我が子にも無意識に自分と同じように厳しく扱ってしまうのです。
自分と我が子を同一化してしまうのですが、これは父親よりも母親に多く見られる傾向です。

 

今すぐ許せなくても大丈夫

親子関係って深いです。
そして、不思議です。
時に、とんでもなく感情を爆発させてぶつかることもあれば、何年も音信普通にすることもある。
けれど、お互いの存在をなかったことにも出来ないし関係を切ることも出来ません。
忘れたくても忘れられない存在です。

いろんな親子問題のお話しを伺いますが、核心に触れてくるとほとんどの方は感情が大きく揺れます。
そして、多くの方は涙されます。
それは、怒りや恨みの涙ではなく、お母さん(お父さん)を求めていた涙です。

そのままの私で受け容れてほしい愛してほしいと切実に願っていたけれど、遠く昔に諦めて封印していた感情です。
この感情に到達すると、怒りや恨み悔しさが解き放たれてゆきます。

ですが、今すぐ完璧に許せなくても大丈夫。
”親との問題は一生もの” なんていう言葉もあるくらいですから。
親子は近い関係だけに一筋縄ではいかなくても不思議ではありません。
無理に「許さなければ!」と自分を追い込まず「お母さんはお母さんなりに辛かったのかもしれないな」と理解を深めつつ、焦らずに向き合ってみてくださいね。

親子三代で笑い合える日が来ますように。

来週は新しくメンバーに加わりました朝陽みきカウンセラーがお送りいたします✰
大きな包容力とおおらかさでそっと寄り添ってくれるカウンセラーです。
お楽しみに♪

[子育て応援]赤ちゃんの頃から、思春期の子、そしてそんな子どもたちに関わる親とのお話を6名の個性豊かな女性カウンセラーが、毎週金曜日にお届けしています。
この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦、浮気、離婚などのパートナーシップから対人関係、子育て、また、死や自己受容のテーマなど幅広いジャンルを得意とする。 女性的で包容力があり、安心して頼れる姉貴的な存在。クライアントからは「話しをすると元気になる」「いつも安心させてくれる」などの絶大なる支持を得ている。