断りたいのにNOが言えない心理 〜本心を隠してしまう本当の理由を探る〜

断れないのは「悪い自分」を補償行為で隠したかったから?

周りからの頼まれごとを本当は断りたいのに引き受けてしまい、後でしんどくなってしまった経験がありませんか?本心と違う言葉を言ってしまい、NOが言えなくなるのはどうしてか?その心理と問題からの抜け出し方を解説します。

NOが言えないのは罪悪感があるから

皆さんは本当はNOと言いたいのに、自分の意思に反してYESと言ってしまった経験がありませんか?

相手の気持ちを考えたり、周りの期待に応えたかったり、なんらかの断りにくい状況にいたりした場合は、なかなかNOを言えないかもしれません。

その場だけのことであれば問題はないのですが、長期的にNOが言えないパターンがあったり、断れないことで悩んでしまったりと、自分を苦しめている要因になっているとしたら、苦しみがどこから生じているのかを見直す必要がありそうです。

私たちがNOを言えない。誰かの頼み事を断れない理由の一つに「罪悪感」を感じていることが挙げられます。

罪悪感とは自分の考えや行動が間違っていると感じる感情です。

罪悪感を抱えていると周りの出来事や相手の気持ちの責任を過剰に背負ってしまい、何事も自分のせいのように感じやすくなります。

「自分が悪かったんだ」「自分が間違っているからだ」という気持ちを強く感じて、自分を責めてしまったり、自己嫌悪に陥ることで苦しくなってしまうのです。

とはいえ罪悪感を抱くこと自体はおかしなことではありません。人間であれば誰もが感じる感情ですし、起きた出来事に対して妥当な感情であれば問題にはなりにくいでしょう。

しかし過剰に抱えてしまうと「自分が悪い」という考えから抜け出せず、自分自身を許せなくなっていきます。

結果、人生を自由に生きることができず、楽しいことがない。毎日がつまらないという状態に陥りやすくなるのです。

補償行為で隠したいのは「悪い自分」

「悪い自分」が自分の心の中にいるのを感じると、多くの人はそれを周りに悟られないように隠そうとします。

では「悪い自分」を隠すために最もいい方法は何か?それは「良い自分」を周りに見せることです。

暴かれたくない何かがあると、人は隠したい部分とは逆の要素を過剰にアピールしたくなる心理が働くからです。

この場合、過剰に良い人であることをアピールしたくなるわけですね。

すると誰かから頼まれごとをされた時に、自分が手一杯だったとしてもNOが言えず、自分の用事は横へ置いて引き受けてしまうなんてことが起こるのです。

罪悪感を強く抱えていればいるほど「悪い自分」への補償としての「良い自分」でいることを辞められなくなるからです。

こうした「補償行為」は、行為自体は良いことなのですが、本心から望んだ行為ではなく隠すことが目的なので、やってもやっても喜びがなく、疲弊していってしまいます。

人によっては良い人を長年やり過ぎて、頼まれごとに反射的にYESと言って引き受けたものの、しばらく時間が経過してから「やっぱり引き受けたくなかった」と気づくこともあります。断りたいと思っても「でも今更断れないし…」と悩んだ末、やっぱり断れないケースも少なくありません。

また補償行為としてやっていることを、周りから「優しいね」「良い人だね」と褒められる機会があったとしても、心から嬉しいとは思えませんし、満たされることもありません。

あるいは他人が羨むような成功を手に入れることがあっても、補償行為のもたらした成果なので価値を感じられず、空しさばかり募ってしまいます。

もちろん人前ではそんな様子は見せられないので、表面的には喜んでいるフリをするのですが、内面では満たされず、自分は不十分だという感覚を感じる状態が続くことになります。

すると人前では本心とは違う感情で振る舞い、また周りからの賞賛や感謝も受け取れないので、なかなか自信にはつながりません。

結果、人から嫌われることへの不安から、周りから向けられるニーズに過剰に配慮してしまい、やっぱり断れない悪循環が続いてしまうのです。

自分を丁寧に扱うことから

「自分が悪い」という罪悪感からどうやって抜け出したらいいのか?

端的に言えば自己承認、そして自分を許すことなのですが…

自分に厳しく、まじめな人ほど自分を認めようとすると「自分を甘やかしている」と感じて、そんな自分をますます否定してしまう傾向があります。

自分も同じだと感じた方は、まずは「厳しすぎる生き方をしてきた自分」に意識を向けてみてください。

そして自分をできるだけ丁寧に扱ってみましょう。

そう言われても何をどう丁寧に扱えばいいの?と思ったかもしれませんよね。例えばこういうことです。

あなたが周りの期待やニーズに繊細に配慮してきたのと同じくらい、自分自身の感情や意思(本心)を丁寧に扱ってみようと思ってください。

自分は何に満たされたら幸せだろう?
自分の喜びって何だろう?
自分にとって心地いいってどんなこと?

すぐに分からなくてもかまいません。でも自分に問いかけ続けてみると、ふいに「これかもしれない」という感覚に出会うことが増えてきます。

そこで見つけた自分の本心、心から求めていた感情に従って自分がとる行為を決めてみましょう。

意識的に自分を丁寧に扱っていくことに慣れていくと、徐々に罪悪感と補償行為が減っていきます。

自分の本心を大切にできた分だけ、相手にNOを言うことが楽になっていくでしょう。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

超自立男性との恋愛・コミュニケーションに関わるお悩み・慢性的な生きづらさの解消などを得意とする。 理論的な“心理分析”と、感覚を使った“心理セラピー”を活用する多面的なサポートが好評。 問題の裏に隠れた「真実の物語」を読み解き「自分の本質を生きる」ことを目指すカウンセリングを提供している。