父からのお土産 ~受け取ることは与えること~

実家の食器棚の一番上には、キーホルダーが飾ってあります。
グラスとティーカップがあるその場所に、不自然なキーホルダー。

実はこのキーホルダー、「なんでこんなところに飾っておくんだろう」と見るたびに、私は罪悪感を感じてしまうキーホルダーだったのです。

* * *

父は、昔気質の一本気のような性格です。それでいて、じっとしていられないタイプの人。
小さいころからしつけにきびしく、父に反発した時期も長くありました。

定年後の今では…
これまで大きな病気などしたことがなかった父が、一度入院したことがあって、それからというもの健康に目覚めたようです。

毎日、欠かさずグル〇サミンを飲んで、家の中では健康のためにと足首に重りをつけ、筋力アップのため、負荷をかけながら生活をしています^^
そうそう、最近では料理もするように。

そんな父ですが、私が小学生のころは出張で家を空けることが多く、数日かえってこない日もよくありました。

あの日、母から「今日は、お父さんがお土産を買って帰ってくるよ」そう聞かされていて、小学生の私はワクワク楽しみに父の帰りを待っていたのです。

しばらくすると、「ただいま」と玄関が開く音と同時に聞きなれた父の声がしました。
私は、急ぎ足で玄関に向かいます。

父が帰ってきて、まっ先に「はい、これお土産」と私に手渡してくれたもの。
それは、小学生の私にはちょっと早い!?“古風なこけしのキーホルダー”でした。

そんなお土産は想像もしていなかった…

声には出しませんでしたが内心は、

もっと、可愛いものかと思ったに。全然好みじゃないし気に入らない。

母も台所から手を止めてやってきます。
私たちの様子を見て「お父さんがせっかく買ってきたものなんだから」と父に聞こえぬよう身を乗り出し、私に小さな声でささやきました。

その瞬間、私は、「こんなものいらない!」

と父に、吐き捨てるようにひどい言葉を投げつけ、プイッとふて腐れてしまったのです。
そのあと、しょんぼりと扉を閉めて部屋から出ていく父の後ろ姿が、今でも心に残っています。
※私たちの心には時間が関係ありません。楽しいことも嫌なことも記憶されていて、心の奥には残っているものだと言われています。

今振り返ると、口下手で普段から必要なこと以外は、あまり話さないような真面目な父です。
きっと、何を買っていいのか分からなくて悩んだことでしょう。
お土産を買うといっても時間もなかったのかもしれません。

父なりに私を思って、お土産を選んでくれていたことは間違いないはずです。
ただただ、娘の喜ぶ顔がみたいと思い、あの日、キーホルダーを買ってきただけなのに…。

にもかかわらず、娘にあんなひどい言葉をあびせられ、あの場にいた父はどんな気持ちだったのだろうと思います(-_-;)

そういうわけで、あの日以来、うちの実家の食器棚には ひっそりと30年もの間、誰にも受け取ってもらえなかった(おそらく父の気持ちと同じ)キーホルダーがひっそりと飾ってあるわけです。

お盆には帰省する予定でいます。
あの日、受け取らなかった〝古風なこけしのキーホルダー“。
長い年月がかかったけど、今年は大事にもらって帰ろうかな~と思っています。

だって、あのとき、父に伝えたい本当の思いは違ったはず。
きっと、「お父さん、会いたかったよ~」素直にそう喜びたかっただけなんです。

心理学では、「受け取ることは与えること」とよくいわれていますよね!
※「受け取ることは与えること」=誰かがあなたを喜ばそうとしているその気持ちを受け取ってあげると、その相手も幸せな気持ちを感じることができます。自分自身も幸せを感じることが増えて、心の視野も広がります。

だからこそ、ちゃんと受け取って、私の罪悪感を楽しさや喜び、優しさに溢れた愛に変えていきたい。

ズキンと痛んだ思い出も、父や家族の愛に気づいたとき、愛されていた喜びを知って、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

お父さんの娘でいられて幸せです。
お父さん、ありがとう。

みなさまの大切な人が、元気で長生きしてくれることを祈っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

「本当の自分」を取り戻すサポートを得意とする、アダルトチルドレン経験者。一人ひとりの心にそっと寄り添い、自己価値を見出す。安心感あふれる雰囲気で、恋愛、仕事、人間関係の相談に応える。心の成長を育むカウンセリングには定評あり、ボランティア活動から得たファンも多く、信頼も厚い。